さつきのブログ「科学と認識」

安倍政権は次々と公約を反故にし、変質させているので、詐欺罪として刑事告発すべきでは?

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以下は、私のこのブログの最初の記事「劣化ウラン(DU)の評価についての奇妙なねじれ」(2007年10月6日)のコメント欄で、通りすがりの方から「社会的無責任」を指摘されたので、それに応えるべく書いたものである。タイトルはやや刺激的だが、「トンデモ」と思って喰いついていただけたら幸いと考えてのこと。実際、劣化ウランの本質をうまく表現したキャッチコピーとして有用かもしれない。その表現の正しさについては、後半にふれることにしよう。

さて、今年はイタリア政府が退役軍人への劣化ウラン被害一括補償を閣議決定したとのニュースもあって、ウラン兵器廃絶へ向けた国際的な動きが加速している。私がこの問題にかかわることになったのは、2004年5月に「さざ波通信」主題別討論欄の「イラク戦争欄」と「一般投稿欄」で行われた劣化ウランをめぐる議論に参入したのがきっかけである。
http://www.geocities.jp/sazanami_tsushin/

当時、大歩危と名乗る方が「基本的に普通弾と大差のない劣化ウラン含有弾の残留放射能・・・云々」と主張して、ウラン兵器廃絶に向けた取り組みを「トンデモ」扱いし、「政治的プロパガンダに踊らされている」と批判していた。これに対して私は、147グラムの劣化ウランを含む25ミリ 機関砲の放射能(Bq)や、β線の放射強度(cps)を計算で示すなど、それが誤りであることを科学的に論証し、反論した。議論はひと月以上続いたが、最終的に大歩危氏は私の主張を受け入れ、「さざ波通信」から撤退することとなった。

この議論の過程で私は、劣化ウラン弾の廃絶に取り組んでいる日本国内のグループの多くも、劣化ウランの危険性を正確に把握できていないことを知り、その代表例として中国新聞社のウェブサイト「劣化ウラン弾 被曝深刻」を挙げた。
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/uran/

上記サイトに、「劣化ウランは主要にはα線を放出し・・・」と記述されいるが、これは誤りで、実際にはβ線の放射の方が圧倒的に多い。誤りの本質は、ウランからの中間娘核種の生成と放射平衡の概念など、物質科学的な無理解から、核種の名称であるウラン238と工業的生成物である劣化ウランを混同したことにある。

関係する基礎理論や物質科学的なデータを記載した有用なウェブサイトはいくつもあるが、それらを読んだだけで劣化ウランの危険性を正確に把握するのは困難である。例えば、劣化ウランの99.7%がウラン238からなり、ウラン238はα線を放出するということくらいを知っている程度では、中国新聞社のウェブサイトの例のように、誤った結論さへ導かれる。実際に劣化ウランの危険性について何事か意味のあることを言うためには、最低限、以下の知識が必要だ。(ここでは、疫学的なデータについては言及しないが、その重要性を否定するものではない)

1) 天然ウランおよび劣化ウランの物質科学
2) 中間娘核種の生成とその増大、および放射平衡の理論と計算
3) 放射線の種類と透過能・飛程
4) 放射能や空間線量率、実効線量当量などの単位系とその意味
5) 放射線測定器の種類と機能、使い分け
6) 放射線の生体に与える影響
7) 原子力基本法関連の法律およびICRP(国際放射線防護委員会)の勧告
場合によっては、「放射線ホルミシス効果」やウランの化学毒性についての知識も要求される。

「さざ波通信」での議論ではそれらについて網羅的にふれているので、興味のある方は参照されたい。ただし、私も「劣化ウランの専門家」ではなく、当時、教科書を取り出し、古い記憶を手繰りながら投稿したこともあって、本質的ではないが言葉遣いなどの点でいくつかの誤りがある。例えば、「放射平衡」と書くべきところを「同位体平衡」と書いているし、「永続平衡」との混同もあった。

それにしても、放射性物質の危険性については未解明の問題も多く、十分な知識があったとしても、その危険性一般について断定的な事を言うのは不可能に近い。だからと言って、劣化ウランの危険性について何も言えないかというとそうではない。まず言えることは、劣化ウランは安全であるなどとは誰にも断定できないということだ。これは重要なことで、住民の上にばら撒かれる化学物質については推定有罪の原則が適用されるべきである。この場合、安全であると主張する側にこそ、それを証明する義務がある。

しかし、そう主張したところで、現にそれを使用している者や、大量に溜め込んで、安易な処分を目論んでいる者らが態度を変えることはないだろう。相手は権力だからだ。それを動かすには、我々市民の側の結束した圧力が不可欠となる。そのためには、劣化ウランが、現行の法体系やICRPの勧告に照らして厳しく取り締まるべき放射性物質であることを証明すれば良い。我々は、劣化ウランの絶対的な危険性については断定できないが、法令によりその取り扱いが厳しく制限されている物質と比較することで、その相対的危険性を示すことは可能である。

さて、このエントリの表題の意味であるが、実は、その事は既に下記のサイトに詳述されている。
http://kyoto.cool.ne.jp/zebedee/contents.html

その中の「劣化ウラン」のページには、「「劣化ウラン」、「天然比ウラン」、「濃縮ウラン」の放射能はほとんど差がない。」と記され、付表に、天然比ウランの放射能を1とした場合に、劣化ウランと濃縮ウランの放射能がそれぞれ0.99と1.05となることが示されている。また、それを計算するためのExcelファイルがダウンロードできるようになっている。

このサイトが何時の時点で開設されたのか知らないが、もし2004年当時このサイトの存在を知っていたなら、あの時の議論は半分程で済んだかもしれない。当時私は、話を分かりやすくするために「精製」直後の劣化ウランをウラン238が100%からなるものと単純化し、「精製」後数ヶ月を経た劣化ウランの放射能を天然ウランと比較して、劣化ウランは天然ウランのおおよそ14分の3になることを示し、その相対的危険性について議論した。上記サイトでは、そうした単純化を排し、特にウラン234の存在を考慮して、上記の比が14分の4程度となることを示している。こちらの方が精確である。

ここで、基礎的なこととして、ウラン系列の放射壊変について簡単に整理しておこう。親核種としてのウラン238は14回の放射壊変を繰り返して、最後に安定な鉛206となる。その過程では13種の中間娘核種の状態を経るが、それぞれが固有の放射線を放出する。具体的には以下のようになる。

(以下、α、βは崩壊の型、数値は半減期)。
ウラン238(α:44.7億年) → トリウム234(β:24.1日) → プロトアクチニウム234(β:1.17分) → ウラン234(α:24.6万年) → トリウム230(α:7.5万年) → ・・・(中略)・・・ → 鉛206(安定)

ウラン235を(みかけの)親核種とするアクチニウム系列は11回の放射壊変で10種類の中間娘核種を経て最後に安定な鉛207となるが、詳細は省略する。

 一般に、半減期の長い親核種の放射系列において、全ての中間娘核種の半減期が親核種の半減期に比べて十分に短い場合、それら中間娘核種の半減期の7倍程度の時間を経過すると、それら中間娘核種の個々の含有率はあるピークの値に達し、その後は親核種の減少と共にごくゆっくりと減り続ける。この、ピークに達した以降においては、単位時間に新たに生まれる特定の中間娘核種の数は、それが崩壊する数と等しく、つり合っている。この状態では全ての中間娘核種の個々の放射壊変は親核種の放射壊変と同じ頻度で起こっている。このような状態を放射平衡に達した状態と呼び、天然のウラン鉱石などがこの状態にある。

以下に、ウランを主成分とする物質を4つのカテゴリーに分類し、この業界で流通しているそれらの定義と放射能強度について整理し、まとめとする。

天然ウラン:
天然に存在するウランの意味だが、ウランだけでなく、ウラン起源の種々の中間娘核種を含んだ総体の意味に用いられる。ウランは、ウラン238が99.2745%、ウラン235が0.72%、残りの0.0055%がウラン234からなるが、ウラン234はウラン238系列の中間娘核種で、独立したものではない。天然に長期間放置された結果、全ての中間娘核種が放射平衡に達し、親核種と同じ頻度で放射壊変を起こす永続平衡の状態となっている。その結果、放射能強度をベクレル(Bq)で表せば、ウラン系列についてはウラン238単独の放射能の14倍となり、アクチニウム系列はウラン235単独の放射能の11倍となる。

天然比ウラン:
ウラン鉱石からウランだけを化学的に精製したもので、その同位体比は天然ウランに等しい。精製後数ヶ月を経つと、ウラン系列の中間娘核種であるトリウム234、プロトアクチニウム234、ウラン234、およびアクチニウム系列(ウラン235起源)のトリウム231が放射平衡に達するので、実際上これらの放射性元素を含んでいる。その結果、ウラン系列についてはウラン238単独の放射能の4倍となり、アクチニウム系列はウラン235単独の放射能の2倍となる。

濃縮ウラン:
ここでは通常の原発の燃料として一般的に用いられるウラン235が3%、ウラン238が97%程度のものを指す。主成分は依然としてウラン238であることに注意。これも、天然比ウランと同じくウラン234の他、ウラン以外の3種類の中間娘核種を含んでいる。放射能強度は、各系列について天然比ウランと同様の倍率を考慮する。

劣化ウラン:
濃縮ウランを精製した残りカスとして排出される、いわば産業廃棄物である。ウラン235が0.3%程度、ウラン238が99.7%程度となっており、天然比ウランと同じくウラン234の他、ウラン以外の3種類の中間娘核種を含んでいる。放射能強度は、各系列について天然比ウランと同様の倍率を考慮する。

以上を基礎に、壊変定数から計算されるそれぞれの放射能強度は、天然比ウランの放射能を1とした場合に、天然ウランが3.55、濃縮ウランが1.05、劣化ウランが0.99、となる。すなわち、表題に示したとおりである。原子力基本法では濃縮ウランも劣化ウランもともに「核燃料物質」と定義され、その取り扱いは厳しく制限されている。

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「住民の上にばら撒かれる化学物質については推定有罪の原則が適用されるべきで、
この場合、安全であると主張する側にこそ、それを証明する義務がある。」
まったくその通りなのに、こうした義務を果たさない行為に対して、
どうして人類は、これはど無神経でいられるのでしょうか?

2009/8/28(金) 午前 9:53 イソップ 返信する

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4月10日午前8:01に「原子力用語 と」と題する記事のトラックバックをいただきましたが、引用記事を羅列しただけのページへ誘い、中国や韓国への偏見を助長する主張を広めようとの意図が読み取れましたので、削除することにしました。

2011/4/10(日) 午前 10:01 [ さつき ] 返信する

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