さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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差別のアポトーシスへ

 最近、日本製性暴力ゲーム、いわゆるレイプレイゲーム(陵辱ゲーム)の法規制をめぐる議論が活発になされている。備忘録として akiraさんの「akira’s room」 から下記の記事を貼っておく。

http://blogs.dion.ne.jp/akiras_room/archives/8470094.html
http://blogs.dion.ne.jp/akiras_room/archives/8503683.html

 上記の記事中でリンクされているサイトには重要な論考をおさめたものが多い。
 また、tikani_nemuru_Mさんによる下記の記事へ至る一連の議論も必読。

http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20090629/1246211686

 さらにまた、碧猫さんによる最新の記事(下記)へ至る一連の論考も

http://azuryblue.blog72.fc2.com/blog-entry-692.html

 他にも重要な記事はいっぱいあってキリがないが割愛せざるを得ない。

 私は、あらゆる表現は個別・具体的な被害を生じるものでない限り法で規制すべきではないと思う。どんなに下劣なものであっても、文学上の表現は法で規制されるべきでないと思うし、これと同様に考えたい。刑法230条に名誉毀損罪が定められているが、これは親告罪であって、被害の具体的な訴えがないかぎり、たとえ特定の個人を冒涜する表現であっても事前検閲は認められていない。

 このことは、特定の集団、例えば性別だとか、人種だとか、特定の「病気持ち」だとかを冒涜するような表現行為についても同様で、 個別・具体的な被害の訴えをもとに 最終的には裁判によって判断されるというのが今の法体系であり、それ自体は合理的なものだと思う。ただし、これによって救済されない被害は無視できない程多く、だからこそ問題となっている。

 今話題になっている法規制の強化は、事前検閲にかかわる問題である。 表現に対する事前検閲の制度は言論統制へ道を開くもので、民主主義の基盤である自由な言論を死に追いやるような、取り返しのつかない事態を招きかねない。

 これまで、以上のことを前提として、ではどうすれば良いかということが様々な視点から議論されてきた。具体的には、例えば業界団体の自主規制や、レイヤリング(希望者だけがアクセスできるよう流通の仕分けをすること)で問題を回避できるとする考えもあるだろう。実際、この問題の発端となったゲームについては、業界の自主規制により製造・販売の中止が決定された。

 かなり乱暴なまとめだが、 議論はさらに先へ行って、私などは置いてけぼりをくらった感がある。以下には、私が入り口の部分で引っ掛かっている点について整理しておきたい。

 私の問題意識は、性的虐待を受け、二次被害を経験した女性にとっては、レイプレイゲームがこの社会に存在しているということだけで、あるいは、そうしたものに商売が成り立つ程の需要があるという事実だけで、恐怖心や堪え難い苦痛を呼び覚し、精神的変調を来すといった「社会的不適応」に繋がる具体的な被害が生じていると推定されることにある。

 また彼女らは、そのことで被害の声をあげ、告訴を検討するなどといったことは、世間から「わがままな訴え」とみなされて聞き入れてもらえる筈がないと諦めているだけでなく、さらなる三次被害への恐怖からも、ハードルが高すぎてとてもできずに泣き寝入りしていると推定されることにある。

 そうした隠れた被害者は少なく見積もっても、この日本で数十万人は下らないと推定され、さらに、隠れた被害者の遍在故、そうした恐怖心がひろく女性達の間に伝播し、男からみれば無用とも思われるような過剰防衛や自粛がこの社会に広く蔓延することになったと推定される。

 そんな推定ばかりを論拠にしても無意味だと言う方もいるだろう。しかし、大変申し訳ないが、それは考え過ぎだと言うような者を相手に議論するつもりはない。

 私は、日本ほどポルノが公的な場に氾濫している国を知らない。そのことは、そうしたことにかかわる日本独特の歴史や文化とも無縁ではないと思う。日本における女性差別・虐待の歴史で特筆されるのは、おそらく世界でも類を見ない大規模な公設売春街「吉原遊廓」の存在であろう。

 Wikipediaなどによると、そもそもの発端は、徳川幕府の成立によって、その統治機構の拠点を辺境の地であった江戸に急遽大規模造営する必要が生じ、武士だけでなく、土木工事のための莫大な数の若い男たちが江戸にかき集められたことにある。その結果、世界一の100万都市へと成長した江戸中期においてさえ、3分の2が男性という不自然な人口構成となり、そうしたアンバランスが200年もの間続いた。結果、最初は民間の売春宿がはやり、治安のために最終的には公設として管理せざるを得なかったとのこと。最盛期には数千人の遊女がいたらしい。

 そのことは、江戸市民全体の54.5%、「下層町民」の95%が梅毒に冒されるという「惨事」をも招いた。江戸末期においては、結核、眼病とともに梅毒もまた国民病として日本中へ広まっていったのだ(文献1)。

  なるほど遊女の中でも人気の花魁(おいらん)は、いわばアイドルやスーパースターであった。 文化相対主義の立場に立てば、独特ではあるけれども恥ずべきものではないという主張も成り立つ。しかし、売春婦がアイドルとなる社会はやはり歪んでいる。ほとんど大部分の遊女は、貧しい農村から売られてきたのである。男の欲望を満足させるために女性の性を商品として扱う発想が基層としてあるのだ。

 そして、国家が売春を公認する「独特の文化」は、二十世紀半ばを過ぎた1957年(昭和32年)に売春防止法が施行されるまで続いた。しかし、そこで途絶えた筈はない。あらゆるものを商品と化してしまう資本主義が、それを引き受けたからだ。「おやぢ」共よ、若かりし頃の「不都合な真実」を思い起こしたまえ。どんな場所に通っていたか。 女性同伴のコンパの席でどんな「春歌」を歌っていたか。

 私は学生の頃、とある歓楽街のトルコ風呂、今で言うソープランドを一手に引き受けて「ソープ嬢」の控え室へ夜食の出前を持って行くアルバイトをやっていて、彼女らと日常的な付き合いがあった。断言するが、客として行ったことは一度もない。しかし、どういう客が訪れていたかは良く知っている。そこでしばしば売春が行われていた事は公然の秘密であった。

 性犯罪の歴史的変遷はどうだろう。 統計データの一例として、「少年犯罪データベース」
http://kangaeru.s59.xrea.com/
から、「少年によるレイプ統計」を見てみよう。
http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Rape.htm

 上記によると、未成年者の強姦犯検挙人数は、奇しくも、売春防止法施行の翌年、昭和33年の、少年人口(10〜19歳)10万人あたり24.28人をピークに昭和40年代以降激減し、最近はピーク時の25分の1の、同 0.91人にまで減っている。この傾向は未成年者に限らず性犯罪全般に共通しており(注1)、他の犯罪がバブル崩壊後に一旦顕著に増加したことと異なっている。いずれにしても、あの『東京タワー』が描く「古き良き昭和30年代」は全くの幻想であって、実は犯罪史の上では近・現代の日本で最悪の暗黒時代だったということだ。セクハラもDV も、その概念自体が存在しなかった時代である。

 このことには多様な意味が隠されていると思うのだが、先ずは、売春の法規制強化によって不満の鬱積した男どもが粗暴な性犯罪に走ったということがあったとしても、例えば、教育・啓蒙の効果の方が圧倒的に勝って、社会の成熟とともに、そうした粗暴な性犯罪は、ある意味自然に減少していったということだろう。

 もちろん社会は自然に成熟するものではない。「男女同権」から「男女平等」へ、ウーマンリブ、フェミニズム、ジェンダー論の流れの中でなされた教育・啓蒙の諸活動が何より功を奏した結果であると思う。その証拠に、私の後輩達、さらには若い学生達には、我々の世代よりはるかに男女平等意識が根付いている。同僚が男子学生に、「先生それは女性へのセクハラですよ」と、そっと諭される場面に遭遇したことも一度や二度ではない。若者の結婚観もまた、古い「家」意識から抜け出ている。そうした女性差別に抗する活動に携わってきた者は、それらのことを大きな成果と誇って良いと思う。

 さて、私の問題意識は、レイプレイゲームに需要があるというこの社会の情況そのものに絶望を感じ、個別・具体的にも「社会的不適応」の精神的被害を被っているのに声をあげられずにいる女性達が多数存在していることだと書いた。この情況は、業界の自主規制やレイヤリングで、ましてや法規制で解決できる訳がないではないか。

 差別的欲望が渦巻いていること自体を法で規制することなど、それが意識上のことである限り、どんな形であれ、絶対にできる訳がない。規制を強化して、つまり臭い物に蓋をして安心することにより、却って事態を悪化させるだろう。過激なレイプレイゲームに限定してその所持を禁じるといったことも、その本来の効果より、恣意的な運用がなされる事の危険性の方が高い。ただし、「児童ポルノ禁止」は、児童の人権保護の観点からのもので、ここで議論している問題とは別。

 結局、我々に残された唯一の道は、教育や啓蒙によって、差別意識のアポトーシスを促すことだけではないか。女性差別が、実は男にとっても生き難い社会を作り出していること、女性を差別するということは自らの存在を否定するに等しい(人間原理に反する)発想であること、等々。

 誰であっても、個人的に楽しむ限りでは、どんな下劣なものでもそれを享受する権利がある。私は、その権利を奪おうとは思わない。おまえはウンコだと言い続けるだけだ。

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文献1:氏家幹人著『江戸の病』(講談社2009年4月)、本書によると、かの杉田玄白は、毎年千人以上の患者の治療に当たったが、その内七、八百人は梅毒患者であったと書いているそうだ。

注1:これは犯罪の発生件数ではなく、あくまで検挙人数であることに注意を要するが、暗数の多さでは昔も引けを取らなかったと考えられる。なお、強制猥褻を加えた合計では昭和40年がピークとなる。法務省の『犯罪白書』は下記。
http://www.moj.go.jp/HOUSO/hakusho2.html

閉じる コメント(6)

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だんだん腹が立ってきて、最後がグダグダになっているので、補足しておきます。

ガリレオが「それでも地球は回っている」と言ったように、人の頭の中を「規制」することは不可能です。国旗を愛せよと強制されて、それでは愛しましょうと言うバカがいないのと同様です。権力の力を借りた規制や強制の結果起こることは、地下活動です。それは必ずや後々表に現れてきます。いたちごっこ、モグラたたきに過ぎません。京都教育大で起こった性的暴行事件やその後の二次加害なども、それが頭をもたげたもので、地下には無数のモグラが棲んでいます。今も悲惨な性犯罪は後を絶たない。しかし、性犯罪の歴史を丁寧に辿れば、そうしたモグラは確実に減っていると確信できます。「古き良き時代」の幻想に浸る「おやぢ」達は忘れてしまっているかもしれないが、その「古き良き時代」が女性達にとってどれほど悲惨な時代であったか。昭和50年代でさえ、そうであったことを、私は忘れません。それが、ここまで改善されたのは、やはり、女性達が勇気を持って声をあげたことによるでしょう。即効性を期待して処方すれば、副作用の方が大きい。そういうことではないでしょうか。

2009/7/1(水) 午後 0:10 [ さつき ]

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さつきさん、akiraさんへは某所で、さつきさんがakiraさんのエントリを紹介しているよと伝えておきました。
だれも、法的規制により私たち自身を縛る悪しき状況を求めてはいない。世間様が変化していくための積み重ねと、粘り腰を大事にしていきたいです。

2009/7/2(木) 午前 1:25 [ nagonagu ]

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>nagonagu さん
いろいろと、ありがとうございます。
nagonaguさんの記事も参考にさせていただきました。
前回の記事で自分はフェミニストではないと書いたのは、男としておこがましいからですが、最近の「世間様」の逆行気味の空気に、ちょっと取り乱しました。

2009/7/2(木) 午前 1:54 [ さつき ]

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いしけりさん(isikeriasobiさん=barcarolaさん)による下記の記事も、弁護士らしい重要な指摘に満ちています。
http://d.hatena.ne.jp/barcarola/20090612/1244778393
http://d.hatena.ne.jp/barcarola/20090613/1244917026
残念ながら明日(7/4)にはブログを閉鎖されるそうですので、まだの方は早めにどうぞ。

>たんぽぽさん
トラックバックありがとうございます。

2009/7/3(金) 午前 0:15 [ さつき ]

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言及&リンクありがとうございました。
ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません。
なごなぐさんに教えていただいてすぐにコメントを書いたのですが、Yahoo!のパスワードを忘れてしまい投稿できませんでした(情けない)

レイプレイゲーム騒動が一段落して、児童ポルノ禁止法改正が話題になり、衆議院解散で廃案となったいまが、冷静に議論するチャンスなのだろうと思います。

子どもの人権を人質に強権的な法律を作ろうとしている輩がいます。諦めずに声を上げていきたいです。

2009/7/23(木) 午後 1:23 [ akira ]

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akiraさん、ようこそ。
いつも貴重な情報源として活用させていただき、こちらこそ、お礼を申し上げます。

例えば、いわゆる性犯罪被害の「暗数」がどれくらいになるものか想像もつきません。それでも、想像するしかない身としては、女性の言葉に耳を傾けるのが、まず第一に必要なことと考えています。
これからもよろしくお願いします。

2009/7/23(木) 午後 6:39 [ さつき ]

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