さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

社会のこと

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 8月16日に「水銀に関する水俣条約」が発効したことを受けての熊本日日新聞の同日付社説「水俣条約発効 まず日本政府が被害直視を に、この条約の発効を手放しには喜べない現実が書かれている。以下に一部を引用する。

 ただ、水俣病患者や支援者らの中には、発効を歓迎する一方で「水俣病が既に解決済みの問題として世界に誤解されてしまうのではないか」という懸念が強くあることも忘れてはならない。いまだに多くの人が健康被害や差別に苦しみ、訴訟も続いている現実があるからだ。

 患者らが強く求めている不知火海沿岸住民の健康調査も実施されておらず、被害の全容は解明されていない。水銀を含む未処理の汚泥が封じ込められた水俣湾の埋め立て地の問題もある。

 公式確認から61年が過ぎても多くの問題がなお山積みの状態だ。そうした現状から目を背けたまま条約への対応を進めてきた日本政府に対し、患者らはもどかしさと割り切れなさを感じている。

 7月1日、水俣市で一足早く開かれた発効記念行事。国連環境計画や環境省の関係者が顔をそろえる中、水俣病語り部の会の緒方正実会長は「水俣病は解決していない。公害が起きれば、人々は長い間向き合わなければならない」と訴えた。一般参加者として式典を見守った水俣病被害者互助会の佐藤英樹会長も「いまだに苦しんでいる被害者がいることを多くの人に知ってもらいたい」と注文した。いずれも、条約発効が水俣病問題の幕引きに利用されることを警戒してのことだ。


 これはもっともな主張だと思う。国連環境計画のウェブサイトに条約の英文  があり、外務省のサイトにはその邦訳  がある。その「第一条 目的」には「The objective of this Convention is to protect the human health and the environment from anthropogenic emissions and releases of mercury and mercury compounds.:この条約は、水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護することを目的とする。」と記されている。水俣病のように、既に起こってしまった被害の救済は目的外なのだ。実際、条文を読んでいくと、主体は国際的に水銀を管理する方策についてのものであり、起こってしまった被害の救済に関わる項目はない。やや関係するかに思われる「第十六条 健康に関する側面」、「第十八条 公衆のための情報、啓発及び教育」も、主に予防的・啓蒙的な措置にかかわる内容である。

 Wikipediaの「水銀に関する水俣条約」 には、この条約の発効に日本国政府が主導的役割を果たしたこと、正式名称を「水銀に関する水俣条約」とすることを日本政府の代表が提案したことが書かれている。名称に「水俣」を入れながら、当の水俣で現に続いており、世界の各地にも発生している被害の救済に繋がるような条文が一つもないのはなぜか。

 熊日の社説が述べるように、当の水俣病の患者達は今も健康被害と差別に苦しんでおり、水俣とその周辺地域には何らの救済措置も受けないまま長い間苦しんできた多数の未認定患者がおり、地裁レベルでの訴訟も続いている(注1) 。患者とその支援者らが求めている不知火海沿岸住民の健康調査は、日本国憲法第二十五条が保障する、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づくささやかな希望である。国はそれを一顧だにして来なかった。日本国政府は、水俣病の発生当初から一貫して企業の利益を代弁してきた。幾らかの譲歩は、裁判の結果を受けて止む無くなされたものか、あるいは、原因企業チッソの主張に何らの正当性もないことが白日の元に晒され、頑なであり続ければ企業の利益そのものが損なわれるとの功利的判断に基づくものであったろう。

 水俣病の被害が世界史的なレベルで拡大してしまった原因について、日本国政府として全く総括を試みなかった訳ではない。例えば、環境省の水俣条約の特設サイト  の中に「水俣病の教訓と日本の水銀対策」と題する冊子が置かれていて、その「第1部 水俣病の経験と教訓」には水俣病史の概略と簡単な「反省の弁」が述べられている。しかし、これを読めばわかるように、課題は書かれても具体的な「教訓」に相当することは全く書かれていない(注2)。

 熊日の社説の末尾にあるように、まっとうな総括があれば、そこで得られる教訓こそ、世界の水銀被害防止にも役立つはずだ。この条約の成立と発効に主導的役割を果たしてきた日本国政府は、まるで患者らが一人残らず死んでしまうのを待っているかのようである。このままでは、水俣条約が発効したことで一区切りとされ、水俣病そのものが終わったものと誤解されかねない。

―――――――――――――――――――
注1)水俣病に関わる裁判の歴史と現状については「ノーモア・ミナマタ第2次訴訟弁護団」  のウェブサイトの「裁判の歴史」のページによくまとめられている。

注2)環境省作成の「水俣病の教訓と日本の水銀対策」の「第1部 水俣病の経験と教訓」に「水俣病被害の拡大が問いかけるもの」と題して次の記述がある。

水俣病の拡大を防止できなかった背景には、チッソ水俣工場が雇用や税収などの面で地元経済に大きな影響を与えていたことのみならず、日本の高度経済成長への影響に対する懸念が働いていたと考えられます。
また、熊本、鹿児島にとどまらず、さらに後年、新潟で第二の水俣病が発生したことで、原因究明と初期対応の大切さが改めて問われることとなりました。
水俣病を発生させた企業に長期間にわたって適切な対応をなすことができず、被害の拡大を防止できなかったという経験は、時代的・社会的な制約を踏まえるにしてもなお、初期対応の重要性や、科学的不確実性のある問題に対して予防的な取組方法の考え方に基づく対策も含めどのように対応するべきかなど、現在に通じる課題を私たちに投げかけています。

 要するに、総括をなし得ていないのであり、具体的な教訓は何も引き出されていないことがわかる。

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