さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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宮沢賢治

宮沢賢治(備忘録)

卒業論文のテーマとして宮沢賢治をやりたいと指導教員に伝えたとしたら、まずは吉田司著『宮沢賢治殺人事件』を読んで目を覚ましなさいと諭されるのらしい。それまで賢治にぞっこんであった若い学生は、何ともなさけない賢治の実像を知って、確かに目を覚ますのかもしれない。

そして、やがて彼(女)は思う。それでもなお残る賢治作品の魅力は、いったいどこから来るのだろうか。もし宮沢賢治がこの世に生まれていなかったとしたら、ほかの誰かが、彼の代わりに、その穴を埋める作品群を世に出してくれただろうか。誰もいないとしたら、この世界に、どれほど大きなぽっかりとした穴が開くことになるのだろう、と。その、ぽっかりとした穴の大きさ・深さを想う時、彼(女)は、すがるものもない暗い穴のただ中で独りぼっちになった恐怖に心底怯える。そこから這い出そうとする格闘の中から、何がしかの新しい発見がもたらされると期待される。

賢治の不幸は、彼の存在そのものが、彼の作品たちと分かち難いものとして神格化されてしまったことにあるだろう。多くの場合、文学作品は、まずは作者の人格と切り離して批評の対象とされる。しかる後、その作品が生み出された背景のようなものが話題となるのはあり得べきことである。誰しも生身の人間であれば、神様のようにすきとおった存在である筈がない。それを神格化してしまった少なからぬ「戦犯」たちが居たということだが、そうしたことが伝染病のように蔓延したのには理由がありそうだ。誰でも知っているように、賢治には、文学者としてよりむしろ、思想家とみなされる素地があった。

井上ひさし氏も指摘したように、「雨ニモマケズ・・・」の一節は、膠着語としての日本語の特質を最大限活かすべく、「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と結んで、最後の最後に、主語(願っていた者が誰であるか)を明かしていて、そこに感動が生まれる。これが死の床で書き付けられたものであることは、理想と乖離した未熟な己にうなされつつ、なおその理想を求め続けようとの強い願望を顕しているだろう。「サムサノナツハ オロオロアルキ・・・」とあるが、『宮沢賢治殺人事件』を読めばわかるように、彼には、オロオロすることさへちゃんとできていなかった。そうした己の醜さを強く自覚していたからこそこれが書かれたのである。彼の宗教心からくる「懺悔」の文章とも読めるのではないか。

そうは言っても、彼は、人並み以下のだらしない人間であった訳ではない。ただ、その実像と比較して理想が高すぎただけなのだ。そして、その理想は彼の作品群の中に結実している。ほかの誰が、賢治のように高い理想を文学作品の中に埋め込むことができただろう。ちくま書房の『校本宮沢賢治全集』に示されている推敲の跡をみると、全ての作品に終わりの見えない修正が加え続けられていて、理想を結晶化させようとの強い執念が読み取れる。もし彼が長生きしていたなら、定稿として出版されている作品も、どのように書き換えられたものかわかったものではない。理想とはそういうものである筈だ。ほかの誰が、そのような執念で、文学と向き合っただろう。

そのような仕方で、ある種の理想(思想)を結晶化させて埋め込んだ賢治の作品には、他の何ものにも代え難い存在感がある。その代え難さこそが、神格化へと導く素地となったのではないのか。彼の理想は、『『注文の多い料理店』新刊案内』に、賢治自身によって書かれた「イーハトヴは一つの地名である・・・罪や、かなしみでさえそこでは聖(きよ)くきれいにかがやいている。」という一節に示されていよう。『なめとこ山の熊』など思い出されるが、若い文学者の卵たちに、ぜひ、その「代え難い存在感」の秘密を解き明かしてほしい。

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