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 牧野さんの1月3日のtweetにあるように、伊達市が前市長時代に発行していた「だて復興・再生ニュース」の第8号に、「宮崎・早野論文の原型みたいなものがある。」そこには、地上1m高の空間線量から予測される実効線量(予測値)とガラスバッジで実測された実効線量の地区毎の平均値、および両者の比が示されている。全体では実測値は予測値の36%となっているが、予測値は各地区の数値の単純平均とほぼ一致するものの実測値は合わない。実測値の地区毎の単純平均は1.091 mSvとなり、予測値の44%である。牧野さんも指摘するように、「おそらく、実測値は、各人のデータの単純平均をとったのであろう。その時に、意味がある比較をするなら予測値のほうも人口で重みつけて平均しなければいけない」。そうしないと、地区毎の人口次第で、この比が変わってしまうことになる。

 もう一点指摘すべきは、追加被ばく線量の予測値の算出で、地上1m高の空間線量の実測値から自然由来の放射線として 0.04 μSv/h 分を引いてあるのに、ガラスバッジの実測値からは0.54 mSv/y (= 0.062 μSv/h)相当を引いてある。両者の(見かけの)比を求めようとするときには、最初のステップとしては同じバックグラウンド値を引かなければおかしなことになるので、これは明らかな誤りである(注1)。仮にガラスバッジのバックグラウンドを 0.04 μSv/hとすると、実測値の地区毎の平均は予測値の平均の56.8%となる。

 さらにもう一点、空間線量を0.4 μSv/h以下、0.4〜0.7μSv/h、0.7 μSv/h以上の3つの領域に分けて上記予測値に対する実測値の割合を算出すると、それぞれの平均値は、58.6%、45.9%、39.3%と、高線量地域ほど明瞭に低くなる。だて復興・再生ニュース第8号のまとめは、平成24年7月〜平成25年7月(ガラスバッジは、平成24年7月〜平成25年6月)に測定されたデータが用いられている。この間、高線量のAエリアは平成25年7月に除染が完了し(だて復興・再生ニュース4号)、一方、低線量のCエリアは平成25年6月に除染が業者に発注されたばかりである(だて復興・再生ニュース3号)。

 おそらく、高線量区の住民ほど、除染された線量の低いところを注意深く選んで行動していることの現れであろう。日々の生活にそのような労苦を強いられている訳で、実効線量と空間線量の比(c)が小さいと喜んでばかりいるのは、そのような強いられた労苦に想像が及んでいない証拠ではないのか。いずれにしても、予測値に対する実測値の割合としては、現時点では、低線量地区の58.6%の方を参照すべきであろう。だて復興・再生ニュース(第8号)で示された36%という値は、幾重にも誤りを重ねた結果と言えよう(注2)。

 バックグラウンドについては、宮崎・早野第一論文でも同じ誤りがある。第一論文では次のように書かれている。

バックグラウンドがガラスバッジの計測値から差し引かれているため、私たちは、0.04 μSvh-1 を航空機による線量調査から得られた H*(10) から差し引く補償を行っている。この 0.04 という数値は日本政府が周辺線量を実効線量に関連づけるときに用いた式中の値である[15]。(黒川さん訳)

 (その2)で書いたように、ガラスバッジの計測値から差し引かれているバックグラウンドが 0.54 mSv/y (= 0.062 μSv/h)であることは、同じ論文の別のページに記載されているので、著者がその可笑しさに気づかなかった筈はないと思うのだが・・・、査読者も気づかなかったということか。

 懸命な査読者なら次のようにコメントした筈だ。
天然の放射線も人工の放射線も測定器は区別できないのだから、ある個人が測定期間中に被曝した実効線量の実測値と、居住域の空間線量との比 ( c ) を求めたければ、不確かなバックグラウンド(自然放射線量)を引くことをせずに、そのままの比をとる方が正確だ・・と。

 それにしても、伊達市には地上1m高の空間線量の実測値データが多量にあるのに、宮崎・早野論文では、なぜわざわざ航空機モニターによる間接的なデータと比較したのか、極めて不可解である。そこには何らかの意図があった筈であるが、そのことはきちんと説明されていない。結果的に、実効線量と空間線量の比(c)の  0.15(高線量エリアでは 0.1)という値が一人歩きし、伊達市の除染のサボタージュへと繋がっていくことになる。

 だて復興・再生ニュースには、市政アドバイザーの多田 順一郎氏によるコラムが連載されていて、放射能安全論のデマ発信源となっている。第1号には、田中俊一氏が規制委員長就任前に伊達市の市政アドバイザーを務めていたことが記されている。多田氏はNPO法人放射線安全フォーラムの理事であるが、田中俊一氏はその顧問である。NPO法人放射線安全フォーラムの役員・顧問をみると、そうそうたるメンバーで、事務局のメンバーは全員、ガラスバッジ製造元の株式会社千代田テクノルの社員である。なんだかな〜な光景だ。

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注1)(その2)に書いたように、仮にこの比が 0.6 で空間線量のバックグラウンド 0.04 μSv/h が正しければ、ガラスバッジで計測されるバックグラウンドは 0.04 × 0.6 = 0.024 μSv/hでなければならない。実際には、提出されているどちらのバックグラウンド値が正しいかわからないが、バックグラウンドの比も c と同じでなければならないので、c の値が知りたければ、バックグラウンドを引く前の値の比を求めれば良いということになる。

注2)宮崎・早野論文では実効線量の実測値と空間線量の比を求めているが、伊達市の解析は、空間線量に0.6を乗した実効線量の予測値との比を求めている点で違いがあるので注意が必要。

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