さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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 またまた沖縄で米軍機トラブル。

6日午後4時ごろ、沖縄県うるま市の伊計島(いけいじま)東側の砂浜に、米軍ヘリコプターが不時着した。米軍の乗員4人や地元住民にけがはなかった。伊計島では昨年1月にも米軍ヘリが不時着。
(中略)
不時着したヘリコプターは米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)所属のUH1。米軍側からは「警告灯が点灯したために予防着陸をした」との説明があったという。現場は島南部の住宅地に近く、最も近い住宅までは約130メートル、・・・

 下にリンクした写真は時事通信 1/6(土) 20:55配信のもの


 某国、某所でヘリコプターに乗って原野に送迎してもらったことがあるが、着陸地点を探すのにかなりの神経を使っていた。ちょっとでも傾いている(水平面でない)と離陸が困難になるらしい。着陸できそうな候補地まで来たら接地直前に副操縦士が一人飛び降りて、数m四方の中で平面性を見極めてベストなところへ誘導し、やっと着陸という感じ。

 こんな砂浜の斜面に降りて大丈夫なのかと思っていたら、今朝(7日)から撤去するため?にローターの解体作業が始まったとのニュース。修理しても傾きすぎて離陸不能と判断されたのか、それとも修理不能なほど傷んでいたのか、何れにしても極めて緊急性の高い不時着だったことを伺わせる。現場位置をGoogle航空写真から推定すると、下の赤丸の付近だと思われる。(緯度・経度は N26.3861, E127.9986)

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 ここへは行ったことはないが、夏場だったら海水浴客も多いビーチらしいので、不幸中の幸いとはいえ、それで済まされる問題ではない。この1年間に米軍機の墜落や部品落下など7件の事故が起こっていているが、これは決して増えているということではなく、むしろ、たまたま少なかったと言った方が良いだろう。


米軍機墜落、沖縄で45年間に47件 事故は計709件
沖縄県の統計では、1972年の本土復帰から2016年末までに県内で発生した米軍機関連の事故は709件で、墜落事故は47件。直近では16年12月に輸送機オスプレイが名護市安部の海岸に墜落して大破、米兵2人が負傷した。

 米軍も日本国政府もなんらの対策もとらずに放置し続けてきたのだから、基地をどこへ移設しても同じではないか。米軍の存在こそが、今そこにある危機である。米軍は沖縄から出て行くべきだ。

以下、1月8日追記
 結局、伊計島に不時着したヘリは8日午前10時過ぎに別のヘリコプターにつり上げられて撤去された。やれやれと思っていたら、午後になって、またまた別の場所に不時着したらしいとのニュース場所は下の赤丸の付近らしい。Google map の検索窓に
次の緯度・経度を入力すると現場が表示される。
N26.4180, E127.7182

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 ブースカちゃん、そこのヘリポートじゃないよ。
廃棄物処分場の敷地の赤い屋根の家の前だよ。すぐそばにヘリポートがあるのに、そうじゃないとこに降りたから大変なんだ。

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 「プルトニウムは飲んでも平気」、「水蒸気爆発は起こるわけない」、「メルトダウンじゃないだす」・・・他にもあったような。まあ、たいがいにして欲しいが、ここへ来て原発迷言に新たな1ページが・・・

産経ニュース
から一部を引用:
エネルギーを専門とする北海道大大学院の奈良林直教授は、「大規模な火砕流が起きれば火力発電の燃料タンクが破壊され、火山灰で太陽光や風力などは停止する可能性が高い」と指摘。その上で、新規制基準に適合した原発の堅牢(けんろう)性を主張し、「破局的な事態でこそ、最後に残るエネルギー源として活用すべきだ」と話す。・・・

 これは12月13日、広島高裁の伊方原発3号機運転差し止め即時抗告審で運転差し止めを命じる決定が出されたことへのコメント。記事は安定の産経クオリティだが、奈良林さんは、破局的噴火の大火砕流が襲っても原発だけは大丈夫と言っているわけだ。規制委員会の火山影響評価ガイドでは、破局的噴火の火砕流には対処しようがないので、そのような危険があるところに原子炉を設置してはならないとされているのに、メディアの取材にこんなコメントを言えるとは、これぞ原子力ムラ住民の鏡と評すべきか。破局的噴火の火砕流がどんなものか知らないのか、それとも知ってて言っているのか。

阿蘇4火砕流の到達範囲
 まず、阿蘇4火砕流の到達範囲を確認してみよう。図は産総研地質情報総合センターが公開している20万分の1日本シームレス地質図を利用して作図したもの。ピンク色は凡例番号 900(九州内)と902(山口県内)で、この範囲ではほぼ阿蘇4火砕流堆積物に相当する。

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 これは9万年間の削剥を免れて残された部分であり、より若い火山岩などに覆われて、表示されていない部分もある。地表に露出しているもののほとんどは、高温のために火山ガラスが癒着した溶結凝灰岩である。非溶結部の大部分は削剥されてしまっているので、もとはもっと広い範囲に分布していたはずだ。

 緑色の線は群馬大の早川由紀夫さんが推定した阿蘇4火砕流の到達範囲であるが、実際はこの外にも結構分布している。例えば、山口県内の青丸は、阿蘇4火砕流の定置温度を求めるために熱残留磁気の測定が行われた試料採取位置であり(後述)、最も遠いのは、阿蘇山から165 km 離れた日本海側の萩市南部のものである。また、玄海原発に近い福岡県の糸島半島にも残っている(赤丸)。重要なのは天草下島のもの(赤楕円)がしっかり溶結していることだ。これは、「御領石(ごりょういし)」と呼ばれる石材として、石垣や石灯籠などに利用されている。ちょっと高額だが御領石製のくまモンが売られているので、確かめたい人はどうぞ。噴出源から遠いので結構細粒になっている。

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 この位置で石材に使えるほど溶結しているということは、非溶結部がさらに遠方まで広がっていたことを意味する。実際に160 kmを超えて到達しているのだから、規制委員会が作成した火山ガイドで大規模火砕流発生について検討すべき火山の「地理的領域」を原発から160 km の範囲としているのは当然のことである。

風速 200 m の「暴風」
 VEI=7 に達する破局噴火では巨大な噴煙柱の崩壊によって発生する火砕流の流下速度は想像を絶するものになる。九電が規制委員会の求めに応じて行った川内原発の火山影響評価(pdf-29.5 MB)で、姶良カルデラの入戸(いと)火砕流を比較的よく再現しているとされたシミュレーション結果を見ると、噴出源から5分で 65 km、10 分で125 km まで到達しているので、時速 720 km、秒速 200 m 以上ということになる。大規模火砕流の流速が時速 700 km 以上になることは、こちらの講義用テキストの p. 37「火砕流」の項目にも記されている。火砕流は粘性流体として振る舞う密度流で、瞬間風速 200 m 以上の、大気よりずっと高密度の「暴風」に晒されることになる。

 阿蘇4火砕流の「暴風」がいかに凄まじいものであったかは埋れ木の少なさが物語っている。調べても、大分県日田市小野川のものと佐賀県上峰町八藤丘陵のものしか見つからない。小野川は阿蘇山から約 60 km で、埋れ木の直径は大きいもので1メートル以上あり、こちらのサイトによると樹木表面に火山礫が刺さっているものがあるらしい。八藤丘陵は阿蘇山から約 80 kmで、最大直径1.5 m、長さ22 mの巨木が含まれ、吹きだまっているように見える。阿蘇4火砕流の基底部の露頭は至る所で観察されるのに埋れ木の報告が稀なのは、地表に立つもののほとんどが吹き飛ばされてしまったということだろう。

400〜900℃の高温
 火砕流の定置温度を見積もる研究は古くから多数なされている。阿蘇4のように溶結凝灰岩を含む厚い火砕流の典型的なものは、冷たい基盤に接する基底部に1〜2mの非溶結部があって、その上に溶結凝灰岩が重なり、全体の上半部〜3分の1が非溶結となっている。当然、部位によって温度は異なっている筈だ。基底部の非溶結部に覆われた埋れ木は、炭化が不完全で、400℃の温度見積もりがなされているが、その上の溶結部はかなり高温になる。鈴木(1970)の軽石の軸圧焼結実験によると、溶結作用は、ドライな場合で 850℃くらいから、また火山ガラスがH2Oを0.45 %含む場合には600℃くらいから進行するようだ。強溶結部では900℃程度との推定が一般的。藤井・中島(2008)は、阿蘇4火砕流の到達縁辺部に相当する山口県下から採取された非溶結の試料について、日本海側の萩市南部(阿蘇山から165 km)のものを除き、安定した熱残留磁気を得て、定置温度を400〜550℃と見積もっている。

大規模火砕流が原発を襲ったらどうなるか
 以上のような破局的噴火の火砕流の特徴を理解したら、原発は大丈夫などとは決して言えない筈だ。まず、密度流の暴風によって送電線の鉄塔は全てなぎ倒され、格納容器は無事でも、それ以外の建屋は第一撃で壊滅してしまうだろう。しかも、あっという間に数十mの厚さの高温の火砕流堆積物に埋まってしまう。たとえ火砕流の厚さが数mと薄くても辺り一面火の海になるだろう。火砕流は、数ヶ月以上も人が近寄れない程の高温状態を保つ。海は厚い軽石層で覆われ、取水口は塞がれるだろう。何れにしても、冷却どころの騒ぎではない。

 例えば、Flying Zebra @f_zebra さんの思考実験がいかに楽観的過ぎるものであるか、多くの人に知ってほしい。

―――――――――――――――――――――――――――――
引用文献
鈴木(1970)pdf: 788 KB)
藤井・中島(2008)(pdf: 2.7 MB)

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 四国電力伊方原発3号機の運転差し止め仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁は12月13日、運転差し止めを命じる決定を下した。(毎日新聞ニュース

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを広島、愛媛両県の住民が求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、申し立てを却下した今年3月の広島地裁の判断を取り消し、四電に運転差し止めを命じる決定を出した。野々上裁判長は「阿蘇山(熊本県)の噴火で火砕流が原発敷地に到達する可能性が十分小さいと評価できない」などとし、火山災害による重大事故のリスクを指摘した。高裁レベルの差し止め判断は初めて。差し止め期限は来年9月末まで。仮処分はただちに効力が生じ、今後の司法手続きで決定が覆らない限り運転できない。
(以下略)

 この申し立ては、本年3月に広島地裁で却下されたことから、即時抗告されたもの。広島地裁では別に本訴が進行中で、異なる判断が下される可能性を考慮し、運転停止期間は18年9月30日までとされた。原発マネーと無縁な多くの地震学・変動地形学・地質学の専門家が指摘するように、伊方原発は、浜岡原発に次いで、もしくはこれと同等に世界一危険な原発である。その運転の差し止めを認めた広島高裁の決定をひとまず歓迎したい。

 広島高裁(野々上裁判長)の決定はどのような理由によるものか、また、同じ争点を持つ九州電力川内原発の運転停止を求める仮処分申請の即時抗告審における福岡高裁宮崎支部の棄却決定の理路とどの点で分岐したのか。これらの点について整理することは、仮処分申請を却下した広島地裁で争われる本訴にとって重要であろうから、弁護団では詳細な検討が続けられている筈だ。ここでは、いくつかの争点について備忘録としてまとめておく。

 広島高裁の決定文(pdf-22.5 MB)は、400ページを超える長文で、92ページから以下に示す争点毎に双方の主張が整理され、175ページ以降において、個々に高裁の判断が述べられている。

(1)司法審査の在り方(争点1)
(2)新規制基準の合理性に関する総論(争点2)
(3)新規制基準の合理性に関する各論(争点3)
  ア 基準地震動策定の合理性(争点3の(1))
  イ 耐震設計における重要度分類の合理性(争点3の(2))
  ウ 使用済み燃料ビット等に係る安全性(争点3の(3))
  エ 地すべりと液状化現象による危険性(争点3の(4))
  オ 制御棒挿入に係る危険性(争点3の(5))
  カ 基準津波策定の合理性(争点4の(6))
  キ 火山事象の影響による危険性(争点3の(7))
  ク シビアアクシデント対策の合理性(争点3の(8))
  ケ テロリズム対策の合理性(争点3の(9))
(4)保全の必要性(争点4)
(5)担保金の額(争点5)

司法審査の在り方(争点1)について
 争点1において、高裁の決定は、「人格権に基づく差止請求の要件」について検討する中で、伊方原発から 60 km の松山市に居住する抗告人1名について、伊方原発の事故によって「生命、身体に直接的かつ重大な被害を受ける地域に居住する者に当たる」と認定し、同 100 km の広島市居住者3名についても「重大な被害の及ぶ蓋然性が想定できる地域に居住する者といえる」とし、当事者性を認定している。原発から 100 km の距離に住んでいることで当事者性を認めたのは画期的とも言えるが、これは地裁による原決定を追認したものである。その上で、被害の発生が危惧される全ての論点に渡って相手方(四電)の説明が抗告人の主張をことごとく退けることに成功しているかどうかが(差止を認める)最終判断の基準になるとしている。

 付言として、本件の争点は「抗告人らの生命、身体等の人格権が侵害される具体的な危険があるかどうかであり、その危険がある場合には、相手方が本件原子炉の運転を継続することは違法であって、原子力発電の必要性や公益性が高いことを理由として、本件原子炉の運転を継続することは許されないというべきである」(p. 179)としている。これは、決定が出されると、例えば「わがままな訴えだ」とかなんとか巷でいろいろと取り沙汰されるであろうことを見越して、争点以外の論点を持ち込まないのが法律論であり、裁判のルールなのだと「世間」に向けて、予め釘を刺している訳であろう。このことは、後に述べる「争点3の(7)」をめぐる決定にとっても重要な視点である。

 また、原子炉等規制法1条の「大規模な自然災害」は「合理的に予測される範囲を超える大規模な自然災害」と解すべきであるとする抗告人の主張に対して、「最新の科学的、専門技術的知見を踏まえて合理的に予測される規模の自然災害」と解すべきとする四電の主張を是とする判断も、同様に重要である。このを点めぐってもまた、現行法の論理構造が法律論に則って厳密に検討されており、個々の条文の是非が争点になっていない以上、現行法に厳密に従った「訴訟指揮」がなされることを示している。その上で、争点3の(7)以外、抗告人の主張を退け、原子力規制員会の判断と相手方の主張の合理性を認めているのである。

基準地震動策定の合理性(争点3の(1))について
 争点3の(1) についてはP. 212〜316に渡って詳細に検討されているが、島崎邦彦元原子力規制員会委員長代理が提起した現行のモーメントマグニチュード(Mw)の見積もり手法の欠陥についての指摘も、現行の予測手法(いわゆるレシピ)に変更を迫るものではないという趣旨の判断が示されている。争点3の(1) はこの申立の核心部分であったと思われるが、高裁の決定文を読むと、この争点での敗北は、私の本年2月26日の次の記事で指摘した危惧が現実のものとなったことを示している。


 SSHACの確率論的地震ハザード解析ではロジックツリーの構築と分岐点の重み付けは多数の専門家のチェックを受けることが前提とされているが、日本においては伊方原発について民間の組織(電中研)主導で試行的に検討が開始されたばかりで、まだ完了していない段階のものであり、決定文p.316の「合理的」とする結論は不当である。

 このことはまた、島崎さんの、政府の諮問委員会の中で科学が捻じ曲げられるという経験が、予測の不確かさの表現をめぐるものであったことを想起させる。重大な事故に繋がりかねない事象の予測が不確かであるほど、当然、予防的な措置にも不確かさに応じた大きな余裕(安全率)が見込まれるべきと考える専門家と、不確かであるほど重要視しなくても良いとする「原子力ムラ」の考え方が対立しているとき、高裁の決定は後者に与したと言える。島崎さんの言を借りれば「練達の行政マンにとって,世間を知らない裁判官を操ることは容易だ」ということになろう。いずれにしてもSSHACの理念への批判的視点の確立は、今後の裁判闘争にとって避けて通れない課題となった。

火山事象の影響による危険性(争点3の(7))について
川内原発のケース
 この決定で唯一申立人の主張が認められた争点であるが、先に、同じ争点で却下された川内原発の運転停止を求める仮処分の即時抗告審における福岡高裁宮崎支部の決定を見ておこう。


 この争点の核心部分は、カルデラ噴火のような火山爆発指数(VEI)が7に達する破局的噴火の可能性が原子炉の立地評価に影響するかという点にある。福岡高裁の決定理由では、現在の噴火予知の科学水準が十分ではないとの認識から、「発電用原子炉設置の安全性確保のための火山事象の想定においては「我が国の社会がこれに対する危険性をどの程度まで容認するかという社会通念を基準として判断するほかない」(p.221)として、次のように述べている。

 そうであるところ、少なくとも今日の我が国においては、このようにその影響が著しく重大かつ深刻なものではあるが極めて低頻度で少なくとも歴史時代において経験したことがないような規模および態様の自然災害の危険性(リスク)については、その発生の可能性が相応の根拠を持って示されない限り、建築規制をはじめとして安全性確保の上で考慮されていないのが実情であり、このことは、この種の危険性(リスク)については無視し得るものとして容認するという社会通念の反映と見ることができる。 
 そうであるとすれば、発電用原子炉施設の安全性確保についてのみ別異に考える根拠はないというべきであり、上記の通り発電用原子炉施設についてのみこの種の自然災害の危険性(リスク)についてまで安全性確保の上で考慮すべきであるという社会通念が確立しているとまで認めることはできず、このような危険性(リスク)をも発電用原子炉施設の安全性確保の観点から自然災害として想定すべきか否かは、結局とのところ政策判断に属するものというべきところ、少なくとも原子力利用に関する現行法制度のもとにおいては、これを自然災害として想定すべきとの立法政策がとられていると解する根拠は見出し難い。(p.222)

 結論的には、規制委員会の審査で採用されている原子力発電所の火山影響評価ガイド(以下、「火山ガイド」: pdf-12.1 MB)が、原子炉設置の立地条件としてカルデラ噴火を考慮すべき自然災害として想定していることを「立法政策」とは認定せず、社会通念に照らして「不合理」とする判断を下している。

 一方でまた、九電が規制委員会の求めに応じて行った川内原発の火山影響評価(pdf-29.5 MB)をもとに、破局噴火発生の可能性が相応の根拠を持って否定されていると認定している。さらに、影響を及ぼす最大の噴火として九電が想定した 噴出量 10 km^3 (入戸火砕流の1/20)の桜島薩摩噴火規模の噴火への備えで十分であると認定している。その上で次のように結論する。

 立地評価に関する火山ガイドの定めは、少なくとも地球物理学的および地球化学的調査等によって検討対象火山の噴火の時期および規模が相当前の時点で的確に予測できることを前提としている点において、その内容が不合理であると言わざるを得ないが、相手方が火山影響評価の検討対象火山として抽出した火山に含まれるカルデラ火山との関係において立地不適としなくても本件原子炉設置が客観的に見て安全性に欠けるところがあるということはできず、・・・(p.257-258)

 以上は、現在の火山学は噴火の時期や規模を相当前の時点で予測できるレベルにないが、九電の予測だけは信頼に足るものであるとの前提に立っており、福岡高裁の決定は不当である。また、立地評価に関する火山ガイドの定めが検討対象火山の噴火の時期および規模が相当前の時点で的確に予測できることを前提としているという記述も誤りであり、正しくは、「影響を及ぼす可能性が十分小さいか」どうかについての判断を求めているにすぎないものである。「十分小さい」が、どの程度の確率を指すのかについて議論するならまだしも、破局噴火はあり得ないとする九電の「予測」を的確と評価する決定に唖然とする。

 さらにまた福岡高裁の決定は、火山ガイドの定めが社会通念に照らして妥当かどうかといった、争点としては明示されていない論点を勝手に持ち込んでいる点も見過ごせない。この点で次に述べる広島高裁の決定と対照的である。

広島高裁の決定
 争点3(7)に関わる広島高裁の決定では、先ず、「第2 事案の概要」の「2 前提事実(争いのない事実又は疎明資料等により容易に認定できる事実)」の中で、火山ガイドの考え方について、立地評価と影響評価の二段構えになっていること(p.69-70)を述べた上で、それぞれについて解説されている。ここでは、立地評価について示された以下の手順が重要である(p.70-73)。

(ア)原発から半径 160 km 範囲の領域にある第四紀(約 258 万年以降)に活動した火山を抽出する。(範囲を160 km とするのは、国内最大の噴火であった阿蘇4噴火(9万年前)の火砕流の到達距離が 160 km であったから)
(イ)この領域に第四紀火山がある場合には、完新世(約1万年前以降)に当該火山の活動があったか否かを評価し、完新世に活動があった火山は将来の活動可能性のある火山とする。
(ウ)a 運用期間中の火山の将来の活動可能性の評価を行う。 b 設計対応不可能な火山事象の到達可能性の評価を行う。 調査結果から原発運用期間中に発生する噴火の規模を推定できない場合は、検討対象火山の過去最大の噴火規模を想定する。 次いで、設定した噴火規模における設計対応不可能な火山事象が原発に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価する。

 もし、設計対応不可能な火山事象が原発運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価されない火山がある場合は、原子力発電所の立地は不適となり、この場合、当該敷地に原子力発電所を立地することは認められない。今回の決定は、まさに上記(ア)→(イ)→(ウ)b の手順に従って、阿蘇4規模の火砕流の伊方原発への到達可能性が十分小さいと評価できないことをもって、立地不敵と判断された訳である。

 この点について決定理由では、まず、「火山学者緊急アンケート」(pdf-947 KB)や専門家の陳述書などを引用しつつ、現在の火山学では、破局的噴火へ至る経過、時間スケール、規模等の予測が全く不可能であり、したがって、阿蘇4規模の噴火の可能性が十分小さいことを評価できないことが示される(p. 351-358)。そこで問題は大規模火砕流の到達可能性であるとして、阿蘇4規模の噴火があれば伊方原発へ火砕流が到達する可能性が十分あることが論証され(p. 359-362)、「本件は、地理的領域内に「設計対応不可能な火山事象が原子力発電所運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価されない火山がある場合」に当たり、立地不適ということになる」と結論される。

 ついで、福岡高裁宮崎支部の決定と、これを踏襲した広島地裁の原決定が論拠とした「社会通念」に同意する立場から、「火山ガイドが立地評価にいう設計対応不可能な火山事象に、なんらの限定を付すことなく破局噴火(VEI7以上)による火砕流を含めていると解することには、少なからぬ疑問がないではない」としつつ、そのことは「多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門的知見に基づく総合的判断が必要とされ」ることであり、原子力規制委員会に専権事項として委ねられているのであるから、原決定判示のような限定解釈をして判断基準の枠組みを勝手に変更することは許されないとの原則的立場が示される。

 争点3(7)に限っても、論点は多岐にわたるが、この点についての広島高裁の決定は妥当なものと評価できる。何より、仮処分申立の即時抗告という、短期間で結論を出さなければならない事案について詳細な検討がなされていることに驚いたが、疑問もない訳ではない。例えば、冒頭に「世界一危険な原発」と書いたが、その危険性の本質は中央構造線系活断層帯による地震ポテンシャルの高さにある。その点で、この決定が規制庁の審査結果を追認するにとどまったのは残念である。

 参考までに関連するYouTubeの動画を貼っておく。今更感もないではないが、松田時彦さん(5分くらいから)他の貴重な証言が聞ける。



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 毎日新聞の11月29日付の記事「もんじゅ 設計、廃炉想定せず ナトリウム搬出困難」 で批判された日本原子力研究開発機構(JAEA)が、反論の記事を公表している。
記事解説」(11月29日)

 JAEAは毎日新聞の記事を「誤報」としているが、隅田金属日誌(墨田金属日誌)さんのブログ記事「ナトリウム抜取りは「技術的には可能」というけど高速増殖炉も核燃料サイクルも「技術的には可能」だったよね」  にある通りで、まったく、何様のつもりかと憤然とする。

 ふつう、研究費公募申請の研究計画調書では、期限と予算を明確にし、これまでの実績や実現可能性についても記載することになる。研究倫理指南書には必ず「できもしないことを書いて予算申請してはならない」という意味の項目がある。「実現可能性」に、期限内、予算内の含意があるのは一般社会の常識である。いつかできます、そのうちできます、お金をいくらでも出してくれるならできます、というほどの実現可能性しかない事業に、国費からはびた一文支出してはならない。

 JAEAは、燃料取り出しとナトリウム抜き取りは分離して認可申請することが許されているとし、まずは燃料取り出しの認可申請を行う計画であるとのこと。申請内容については厳格な審査がなされるであろうが、多額の国費を伴う(注)ものである以上、申請した側にも、認可した側にも重大な責任があることを自覚すべきだ。

 特に、高速増殖炉・核燃料サイクル事業は、これまで何度も期限と予算がなし崩しにされ、延期・増額されてきた。そのことへの真摯な反省があるなら、毎日新聞の記事に上段に構えた批判を公開することなどできなかった筈だ。これはつまり、反省などしていないことを意味する。このままでは同じことがまた繰り返されるであろうから、廃炉事業が認可されたら、その期限と予算に注目し、監視しよう。

 何れにしても、もんじゅの廃炉が極めて困難な事業であることに変わりはない。大きな危険を伴う困難な事業を、失敗続きで大ボラ吹きの組織に任せることに不安を抱くのは当然なのだ。冒頭にリンクしたJAEAの「記事解説」の末尾にある次の文を読むと、いっそう不安になる。

【補足】 ナトリウム炉の特徴  

①沸点が高いので、軽水炉のように高圧にする必要はない。そのため、万一、冷却材が漏えいしても減圧沸騰することはない。 
(緊急冷却装置が必要ない)  

②沸点と伝熱性能が高く、原子炉出入口温度差が大きく取れるので、自然循環による崩壊熱除去が可能。  

③配管等との共存性がよいため、腐食の心配がない。  

④比重が軽く、水と同じくらいであるため、循環ポンプ等は従来技術を活用できる。  

⑤中性子を減速しないため、高速中性子を利用でき、  核分裂で発生する中性子数が多いので、プルトニウムを効率よく増殖できる。 

 ⑥自然界に豊富にあり、安価。

 この文章は二重に問題がある。まず、「ナトリウム炉の特徴」としてリストされた6項目のほとんどが、「ナトリウムの性質」やら「ナトリウム冷却システムの特徴」やら「ナトリウム炉の特性」やらが渾然一体となっている。このような文章は、卒論の初稿段階でしばしば目にすることがあるが、このままでは普通は不可である。

 次に、「特徴」としてリストされたものの全てが、「利点」や「長所」だけとなっている。まさか、弱点や欠点・危険性等について一切認識していない訳はないであろうが、この組織に任せて本当に大丈夫かと、不安はいや増すばかりである。

―――――――――――――――――――――――――――
 もんじゅは三十六年間で一兆四百十億円の国費を投じたにもかかわらず、トラブル続きでほとんど稼働していない。大量の機器で点検漏れも発覚し、原子力規制委員会は運営主体を現行の「日本原子力研究開発機構(原子力機構)」から変更するよう求めたが、見つからなかった。

 文科省は廃炉には三十年で三千七百五十億円以上かかると試算。存続を求める福井県と敦賀市に配慮し、もんじゅと周辺地域を高速炉など原子力の研究開発拠点と位置付け、もんじゅ内に新たな試験炉を設置する方針もまとめた。
(略)
 原子力政策をめぐっては、福島第一原発の廃炉などの処理費用が従来予想から倍増して二十一兆五千億円かかる見通しとなり、政府はほとんどを国民の電気料金や税金でまかなう構え。福島第一を除く原発の廃炉費用の一部も電気料金に上乗せする方針で、国民の負担が増え続けている。

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 最近,twitter 上で想田和弘さんに対する理不尽な批判が続いていて、暗鬱な気分になる。中には福島の核災害など何もなかったかのような主張もあって、聞くに耐えないが、ここでは、松浦晋也(@ShinyaMatsuura) さんの11月23日の tweet 

科学的に確かめられた知見は身も蓋もなく事実だ。「そういう立場は不可能」とは、自分の意見・立場に不利な事実は認め難いとの駄々っ子の論理に他ならない。自分の意見に例え不利であろうと、事実は事実であり議論の前提としなくてはならない。

について、一言。

それは早野さんが望んでいることではないかもしれませんが、必ずそういう政治性が出てきます。彼は政治的に中立なつもりでいるかもしれませんが、そういう立場は不可能なんです。なぜなら原発問題というのは、極めて政治的な案件ですから。純粋に科学的立場を取ることはそもそも無理だと思います。

を受けたものであるが、想田さんの主張はごく常識的なもので、小難しい議論など不要であろう。松浦さんの主張もまた、一見、ごく常識的なものであるように読めるが、これは、御自身「自分の意見・立場に不利な事実は認め難いとの駄々っ子の論理」とは全く無縁だとの前提で納得されることである。松浦さんは、その前提が自己申告に基づいているに過ぎないものであることにお気付きであろうか。

 前回の投稿 の引用元であるJGL (Japan Geoscience Letters) の同じ号の、最先端の研究を紹介するTOPICSのコーナーに、本年8月にこのブログで紹介した東電原発事故によって放出されたセシウムに富む微粒子(CsMP)について、その論文(Imoto et al., 2017)の著者の一人である宇都宮聡さん(九州大学)による2ページ余りの詳細な解説記事が掲載されている。そこに、論文では触れられなかった健康影響についての予察が書かれているので、以下にその部分のみ引用・紹介する。

東京に飛来したCsMP
 2011年3月15日の10:00〜11:00,東京都に最も高い放射能を持つプルームが到達した.その主要放射性核種はヨウ素(I-131, I-132)とセシウムであり,それぞれピーク時の放射能は 522 Bq/m3,124 Bq/m3 と報告されている.これらの核種の化学形態は水酸化物,塩化物およびヨウ化物と当初は推定されていたが,大気フィルターのオートラジオグラフィー画像を撮ると無数の黒点が現れた.これらの黒点の部分を単離し,SEM+EDX で観察すると CsMP が検出され,その放射能比や科学的特性は福島で見つかる CsMP と同じであることがわかった(Imoto et al., 2017).また,大気フィルターを超純水中で溶解すると,溶解実験前後でオートラジオグラフィー画像の黒点の位置が変わらないことから,難容性の CsMP が溶けずに残ることがわかるとともに,易溶性の Cs は総放射能の 11 % に過ぎず,CsMP の総 Cs 放射能は 89 % と算出された.これらの結果より,2011年3月15日の東京都に飛来したプルームには,難溶解性,高放射能密度,かつ PM2.5 サイズの微粒子が Cs 放射能の約9割を占める濃度で含まれていたことが明らかになった.

高放射能性 Cs 含有微粒子による影響
 原発災害の直後に放出された CsMP は,周辺環境および生態系の放射線量に対して顕著に寄与している.東京の大気フィルターで検出されたような 0.58 〜 2.0 μm の大きさの CsMP を人間が経口吸引したケースを考察すると,通常の PM2.5 と同様に,約 20 〜 50 % および <10 % の CsMP が肺胞および気管支領域にそれぞれ沈着すると考えられる.CsMP が不要性であると仮定すると,肺胞領域に沈着した CsMP はマクロファージによって完全に貪食されずにリンパ節にゆっくり移動し,その場合の生物学的半減期は数十年になると推定される.これは水溶性 Cs の典型的な生物学的半減期 〜 100 日間と比較して長く,体内に CsMP が長期間保持されると予想される.

 CsMP の場合,単位質量あたりの放射能(放射能密度)が非常に高いため(〜 10^11 Bq/g),CsMP 周囲のミクロな領域で局所的に強いβ線とγ線が水の放射線分解を引き起こし,マクロファージおよび呼吸器上皮細胞よりも大きい数百ミクロンのスケールでラジカル種を生成する.CsMPs の表面上の 100 μm 厚の水の薄膜層を考えた時,β線および γ線によるエネルギーの蓄積は(1.0 〜 24)× 10^-3 グレイ/h(グレイ=ジュール/kg)と計算される.水の放射線分解によって H2,H2O2,および H* などの様々なラジカルが生成し,この蓄積エネルギーによって,特に *OH ラジカルが毎秒 4.9 × 10^3 分子生成すると見積もられる.これは細胞中 DNA に酸化的損傷を引き起こすのに十分な生成量であると推定される.

 これまでの被ばく線量評価は,国際放射線防護委員会 ICRPpub.119 で確立されている実効線量係数にもとづいておこなわれているが,CsMP の影響は考慮されていない.難容性の CsMP は水溶性 Cs より長い生物学的半減期を有する可能性が高いため,今後は CsMP の内部被曝に関する詳細な評価が求められる.

 我々は、最先端の科学が旧来の科学の枠組みの一端を突き崩そうとしている現場を、今まさに目撃しているのである。本来ならサイエンスライターが飛びつくべき話題である筈だ。重要なのはむしろ、本来なら飛びつくべき話題をサイエンスライターが無視するという事態に至って、それが「政治的な案件」であることに気付かされてしまうという身も蓋もない事実の方である。

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