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男女の修羅場、それは時にシナリオにはない展開のごとく突然襲ってくるもんである。
ガチンコのガサ入れ状況に人は焦り、脇には汗びっちょり、目線はスイミング、
そしてうろたえながらも何とか相手の憤怒を交わそうと必死で言葉を探す。
急転直下の驚天動地、マメがハト鉄砲でボタ餅から棚・・・、つまりは窮地だ。
そんな場面で捻出される素人さんの台詞は、稀に一流芸人の冴えたアドリブよりも香ばしかったりする。
えてして痺れる名言とはこの手の事前準備がきかない場面で発せられることが多いのだ。
時はさかのぼること先週の金曜日の夜。
オフィスで残業をしていた私は同じように残業をしている男女数名の負け犬同盟を誘って
22時ごろから夜の街に繰り出した。
日銀の資金供給残高から昼の弁当のおかずまでグローバルな視野で話題を展開する我々。
すると、たまたま男友達Aから私に連絡が入った。
Aは地方に勤務しているのだが、その時はたまたま東京に出張で来ていたらしく、私たちと合流したいと言う。
しかも最近つきあいはじめた7歳年下のフレッシュな彼女も同伴させたいらしい。
私たちは喜んで彼らを迎え入れるべく、とあるバーの奥にあるダーツルームの個室に移動した。
彼はとにかく底抜けに明るいお調子者のバカな男なのであるが、特別見た目のよろしい男ではない。
しかしなぜか常にきゃわいい♡彼女をゲッツしているのだ。今回もしかり。
しかも今回は彼女の方からAに惚れてしまったようで
「Aさんのこと超好きで、私から押したんです♪」とまでノロけていたのだ。
さてダーツ中もAはノリの良さを発揮し、得点が加算されるたびに誰彼かまわずハイタッチ、誰彼かまわずハグ、
誰彼かまわず賛辞のシャワー、などラテンの血を発揮していた。
一方、ダーツ初心者の彼女はテキーラを呑まされながらも「だってえ、真ん中なんて当たららいれひょ〜」と
エエ感じにご機嫌な酔っ払いとなっていた。
仕事終わりの楽しい時間。そんなピンフな時間が彼女の突然のある叫びで切り裂かれた。
「もう・・・、私Aさんのこと信じられない!!」
「なんでそーなるのっ!?」的な欽ちゃん展開。いきなりの戦争開始宣言。楽園から戦場へ。
皆の目線は一様に彼女に向けられた。
「どうしてAさんは他の女にベタベタしたり誉めたりするわけ!?」と、
彼女は焦点の定まらない目つきで喚き出した。
Aは彼女のアタッキーな発言に虚をつかれ、口をぱくぱくさせている。
すかさず周囲はあれこれ彼女をなだめてみるものの、怒りの暴走機関車は止まることなく彼に猛進していった。
女子のこの手の感情がチャッカマンされている場合は、どんな理屈も入る余地がない。
私は彼が変に言い訳をすることなく、ストレートに彼女に対する思いを伝えるべきだと感じた。
例えば「オレにはお前が最後の女〜♪」と浪花節を一発決めてホットなチューでもぶちかますのだ。
そう思い、私はこっそり彼のわき腹をつつき「ごちゃごちゃ言わずに、一言でこの場を畳め」とけしかけた。
彼は意を決したのか、彼女にしっかりと目線を合わせながら、大きな声でこう言った。
「だって、俺イタリア人やから。しゃーないやん!」
・ ・・
・ ・・
「オモろい!」
・・・いや、そーじゃなくて。
うむ、確かに一言やし、理屈も言い訳も入ってへんな。
感情的になっている彼女をさらに上回るパッショネイトな表現はなかなかのアプローチといえよう。
ただし!今の彼女にお前のウィット満載の発言が通用することがあるだろうか(いや、ない)
「び、びえええ〜」
ほーら、泣いちゃった。
ちなみにAの女グセの悪さや濃厚な対人コミュニケーションは簡単には治らない類のものだろう。
もともと彼女はAのそーゆー性質っちゅーかビョーキを知っていた上でつきあったはずだ。
むしろそういう部分含みで惚れたにも関わらず、いつしか愛の力で彼を変えたいと願っている。
そんな乙女心は分らなくもない。
が、現実には彼女は惚れてしまった立場の者特有の切ない選択肢をつきつけられていたのだ。
それは「貴女が変わるか」「(貴女が変われないなら)彼と別れるか」という非常に不利なカードだ。
なぜなら彼は自分を変えてまで彼女を引き止める気はさらさらないからだ。
彼のおポンチ発言は、残酷な見方をすれば「イヤなら去れや」とでもいうような態度だろう。
彼はその後もふぬけた戯言を嘯き続けたせいで、彼女は泣き止むことはなかった。
結局、我々はそんな胃もたれした状態で場を解散することになった。
〜パッションがあっても愛がない言葉では女は納得しなかったラテン男の名言〜
「だって、俺イタリア人やから」(atそもそも伊人に失礼な気がするAM2:00のバーにて)
上辺だけの愛の三味線を奏でて彼女を安心させずに、厳しいながらも現実を見せた彼。
・・・これを誠実と見なすか、不誠実と見なすか。
彼の判断をどう捉えるかは、恋愛に対する考え方の違いがあらわれる気がしないだろうか。
さて、後日件の彼女からは私の携帯の留守電にこんなメッセージが残されていた。
「M嬢さん、迷惑かけてゴメンなさい♡あの晩、Aさんにも叱られちゃって反省しましたん。
これからはケンカしないように仲良くやっていきますう♡えへ♡」
・・・どうやら彼はあの夜は言葉ではなく体で「こってりと」誠意を示したらしい。
そんな下衆な勘繰りを入れるMおやじだった。
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