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先日、偶然にテレビで見かけた熊本県立宇土高校・科学部物理班による「副実像」発見の特集は面白かった。
これは、現象を注意深く観察し、仮説を立て、それに基づく実験・観察を繰り返し、最後に数式で基礎付けるという、科学研究のお手本になる実例だ。テレビでは大泉洋さんがレポーターを務めていて、これまで心霊写真とされていたものの多くが副実像で説明できることを、実験を交えながら面白く伝えていた。一方、この件についてウェブ上で調べてみて、従来知られているレンズゴーストとの関係について丁寧に解説した記事が見当たらなかったのはやや気になった。
レンズゴーストは、いろいろな成因のレンズフレアのうち実在する物体が予期せぬ位置に写り込んだもので、膜面に写ったのである以上、実像であり、レンズの内面での反射によるもの、すなわち副実像と同じものである。そのことは昔から良く知られていて、これをなくす為に反射を防ぐコーティング技術が進歩してきたと言って良い。また、現在のカメラのレンズは、例えば非球面レンズを含む6群8枚構成など極めて複雑になっているので、レンズの設計ではゴーストの再現にそれなりのシミュレーション技術を用いた解析がなされている。
ただし、カメラのレンズの設計ではフィルムや撮像センサーの面上にないピンボケの副実像であっても、それがどのように写り込むかが問題になるのであって、それがどの位置に結像しているのかは問題にならない。宇土高校物理班の功績は、最も単純なレンズ系で、本来の実像の現れる位置とはかけ離れた位置にも別の実像が結ばれることを突き止め、これに「副実像」の名称を与え、その結像位置を数式化したことにある。ちなみに虹には、水滴の内部での反射が1回の主虹と内部反射が2回の副虹があるが、どちらも虚像のようなものである。
さて、写真に写るゴーストの多くはピンボケの副実像であると言って良いものだが、現在のカメラの複雑化したレンズ構成だと、無数の内部反射の中には本来の実像と同じ位置に副実像を結ぶものがあることを経験上知った。それに気づくまでに3時間ほど頭を悩ませ、我ながら情けない思いをしたのではあるが、以下に備忘録として残しておきたい。
前回の記事で紹介した天の川の写真を撮ったのと同じ日の写真を整理しているとき、木星の写った写真の左上に緑色の変わった天体らしきものを見つけた。
下に示すように、拡大すると周囲に彗星のコマのようなものが写り込んでいる。その右上の赤い点はおそらくノイズだと思う。
もしかしたらと思って、その1分ほど前に撮った別のショットで確認すると、こちらは全体にピンボケだったが、時角にして3分ほど西側に写っている。つまり、1分間に東へ3分角ほど移動している。
天文ソフトで確認しても、そのような天体は出てこない。下図はStellariumで再現した同日同時刻のほぼ同じ画角のショット。
人工衛星にしては移動速度が遅いし、コマのようなものは何なんだ。もしかしたら新彗星なのか? しかし、とても奇妙だ。恒星が点像になっているのは追尾しているからで、これだけ移動速度が早いのに30秒露出で点像として写っているのはとても変だ。
という訳で、他に写っていないか確認したら、1時間40分後くらいに火星を撮った一枚に、もっとくっきりと写っていた。(下の写真の中央やや上寄り)
東向きに移動していたので、1時間40分でここまで来たということか? まじまじと見つめているうちに、あ”あ”〜っと、気が付いた。どのショットでも、この緑色の像は、木星や火星と画面中央に対して対照的な位置にあるではないか。レンズゴーストだ。しかも点像として結像している。どうしてもっと早く気づかなかったのか。
この例のように、写真に強烈に明るい物体が写っていたらそのゴースト(副実像)が現れることがあるので、特に科学写真では注意しましょうね、チャン・チャン。
追記:今気づいたのだが、2枚目と3枚目の拡大写真の左上部分に、星図には記載のない7等くらいの明るさの青白い「星像」が写っていて、これもやはり東へ移動している。その「移動」速度は上に述べたゴーストより遅く、コーティング面での反射とは思えない色をしている。実はこれらの写真の他の部分には人工衛星らしきものが写り込んでいて、露出時間内で点滅しながら細長い像になっている。上記の「星像」の移動速度からして、やはり細長い像になるべきであるが、そうなっていないので人工衛星ではないと思われる。現時点では真相はよくわからない。 |
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