さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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 8月6日の記事、「科学原理主義」の弊害 (その2:水俣病の歴史)について、「はてなブックマーク」でコメントをいただいていますので、お応えしておきます。
http://b.hatena.ne.jp/entry/blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/33763869.html

 ここでは、特に、NATROMさんによる次のコメントが重要と思い、このことを中心に補足します。

「概ね正しいが、タイトルは「科学原理主義の弊害」ではなく、「疫学軽視の弊害」がふさわしいな。疫学は科学に含まれます。」

 「百丁森の一軒家(本館)」のnorth-pole さんからトラックバックいただいた下記の記事はここでの議論に大変有用です。ありがとうございました。
「水俣病と科学」
http://northpole587.blog17.fc2.com/blog-entry-63.html

それから、下記も
幕間(承前)
http://northpole587.blog17.fc2.com/blog-entry-65.html

 まず、「○○原理主義」と呼ばれるものは、「キリスト教原理主義」や「市場原理主義」のように、特定のアイデアに、あらゆるものに優先される価値を設定して行動規範とする態度のことで、この定義自体はごく一般的なものです。「科学原理主義」は、実社会の中での行動原理として、あらゆるものに優先して「理念としての科学」、あるいは「理想的な科学」をもってくる発想のことです。

 実社会において、科学の出番はいたるところにあります。そこで科学を追求すること自体は必要なことです。しかし、人命にかかわる一刻を争うような問題に直面しているときなど、科学の理想的な追求・展開を断念して、緊急に倫理的な価値判断を下さなければならないこともあります。そのような局面で、理想的な科学の追求自体が<目的の全て>と化してしまっているような態度で望むことを、ここでは「科学原理主義」と呼んでいます。

 現実には、本気でそのような主張をする科学者は、まずいないだろうと考えるのが、常識的な判断でしょう。ですから、「脚気の歴史」で書いた森鴎外のとった行動も「科学原理主義」ではなく、単なる「疫学軽視」とみることもできます。しかし、板倉さんの原文を読めばわかるように、彼が批判的に検討したことは、「現象論=疫学」の軽視と同時に、そこに現れる科学における「党派性」です。

 科学における「党派性」は、それが<無自覚になされるとき>、常識的な判断とは相容れない両極端の立場、「科学そのものの軽視」と「科学原理主義」の、どちらかの姿をして現れるように思えます。たぶん、「党派性」そのものが悪いのではなく、それに無自覚であることからくるのでしょう。

 さて、もちろん疫学は立派な科学です。そのことは、現象論の重要性として、「武谷三段階論」にふれながら、このブログで繰り返し述べてきたことです。そして、水俣病では、初期の段階において、その疫学を軽視するような批判がなされたことで被害の拡大を招いた訳ですから、そのこと自体は反批判しなければなりません。しかし、私が批判的に検討したかったことは別のところにあります。

 1958年頃までに蓄積されたあらゆるデータは、チッソの工場排水が限りなくクロに近いことを示していました。同年6月には、厚生省環境衛生部長がチッソの排水が原因と国会答弁し、通産省にチッソに対する指導を要請しています。もし、そこに何らの利害関係もなく、政治的対立もなかったなら、事態は間もなく解決へ向けて動き出したでしょう。しかし、その要請を通産省は拒否します。当時、チッソの納税額は水俣市の市税全体の45%に達していました。そうした状況下で、「原因物質の実体や、その生成メカニズムが未解明ではないか、そんなものは非科学的だ」との批判を浴びせる科学者達が現れました。

 その時に、「いや、疫学も立派な科学だ、結論の蓋然性は90%以上である」などと反論することは必要なことでした。しかし、それだけで事態が打開しないことは明らかです。もしここで、現場の科学者達が「疫学も立派な科学だ」と主張して、延々と科学論を闘わせるような行動をとったとしたら、私は、彼らもまた「科学原理主義」に陥っていると批判したでしょう。実際、当時、現場の医師たちの間で、そうした科学論が激しく闘わされていたことを聞いています。

 この頃の状況については、冒頭に引用した north-poleさんの記事中に、原田正純氏の著書からの引用があります。

「初期の現地の疫学的調査の精神がさらに受けつがれて進展していたならば、つまり、汚染された地区の住民が、臨床的にどのような健康障害を示しているかという問題が継続的に追及されていたならば、その後の水俣病の研究の発展も異なったものになったに違いない。しかしそういう作業は、水俣というチッソの城下町ではきわめて勇気のいることで、ほとんど不可能に近いことであったろう。原因をつきつけなくては責任をほおかぶりしようとしたチッソや行政に対抗する熊大研究班にとって、因果関係の究明こそまさに至上命令であったし。それこそが、患者救済につながる唯一の方法と考えられたのであった。」
(『水俣病』p.27〜28)

  結果的には、そのために、決着までに長期間を要することになり、被害の拡大を招いた訳ですが、さらなる疫学調査が「不可能に近い」中で、科学論を闘わせ続けていたとしたら、状況はもっと悪化していたでしょう。いずれにしても、そのような状況に追い込んだのは、「理念としての科学」を錦の御旗として批判した科学者達だったのです。彼等は、現象論を批判するために実体論を要求し、実体論を批判するために本質論を要求するというやり方で、最後の最後まで、現場の科学者達を批判し続けました。軽視されたのは疫学ばかりではなかったのです。

 そうした発想はどこから出てくるでしょうか。そこには、とりあえず今ある危険を回避しようとのリスク管理や予防原則的な発想がないように見えます。しかし、そのことは、二つの観点から検討を要することです。

 第一に、彼らは、企業の側にとっての「リスク管理」を発動したのかもしれないということ、第二に、リスク管理や予防原則は、科学に曖昧さの存在を認める立場からなされるので、必ず、どこで見切りをつけるかという「線引き問題」が議論になり、最後は、価値論において決断されるということ。Neanさんのブクマコメントにある「蓋然性の評価」という問題もこれに含まれます。線引きを、危険度70%でやるか80%でやるかという問題で、その危険度の数値を出すのは科学ですが、どこで線引きするかは、価値論です。そして、両方に共通した核としてあるのが、私が「党派性」と書いたことです。

 批判者側が、もし、国や企業から裏金を掴まされて故意に足を引っ張るようなことをやっていたという確たる証拠があるなら、こんな回りくどい反批判などやる必要もないことです。しかし、そんな証拠はない。常に、表向きのことであれ「理念としての科学」が持ち出され、隠れ蓑かもしれないけれど「純粋科学」が盾にされたのです。

 表向きのことであれ、「科学原理主義」の弊害のよってきたるところは、「純粋科学」の看板が党派性を覆い隠す隠れ蓑としての効果を発揮することにあるでしょう。歴史を振り返れば、そして、現在もなお、同じことが繰り返されています。今後同じことが繰り返されないためにはどうしたら良いでしょうか。

 リスク管理や予防原則の発動それ自体もまた、現実の<線引き>に顕われる「党派性」の問題をさけることができないとしたら、全ての科学者が、現実の「党派性」と無縁ではありえないことを自覚する必要があるでしょう。それがどのような「党派性」であるかは、自らの主張が社会にどのような影響を及ぼすことになるかを考えればわかることです。誰しも、自らの党派性を明らかにすれば、却って非常識的なことは言わなくなるものです。「原理と自明性についてのメモ」の最後に、次のように書いたことは、このことを意識したものです。
http://blogs.yahoo.co.jp/satsuki_327/33493440.html

 「倫理的な問題についての議論が長引くのは、往々にして、明示されているのと異なる原理を立論の前提としていることに気づかない者や、それを故意に隠そうとする者などがいるためである場合が多いようだ。誰でも自分の価値観に基づいてその意見を主張する権利がある。それぞれがどのような「価値論的原理」を採用しているのかについて整理した上で明示することは、議論を有意義なものにするのに効果的だろう。」

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