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今さらだが、生まれて初めて “ラーメン二郎” に入った。
“ラーメン二郎” は関東ローカルなのだろうか。
巷では 「ジロリアン」 や 「ジロリスト」 なる言葉があるぐらい、
熱烈なファンが多数いる、行列のできるラーメン店である。
“ももクロ” のファンを 「もののふ」 と呼ぶようなものだろうか。
先日、飲んでる席で “ラーメン二郎” の話になった。
そこまで話題になるのなら、一度ぐらいは食べてみたいものだ。
今日は雨もパラついて、夏のわりに比較的涼しい。
私は、朝から何も口にしていないうえ、
ヨメは娘を連れて、近所の室内プールへ出かけている。
タイミングはすべて揃った…
私は、この日を、記念すべき “ラーメン二郎・デビューの日” とする事にした。
自宅から15分ほど車を走らせると、目的の店はあった。
10坪程度の狭い店だった。
順番待ちの客は、店内に5名ほど。
私は、新宿の “麺屋武蔵” に並んで以来、
行列に並んでラーメンを食するのをやめている。
ハードルを上げるほど、落胆も大きいものである。
まぁ、この程度の待ち時間なら我慢する事にしよう。
私は狭い店内に入った。
カウンターのみ十数席。
待ちの客は、店の奥に設置されている冷水機付近から、
街道に面するガラス貼りの壁に沿って、行儀よく一列に並んで待っている。
その手前の券売機で、690円の 「ラーメン」 の札を買い、私も列に並んだ。
一瞬、“大盛り” にも目に止まったが、友人の話によると、量が半端ないらしい。
齢五十一を過ぎても、いまだ大食漢の私。
joshuaさんと、“メガ盛り対決” をしても勝つ自信はある。
しかし、初めて食すラーメンである。
最初は、様子見にしておこう…
そんな、いつにない冷静沈着な判断が、のちの自分を救う事になるとは…
“二郎” 初体験の私にとって、店の仕来たりがわからない。
列に並びながら、しばらく店員や客の様子を伺ってみる。
一人が食べ終え、席を立つと、
店員に促されるわけでもなく、列の先頭の客は、
コップを取り出し、自ら水を汲んで席に着く。
次の客も、また次の客も…
その、一糸乱れぬフォーメーションは、見事としか言いようがない。
北朝鮮のマスゲームのような完成度だ。
客の、店に対するリスペクトが垣間見える洗脳の世界がそこにはあった。
「初心者」 と見透かされたくない私は、その “阿吽の呼吸” に従う事にした。
こういう場面では、ハッタリが大事なのである。
列に並んでいる間、客の一人が、聞きなれないワードを言い放った。
「全部マシマシで」。
「マシマシ」 はたぶん、「増し増し」 なのであろう。
気になるのは、「全部…」 である。
私の順番まで、あと3名…
それまでに、その耳慣れない “業界用語” を解読しなければならない…
運良く、「○○マシマシ…」 「△△マシマシ…」 などの用語が飛び交う。
マキシマム ザ ホルモンの歌詞に出てくる言葉と擦り合わせる事で、
ほぼ解明に至る事ができた。
どうやら、「野菜マシマシ」 と 「油マシマシ」 と 「にんにくマシマシ」 があるらしい。
そして、ラーメンが出来上がる直前に、リクエストする事が出来るようだ。
私の順番が来た。
一人の客が席を立つのを見て、慌ててコップに水を注ぎ、席に着く。
さりげなく周りを見渡し、他の客との差異を探した。
そこで、自ら犯したミステイクに、すぐに気が付いた。
盲点だった…
水と一緒に、レンゲも持って来なければならなかったのだ。
一生の不覚…( _ _ |||)
取りに戻ろうにも、先ほど以上に並んだ列を掻き分けて、
レンゲポイントまで行かなければならない…
もし、そこでレンゲの在り処に戸惑ったなら、すぐに 「初心者」 とバレでしまう…
私は、しばし考えたのち、
「オレは、 “レンゲ使わない派” なんだよね〜」 的な、
きっと数%はいるであろう、 “通 ”のフリをして、このピンチを凌ぐ事にした。
残された問題は、「マシマシ」 である。
この “用語” を使わなければ、常連ぶれないのだ。
しかし、小心者の私は、遂に言い出せなかった…
店員さんが 「ニンニク入れますか?」 と聞いてくれたので、
かろうじて、ニンニクだけは確保できたのだが…
そして、遂にラーメンが来た。
ひと口、ふた口…
至って、味は普通。 つーか、かなりしょっぱい。
み口目…
よ口目で、箸をどんぶりの底の方に突っ込んで、麺を表に出してみる…
なんじゃ! こりゃ! w( ̄Д ̄;)w
どんぶりの中の8割が麺やんけ!( ̄△ ̄;)
突如として、楽しいはずの昼食が、フードファイトに変わった…
頭の中で、決戦のゴングが鳴ったのである。
とんでもないヤツが闘いを挑んで来やがった。
どーやら私は、虎の尻尾を踏んでしまったようだ…
喰っても喰っても、減らない麺…
まるで、どんぶりの底に、製麺機が仕込まれているかのような錯覚を覚える。
「大盛り」 をチョイスせず、
「マシマシ」 が言えなかった小心者の私に、心の中で感謝した。
以前見たテレビで、「ラーメン評論家」 と称する “味音痴野郎” が、
「ラーメン二郎で、食べ残すのは失礼。 お店にひと言謝ってから…」
と、ゆうような事を言ってたのを思い出す…
冗談じゃない。
よっぽどの事が無い限り、金を支払う側が、
貰う側に頭を下げてたまるか!
絶対に喰ってやる!
私は、黙々と、麺を、胃に流し込み始めた。
日頃のゴルフ練習が功を奏したのか、
頭を上げる事なく、前傾姿勢を保ったまま、
口へ運んでは、噛み締め、飲み込む…
口へ運んでは、噛み締め、そして飲み込む…
まるで機械のような動きだ…
しかし、腹が膨れてくると、前傾姿勢が崩れてくるものだ。
後半のスタートホールでの、OBの原因もこれなのかも知れない…
しかし、なんてタフなヤツだ…
飲み込んでも、飲み込んでも減らない。
その太麺の1本1本が、小刻みだが、着実にボディーに効いて来る…
そのボディーブローを嫌った一瞬のスキを突かれて、
私は、分厚い焼豚の右ストレートを喰らった。
薄れゆく意識の中、私は箸を置いたらしい…
私のこれまでの大食漢人生が、脳裏を駆け巡る…
まるで走馬灯のように…
ここはヘヴンなのか… それともヘルなのか…
真っ白な灰になりかけたその時、
はるか遠くから聞こえてきた…
「ファイブ」… 「シックス」… 「セブン」 …
かろうじて意識を取り戻し、私は箸を持ち直し、ファイティングポーズを取った。
しかし、かなり足に来ているぞ…
敵は、分厚い焼豚を2枚も持っているのだ。
大丈夫なのか…?
自問自答の中、デブである事の誇りのみで、立っていた。
麺が徐々に減り、スープとの比率が変わってくると、
さらに、塩っ辛さが増す。
何度も心が折れそうになった。
私は、リング中央で、ただガードを固めるしかなかった。
死んでも謝るものか!
あと、4口… はぁ、はぁ…
あと、3口… ふぅ…
あと、2口… ぐふぇ…
最後のひと口… うっぷ…
麺、完食…
しかし、しょっぱ過ぎるスープは残した。
レンゲを持って来なかった事で、私は命拾いをしたのかも知れない。 頭の中で、試合終了のゴングが鳴り響いた。
私は、敵の容赦ない攻撃を凌ぎ切ったのだ…
どんぶりとコップを置き、何食わぬ顔で 「ごちそうさま」 と言って席を立った。
「ごちそうさま」 の言葉には、少しゲップが混ざっていた。
常連の顔を装いつつ、おぼつかない足どりで、店をあとにする…
そこには、勝った喜びよりも、
“炭水化物は週に一度だけ” と決めていたのに、
その、週に一度の楽しみを、こんな形で終わらせてしまった…
と、いう、虚しさだけが残ったのだった…
「ラーメン二郎」 …
聞きしに勝る恐ろしいヤツだった…
しかし、リベンジマッチには応じない。
何故なら、同じ “こってり系” なら、
“千駄ヶ谷・ホープ軒” の方が、数十倍美味しいと思ったからだ…
では、また。 げぶっ
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