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「乱れているのう・・・。」
立春を髣髴とさせる北アルプスの麓を流れる清流。
岩場で座禅を組んでそのせせらぎを聴きながら、ふとM長老はそんなセリフを重厚な面持ちで呟いた。
・・・もちろん実際は居酒屋で一刻者のボトルを呑みながら、酒焼けしたダミ声&半目で呟いただけだ。
この世の中には乱れていいものと悪いものがある。
・例えば「桜」
これは乱れてよかろう。
八坂神社裏の円山公園の乱れ桜を見ながらみたらし団子を食らって俳句を捻るなんて最高に風流だ。
・例えば「性」
賛否両論あろうが、私はPTA会長ではないしメンドーなのでとりあえず乱れて「良し!」としよう。
いつしか九九の四の段を習う頃にトキメキ初体験しちゃうようなお祭り騒ぎの時代が来るかもしれない。
・・・って私が知らんだけでもしかしてもうそんな時代になってんの?
・例えば「着物の裾」
えーのう、たまらんのう。どんどんお乱れなされ。
ついでに乱れた裾で「御乱心」となったバカ殿が、
お決まりの「帯をしゅるしゅる&あーれー」の宴を繰り広げるなんて苦しゅうないぞ。
さて、今回私がテーマとして取り上げたいのは「言葉の乱れ」だ。
もちろん「ら」抜き言葉がどーしたとか、言葉の平板化がほにゃらかとか、その手の話をしたいわけじゃない。
そんなテーマを思いついたのは、居酒屋にいた若いOL女子グループの会話を私が盗み聞きしていたからだ。
「でさ!チョーあいつうぜーんだよ!」「マジ、ムカつくな、それ!」「・・・っんだよ、何様だっつーの!」
「穏やかじゃねーな」
と、私はデトロイト市警の敏腕刑事のような目付きで
その女子どもの腕などにサソリやバタフライの刺青がないか、肘裏にアンニュイな注射痕がないか、
または「夜露死苦」や「見参」とか書かれたライターを所持していないかチェックした。
が、外見はローライズのパンツにアバクロのカットソー(ムラサキスポーツの疑惑もアリ)の女子。
ビバリーヒルズで発砲したり、あるいはウォール街で株価操作をしそうな物騒なタイプではない。
しかしよくよく聞くと、彼女らは言葉こそヘルスエンジェルっぽいが内容はさほど憤るほどのもんではない。
自分の荒くれた語調でさらにパッション昂ぶっちゃってる感じなのだ。
例えば組の下っ端のどチンピラが「お、お、おんどれー、アニキの仇打っちゃるでええー」と
無意味に絶叫して自分のチキンハートにムチを打つのと同じ原理なのかもしれん。
などと私は面白がって観察していたが、近くのリーマンのおっさんらは明らかに彼女達を意識していた。
意識と言うか、気の毒なほど「ビクビク」しており、私は彼らに同情した。
なぜなら彼らは家では娘に「お父さんのあとの風呂は入りたくない」と邪険にされ、
会社では派遣の女子に「ポマード臭いよね、オヤジ」と鼻をつままれ、
さりとてサラリーマン川柳にその悲哀を詠うほどの才能も気概もない。
せめて会社帰りに同期の桜と肩を寄せ合いながら語り合いたい。
「鉄は国家なり!」・・・そんな素敵な時代をワンスアゲイン。
その程度のささやかな希望を抱いてこの居酒屋に来たというのに
今や「オヤジ狩り」の危機に脅え、背中と尻尾を丸めながら熱燗を呑んでいるなんて、
まさに会社の飼い犬の哀しい末路ではないか。
なお誤解を招いて申し訳ないが、オヤジは今回の話にあんまり・・・というか全く関係ないため、
話をOLサンバに戻そう。
そう、最近の若い女子は言葉が乱れとる。
あんな乱れたしゃべり方していて何か得することがあるだろうか。
せいぜい周囲の印象は「アホそう」「コワそう」「ヒゲが濃そう」くらいだろう。
そのポジションを目指すのがキミ達のファイナルアンサーでいいのか!?
何も「わぬしのきぬぎぬをわらはいときかまほし」などと言えっちゅー話ではない。
キミらも女子のはしくれとしては人並の「モテたい」という願望もあるだろう。
が、「ヒゲが濃そう」と思われている状態で、この女子界で勝ち残る(=モテる)自信があるか!?
まあ、泣くな、泣くな。
ほれ、ブランド小物に金かけすぎてマスカラはマツキヨの特売で安っちいの買ってるもんだから、
目の周りが立派なパンダになっているじゃないか。
そこで、心優しき私はこんな困ったパンダちゃんらが中国に強制送還されることもなく、
女子として競争の激化する産業界で生き残る道を勝手に模索してみた。
仮にキミが「っつーか、話し方とか関係ねえっしょ」と主張するならば、こんな戦略はどうだろう。
まずは「見た目」のキャラ変えだ。
オーバーオールにみつ編み。
趣味はハーブの栽培、両親の誕生日には手作りケーキは欠かせない。
例えばこんな癒し系キャラに変身するのだ。
なお、根拠はないが女子は変身するなら夏休み明けがいいぞ。
そんな絵本の中から抜け出たような貴女が彼とベッドイン。彼は貴女の一生を背負う気概でコトに臨む。
そこで貴女はひとこと。
「っんだよ、そのお粗末なテク!アタイの体でもっといいメロディー奏でてみろや!!」
と巻き舌でかましてやるのだ。
彼は驚愕しつつも理解していたつもりの貴女が分からなくなり、もっともっと貴女を知ろうとする。
堅い表現で書くと伝わりにくいが、つまりは「メロメロ」ってことだ。
さて、世間の女子が皆オーバーオールを着込むと困るので、もう一例挙げよう。
例えば貴女が毎日日サロにせっせと通い、冬でも生足&ヘソ見せで首には金メッキじゃらじゃら。
メンソールの細いやつを常に燻らせているような「見た目」キャラだとしよう。
そんな貴女はベッドインの瞬間に生まれたての小ヤギのようにヒザをプルプル震わせながら
「ら、乱暴に・・・しないで、下さ・・い」
と蚊の泣くような声で囁くのだ。
アプローチは前述の例と逆だが、彼に起こる現象は同様だ。つまりは「ロメロメ」だ。
さて、よく言われることだが、恋愛のきっかけは「ギャップ」にはじまることが多い。
想像していた貴女に「前向きに」裏切られるたびに、興味が沸き、より惹かれていく。
このギャップの演出のうまい女は女子界でビル・ゲイツ並のサクセスストーリーを手にすることが多い。
逆に言うと「見たま〜んま」という人には常に「思ったと〜り」の人しか寄って来ないのではないだろうか。
「お嬢様風な外見で、性格もお嬢様」「遊んでそうで、ホンマに遊んでる」。
こんな部分に安心感を抱くぬるい男しか掴めず、中年になってから「何か私・・、冒険したい!」となるのである。
この話で関連して思い出した現象があるのだが、たまに女子で
「私ってー、しゃべんない方がイイのにっとかって言われちゃうことが多いヒトなんだよねー」
的発言を連呼する人がいる。
なんでひょか、コレ。
言葉の上では「話すとイメージ崩れるって失礼しちゃう」とプリプリしているようであるが、
私はついついその発言の背景にある意図を底意地の悪い気持ちで考えてしまう。
それは
「私ってば、話すとユーモアもあって気さくなんだから」アッピールであり、
「その上、外見はお笑いキャラじゃなくてイケてるんだから」アッピールである上に
「人から言われた」やら「やや自分を貶めるフリ」やら策士なオブラートに包んで言っちゃえ精神が
厚かましくもありこっ恥ずかしくも感じられてしまうのだ。
最悪なケースだと、その女子にそんな指摘をしているのは常に女子側からだったりするくせに、
その女子がその発言をアピールするのは常に男子側に対してだったりする。
そんなネジレ現象が起きているケースでは、言われた男子はどっ白けてココロのなかでこう思うだろう。
「オモロいこと言いそうなオモロい顔してるやんけ」と。
この手のギャップは自己申告した途端、その価値を下げる。安っぽくなる。
上手く自分のギャップを演出するのは良いが、くれぐれもそれを自ら言うのではなく、
相手に「言わせる」または「感じさせる」方向で修行は積みたいものである。
では、長老は清流をペットボトルに詰め込んで東京砂漠に戻るとしよう。もちろん、高値で売るためじゃ。
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