さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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 昨年12月13日、広島高裁は、伊方原発から半径 160 km の範囲にある阿蘇火山がカルデラ噴火を起こすと設計対応不可能な火砕流が到達する可能性を否定できず、立地不適であるとして、伊方原発3号機の運転停止を命ずる仮処分決定を下していた。これに対して四国電力が、同年12月21日に広島高裁へ運転差し止めの執行停止を申し立てていた異議審で、本日(9月25日)、「破局的噴火によって生じるリスクは、その発生の可能性が相応の根拠をもって示されない限り、原子力発電所の安全確保の上で自然災害として想定しなくても安全性に欠けるところはないとするのが、少なくとも現時点における我が国の社会通念であると認める他ない」と述べ、「阿蘇において破局的噴火が本件発電所の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されているとは認められず」、従って伊方原発の立地が不適であるとは言えないとして運転差し止めを棄却する決定を下した。

 本稿は、高裁決定を受けての広島訴訟原告・弁護団の記者会見等に、広島高裁の昨年の野々上裁判長は正義の味方で、交代した三木裁判長は悪者とするような論調を見て強い違和感を覚え、急ぎまとめたものである。ここでは、そもそもの元凶は原子力規制委員会の、その存立理由をも揺るがす変質にあり、そこを本丸として糾さない限り本件の前進はないことを示そう。

 異議審決定の根拠として持ち出されたのが、本年3月7日に原子力規制庁より公表された「原子力発電所の火山影響評価ガイドにおける「設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価」に関する基本的な考え方について」と題する資料(以下、「3.7資料」(pdf: 321KB))である。昨年12月の仮処分決定は、規制庁の「火山影響評価ガイド」が立地適合の判断基準として「設計対応不可能な火山事象が、原子力発電所運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいか?」と記載していることを文言通りに適用したものであった。ところが、「3.7資料」は、これは「火山の現在の活動状況は巨大噴火が差し迫った状態にあるかどうか、及び運用期間中に巨大噴火が発生するという科学的に合理性のある具体的な根拠があるかどうかを確認する」という意味であるとした。

 立地適合の要件として書かれた「火山ガイド」の文言を、立地不適と断ずるために必要な高いハードルを要件とする文言に読替えよという訳である。このことは、規制庁が原発事業者ではなく原発に異を唱えようとする側を規制する機関であるという、その真の姿を恥ずかしげもなく晒すもので、ちゃぶ台返しの荒技とでも言うべきものである。阿蘇火山から160 km以内には伊方原発だけでなく、川内原発、玄海原発、そして計画中の上関原発も含まれるので、原発を重要なベースロード電源と位置付ける政府・経産省にとって、広島高裁の運転差し止めの原決定は、よほど耐えがたいものだったのだろう。

 「3.7資料」では、このような論理の破綻した読替えを求める理由として、巨大噴火は極めて低頻度の事象であり、その発生可能性が全くないとは言い切れないものの、「これを想定した法規制や防災対策が原子力安全規制以外の分野においては行われていない。したがって、巨大噴火によるリスクは、社会通念上容認される水準であると判断できる」としている。この考えは、川内原発運転差し止めの仮処分申し立てにおける即時抗告審の福岡高裁宮崎支部の決定文に遡ることができる。そこでは、1万年に1回程度の極めて低頻度のリスクについては、社会通念上無視し得るものとして建築基準法等も対応を求めていないものであり、「少なくとも原子力利用に関する現行法制度のもとにおいては、これを自然災害として想定すべきとの立法政策がとられていると解する根拠は見出し難い」と述べられている。そして、伊方3号機運転差し止めの申し立てを却下した広島地裁の決定もこれを踏襲した。

 これに対して昨年12月の広島高裁による運転差し止め決定では、このような社会通念を根拠とした原決定を批判し、このことには「多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門的知見に基づく総合的判断が必要とされ」、政策判断として原子力規制委員会に委ねられていることであり、「原決定判示のような限定解釈をして判断基準の枠組みを勝手に変更すること」は、「設置許可基準規則6条1項の趣旨に反し、許されない」とした。ところが、こともあろうに当の原子力規制委員会が、先に述べたちゃぶ台返しをやったものだから、異議審における広島高裁はこれに従わざるを得ず、冒頭に述べた決定となった訳である。

 ここで「従わざるを得ず」と書いたのは、異議審決定文が、「3.7資料」を引いた上で「現時点における我が国の社会通念であると認める他ない」としているからであるが、あるいは積極的に従ったのかもしれない。そうだとしたら、積極的に従うのに都合の良い口実を「3.7資料」の読み替えが与えたことになる。仮にこの「3.7資料」が昨年12月の広島高裁の原決定よりずっと前に公表されていたなら、野々上裁判長も、同じ理路に従って運転差し止めの申し立てを棄却していた筈である。規制庁にとっては、かつて福岡高裁宮崎支部の決定が持ち出した「社会通念」は、まことにもってありがたいアイデアであった訳で、そこにお墨付きを与えることで、この度の運転差し止めの棄却決定を「勝ち取った」のだと言えよう。

 しかしこの「社会通念」なるものは、一度起これば一国の存立さえ危うくする原発の過酷事故と建築基準法が規制対象とする建物や橋などの損壊を同列に扱うもので、東電原発事故を経験した今、到底受け入れられるものではない。少なくとも、原発の立地に低頻度の巨大噴火によるリスクは容認されるという社会通念が存在することは立証されてもいない。この発想はまた、国際原子力機関(IAEA)による規制目標の精神にも反するものである。

 IAEAは、既設炉の「早期大規模放出事故」を10万 炉年あたり1件以下に抑えることを目標としている。これは、世界中にある400余りの原子炉が一斉に稼働を続けても、グローバルな被害をもたらす過酷事故を250年に1回程度に抑える(400 炉 × 250 年 = 10万 炉年)ことで、現存する全ての原子炉が運用期間を終える数十年後までに過酷事故がほぼ起こらないようにして、次世代の安全な原子炉が開発されるのを待つ、との考えにもとづいている。この目標は、個々の原子炉が破局的事象に遭遇する確率を10万年に1回以下の頻度に抑えなければ達成できないもので、先に述べた「社会通念」を否定する発想である。

 IAEAのこの考え方は「火山ガイド」を定める過程で議論の上に採用され、結果的に立地の適合基準として巨大噴火によるリスクが十分小さいことを事業者側で立証する義務が「火山ガイド」に書き込まれたという経緯がある。さらに規制庁は、早期大規模放出事故の確率をIAEAの目標より10倍厳しい100万炉年あたり1件以下にすることを目標として掲げ、世界一厳しい規制基準であると誇らしげに宣伝している。しかし、「3.7資料」で、1万年に1回程度の巨大噴火のリスクはそれが差し迫っている明確な根拠がない限り無視して良いとしたのである以上、実は、世界一甘い規制基準であったと言う訳である。今後は絶対に、世界一厳しい規制基準などと言わしめてはならない。

 それにしても「3.7資料」のちゃぶ台返しは、原子力規制庁の存立理由を無に帰するほどのものであったのだから、広島高裁は、法律の親規定に遡って、このような変質を批判すべきであったとは思う。しかし、裁判所の審理においては、争点化されていないところへの言及を避けるのが決まりのようになっているので、それもまた無理な注文なのであろう。



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「今回の裁判長はひどい」と吹き上がっている人が多いので、そうじゃないことをわかってもらうために、文言をちょこちょこ書き換えています。

悪いのは規制委員会です。今回、野々上裁判長であっても同じ結論になっていた筈です。

みなさん、異議審の決定文をちゃんと読みましたか?

2018/9/26(水) 午後 4:15 [ さつき ] 返信する

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急ぎまとめたので、表現上の微修正を続けていましたが、このコメント投稿をもって定稿とします。

2018/9/27(木) 午前 8:23 [ さつき ] 返信する

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