学問の部屋

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人間であることの失格たる、烙印を押された。旧約聖書に登場するアベル殺しのカインも孤独者としての烙印を押されました。彼は末裔だと錯覚しても許されましょう。

太宰治は、27歳のとき胸部疾患を切欠にパビナールを使うようになり、たちまち中毒者となりました。
妻・初代と井伏鱒二は結託して太宰を武蔵野の脳病院に強制的に入院させることを企図します。
ハイヤーで気楽にサナトリウムに向かのよう装い、太宰は到着翌日に階下の便所脇の室に移動させられたときに最愛の妻と最愛の恩師の企みのすべてを知ることになります。


「人権」なる言葉を思い出す。ここの患者すべて、人の資格はがれ落されている。
(これを題材にした著「HUMAN LOST」 より)


いや、むしろここに収容されているもの共を中毒者と揶揄されたものの慧眼でキャッチすると、彼等の大半が正気であって、ここに社会の縮図があるようにと人間存在の肉感に触れては太宰の進み行きは、その後、1ヶ月のち驚くことに真人間、生活者として変貌するのでした。何故と。ポマード濃厚にしみらせた頭の看守たちと、頑強な自分を閉じ込める壁「どんどん!」が反射によって自己内部の核へもろもろとと集合しては、点たる孤独者として佇むことを分かったのちに、彼が、社会と1つの取り交わしを行ったこと、これに起因します。
この契約が後に破綻をむかえるのは、そこに記された条項を甘受できぬ履行者のほうに大きな大きな責任があったことはいうまでもありません。


太宰、27歳のことでした。


(参考  山岸外史「太宰と武蔵野病院」 279−296 太宰治研究より)

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