M嬢が贈るそれなりの公開劇場

「二日酔いを病気と認定する世の中に」そんな公約をする政治家はいないものか。

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少々笑えん話をしよう。
タイトル通りなのだが、昨年末インド洋のとある島国に旅行に出ていた私は
スマトラ沖地震による津波の被害に遭い、この太く短い一生を終えるところだったのだ。
 
この事件を詳細に書き出すとヤフーの容量がパンク寸前になると思うので、この経験を通じて
私なりに感じたことをポツリポツリと書いてみたい。
 
あれは2005年12月26日:現地時間AM9:30ごろだった。
宿泊先の水上コテージで洗顔をしていたところ、突如足元の木の床が水圧で破壊された。

そしてそのまま部屋になだれ込んだ海水により私はコテージから流され、さらに大海原に流されて行ったのだ。
 
顔も足も怪我を負いながら、私はなす術もなく濁流に溺れ、流され続けた。

たまたま気絶寸前の私を見つけた現地の人が命がけで救助してくれたため、
幸運にも私は一命を取り留めた。正直、危ないところだった。
私と一緒に流された人では、そのまま沖に流されて亡くなった人もいたのだ。
 
助かったはいいが、荷物もお金も一切失った私は、
寝巻きのワンピースに洗顔バンドを巻いた状態で、津波後3日間の避難生活を余儀なくされた。

近くの漁村を転々としながら食料を恵んでもらい、結局12/30に他国の軍艦に乗せてもらい
ボロボロの状態ながらも何とか帰国を果たすことができた。

(帰国後しばらくはニュースや新聞の取材を受けていたため、もしかしたら私を
ご覧になった人もいるかもしれない。)

 
このように、負傷した体ひとつで避難生活を送っていたわけだが、
私は必ずしも絶望や恐怖や不安だけに怯えていたわけではなかった。

近くの漁村などで過ごした3日間で、私はとても不思議な感覚・・・、
いわば「不謹慎な恍惚感」のような感情をしばしば抱いていたのだ。
 
例えば
手が動くこと、目が見えること、・・・すべてに感謝していた。
空が青いこと、風が気持ちいいこと、・・・すべての現象が輝いて見えた。
 
これまでの日常では決して感じることのない、単純な「生」の実感だった。
失った荷物も台無しになったバカンスもどうでもいいと思える程の、ひたすら衝動的な生への感動だった。
 
そのせいか、帰国直前の空港で「やっと元に戻ることができる」という安堵の気持ちのどこかで、
私は一抹の複雑な思いを抱えていた。
 
その時、私はすでに分かっていた。
 
帰国後数週間も経てば、この3日間の経験や感動は風化していくことを。
きっと近いうちにとても自然に、私は週末の飲み会を気にしたり、空調の効かないオフィスに苛ついたり、
融通の利かない上司へ文句を言ったり、という日常に戻っていくことを。
 
すでに、被災と日常の狭間にあるその空港ですら、避難生活時は体一つで助け合っていた人達の中でも
持つ者・持たざる者の差が歴然としていた。
例えば私は現金やスーツケースを所持している人を羨む一方で、
まだ水着姿でいる人よりはワンピースを着ている自分はましだと安堵をしたりする。
 
つくづく、人間は弱く、そして同時に強か(したたか)だと感じた。
 

さて、私は予想通り「日常」の生活に戻った。
 
現在、あの経験をドキュメンタリレポートにまとめて、某文学賞の最終選考にまで残っている。
友達から「あんたは転んでもタダでは起きないね」という好意ある揶揄を聞くたびに、
生きてさえいれば、これからも何でもできるんだろうと変に暖かい気持ちになる。
 
結局、あの経験は私に何を残したのだろうか。
 
半年ほど経過した今でもまだ悪夢にうなされるたびに、
早くあのときの恐怖を忘れて、日常の瑣末な出来事に集中できるようになりたいと願う。

と同時に、足に残った傷跡が日々薄くなってゆくたびに、自分の大切な「証」が薄れていくようで
どこか寂しいような矛盾した感情も抱いている。
 
「結局、あの経験は私に何を残したのだろうか。」
 
この答えを見つけるために、私は生き続けて、そしてきっといつかまたあの名もない漁村を
訪れる気がする。

閉じる コメント(16)

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どうしてある人は助からず、M嬢は助かったのでしょうか?何が違ったのでしょうか?

2005/5/30(月) 午後 5:05 ayammt

すごい体験されましたね。

2005/5/30(月) 午後 5:09 ドルフィンリング

ayammtさん、こんにちは。単に「偶然」としか言いようがありません。たまたま私の流された水流が桟橋に近く、その桟橋で引き上げられたようです。生死を分けた要因が「偶然」ということに、私自身無力感をしばらく感じておりました。

2005/5/30(月) 午後 5:34 sas**i921

dolphinringさん、コメントありがとうございます。普段そのような事態を全く想定していないので、最初に水位が上がった時も「もしや」と考えるより「まさか」と考えてしまっていました。(実際、そのせいでやや逃げ遅れたのかも・・・)

2005/5/30(月) 午後 5:37 sas**i921

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あの大惨事で、しかも海に投げ出されるという危険な目にあいながら生き残ったM様は運が太いですね。ホックルも死にかけた時「俺の体ってこんなに強かったのか!」と感じて、生かされている感をものすごく感じました。その後しばらく俺は今何があっても死なないんじゃないか?と錯覚してました。文学賞取ったら読ませてもらいます。

2005/5/30(月) 午後 6:28 [ ホックル ]

「ウンが太い」(←いや、第一変換が間違ってるし・・・)。なかなか良い褒め言葉をありがとう。私は逆で、しばらくは「バナナの皮で滑って転んで死ぬかも」って位、生命力が落ちている気がしたよ。今は生命力絶倫ちゃんだけど♪

2005/5/30(月) 午後 8:56 sas**i921

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”生の実感”、それを体験できた事が何よりも、全てのあらゆる物よりも貴重なものじゃ無いでしょうか?それが風化してしまう前に、何かしらの形(本)に残しておく事もまた大切だと思います。本、是非読みたいです。しかし、スゴイですね。

2005/5/31(火) 午前 8:23 [ kat*yam*1*157* ]

katayamaさん。こういう記事を書くのは、たまたま生き残った者の不遜な発言のような気もしたので、実はすごくためらいました。コメントありがとうございます。しかしスゴいで、ほんとに。

2005/5/31(火) 午後 0:32 sas**i921

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生の証を体験したくてもそんな体験はなかなか出来ません。何事にも感謝・感謝・そして日々の自我に対して懺悔を通してこれから、自分が何を世の中に出来るか考える時期かも知れませんね・・?けして、大きな事とかではなく、自分が出来る事であれば良い訳です。貴重な体験を羨ましく思います。タイトルから寄らせてもらいました・・!

2005/5/31(火) 午後 0:35 [ dance_kodera ]

コメントありがとうございます。確かに貴重な経験をしたとはいえ、私が急に世界を揺るがす偉業を成し遂げるわけもなく、または慈愛に溢れる人になるわけでもないので、日々での感謝を大事にしたいと思います。

2005/5/31(火) 午後 10:10 sas**i921

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大変な体験をされたんですね。本当、ご無事で何よりでした。早く悪夢から開放されるといいなと思います。

2005/6/1(水) 午前 11:49 [ ゆかりん ]

心優しきゆかりんさん。ありがとう。でも今はホントのホントに元気なのよ。(他記事を見て分かる通り)せっかくなので、何かにこの経験を活かそうかなーと前向きに考えてます。

2005/6/1(水) 午後 0:51 sas**i921

TVでニュースを見て驚きました。しかしこの記事を見るまで大変な災害だと思いながらも本当の恐怖は知らずに過ごしていました。そして心のどこかで他の世界で起きているのだと安心していました。僕は馬鹿ッスね。M嬢さんの生への運を繋いでくれた神にただ感謝するしかありません。生きていてくれて本当に良かった。

2005/12/26(月) 午後 1:19 [ ドラゴン ]

何だかTADAzさんはこの記事にもコメントをくれる気がしておりました。ありがとうございます。帰国してしばらくは「どうして私のような人間が生き残ったのか」と悶々とすることもありましたが、こんなコメントを頂けると心が温もります。

2005/12/27(火) 午後 6:10 sas**i921

不謹慎な恍惚感>>不謹慎かどうかは別として、恍惚感が芽生えたと言うところはとても理解できます。助かったのには理由があるかどうかも分かりませんが、もっと読ませてくださいね。

2006/1/10(火) 午前 1:15 [ - ]

浅野様、確かにこの時の感覚は日常の「喜楽」を超越している強烈な感覚だったので「恍惚感」という表現になってしまいました。が、助かったことに理由はないでしょう。また、理由を求めるのも不遜な気がします。

2006/1/16(月) 午前 8:04 sas**i921


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