さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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 最近100年間の地球温暖化傾向について、一般には、産業革命以降の化石燃料(石炭・石油)の消費により温室効果ガスである二酸化炭素の大気中の濃度が上昇して引きおこされたとの説、すなわち「人為説」が信じられている。実際、世界中の多数の専門家が、この説を補強するような観測データ、実験データ、シミュレーション結果を報告し、国連のIPCCも、この理論に沿って国際間での二酸化炭素削減目標を定めている。一方で、この説に対する批判も一部の科学者によって試みられている。それらの「異端の説」は、日本では、たとえば次のウェブサイトで紹介・主張されている。
http://env01.cool.ne.jp/index02.htm
http://tanakanews.com/070220warming.htm

 中には、地球は温暖化していないとの説もあるが、北極の氷の劇的な後退・消滅などが明らかになった現在、検討に値しないだろう。ここでは、地球の温暖化を認めた上で、その原因は人為的なものではないとする、一種の「異端の説」を採り上げる。

 さて、この「異端の説」を検討してみると、その論点のほとんどは、詰めの甘い言いがかりに過ぎないものに思える。他の研究者の観測データの中から自説に都合の良い部分を取り出し、物理理論で補強しただけとの印象は否めない。また、データの読み違えも認められる。それらの「異端の」科学者達は、必ずしもこの方面の専門家とは言えない分野に属しており、ある意味仕方ないと言えなくもないが、これでは、この問題にかかわって長年研究を積み重ねてきた当の専門家達からは無視され続けるばかりだろう。「人為説」をとなえる専門家からの反論は、たとえば以下のファイルにあり、これを読むと一応の納得は得られると感じた。
http://www.cir.tohoku.ac.jp/~asuka/


 ただし、自説が正しいことの根拠の一つに、専門家の大多数が支持していることを挙げるのはいただけない。科学理論の正否は多数決で決められることではない。また、この「異端の説」が十分な観測事実に裏打ちされていないことをもって、直ちにその説が誤りとまでは言えないのも確かだ。証明が不十分であることは、誤りであることの根拠にはならないのである。逆にまた、このような複雑系を扱う場合には、そこで用いられている物理理論が正しければ結論も正しいと、単純には言えないことも押さえておく必要がある。物理理論というものは、複雑な自然現象のほんの一部を理想化ないし単純化、もしくは抽象化したものであり、そこで捨象された部分にもっと本質的な仕組みが潜んでいる可能性を否定できないからである。だからこそ、膨大な観測データによる裏付けを求めて、多数の専門家達が日々格闘しているのである。では、この「異端の説」の正否に決着をつける決め手は何なのか、というのが今回の趣旨。

とは言え、実は、この「異端の説」は、温暖化を説明する明快な科学理論として完成されている訳ではない。単に、現在の「人為説」の個々の要素に疑義を提出するという側面の方がむしろ大きい。しかし、注意深く読めば、この疑義の中から次のようなストーリーが浮かび上がってくる。

 「異端の説」の基本的なコンセプトは、二酸化炭素が増えたから温暖化したのではなく、温暖化したから二酸化炭素が増えたのだと主張する点にある。いくつかの着眼点があるが、その一つに、氷期、間氷期を繰り返した第四期の気候変動が、化石燃料の大規模な燃焼なしに、また、火山活動の盛衰とは無関係に起きていたことが挙げられる。南極氷床のボーリングコアの解析から、過去数十万年間の気温の変化と連動して大気二酸化炭素の濃度も変化したことが明らかにされた(例えば、渡辺ほか、2002、地学雑誌, 111, 856-867)。人類文明紀以前において、気温の変化や火山活動と無関係に二酸化炭素濃度に変化をもたらす機構がみあたらないので、気温の変化が先におこったのは確かであろう。気温に連動して海水温も上昇すると、海水からの脱ガスがおこり、大気二酸化炭素の濃度は上昇すると考えられる。海水の総質量は大気の質量の270倍である。また、海水中の二酸化炭素の総量は、一説には大気の50倍とされているので、脱ガスによってその0.1%が大気中に放出されると、大気二酸化炭素の濃度は相対的に5%増加する。海水からの寄与は絶大である。

 そこで、最近100年間の大気二酸化炭素の増加も、温暖化によって海水から二酸化炭素が放出されておこったのであり、化石燃料の燃焼とは無関係であるとの仮説が生まれた。つまり、化石燃料の燃焼によって生み出される二酸化炭素の量は、大気と海洋、および生物圏の間で日々繰り返される循環のシステムにおいては微々たるものだと主張する。これに対しては、大気二酸化炭素濃度の上昇と連動して大気中の炭素14濃度が減少しているという観測事実から反論がなされている。半減期が5,730年の炭素14は、数千万年以前に炭素を固定した化石燃料中にはほとんど残存していない。したがって、化石燃料由来の二酸化炭素が増えれば、相対的に炭素14が減る。「人為説」による理論的な予測は観測事実と良く合っているという論理だ。

 一方、大気中の炭素14の濃度は太陽活動と密接に関係しており、これによって、最近100年間の炭素14濃度の減少傾向が説明できるとの主張もある。炭素14は宇宙線由来の熱中性子が窒素の原子核に作用して生成される。地球大気に降り注ぐ宇宙線の量が一定であれば、生成と崩壊がバランスして、炭素14濃度は大気中で安定に保たれる。このことを利用して、考古試料などの炭素14年代の測定がなされている。ところが、近年の詳しい研究によって、過去の大気中の炭素14濃度は太陽活動の盛衰と連動してかなり変化していたことがわかってきた。そのため、年代測定に際しての補正係数も提案されるようになった。太陽活動が活発になると磁気嵐が頻繁におこるようになり、宇宙線がトラップされるので、炭素14濃度は減少する。また、宇宙線の量は雲量にも影響をあたえる。結果的に、太陽活動の活発化によって気温は上昇し、炭素14濃度は減少することになる。こうしたことが、過去、地球上で実際におこったこと、また、最近100年の間に太陽は一貫して活発化していることなどが、独立した複数の研究機関の観測・測定によって明らかにされている。これらのことは、たとえば以下のサイトに解説がある。
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/mat009j/idx009j.html
http://sunbase.nict.go.jp/solar/sun-earth-human/index.html
http://stesun5.stelab.nagoya-u.ac.jp/index-j.html
http://ksprite.kj.yamagata-u.ac.jp/mron/endo-mron.pdf

 以上のようなことから、太陽活動の活発化がおおもとになって、炭素14濃度が減少し、気温は上昇し、海水温も上昇し、海洋からの脱ガスがおこって大気二酸化炭素の濃度が上昇し、温室効果の正のフィードバックによって、ますます温暖化するというような、人類活動とは無関係な一連の現象がおこっている可能性がある。また、水蒸気も温室効果ガスの一種であり、大気中の濃度は二酸化炭素の何百倍もあることを考えると、水蒸気の正のフィードバック効果も無視できない。これは立派な一つの仮説であろう。

 ところで、カール・ポパーによると、ある仮説が科学的なものと言えるためには、反証可能性が保証されていなければならない。以上に書いた仮説の反証可能性はどこにあるだろうか。上記の仮説に含まれる個々の命題の多くは観測事実に基づいているが、ひとつだけ観測事実に基づかない仮定が含まれている。それは、現在の二酸化炭素濃度の上昇は海洋からの脱ガスによるものとの推論である。とりあえず、これが否定されれば、この仮説の一角は崩れるということになるだろう。その真偽は、海洋中の二酸化炭素濃度が脱ガスによって確かに減少しているのかどうかを調べればわかる筈だ。現在の海洋中の二酸化炭素の濃度分布については、最近の研究によってかなり詳しくわかってきた(例えば下記のデータ集)。
http://www.jamstec.go.jp/beagle2003/jp/index.html

 このような観測は、本格的には最近始められたばかりで、全海洋の長期間にわたる変動についてはまだ結論は得られていないようだ。ただ、北海道東方沖の太平洋上の一点についての定点観測結果を示した下記のサイトをみると、ここでは、海洋表層水の二酸化炭素濃度は上昇している。
http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol04_05/12.html

 少なくともこの場所では、大気二酸化炭素濃度の上昇によって、これと平衡にある海洋表層水が二酸化炭素を吸収していることになる。このことは、海洋水の温暖化による再平衡(脱ガス)に先んじて、大気二酸化炭素濃度の上昇による再平衡(吸収)が進行していることを意味する。つまり、「異端の説」の予想に反して、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が温暖化に先行しておこっているのだ。二酸化炭素濃度の上昇が温暖化の原因であるとする「人為説」を支持する結果の一つと言える。わずか1点だけにせよ、「異端の説」にとって不都合な事実であることには違いない。この現象が、凡世界的なものなのかどうかについて、観測態勢を整える必要があるだろう。

 なお、ポパーの反証科学哲学については、そのうち批判の記事を書く予定であるが、ここでの結論とは無関係である。

「科学と認識」書庫の記事一覧

閉じる コメント(13)

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さつき様
初めておじゃまいたします。
ちょちょんまげと申します。
kojitakenさんのブログから流れてまいりました。
実は以前に確か「たんぽぽ」さんのブログ経由で拝見させていただいたような記憶があります。
ご存知かどうかわかりませんが、「水伝騒動」なるブログ間でのゴタゴタにちょっと首を突っ込んでいる、科学好きです。(よくわかっちゃいないんですけど)

これから、リンク先等ゆっくり読ませていただき、よくわからないところがありましたら、質問させていただいてもよろしいでしょうか。
よろしくお願い申し上げます。

2008/7/30(水) 午後 2:25 [ chochonmage ]

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ちょちょんまげさん、いらっしゃいませ。
私もたんぽぽさんのブログで存じ上げていましたよ。ブログも拝見させていただきました。
丁寧で誠実な議論をされていると思いました。

私は、「現在の地球温暖化」という括りで言えば本当の専門家ではありませんが、
わからないことがあれば、専門家に直接聞ける立場ですので、なんなりとおっしゃって下さい。

2008/7/30(水) 午後 11:24 [ さつき ]

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さつき様

ブログお訪ねいただいたようで、ありがとうございます。
まぁ、なんとも赤面のいたりではございます。

お記事と関連リンクの一部を読んでみました。

で、早速質問させていただきたいのですが、
kojitakenさんのところでご指摘いただいた「宇宙線と雲」の定説の件なんですけど、こちらの記述によると、
http://tanakanews.com/070220warming.htm
>雲を研究している学者の多くは従来、宇宙線の多寡は雲のできかたに関係ないと主張しており

>ようやく昨年末になって、イギリスの王立研究所の会報に掲載され、遅まきながら権威づけを得ることができた。

これを読む限り、昨年(2006年)論文が掲載されて、で、もう定説になっちゃってるのですか?(できかたに関係ない、と主張していたのに)

そして、我々一般人としては、取り合えず「温暖化人為CO2主犯説」が一番確率が高い、という判断でよろしいのですよね?

2008/8/1(金) 午後 1:25 [ chochonmage ]

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昨年、ある学会でこの説を前提にした発表に対して誰も異義を唱えなかったので、「定説」になっているのだと早合点していました。
合意ができていなかったという点では「定説」と書いたのは言い過ぎですね。

この説は、宇宙線を観測しているグループではかなり以前から「定説扱い」となっていました。
観測事実としては両者に明瞭な相関が認められることが分かっていて、実験的にも証明されているので、現在では気象学者の多くもこの説を支持していると思います。

エントリーで引用している、専門家からの懐疑論への反論が、7月7日付でバージョンアップされていますね(通称、明日香レポート)。

http://www.cir.tohoku.ac.jp/~asuka/

この中でも、宇宙線と雲量との関係に疑問を呈していますが、論点は、事実であってもたいしたことない、ということのようです。
私は、とりあえず、大多数の専門家の意見を尊重しようと思います。
懐疑論者のほとんどは私と同じくらいの「門外漢」です。
まず「明日香」レポートをよく読んで理解すべきだと思います。
その中では、丸山さんに対しても手厳

2008/8/1(金) 午後 11:15 [ さつき ]

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さつき様

「手厳」で切れているので、先が読みたくてうずうずしているのですが(笑)

2008/8/2(土) 午後 2:05 [ chochonmage ]

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ああ、失礼しました。

「手厳しい批判的な指摘がなされています。」 でおわりです。

500文字制限は、不便ですね。そのうち改善します。

2008/8/2(土) 午後 8:19 [ さつき ]

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さつき様
まず、某所での貴コメント、深く同意です。
お疲れさまです。

「温暖化」、「ムペンバ効果」、お話したいことは山ほどあるのですが、今度またゆっくりとコメントさせていただきたく。
本日はとりあえず、ご挨拶まで。

2008/8/6(水) 午前 1:01 [ chochonmage ]

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思うところあって、「ムペンバ効果」にこだわっています。
ぜひ、コメント下さい。

2008/8/7(木) 午前 1:18 [ さつき ]

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エネルギー・資源学界が、「地球温暖化:その科学的真実を問う」と題して、地球温暖化人説について、立場の異なる科学者によるe-mailによる討論を公開しています。
http://www.jser.gr.jp/index.html

この説を支持する立場から江守正多・国立環境研究所室長一人だけに対して、懐疑論者3人、中立の立場から1人という不公平な陣容にも関わらず、大変有意義な討論になっていると思います。
問われているのはやはり、「科学的とはどういうことか」です。
孤軍奮闘された江守さんの、高い見識が光ります。

2009/1/14(水) 午後 5:08 [ さつき ]

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エネ・資源の討論については、私もエントリを二つあげています。
ご覧ください。

2009/1/15(木) 午後 6:13 [ 綾波シンジ ]

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綾波シンジ さん、トラックバックありがとうございます。
討論の内容を良く読めば、懐疑派が分の悪い議論をしているのがすぐにわかりますよね。
ご活躍を期待します。

2009/1/16(金) 午前 2:38 [ さつき ]

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本文へのコメントですが、海洋への炭素の移動は、同じくChap.7の7.3.2.2.1、7.3.4.1にレビューされていますね。

2009/1/21(水) 午後 2:42 [ 綾波シンジ ]

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初めまして。
私の芸名は「羽旨魔歩流(はむねまぼる)」と言います。
私は最近、「地球温暖化の原因が人間の経済活動に因(よ)る二酸化炭素だとする事を疑う事の不幸せさ」に付(つ)いての記事を書きました。トラックバックさせて頂きます。

2012/11/1(木) 午後 10:53 はむねまぼる

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