さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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 4月22日に広島・山口県境付近にある三井化学岩国大竹工場が爆発炎上するということがあり、後に、敷地内に多量の劣化ウランが保管されていたことが発覚して大きな心配が広がった(注1)。類似の事は昨年もあった。震災当日の2011年3月11日にコスモ石油千葉製油所のLPGタンク付近で火災が発生、隣接するチッソ石油化学五井製造所にも延焼して、劣化ウランの保管施設の一部が焼けるということがあって、そのことが、後の6月30日に開かれた千葉県議会総務防災常任委員会で明るみになって問題視された。

 これらのことを採り上げたいくつかの報道やブログ記事などに、共通して見過ごせない誤解が広まっているので、指摘しておきたい。それは、劣化ウランはα線しか出さないので、一般の放射線測定器では検出できないというもの。そのことが不安を増幅させているように見える。しかし、これは事実ではない。

 確かに劣化ウランの主成分はウラン238であり、これはα崩壊するが、その娘核種、孫核種はβ崩壊する。

ウランー238(α:44.7億年、4.198 MeV)
→ トリウムー234(β:24.1日、0.273 MeV) 
→ プロトアクチニウムー234(β:1.17分、2.27 MeV(99.84%)/6.7時間、0.474 MeV(0.16%))
→ ウランー234(α:24万6千年、4.775 MeV)
(以下、省略)

 劣化ウランのほとんどは、生成後、娘核種トリウムー234の半減期(24.1日)に比べて十分長い時間を経過しているだろうから、トリウム−234とプロトアクチニウムー234が永続平衡に達していると考えて良い。このとき、娘も孫も親のウランー238と同じ頻度で放射壊変している。計算すると、1グラムの劣化ウランは毎秒およそ12500個のα線と25000個のβ線を放射することがわかる(注2)。

 α線やβ線のような粒子線は、飛程が短いために自己遮蔽効果が無視できないが、微細な粉末となって飛散している場合には効率良く放出される。放射線検出器の窓の面積の範囲内に劣化ウランが1ミリグラムでもあれば、毎秒平均25個の割合で生み出されるβ線の5分の1が検出にかかると仮定しても、毎分300カウントにはなる。環境放射能としては十分大きな異常値である。この3分の1より少ないレベルだと、天然の花崗岩からの放射線量と同程度になってしまうから、恐れる必要はない。

 くりかえすと、危険な量の劣化ウランがあれば、一般的なガイガーカウンターやシンチレーションカウンターで異常な放射線量として容易に検出できるし、異常値として検出できないレベルであれば、もともと天然に存在したウランとその系列核種だけであるから、心配には及ばないということである。

 さて、劣化ウランがα線しか出さないという誤解は、例えば「劣化ウラン弾 被曝深刻」と題する中国新聞社の連載記事とその関連書籍などが発端の一つとなって広まったようである。

 上記ウェブページに次の記述がある。

 ウラン鉱山から採掘した天然ウランは、濃縮過程の中で、まず核兵器や原子力発電所用の燃料となるウラン235(U235)と、 低レベル放射性廃棄物となるウラン238(U238)に分離される。高レベル放射性同位元素のU235は、全体の一%にも満た ず、残りはほとんどがU238である。

 大量に生み出される強い毒性を持つこの金属物質を「劣化ウラン」と呼ぶ。劣化ウランは、主要にはアルファ線を放出し、半減期 は地球の歴史にも匹敵する四十五億年である。

 これは二重・三重にデタラメである。

1)天然ウランを濃縮する過程で生み出されたウラン238(劣化ウラン)は、低レベル放射性廃棄物ではない。国は、劣化ウランは、あくまで核燃料物質であって廃棄物ではないという立場。法律が改められない限り、劣化ウランは廃棄物として処分することができず、これに手を出した者は、未来永劫保管し続けなければならない。

2)ウラン235は高レベル放射性同位元素ではない。そもそも「高レベル放射性同位元素」というカテゴリーは存在しない。「高レベル放射性廃棄物」というカテゴリーは存在するが、ウラン235とは比較にならないくらいの強い放射能を有する。ちなみに、過去のエントリーに書いたように、劣化ウランと原発用濃縮ウランの放射能は大して違わない

3)「劣化ウランは、主要にはアルファ線を放出」するものではなく、むしろβ線の方が多い。既に述べた通りである。

 それより、三井化学岩国大竹工場の爆発炎上事故に関連して心配なのは、中国新聞の関連記事にある次のくだり。

22日の事故で倉庫の窓ガラスが割れたが、ドラム缶に損傷はなかった。同社によると、事故から約7時間後の午前9時から9時半にかけて調べた倉庫と周辺の放射線量は、毎時0・44〜9・31マイクロシーベルト。3月28日の毎時0・22〜9・31マイクロシーベルトとほとんど変わっていないという。

 劣化ウランは基本的にはα線とβ線と、極低エネルギーのγ線だけを放出するので、ドラム缶に密封してあれば、周囲の放射線量が目立って上昇することはない。岩国周辺は花崗岩地帯であるためにその自然放射線量は日本では最も高い0.127 uGy/h以上の地域にあたるが、そうだとしても、事故前の0.22〜9.31 uSv/hという値からして明らかに高すぎる。つまり、劣化ウランがいくらか漏れている可能性がある。毎度のことながら中国新聞はつっこみ不足である。
中国新聞、ファイト〜ッ!

(全原発停止記念日に記す)

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注1)文科省のウェブサイトにあるPDFファイル「平成20年度放射性廃棄物管理状況 (核燃料使用施設:政令第41条非該当事業所)」によると、三井化学㈱岩国大竹工場に保管されていた劣化ウランは200リットル入ケミカルドラム缶にして3,379 本 とのこと。

「政令第41条」に該当するのは、文科省の次のページに説明がある通り、主に使用済み燃料とその再処理燃料のことで、その放射能は、劣化ウランよりかなり高い。
減損ウランはこのカテゴリーに含まれるが劣化ウランはこれには含まれず、規制がルーズである。

注2)簡単のために、生成直後の劣化ウランがウランー238だけからできているとすると、その放射能は1グラムあたり12446ベクレルである。つまり、1秒間に12446個のα線を放出してトリウムー234に変わる。このトリウム−234は半減期24.1日で、β線を放出しながらプロトアクチニウムー234に変わる。

 こうしてトリウムー234は徐々に増えていくが、その半減期はウランー238より短いので、その半減期のおよそ7倍(200日くらい)の時間が経過すると、新たに生まれる量と崩壊する量がつりあった状態になる。この状態を放射平衡と呼ぶ。その中でもこの例のように親核種の半減期が十分に長く、娘核種の半減期がそれに比べて圧倒的に短い場合、娘核種が崩壊する頻度は親核種が崩壊する頻度と等しくなっていて永続平衡と呼ばれる。このことは、次のプロトアクチニウム−234にも成り立つ。結局、ウランー235やウラン234も若干含むような一般的な劣化ウラン1グラムは、生成後200日以上経過したら、1秒間におよそ12500個のα線と25000個のβ線を放出することになる。

 次のウランー234は半減期がかなり長いので、ここがバリアーとなって、これ以降の核種は無視して良いほどにしか増えず、何万年たってもほぼ同じ状態が続く。

 詳細は放射能の基礎知識など参照のこと。


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