さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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* 本エントリーにトラックバックいただいた「環境問題補完計画」の綾波シンジさんのご指摘によって、本文を一部訂正し、末尾に注釈をつけています。本稿の主張内容に変更はありません。詳細はコメント欄でのやりとりを参照下さい(09.1.26)

 地球温暖化防止にからめて、二酸化炭素削減における森林の効用について、一部に誤解が生じているようだ。ここで指摘しておきたい誤解は、次の二点。

1)森林は二酸化炭素を吸収している。
2)木材などのバイオマスを燃料として用いても二酸化炭素を排出するので、人為起原二酸化炭素排出の削減には役立たない。

 1)は、森林の効用を説く一説としてあり、2)は、森林は役に立たないとの主張に繋がるもので、両者は相反しているが、どちらも誤り、または不正確である。ただし、誤解1)の方は、最近ではかなり収束してきたのではないかと思われる。

 関係する基礎情報は、環境省の下記ウェブサイトから入手可能である。

「IPCC第4次評価報告書について」
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th_rep.html

 特に、下記は必読
「IPCC 第4次評価報告書 統合報告書」(政策決定者向け要約(仮訳))
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/interim-j.pdf

 上記「総合報告書」には、地球規模の人為起源温室効果ガス排出を示したグラフ(図SPM.3.)が示されている。特に、(b) 2004年の人為起源温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量の内訳(CO2換算ベース)に「森林破壊、バイオマスの腐敗など、17.3%」とあったり、(c) 2004年の人為起源温室効果ガス総排出量に占める部門別排出量(CO2換算ベース)の内訳中の「林業17.4%」とあるのが今回のテーマと関係している。17%を超える主要な要素であるにも関わらず、この意味についてはあまり理解されていないのではないかと思われる。

 全人為起源温室効果ガスのうち、林業がその17.4%も排出しているというのは、(b)のグラフで言うところの「森林破壊、バイオマスの腐敗」とほぼ等価であるが、これはもちろん、林業を営むのに用いられる重機等の化石燃料消費によるのではない。それは全く微々たるものである。

誤解1)について
 生きている樹木は、一つの個体に着目する限り、確かに二酸化炭素を吸収している。しかし、土壌まで含めた森林全体を一つの単位要素として見れば、二酸化炭素を吸収している訳ではない。

 話を分かりやすくするために、長期に渡って手つかずで、極相に達して安定している森林を想定しよう。このような森林では、樹木の成長と枯死がバランスしている。樹木は光合成によって成長することで二酸化炭素を吸収し、有機炭素に変えて貯蔵する。一方、落葉や、寿命を迎えて枯死した有機体は、土壌中で微生物によって分解されて、再び二酸化炭素へ還る。実際に、森林土壌中の二酸化炭素濃度は数千ppmを超え、たえず多量の二酸化炭素を大気中へ放出している。森林浴と悦に入っても、二酸化炭素は平均大気より重いので、実際には通常の場所より二酸化炭素濃度は高いのである。

 寒冷な湿地帯などでは、有機体は完全には分解されずに泥炭となって保存されるし、一部は河川を伝って海や湖沼へ運ばれ、有機炭素として堆積物中に保存される。しかし、こうして保存される有機炭素の割合はかなり小さいので無視して良い(注)。つまり、「安定な森林」は、二酸化炭素を吸収も放出もしないで、単にバッファーしているだけということになる。

 同じ理由から、「成長しつつある森林」は二酸化炭素を吸収することになるし、逆に、「縮小しつつある森林」は二酸化炭素を放出することになる。主に林業によって森林は縮小を続けているが、その分だけ、二酸化炭素を放出することになる。例えば、建築資材として切り取られた樹木も最終的には廃材となり、焼却されるにせよ、腐食するにせよ、二酸化炭素へ還ることになる。逆に、植林によって森林面積が増えたり、大気二酸化炭素の濃度上昇によって光合成が活発化すると、二酸化炭素は吸収されることになる。IPCCは、現在は吸収に転じていると主張している。(追記1参照)

 なお、植物も酸素呼吸するし、動物の酸素呼吸も無視できないのだから、これらによる酸素の消費と二酸化炭素の放出も勘案すべきだと思われるかもしれないが、これらを含めたトータルの収支として、植物生体総量の増加や減少があるので、呼吸は無視してよい。

誤解2)について
 有機体が微生物によって分解され、二酸化炭素を放出するということは、「ゆっくりと燃える」ということなのだから、いっそのこと、きちんとした管理下で燃やして、そこからエネルギーを取り出して役立てた方が良いということになる。そこで、バイオマスをエネルギー資源として利用した分だけ人為起原二酸化炭素排出量から差し引いて、将来の削減目標の算定をするという案に合意が生まれたのだ。つまり、化石燃料を消費するとそっくりそのまま人為起原二酸化炭素の排出に繋がるが、その一部を、もともと人為起原でなく自然に排出されていた二酸化炭素に肩代わりしてもらおうという訳である。

 確かに、木材を燃やせば二酸化炭素が排出される。しかしそれは、燃やさずとも最終的に二酸化炭素を排出するにきまっている存在なのである。これを有効に燃やしてエネルギーを取り出し、その分化石燃料の消費を減らせば、人為起原の二酸化炭素排出の削減に繋がる。冒頭に掲げた誤解2)は、炭素循環のシステムの中で、人為起原の二酸化炭素と、自然が排出する二酸化炭素を区別せずに考察した結果であろう。

 このことから、微生物によって「無益に分解」されているバイオマスの大部分をエネルギー資源として活用すれば相当の割合で化石燃料の消費を減らせるとの発想も生まれる。日本では、石炭の消費量が急激に増加する明治後期より以前には、実際に、燃料の大部分は薪炭であった。その結果、現在は豊な森に包まれている地方の里山も、江戸末期には、大部分が禿げ山や草地と化していたのである。(追記2参照)このことはあまり知られていないようであるが、その分、鎮守の森だけが目立つことになった。

 主要な原因は、多々羅製鉄のために木炭が用いられたことにもよるが、それは単に、森林の成長速度を上回って消費されたというにとどまらない。「無益に分解」されているように見える腐食によって土壌が肥え、森林の成長を促していたのだが、限度を超えて<搾取>した結果、土壌がやせ細り、森林の甦生速度そのものが鈍っていったのである。

 世界的に見ても、パキスタンやアフガニスタンなど、薪を主要な燃料とする時代が長く続いた地域では、主に、このような理由から森林が失われた。最終的に土壌流出を招き、岩石がむき出しになって森林の甦生が不可能な荒野となったのである。日本では、自然の地面は土壌で覆われているものとの観念があるが、極めて希な、恵まれた国土なのである。森林の活用がどこまで可能なのか、実証的な研究が待たれる。

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注)天然に保存される有機炭素の量が多ければ、その分だけ二酸化炭素の減少に繋がる。枯死した樹木は、寒冷な湿地帯では泥炭として保存されるが、これは将来に渡って永久に保存される訳ではない。事実、過去に形成された泥炭の一部は既に分解を開始しており、そこから二酸化炭素が放出されている。これに対して、海成の、主に泥質堆積物中に含まれる有機炭素は半永久的に保存されるだろう。産総研の地質情報総合センターの岩石標準試料の化学組成のデータを見る限りでは、通常の泥岩中の炭素含有量は数百 ppmに過ぎないことが分かる。
http://riodb02.ibase.aist.go.jp/geostand/semiment.html

上記分析表中、JSl-1、JSl-2が代表的な泥岩。無機炭素(C)の濃度から、CO2として定量されている炭酸塩鉱物(方解石など)に含まれる炭素を差し引いたものが、ほぼ、有機炭素起原のものと考えてよい。

(追記1)「主に林業によって・・・」以降の原文は以下の通り:
「全地球的には、主に林業によって森林は縮小を続けているが、その分だけ、二酸化炭素を放出していることになるのである。例えば、建築資材として切り取られた樹木も最終的には廃材となり、焼却されるにせよ、腐食するにせよ、二酸化炭素へ還ることになる。」

 全地球的には、現在は二酸化炭素吸収に転じているというIPCCの主張が明確に伝わるよう、本文のように改めた。

(追記2)「日本では・・・」以降の二つの文の原文は以下の通り:
「日本では、石炭の消費量が急激に増加する明治初期より以前には、実際に、燃料の大部分は薪炭であった。その結果、江戸末期には、ほとんどの里山は禿げ山や草地と化したのである。」
八幡製鉄所第一高炉の開所(1901年)合わせて、「明治初期」を「明治後期」に改めた。また、樹木搾取による森林の縮小と荒廃は江戸時代以降も続いていたので、誤解が生じないよう、現在と江戸時代を比較するような文章に改めた。現在の大都市近郊の宅地化による森林縮小は、土地利用の問題であり、「過度な森林利用」についてのこの議論とは無関係である。

以上、09年、1月23日

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