|
4月7日夜に起こったM7.1の余震によって、福島第一原発1号機では原子炉の表面温度が一時的に40度近く上昇した。発表によると7日午後7時の時点では223.3度であったのが、地震30分後の午前0時頃260.7度へと上昇し、その後8日午後1時になって246.6度まで低下している。原子力安全・保安院は8日正午すぎの会見で「不連続的にピンと上がっているので地震の影響ではないかと推察されるが、今後の推移をみたい」と述べた。
密閉された容器内にある放射性物質の放射壊変だけによる放出エネルギーが急上昇することはあり得ない。炉内で何かの<反応>がおこったということだ。考えられるのは、水素爆発が起こったか、一時的な再臨界がおこったかのどちらかであろう。現在危惧されているのは、格納容器内の水素爆発で、これを未然に防止するために窒素ガスの注入作業が行われているのだが、圧力容器内で水素爆発がおきる可能性があるだろうか。
水素爆発がおこるには水素と酸素が必要である。水素が発生する第一の要因は、燃料棒被服管の材質であるジルコニウムが高温にさらされて水と反応し、酸化するため、第二の要因は、放射線で水が解離されるためと説明されている。第一の要因によって全ての被服管が酸化され尽くした後では第二の要因によって発生した酸素が残留する可能性がある。このことによって発生する水素と酸素が水素爆発をおこすほどの量に達するとすれば通常運転中でも問題になる筈であるが、どうなのだろう。いずれにしても、圧力容器を破損しない程度の水素爆発で、原子炉表面の温度が40度も上昇することがありえるのか、地震の揺れをきっかけに着火することがあるのか(ありそうにないが)、きちんと検証する必要があるのではないか。
一方、再臨界の可能性があるとすれば、こちらも深刻である。3月30日の記事に書いたように、中部アフリカのガボン共和国のオクロなどでは、約20億年前の堆積岩中で臨界に達した天然原子炉が知られている。現在の天然ウランにはウラン235が0.72%しか含まれていないが、ウラン238の半減期(44.68億年)に比べてウラン235の半減期(7.038億年)が短いために、過去に遡るほどウラン235の存在比が高くなる。20億年前の時点を逆算すると、ウラン235の存在比は3.672%(注1)と、原発の燃料である低濃縮ウランと同程度になる。
オクロの天然原子炉は砂岩中で閃ウラン鉱(UO2)などのウラン鉱物が濃集した平均数10 cmほどの層からなる(注2)。そこでは間隙水が中性子の減速剤となって臨界条件が達成され、誘起核分裂の連鎖反応がおこったことがわかっている。核分裂反応が継続すると間隙水は沸騰して「原子炉」の外へ排出され、連鎖反応は停止する。やがて周囲の温度が低下して水が染みこんでくると再び臨界に達して核分裂反応がおこる。詳しい研究によって、約30分の臨界状態のあと2時間半休止するというサイクルが60万年間にわたって繰り返されたことがわかっている。概要はウィキペディアの「オクロの天然原子炉」を参照されたい。
オクロの例に照らして考えると、燃料棒の被服管が著しく劣化した状態で、地震の揺れによって燃料ペレットが崩れ落ちて、原子炉圧力容器の底に堆積した場合、一時的に再臨界に達するということもあり得るのではないかと思う。このことを想定するか否かで、今後の復旧作業の方針も変わってくる筈である。水素爆発同様、きちんとした検証が必要だと思う。
本日のサンデーモーニングでは、現在の放射能垂れ流し状態が深刻な国際問題となっている以上、状況を正しく把握して世界に向けて発信する必要があるとの意見で一致していた。その主体は、当事者である事故を起こした東電や、その遠因に繋がる国内機関ではダメで、権威ある国際機関がトップに立つ必要があるとの意見で、納得。もはやメンツに拘っている場合ではない。
----------------------------------------
注1)いろいろな数値が出回っているが、酸化物としての全質量中のウラン235の濃度として示された値として表記されているものもあるので、注意が必要。同位体比そのものは厳密に計算することができる。
注2)20億年前頃になると地球表層で光合成による遊離酸素の濃度が増加するため、酸化的条件で溶解度の高いウラン鉱物が水に溶けるようになる。その水が有機物に富む還元的な堆積岩中にしみ込むことでウラン鉱物を析出してウラン鉱床が形成される。
|
全体表示
[ リスト ]




