さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索
 ちょっと前に放送になったNスペの「ジオ・ジャパン」を録画していたのを、やっと観ることができたので、感想を書いておきたい。

 前編は日本海が開いて大陸の一部が分離し、弧状列島が形成されるプロセスについて、後編は日本列島が隆起して山脈が形成されるプロセスについてのもの。全編を通して、日本が世界でも有数の豊かな自然に恵まれているのは、日本列島そのものが世界でも稀な成立過程を持っているからであるという、いわば科学を動員して「日本スゴイ」感を醸し出すというコンセプトに貫かれている。やれやれである。これに協力した専門家の中にも、完成後に視聴してやれやれと思った方もいたに違いない。

 日本に四季があることを誇る者がいるらしい。私の子供達がまだ小学生だった頃、「インドには季節が二つしかないんだよ。暑い季節と、とっても暑い季節だよ、シベリアにも季節が二つしかないんだよ。寒い季節と、とっても寒い季節だよ」みたいなことを言ったりしたことを思い出すが、もちろんこれはネタ的な冗談であって、それぞれの地域にもっと細やかな季節の移ろいがあることはきちんとフォローしてきたつもりだ。

 そもそも季節は4つだけではない。日本の五節句も二十四節気も中国由来だが、インド古典音楽の音階構造であるラーガは、無数とも言えるほどの「節季」によって使い分けるしきたりとなっている。中緯度にある日本は太陽の南中高度が低い時期と高い時期に分けられるが、低緯度地域では太陽が北から照らす時期と南から照らす時期に分けられ、一年を通してメリハリのある雨季と乾季がそれぞれ気温の異なる時期に複数回訪れる。極圏だと太陽が上らない時期と沈まない時期や白夜の時期があり、半月は上弦でも下弦でもなく、鉛直に立つた弦が右向きになったり左向きになったりする。つまり、季節や自然の移ろいを分ける機微が地域毎に異なっているにすぎない。

 そうしたことは義務教育の段階で教わっている筈だが、四季がある日本は素晴らしいなどといった勘違いがどうしておこるのかと言えば、このような番組を通しての洗脳が拡大再生産を繰り返してきた結果なのだろう。川端康成のノーベル文学賞受賞式での記念講演のタイトルが「美しい日本の私」であったのを思い出してしまった。

 日本は自然が豊かで素晴らしいというのも甚だしい勘違いで、むしろ、凶暴な自然に四苦八苦しながら人々がなんとか暮らしてきた地域に属する、というのが自然災害研究者の一致した見解である。北陸〜東北地方の日本海側は大勢の人が暮らす地域としては世界一の豪雪地帯で、毎年雪かきなどで死人が出る。夏の蒸し暑さも、乾燥気候の地域の暑さとは全く異なる種類の脅威で、そのせいで毎年死者が出る。豪雨や台風の襲来による被害も多い。地震や火山の噴火による被害は輪をかけてひどく、どの世紀にも自然災害によって数万〜十万人を超える規模で人が亡くなってきたのが日本である。

参考:自然災害の多い国 日本(国土技術研究センター)

 この点についての認識を正すことは、特に、高校の地学教育が壊滅してしまっている現状では悲観的にならざるを得ない。その意味で、この種の番組は貴重であるだけに残念である。

 ついでに、「日本の自然がかくも多様であるのは世界にも稀な複雑な形成史によっている」という見方についてであるが、何をもって自然が多様と認識するかという問題以前に、そもそも、インドネシアの方がはるかに複雑な形成史を持つということは知っておいて損はないだろう。

イメージ 1

 上図は4つくらいの論文から編集したもので、赤線はプレートの沈み込み帯、黄色はマイクロプレート境界のトランスフォーム断層、緑色は拡大軸を示す。複雑過ぎて未だに良くわかっていないことが多く、論文によってかなり異なる図になっている。もちろん、地震や津波も多いし、火山も多く、スマトラ島のトバカルデラの 74,000 年前の噴火は「ジオジャパン」で紹介された紀伊半島の 1,400 万年前のカルデラ噴火と同じくらいの規模だった。

 インドネシアは世界一複雑な成因を持つのでバリ島に世界一複雑なリズムのケチャが生まれたと言えば、笑い者になるだろう。

 他にも、ツッコミどころ満載であるが、日本列島の地史に興味を持つ人が増えることだけは歓迎したい。

開く コメント(0)

 放射性セシウムに富む微粒子についての最新の研究論文(Imoto et al., 2017)を紹介したくて、前回まで2回に分けて拙い邦訳を掲載した。ここではその意味などについて、私なりに考えたことをまとめる。

 記載された高放射性 Ce 微粒子(CsMP)の最大の放射能は、長径 17.3 μm の比較的大きな粒子(OTZ3)から得られ、2011年3月12日15:36 JST に補正した値として 780 Bq(134Cs:401 Bq、137Cs:379 Bq)であった。現在値(2017年8月30日時点)は 383 Bq(134Cs:53 Bq、137Cs:330 Bq)となる。この高い Cs 放射能は、STEM による高分解能の画像解析、元素マッピング、SAED 回折X線パターンの解析などから CsMP  中に含まれる Fe ポルックス石(CsFeSi2O6・nH2O)の微細な結晶の集合体に由来することが確認されている。その化学組成は Supriment Data  の Table S1 に示されており、Cs2O を最大 30wt% 程度含んでいる。この他に、Cs2O を7〜10wt% 含むフランクリン石(ZnFe2O4)の結晶も確認されており、これらの結晶粒子は SiO2(〜80wt%)に富むガラス基質中に密に埋め込まれている。CsMP が難容性であるのは、結晶質であることに加え、ガラスによって保護されているからだと考えることができる。珪酸塩鉱物やシリカに富む珪酸塩ガラスは、たとえ微粒子であっても、人のライフサイクルくらいの時間スケールでは生体内や環境中で安定に存在可能である。

 CsMP が U を1wt% 程度含んでいることも重要である。従来 U は不揮発性と考えられていたが、酸化数が上がると 1,900 K で揮発するという。CsMP の生成プロセスについては、γ線分光と SHRIMP を用いた局所同位体分析によって、その概要が明らかにされている。U の同位体比から福一起源であることは明らかである。

 また、Ba と Cs の同位体比から、CsMP に含まれるほとんど全ての Ba は、もともと Cs として取り込まれたものが放射壊変によって Ba に変わったものであり(図1参照)、天然の Ba や炉心に蓄積されていた Ba は、初生的にほとんど含まれていなかったと結論された。このことから、Cs(沸点:944 K) は揮発しても Ba(沸点:1910 K) は揮発しないような温度条件下でのコアーコンクリート反応で形成されたと推定された。また、Ba はイオン半径の大きな二価のアルカリ土類元素で、ポルックス石にもフランクリン石にもそのような陽イオンを配位するサイトがないために CsMP に吸着され難かったと考えられた。U が揮発したのに、Sr(沸点:1655 K)やコンクリートの主成分である Ca(沸点:1757 K)があまり含まれていないのも同じ理由からだと考えられる。このことは逆に、福一から放出された Sr が易溶性のものであることを意味し、それはそれで却って危険である。

イメージ 1


図1.核図表  の Xe-Cs-Ba 付近を拡大した図。矢印は放射壊変を示す。

 ポイントは、この論文の要旨で「CsMP は、放出された放射性核種のうち体内に吸引摂取され得る形態のものを運搬する重要な媒体であった」と指摘されている点であり、また、イントロに書かれている「難容性の CsMP は、東京に最初に降下した Ce の主要なキャリアとして認定された」も重要である。134Cs と137Cs の放射能(Bq)の比が   1:1であるような Cs を 15wt% 含む粒子の比放射能を計算すると、9.03E+11 Bq/g となり、この時の重量濃度は 134Cs が 0.94wt%、137Cs が 14.06wt% となる。この粒子を ここ  で示した図3(比放射能ー存在度図)にプロットすると、天然環境では形成され得ない「ホットパーティクル」の典型例であることが分かる。下の図2にその改訂版を示す。

イメージ 2

図2.比放射能ー存在度図。縦軸はいろいろな物質中の放射性元素の重量濃度(ppm)の常用対数値であり、目盛の6(100%)が上限となる。横軸は比放射能で放射性元素を含む物質の単位質量(1g)あたりの放射能(Bq)の常用対数値となっており、右側ほど半減期が短い。

 ちなみに、最大の放射能(780 Bq)を示した粒子 OTZ3 の形状を、SEM像から、  15 μm × 10 μm × 5 μm の直方体と近似し、密度を 2.5 g/cm3 と仮定すると、その質量は 1.88E-9 g(1.88 ナノグラム)になる。したがって、OTZ3 の初生的比放射能は、780 Bq ÷ 1.88E-9 g = 4.16 E+11 Bq/g(0.416 MBq/μg)となる。
 このサイト(放射線ホライゾン) では、ホットパーティクルの危険性を訴えた別の論文で、1MBq/kg と記載すべきところを、誤って Abstract に 1MBq/μg と記載しているとして、これを良く確認しないままメデイアがセンセーショナルに伝えたことで風評被害が起きていると批判している。0.4 MBq/μg の粒子が見つかった現時点で、この評価はどうなるのだろう。ポルックス石自体の初生的比放射能は1MBq/μg を超えるのだが、実害が生じ得ると警鐘を鳴らす方向に転換するのだろうか。

 この「比放射能ー存在度図」を作成した5年前には、その内「ホットパーティクル」が見つかるだろうと考えていたが、ここまで Cs を濃縮する粒子が生成され得ること、そしてそれが、放出された放射能の主要部分を構成していたことは予想外であった。それは、広島、長崎やチェルノブイリにかかわる研究で、このような粒子について記載した論文を目にしたことがなかったからである。

 核兵器の爆発の場合は、その破壊力に比べて実際の核分裂生成物の量は原発よりはるかに少ないし、メルトダウンに引き続く、コアーコンクリート反応のような、比較的ゆっくりとした反応が進行する時間的余裕もない。実際、大気圏内核実験によるグローバルフォールアウトの人工核種をトレーサーとした海洋の三次元的海水循環の研究(例えば、Eigle et al., 2017 )を参照すると、採水測定によって得られた鉛直方向の拡散速度は、粒子として沈降した成分の存在を否定しており、大部分が海水に溶けていると模擬することでうまく説明できるという。

 チェルノブイリはどうか。これは黒鉛炉であり、メルトダウン時に還元的な雰囲気になった筈で、この点で軽水炉である福一とは反応環境が大きく異なっていたであろう。チェルノブイリ周辺でこのような放射性微粒子を探す努力がどの程度なされたか知らないが、ATOMICA に記載されているチェルノブイリで見つかった粒子  は、本来のホットパーティクルの概念とは異なる性質のものである。もしかしたら、福一から放出された放射性物質の主成分が CsMP であったことは、地球上に本格的な多細胞生物が出現したおよそ6億年前以降、生命が初めて直面する種類の脅威であるのかもしれない。

この機会に指摘しておきたいことがある。
 まず、2012 年6月14日公開の togetter 「珍説出現、「セシウムホットパーティクル説」って?」 について。発端は、林 衛 @SciCom_hayashi さんが 2012 年6月12 日の tweet で「塊を形成する放射性セシウム」に言及したことにある。福一から放出された放射性物質が塊をなしていることは早い段階から知られていた。例えば美澄博雅さんの「放射能のページ」 には「フィルムを使ったオートラジオグラフィー」による多数の画像が公開されている。その実体が難容性の「セシウムを主成分として含む微粒子」であると分かったのもかなり早い段階であった。そのことは、かつて紹介した最初の論文の投稿が 2013 年6月であったことからも分かるだろう。この間、多数の研究者が同時平行的にセシウムの「塊」の実体解明に努めてきたことも、今回紹介した論文の文献リストで分かる。

 彼らがこの研究に着手したのは、イメージングプレートによる画像を見たことがきっかけになっている。この間の放射能の問題を気に病んできた者なら誰でも一度は目にしたことがある筈だ。これを見たら、どうして塊になっているのか、また、一つの塊でどれくらいの放射能があるのか、その実体を知りたいと思うのは当然であろう。セシウムは地球表層環境中では単体(金属セシウム)として存在できないし、その塩化物は易溶性であるといった高校レベルの知識で止まっているとしたらなおさら、いつまでも塊になっていることを不思議に思う筈だ。ところが、この togetter の人達は、どうやら不思議に思うところがなかったらしい。セシウムのホットパーティクルなんてあり得ないと断じているのである。(8/30、下線部を追記した)

 彼・彼女らも、高レベル放射性廃棄物が長期にわたる安定化のためにガラス固化体として処分されようとしていることくらいは知っている筈だ。NUMO は、ガラスが環境中で長期に安定であることをアピールするために、「発掘された古代エジプト時代のガラス工芸品」の写真をパンフレットに載せている。また、塩化物だけがセシウムの化合物でないことも当然知っている筈だ。なのに、この場ではすっかり忘れているふうであるのは何故だろうか。よく分からないが、可能性として考えられるところは二つある。一つは、目的が、ただひたすら林さんを批判することにあったということ。もう一つは、不思議に思うところがないのは何故か、「セシウムホットパーティクル説」を簡単にバカにできるのは何故かを考えると、何でも分かっていると自負しているからに違いない。もしかしたら、「物理帝国主義者」の残党なのか?

 どれほど物理学や化学に精通していても、物質科学的な思考回路が遮断されていれば、天然の放射能と人工の放射能は物質科学的に違うと言っても、その意味は理解されないだろう。オートラジオグラフィーによって、現に今も、東電原発事故によって汚染された土壌の放射性物質は、その多くが塊をなしたままであることが分かっている。
 この togetter は興味深いので、どうか削除しないでほしい。

 もともと「ホットパーティクル」という概念は、かなり古くからあるが、Tamplin and Cochran(1974)が、難容性の プルトニウム 粒子の吸引による高度に局所化された内部被曝によって、従来考えられていたより10万倍以上も危険度が上昇すると指摘したことで注目された。こちらの togetter  によると、コロラドさんは「ホットパーティクル説」を完全に否定しておいでの様子であるが、私の理解では、否定されたのは 「10 万倍以上」の部分である。しかしそれが、 1,000 倍か、100 倍か、あるいは 10 倍かの危険度の上昇は十分にあり得るとの演繹的推定から、その後も多数の研究が継続して行われ、ICRP 勧告にも不十分ながら反映されてきた、というのが実情のようである。
 10 年前と少し古いが、 ”Hot particle dosimetry and radiobiology--past and present“ と題する論文 (Charles and Harrison, 2007) があり、セシウムホットパーティクルなどが、皮膚、目、外耳に付着した場合や、その摂取被曝、吸入被曝の場合それぞれについて先行研究がレビューされている。径 300μm や 3 mm といったかなり大き過ぎる粒子について検討されるなど、内容的には不十分であるが、この時点では福一が放出した CsMP はまだなかったのだから仕方ないことではある。

 放射性核種毎の内部被曝の預託実効線量換算係数は、パラメーターの一つである生物学的半減期について易溶性のものを前提とした値を採用して算出されている。難容性粒子の吸入であれば生物学的半減期が長くなると予想され、従来の換算係数は再考を迫られる。ただし、生物学的半減期の影響だけであれば、何桁もの変動は考え難い。

 一方、例えばヨウ素を濃縮する甲状腺の被曝において、甲状腺等価線量に 0.04 をかけて全身への被曝影響の尺度としての実効線量へ換算するということが行われる。これは、ある一定量の放射性ヨウ素による内部被曝においては、甲状腺に濃縮しようが体全体に均等に分布しようが、個体全体の吸収線量は同じなので、結果的に確率的影響は組織荷重係数に関わるところ以外は何も変わらない、との判断に基づいているだろう。問題は、高度に局所化された被曝においてもこの仮定を適用して良いかどうかにある。その点はまだ十分には解明されていないが、先のレビュー論文を読むと、少なくとも目の角膜や水晶体に及ぼす深刻な影響は十分に考慮されるべきであることが分かる。「鼻血」をバカにするのも、既に2007年の時点においてさえ、科学的な態度から逸脱していると言える。

(以下、8/30 追記)
 この問題にかかわっては次の二つの論考が大変参考になるのでお読みいただきたい。



開く コメント(4)

その1 の続き。

議 論
 CsMP 上の10回のスキャンで得られた U 同位体比は、CsMP 中の U 濃度が低い(ppm レベル)ため、OTZ3 では約 0.0050、KOI2 では約 0.0030 と大きな差を示した。 加えて、この分析は、CsMP 集合体の凹凸のある表面を研磨せずに行なったため、 U 濃度の高い標準試料 SRM610 の分析ほどには正確ではない。 同位体分別の効果は、(質量数の大きな重元素であるため)これらの CsMP の形成時において無視できるほど小さいはずである。 同位体比の大きな偏差があっても、OTZ3 および KOI2 の 235U/238U 比は、天然 U の同位体比が 0.00729 であるのに対し、0.029584 および0.029341 とかなり高い。 予想通り、この同位体比は 235U に濃縮された典型的な核燃料のそれに近い。

 138Ba は核分裂起源か天然起源かのどちらかである。天然の136Ba/138Ba 比 0.1095 は、ORIGENコードを用いて一号機、ニ号機、三号機について推定された核分裂起源の 136Ba/138Ba 比である約 0.0126 より大きい。核分裂起源のこの値は燃焼度によって大きく異なり、10 MWd/kgU で 0.004、 20MWd/kgU で 0.011、30MWd/kgU で 0.014 である。 試料 OTZ3、KOI2、および OMR1 の 136Ba/138Ba 比は、それぞれ 0.1523、0.1638、および 0.4293 であった。これらの値は、核分裂起源 Ba のものよりはるかに高い。 この136Ba/138Ba 比は、低収量の核分裂生成物の寄与を示しているのだろう。揮発した Ba の量によっては (相対的に)136Cs(半減期 13.16 日)がかなりの量になり得るからだ。核分裂起源の Ba は Cs より多いが、Cs はメルトダウン中に Ba よりも揮発し易く、CsMP は Ba に比べて Cs を選択的に取り込むことができる。 136Ba は 136Cs(半減期〜13 日)の崩壊生成物であるため、136Ba は Cs 種の形態で取り込まれた可能性が高く、(それが壊変して)136Ba/138Ba 比が高くなった。一方、SIMS によって決定された 134(Cs + Ba)/138Ba は、天然の 134Ba/138Ba 比である 0.03371 および核分裂起源 Ba の比である 0.0373〜0.0566 よりはるかに高い 35〜138 となっている。
 この部分は重要で、これらの粒子がメルトダウンの最中かその直後に形成されたことの決定的証拠である。これは、安定同位体の同位体比異常から初期太陽系星雲中での微惑星形成期における消滅核種の研究などにおいて馴染みの議論に似ている。

 ORIGEN コードを用いた計算から、核分裂起源 134Cs の初期量は 134Ba とほぼ同じでなければならない。 従って、高い134(Cs + Ba)/138Ba 比は、おそらく Cs の揮発性が高いことに加えて、Ba と比較して CsMP に取り込まれる Cs の量が多いためであろう。 したがって、CsMP に最初に取り込まれた天然および核分裂起源の Ba 同位体は無視できるほど小さかったと考えられる。 むしろ、134Ba および 137Ba は Cs 同位体由来の放射起源のものである。 2011年3月12日15時36分の 134Cs/137Cs(γ)同位体比は約 0.073 であり、CsMP 中の 134Ba および 137Ba に対応する 134Cs および 137Cs の(放射壊変に伴う)減衰の計算に基づいて、2つの同位体比、134Cs/放射性134Ba (γ)と137Cs/放射性137Ba(γ)は、SIMS 分析の時点でそれぞれ〜0.19と〜7.47であった(表2)。

 揮発した Ba の量はごくわずかで CsMPs の Ba は大部分が放射起源であり、また、133Cs は安定同位体であり、135Cs は 230 万年という長い半減期を有するので、SIMS 測定による 135Cs/133Cs 比は初期同位体比を表す。以前の ORIGEN 計算では、一号機、二号機、三号機でそれぞれ 0.388、0.344、0.353 と報告されており、この値は今回の SIMS による分析結果(OTZ3、KOI2、OMR1 についてそれぞれ 0.39、0.33、0.38)に近い。SIMS による測定値から計算された同位体比 135Cs/137(Cs + 放射起源 Ba)および 137(Cs + 放射起源 Ba)/133Cs 比はそれぞれ 0.39〜0.40 および 0.92〜0.99 であり、この値は 135Cs/137Cs 比および 137Cs/133Cs 比の ORIGEN 計算による初生的な値(一号機、二号機、三号機についてそれぞれ、0.40 と 0.98、0.34 と 1.01、0.35 と 1.01)とほぼ同じである。さらに、135Cs/137(Cs + 放射起源 Ba)は、TIMS を用いて以前に分析したバルク土壌サンプルの 135Cs/137Cs 比に匹敵する 0.36〜0.38 である。 137Cs/放射起源137Ba 比が高いため、質量数137の核種の大部分は 137Cs に由来し、137Ba の二次イオン化効率は最小限に抑えられているに違いない。

 質量分析計での測定においては元素毎のイオン化効率の違いが常に問題になるが、補正係数の算出については技術的なことなので省略する。

 (SIMSによる)Rb 同位体比 87Rb/85Rb は 2.2〜2.4 であり、天然の 87Rb/85Rb 比(0.3856)よりも明らかに高く、Rb 同位体が核分裂起源であることを示している。 ORIGEN によって計算された 87Rb/85Rb 比(〜1.7)と比較しても、SIMS による 87Rb/85Rb 比は高い。それにもかかわらず、我々の OrigenArp の計算では、SIMS による 87Rb/85Rb 比に近い 2.5と2.7 の間の値が得られた。 この違いは、天然同位体との混合は 87Rb/85Rb 比を低下させるので、むしろ Rb の局所的な揮発によるものと考えた方が良い。

 OTZ10 と OTZ3-1 の低 Cs 領域のナノスケールの組織観察から、フランクリン石ナノ粒子が SiO2 ガラス基質中に含まれていることがわかった。これらの組織とフランクリン石に Cs が含まれていることは、以前の研究でも報告されており、多段階の形成プロセスを示唆する:すなわち、メルトダウン中に放射性 Cs が放出されてナノ粒子が形成され、ミスト中に液滴として存在していた。引き続き、圧力容器の破損で形成された無数のZn-Fe酸化物(フランクリン石)のナノ粒子に含水 Cs が吸着された。続いて、溶融燃料は圧力容器を突き破り、コンクリートの台座に達して 2000 K を超える SiO ガスを発生さた。このプロセスはコア ー コンクリート反応(MCCI)として知られており、直後に SiO2 はZn-Fe酸化物ナノ粒子を覆って凝縮し、 また核分裂起源核種のナノ粒子を取り込んだ。先行研究で示されていたように、CsMP 形成前に生成したフランクリン石ナノ粒子に低濃度の U(約1wt%)が認められる。また、フランクリン石ナノ粒子への U の吸着は、おそらく酸化物 UO2 燃料の揮発によって起こる。実際、UO2ペレットは、H2O:H2比によっては酸化され得る。

 UO2のウランの価数は四価であるが、より酸化的な環境では六価のUO3になり、天然ではその1:2の混合物であるU3O8の形態のものが多い。

 一般に U は不揮発性元素とみなされている。しかしながら、部分的に酸化された形態の UO2+X は〜30 K/分の昇温率で 1,900 K になると約10%まで揮発し、一方で、酸化されていない形態の UO2 は 2,700 K でも揮発しない。苛酷事故時のミクロンスケールエアロゾルへの U の含有は、いくつかの実験的研究においても認識されていた。 CsMP 内の U の化学形態は、OTZ10 およびこれと同じ土壌サンプルから分離された他の CsMP も同様に同定されている。同じ土壌試料中に見出された別の CsMP である OTZ3 の U 同位体比が決定された。 二つの CsMP から得られた 235U/238U 比は〜0.030 であり、当初は原子炉圧力容器を囲む断熱材に微量の(天然の同位体比を持つ)U が含まれていることから天然由来と考えられていたが、この考えは正しくないことを示している。むしろ、CsMPs 中の U は核燃料起源と考えたが良い。

 福一の稼働前の未使用燃料の初生的な U 同位体比は 0.038919(3.9%濃縮)であった。 ORIGENコードを用いた計算によると、一、二、三号機における中性子照射を受けた燃料の U の同位体比は、それぞれ 0.0172、0.0193 および 0.019219 であった。従って、U 同位体比は、使用済み燃料についての計算値と未使用燃料における値の間になる。 ORIGENコードで計算された同位体比は、全燃料集合体の平均燃焼度に基づいている。 235U/238U 比の実測値が未使用燃料と使用済み燃料の中間の値を示すのは、原子炉内で燃焼度と温度が均質でないからである。燃料集合体は、炉心内の装荷位置によって異なる温度を経験する。 一つのペレット内であっても、温度勾配がある。ペレットの中心は約 1,973 K まで加熱され得るが、周辺部の温度は約 673 K に過ぎない。さらに、一つのペレット内の燃焼度は一様ではなく、中心部で低く、縁で高い。燃料集合体の燃焼度は、訳あって異なる燃焼度の燃料棒から組み立てられるので、均一ではない。従って、比較的低い燃焼度を有する燃料棒は、少量の U が揮発するような温度であった可能性があり、結果的に、両方の CsMP とも高い 235U/238U 比を持つことになった。揮発した U は、OTZ10 CsMP 中の U によって例証されるように、おそらく Zn-Fe酸化物への単純な吸着によって含まれた。

 福一から放出された U の拡散については先行研究において、原発から 30 km ほど離れた水田の水と海水中で約 10^-9 の 236U/238U 比を持つと報告されている。また、約 30 km の距離で採取された黒色の粉塵サンプルでは、〜 10^-7 の 236U/238U 値が報告された。これは、原子炉内の燃料から約 150 g の少量の U が放出されたという証拠である。しかしながら、235U/238U 比を測定した別の研究では、天然の U 同位体によって希釈されていたために、それが福一起源であるかどうかの判定には至らなかった。これらの分析はすべてバルク土壌サンプルを用いて行われ、単一の CsMP からのデータは含まれなかったので、U の素性は決定されなかった。本研究では、Zn-Fe酸化物ナノ粒子が 1wt% 程度の U を含んでいるので U の素性を確実に同定し、同位体分析によって CsMP 中の U が核燃料由来であることを確認した。しかし、環境中にばらまかれた全 U の内、どれくらいが CsMP の形態であるのかについての定量的な分析はまだなされていない。

 放射性 Cs の二つの異なる産状が確認された。Fe-ポルックス石(の主成分として含まれる Cs)と、ガラス質 SiO2 マトリックス中に埋め込まれたフランクリン石ナノ粒子に含まれる Cs である。後者については既に述べており、先行研究でも説明されているので、ここではふれない。一方、 この研究では Fe-ポルックス石、CsFeSi2O6・nH2O が CsMP 中に初めて同定された。メルトダウン中にポルックス石が形成されることを報告した先行研究はない。しかし最近の実験的研究では、5%の Si を含むステンレス鋼への CsOH の化学吸着でポルックス石と CsFeSiO4 が形成されることが報告されている。両方の材料は、ゲルと Cs のような適当な元素の混合物を焼き鈍しすることによって合成することができ、沸石構造を有する。化学吸着によるそれらの形成は、CsMP の形成中に高 Cs 領域で起こりそうである。しかしながら、CsMPs 形成に必要な反応は、〜1,273 K での CsOH とステンレス鋼との単純な相互作用とは明らかに異なる。実際、ステンレス鋼との反応から生じる Cs-Cr 相は CsMPs には存在しない。むしろ、CsOH  が  2000 K 以上の高温下における コア ー コンクリート反応 で Si および Fe 酸化物との化学反応に巻き込まれた可能性が高い。高 Cs 領域と低 Cs 領域の境目のクリアな境界(図 3b)は、Zn-Fe 酸化物ナノ粒子は、コア ー コンクリート反応 の時点で形成された Fe-ポルックス石を形成する前に凝集体を形成していたことを示す。

 要約すると、本研究は、CsMP 中の U、Cs、Ba、Rb、K、および Ca の起源、ならびにその同位体比とナノスケール構造に基づくそれらの化学形態を首尾よく決定した。 特に、得られたデータは、CsMP 形成中に原子炉内で生じた核燃料を含む反応の輪郭を把握するために決定的に重要である。 化学状態および起源に関する詳細な情報は、メルトダウン中の福一における生成期の理解を提供する。 これは、Zn-Fe酸化物やポルックス石などの CsMP で特定された相のいくつかは MELCOR や MAAP などの苛酷事故解析コードで考慮されていないので、これらの解析コード(の改良)にとって重要な情報である。

手 法
試料採取
 試料は 3 地点で採取した(図1)。 標本のラベルは大文字が地域を表し、後の数字は九州大学の CsMP データベースの番号を示している。 
 OTZ3 と OTZ10 は、2012年3月16日に福島県二葉郡大隈町の福一から約 4 km 西に位置するオットザワの水田の上部〜1cm から採取された土壌から分離された。この土壌は主として粘土鉱物、石英、および長石からなる。 高線量のためにこのエリアへの立ち入りが禁止されているので、手付かずになっていて、除染や修復工事による擾乱はなかったと考えられる。 地上 1 m 高の放射線量は 84μSv/h であった。
 二番目のサンプル(KOI2)は、同じ日の試料採取中に福一から南西に 2.9 km 離れた小入野の集合住宅の排水管の下に集められた砂利で構成されていた。 排水管の下の線量は周囲に比べて極端に高く、試料採取ポイントでの線量は 630 μSv/h であった。 砂利サンプルを地面からスコップを用いて慎重に収集し、プラスチックバッグに入れた。 土壌は主に粘土鉱物、石英、長石で構成されていた。 
 第三のサンプル(OMR1)は、2012年12月20日のサンプリング事業中に、福一から北西方向に約 10.5 キロメートル離れた福島県双葉郡浪江町小丸(おまる)の倉庫の排水管の下で採取された。 地表 1m 高の放射線量は 30 μSv/h を超えていた。

CsMPの分離
 作業の前に、両方のサンプルを 114μm のメッシュで篩い分けた。粉末サンプルをグリッドペーパー上に分散させ、次いでプラスチックシートで覆った。次に、イメージングプレート(IP、Fuji film、BAS-SR 2025)を試料上に 5〜15 分間置いた。さらに、IP リーダーを用いて、100μm のピクセルサイズを有するオートラジオグラフ画像を取得した。強烈な放射能スポットの位置を特定した後、純水の液滴をこれらの位置に加え、次いでピペットを用いて吸引して、純水で希釈することによって少量の土粒子を含む懸濁液を生成する。懸濁液が有意な量の土壌粒子を含有しなくなるまで、この手順を繰り返した。続いて、ホットスポットを含む位置を、ブレードでできるだけ小さく切断したカーボン両面テープを用いて選別した。SEM 観察を使用して最大効率で CsMP を得るために、これらの断片をオートラジオグラフイメージングによって検査した。 SEM 分析の前に、試料片をアルミニウム板上に置き、カーボンコーター(SANYU SC-701C)を用いて炭素蒸着した。EDX、EDAX Genesis を備えた15-25 kV の加速電圧を用いて 2 つの SEM(Shimadzu、SS550 および Hitachi、SU6600)を用いて CsMP を見出し、観察した。

TEM試料の調製(省略)

TEM分析(省略)

ガンマ分光測定(省略)

二次イオン質量分析法
 同位体比分析は、国立極地研究所の二次イオン質量分析計 SHRIMP-II を用いて行った。 試料を Al 板または Cu グリッド上に置き、1インチスライドガラス上に Cu テープで固定した。 分析に先立ち、13.5 nm の厚さで Au をコーティングした。 0.2〜0.4 nA の O2 - 一次イオンビームを使用して、ビーム径 5.0〜7.0 μm の試料表面をスパッタリングした。 典型的な質量分解能は約 4,500(ピーク高の1%での M /ΔM)である。 NIST の SRM610(461.5 mg/kg の劣化ウランが珪酸塩ガラスマトリックス中に添加されたている)が標準試料として用いられた。SIMS を用いた定量分析では、目標鉱物の化学組成と類似の化学組成を有する適切な標準試料が必要であり、(本研究ではこれがないために)絶対濃度は得られず、同位体比のみが決定された。 CsMP 上の各分析スポットについて 10 回のスキャンを行なった。これは、10 回の分析の同位体比の変動が深度プロファイルを表すことを意味する。 したがって、SIMS 分析は、CsMP 内の同位体的指紋を提供する。 平均値を表 2 に示し、10 回の分析について標準偏差を計算した。

 以下、引用文献等省略

 次回、この論文の意味などについて、コメントを投稿予定。

開く コメント(0)

 以前、東電原発事故によって放出されたセシウム(Cs)に富む微粒子(セシウムボール)についての論文(Adachi et al., 2013)を紹介 したが、別の研究グループによるさらに驚くべき内容の論文(Imoto et al., 2017)(PDF 5.5 MB)が公開された。その内容は、放射性セシウムの環境中での挙動や健康影響などの評価、およびメルトダウン中の原子炉で何が起こったのかを理解するために極めて重要なので、少し詳しく紹介したい。

 タイトルは  "Isotopic signature and nano-texture of cesium-rich micro-particles: Release of uranium and fission products from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant" 「セシウムに富む微粒子の同位体的サインとナノスケール組織:福島第一原子力発電所からのウランと核分裂生成物の放出」

 タイトルにある “signature” は、何かのしるしや指紋のような意味で用いられている。この研究は、福島第一原子力発電所のメルトダウン事故によって放出された放射性セシウムに富む微粒子について、今日の技術レベルで考え得るあらゆる先端的な分析を駆使したもので、特に、STEM 分析と SHRIMP による局所同位体分析が実施された意味は大きい。福島の放射能汚染がもたらす様々な影響や今後の対策について何事かを主張しようとする際にはこの論文の内容を理解することは必須である。

 本稿においては、この論文で何が明らかにされたのかを理解していただくことを旨とし、勝手ながら二回に分けて主要部分の邦訳を示す。個人的な感想と意味づけについては別途投稿する。図表のキャプションについては、Google 翻訳でもほぼ誤解の生じない訳出がなされるので省略した。茶色の文字は訳者による注記である。間違いや不正確なところがあればコメント欄にてお願いしたい。

要旨
 福島第一原子力発電所(以下、「福一」と略記する)から放出された放射性セシウムに富む微粒子(CsMP)は、2011年におこった惨事についてのナノスケールの化学的「指紋」を提供する。 原発から10 km 以内で収集された3個の CsMP(3.79〜780 Bq)は、それらの起源と形成メカニズムを明らかにするため、U、Cs、Ba、Rb、K、および Ca の同位体比が測定された。CsMPs は、Fe-ポルックス石結晶(CsFeSi2O6・nH2O)(最大 30wt% の Csを含む)の他に、主にSiO2ガラス基質中の Zn-Fe 酸化物のナノ粒子(1wt% の U を含む)からなる。 二つの CsMP の 235U/238U 比 0.030( ± 0.005)および 0.029( ± 0.003)は、濃縮された核燃料の値と一致する。この値は ORIGEN コードで推定される平均燃焼度のものより高く、未使用の燃料より低いため、様々な燃焼レベルの溶融燃料からの U の不均一な揮発と、引き続く Zn-Fe 酸化物への吸着を示唆する。ナノスケールの組織と同位体比は、メルトダウン中に燃料中で起こった化学反応の部分的な記録を提供する。また、CsMP は、放出された放射性核種のうち体内に吸引摂取され得る形態のものを運搬する重要な媒体であった。

イントロ(改行は訳者による)
 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響により、福一から、520 PBq の初期放射能を有する放射性核種が放出された。希ガス(Xe、Kr )と揮発性核分裂生成物(I、Cs、Te、Sb、Ag)を含む放射性核種は、福一を囲む14,000 km2 以上の地表を汚染し、約 10 万人の住民が避難を余儀なくされた。 放射性の Cs である 134Cs および 137Cs は、比較的半減期が短い(それぞれ 2.06 年および 30.07 年)ために、福一周辺の環境における現在の高い放射線の原因となる主要な放射性核種である。
 三つの炉心に存在していた Cs の約1〜7%が放出された。 福島周辺の地表環境における放射性 Cs の分布と移動については、これまでは、まず可溶性の放射性 Cs が放出され、福島県およびその周辺に広がって乾燥した地表や湿った環境に堆積し、続いて、バーミキュライトのような粘土鉱物の層間に固く結合して、土壌の 5 cm までの表層に残ったと考えられてきた。 しかし、汚染された土壌の Cs 濃度は不均質で、オートラジオグラフィーによって明らかにされているように、ミクロンサイズのホットスポットとして局所化されているが、この不均質性の実体は完全には明らかにされていなかった。
 この不均質性の原因について考えられるのは、福一から一定の距離範囲で見出される高い Cs 比放射能を持つ  CsMP の形成である。 これは、環境中での Cs 移行の重要な別ルートの1つである。CsMP は、易溶性 Cs とは異なって水に難溶性である。 134Cs/137Cs の放射能比が1くらいであるのは、それらが福一に由来することを意味する。 CsMP は当初、原子炉由来の様々な元素を溶かしこんだ非晶質ガラス粒子と考えられていた。 しかしながら最近の研究は、Cs の濃集物が、純粋な SiO2 ガラス基質中に離散した Zn-Fe 酸化物ナノ粒子が埋め込まれたものや、様々な核分裂生成物を伴う多数のナノスケールの包有物を伴う物質であることを示している。
 CsMP 内のナノスケールの組織は、原子炉内においてメルトダウン中に起こった化学反応を記録している。 難容性の CsMP は、東京に最初に降下した Cs の主要なキャリアとして認定されたもので、環境中での移動および健康影響に関して易溶性 Cs とは異なると予想される。 原子炉内部の CsMP 形成の反応経路に加えて、微量の U が CsMP 中に存在する。 原子炉内の遮蔽材には少量の天然 U も含まれているため、U および他の核種の起源は不明のままである。原子炉由来の U の産状は、メルトダウン時に核燃料が経験した反応や損傷した原子炉内で溶融した核燃料の状態を理解するのに役立つ。このことは適切な廃炉戦略を策定する上で重要である。 
 この研究では、原子スケールの解像度での分析と組み合わせた同位体分析により、U の起源と福一からの CsMP を伴う放出プロセスを明らかにしたという仮説を提出した。 CsMP は、CsI や CsOH のような易溶性 Cs の放出といった一般的概念とは異なり、福一炉心のメルトダウンの最中に生成された凝縮物の全く独特の形態である。 この論文では、個々の CsMP の同位体比を初めて報告した。 その他の安定同位体や放射性同位体の分析によってもまた、それらが天然起源であるか核分裂起源であるかがわかる。

結果
CsMP の形状、組成、放射能
 三箇所において OTZ3、OTZ10、KOI2、および OMR1 と名付けられた 4個の CsMP が見つかった(図 1)。試料採取の詳細は「手法」のところに記載した。図 2  は、CsMPs の主要元素の SEM 像および EDX による元素マップを示す。これまでの研究では、CsMP の形状は球形であると記載されてきたが、これらの粒子はむしろ不規則な形状の集合体に見える。さらに、ここで扱った CsMP の放射能は 3.79〜780 Bq の範囲である(表 1)。これらの値は球状の CsMP の約 33 倍高い。 SIMS 分析に使用されたOTZ3、KOI2、および OMR1 の 134Cs/137Cs 放射能比は1.06-1.08(平均1.07)であり、この値は、OrigenArp 計算によれば 26GWd/tU(の燃焼度)にほぼ相当する。 134Cs/137Cs 同位体比は福一の二号機および三号機の値に近いが、各原子炉内の燃料の燃焼度は燃料集合体の位置に依存して不均質であるために、同位体比のみから供給源の原子炉を特定することはできない。

SIMS 測定およびγ線分光法に基づく同位体比
 OTZ3、KOI2、および OMR1 の三つの CsMP の同位体分析の結果を 表 2 にまとめた。天然 U の 235U/238U 比が 0.00729 であるのに対し、未使用核燃料の値は典型的には 235U の濃縮で 0.03より大きくなる。 表 2に示すように、U 同位体比は OTZ3 と KOI2 でそれぞれ 0.029584 と 0.029341 であったが、OMR1 では U は検出されなかった。 標準試料 NIST SRM610 の U 同位体比は、標準値と調和的で、3 ポイントの分析の差異と標準偏差は約 0.00002 ± 0.000001(1σ)であり、SIMS(SHRIMP) 分析の精度は高い。

 Cs の安定な同位体は133Cs 一つだけ(天然で100%)であるが、134Cs、135Cs および 137Cs を含む様々な放射性同位体が原子炉内で生成され、その同位体比は燃焼度に依存する。Baの天然の安定同位体組成は原子比で、130Ba (0.1058%), 132Ba (0.1012%), 134Ba(2.417%)、135Ba(6.592%)、136Ba(7.853%)、137Ba(11.232%)、138Ba(0.1058%)、132Ba (71.699%)である。Ba のほとんどの放射性同位体(> 122Ba)は、典型的には、β-、β+、および電子捕獲などの様々なモードで崩壊し、同重体を経由して安定同位体へ壊変する。ここで用いた SIMS 分析ではセシウムと Ba の同重体を区別することは困難である。しかし、γ線分光に基づいて、SIMS 分析時点へ補正した134Cs/137Cs(γ)比は、OTZ3、KOI2、および OMR1 のそれぞれについて、0.0131、0.0135 および 0.0132 と算出された。 2011年3月12日15:36 時点へ補正した 134Cs/137Cs(γ)比は約 0.073 であった。 136Ba/138Ba 同位体比は、OTZ3、KOI2、およびOMR1 のそれぞれについて 0.1523、0.1638、および 0.4293 と決定された。 SIMS によって決定された134(Cs + 放射起源 Ba)/138Ba の同位体比は 35〜138 である。135Cs/137(Cs + 放射起源 Ba)および137(Cs + 放射起源 Ba)/133Cs は 0.39〜0.40 および 0.92〜0.99 であった。 Rb の同位体比 87Rb/85Rb は、2.2〜2.4 の範囲である。90Sr は CsMP 中に検出されず、Ca と K の同位体比はこれらの元素が天然由来であることを示している。

CsMP のナノスケール構造と組成
 先に SIMS によって分析された OTZ3-CsMP から OTZ3-1、OTZ3-2 と命名された二つの FIB 切片の切り出しに成功した。同じ土壌サンプル中に見出された OTZ10 CsMP からも別の FIB 切片が作製された。OTZ3-1 CsMP の高角度環状暗視野透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)画像を 図 3a に示す。白い矢印は粒子の位置を示す。コントラストの異なる2つの領域が識別できる(図 3b)。 2つの領域の境界付近の元素マップは、明領域で Cs 濃度がかなり高いが、他の元素は均一に分布している(図 3c、表 S1)。暗領域(edx1)は明領域(edx2)に比べて Cs 含有量が低い(図 3d)。低 Cs 領域(暗領域)の拡大された HAADF-STEM 画像は、元素マップ(図 3e)によって明らかにされるように、Zn と Fe を主成分とするナノ粒子からなる。これらのナノ粒子には Cs が含まれる。Si の分布は、試料の厚さのために解像できなかった(図 3e)。ナノ粒子は、HRTEM 画像によって他の CsMP においても同定されているフランクリン石構造(ZnFe2O4、Fd3m、Z = 8)として最もよく同定される(図 3f)。

 高 Cs 領域(図3b の edx2)は、低 Cs 領域に見られるフランクリン石ナノ粒子と比較して、Cs 含有量の高い比較的大きなナノ粒子(〜50nm)を含むように見える(図S1a)。Csに富む大きな粒子は、その後 SAED パターンに基づいて Fe に富むポルックス石構造(CsFeSi2O6・nH2O、Ia3d, Z = 16)と同定された(図 S1b)。ポルックス石は、理想式 (Cs, Na)(Al, Si)3O6・nH2O の沸石である。 Fe-ポルックス石は電子線照射下で不安定であり、おそらく水が失われて非晶質になる(図 S1c)。さらに、高 Cs 領域と低 Cs 領域の境界の HAADF-STEM 画像は、電子線照射後にコントラストが変化した(図 1d)。すなわち、Fe-ポルックス石の構造的劣化を示すように明るいコントラストが消えて、SAED パターンにおけるピークの低下と整合的である。高 Cs 領域の電子エネルギー損失分光法(EELS)によると、Cs は、その M 吸収端に示されるように一価であることを示している(図 S1e)。Ba は、Ba に富む固有相を形成するのではなく、Cs 含有相に密接に伴われ て存在する。これは、CsMP 中のほぼすべての Ba 同位体が放射性 Cs 起源だからである。Fe の L 吸収端(の吸収率曲線の形状)から、Fe が酸化物になっていることが確認された。

 同じ主要元素である Si、Fe、Zn、および Cs は、同じ集合体 OTZ3-2 から切り出された別の FIB 試料中にも存在する(図 4a。 HAADF 画像のコントラスト(図 4b)に示されるように、白い矢印で示される領域を拡大すると組織が均質であることがわかる。これは、 OTZ3-1 の高 Cs 領域(図 3b の edx2)に観察された球状組織とは異なっている。 しかし、Cs 含有量は OTZ3-1 における高 Cs 領域と類似している(図 4c)。 また、〜0.5 μm の大きさの単結晶が観察され、これは HRTEM 画像中の連続的な格子縞で明らかである(図 4d)。 2つの異なる主軸から得られた回折パターンに基づくと、この大きな Cs 相は 一つの Fe-ポルックス石である(図 4e)。

 U を検出するために、OTZ10 CsMP の FIB 切片を TEM によりさらに調べた(図 5a)。SAED は、典型的には非晶質領域からの拡散散乱に対応する広い回折極大を示す(図 5a の挿図)。切片全体の元素マップは、バルクスケールでの主成分元素の均質な分布を示す(図 5b)。 Cs 濃度は 7〜10wt%である(図 5c、表 S1 )。明らかに均質な分布および SAED における拡散散乱ハローにもかかわらず、拡大された HAADF-STEM 画像はコントラストの違いで分かるように相が分かれていることを示す(図 S2a )。元素マップと EDX 分析は、明るい相が Fe、Zn、Cs および Sn を含み、暗い領域は SiO2-領域に対応することを示す(図 S2b および c )。 HRTEM 画像はまた、多数のナノ結晶の存在を示す(図 5d )。 格子間隔と FFT 画像に基づくと、これらのナノ結晶はフランクリン石である。元素マップを用いた別の拡大された HAADF-STEM 画像は、U の分布が Zn-Fe酸化物ナノ粒子と密接に関連していることを示している(図 5e )。 U の濃度は、EDX 定量分析( edx2、図 5f )においてウランを U3O8 と仮定すると、0.8wt%( Si を含む)または1.1wt%( Si を除く)である。

(その2へ続く)


開く コメント(0)

NHKスペシャル公式@nhk_n_sp さんの 8月20日の tweet 

イメージ 1

 この画像を見て目が点になった。何がすごいって、中央に映っている金塊らしき物を担いでいる人の腕力(筋力?、忍耐力?)がすごいなと。

 この番組は寝っ転がって見始めたら、変なドラマ仕立てで途中で寝入ってしまったので、この場面は覚えていない。再放送も録画に失敗し、結局、YouTube  で確認したら、本当にこれは金塊だということで、金色に色付けされていた。

イメージ 2


 当時の日本人成人男性の平均頭長を23 cm  として複数の人物の頭のサイズと比べると、この「金塊」の長さは30 cm くらいで、幅と高さは10 cmくらいだとわかる。金の密度は19.32 g/cm3 だから、60 キロ近い重さになる。

イメージ 3









ちなみにこれが鉄だと 25 キロくらいだから、その2個分プラス 10 キロだ。そのプラス 10 キロ分が、なかやまきんに君が持っているこのダンベル。


イメージ 4

 トラックの荷台にヒョイと投げ置くし、右上の人物は、この体勢で自分の体重と同じくらいの「金塊」をズリッと引っ張る。片手で引き上げる場面もあった。金は重いからこんなサイズにすると簡単には持ち運べないし、何かと危険なので(例えば建物の中で担いだ肩からうっかり落とすと床に穴が空くレベル)、普通はもっと小さく鋳造する。

 金塊の、笑ってしまうほどの重さを知っている身としては体感的に不自然な場面が多くてちょっと信じられないのだが、これは本当に金塊なのか? これがその後どうなったのか、いずれにしても原資は国民から搾り取ったものだから是非とも知りたいところである。

 念のため書いておくと、番組自体はとても良かった。「ほとんど語られることのなかった・・・」と銘打つだけあって、初めて知る事実が多く、国(政治家)も軍人も資産家達も、天皇も、占領軍でさえも、戦後ゼロ年のどさくさに全力で私利私欲に走っていたことが良くわかった。彼らは財をなし、権力を手に入れた。その血脈を引く者らが、今もこの国を支配している。

 NHKの番組には時々受信料返せと言いたくなるのがあるけれど、この夏はよく頑張ったと思う。最近では、8月13日放送の731部隊の真実 〜エリート医学者と人体実験〜 、8月14日放送の『樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇』 、8月15日放送の戦慄の記録 インパール8月26日(土)午前0時50分〜2時03分(25日深夜)に再放送予定)など、記憶に残る作品だ。
頑張れNHK。

開く コメント(0)


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事