さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

 ちょっと大きな地震がおこるとしばしば、ウェブ上や週刊誌などで、民間団体が地震予知に成功したとの話題が取り上げられる。最近はまた、予知実績ありと評判のNPO法人が「首都圏 深刻 国家総動員で態勢強化を」と呼びかけて週刊誌を巻き込んでの騒ぎになったばかりだ。
http://www.e-pisco.jp/r_ion/attention/090701.html

 先日、HAARPがらみのトンデモ陰謀論めいた「理事長見解」とともに、この予測は撤回され、批判がわきおこるとその「見解」もウェブ上から削除された。

 いわゆる「民間地震予知」のグループは大小とりまぜて国内に十数組、個人的なものを合わせると百は下らない。その多くは、95年阪神淡路大震災の経験をとおして、なんとか震災を未然に防ぎたいとの熱意と善意から生まれたもので、ウェブ上へ独自のデータや予測を発信している。主宰者の中には、震災の経験者もいるだろう。だから専門家達は、どんなにトンデモなものであっても、それを批判することをためらう。

 専門家が批判をひかえる理由は他にもある。関東地方や東海地方では近い将来かならず大地震がおこると予測されている。今日明日に差し迫っていないとしても、一、二ヶ月先に状況がどう変化するか予断は禁物だ。もし、民間から発せられた予知情報を非科学的と批判した後で、偶然にも大地震が発生してしまったら、たちまち専門家叩きの大合唱が始まるだろう。そうなったら単なる権威失墜にとどまらず、地震予知研究の今後にとって多大な悪影響をもたらしかねない。だから、私のような非専門家が言うべきことを言った方が良い。ただし、私もまた震災軽減への熱意や善意に水をさすのは本意ではない。以下に書く事は、自然科学に携わる者としての一つ提案と受け止めてほしい。

どのような地震予知情報が役立つか
 よく知られているように、地震予知(注1)は、1)いつ、2)どこで、3)どれくらいの規模の地震がおこるかを三点セットで明確に示す必要がある。そのいずれかが欠けても、具体的にどう対処したら良いか判断できないからだ。それだけでなく社会的な混乱さえ招きかねない。

 大規模地震対策特別措置法の中の地震予知関連の条文は、東海地震を予知するためだけに整備されていて、その他の地域の地震予知は想定されていない。そして、(本当かどうかわからないが)東海地震だけは予知できるとの前提で、あらゆる事態がシミュレーションされている。「判定会」が前兆現象をクロと判断したら、内閣総理大臣名で、国権を発動して「地震防災対策強化地域」において一種の戒厳令が敷かれる。鉄道やバス・タクシーの運行は停止され、銀行のATM もストップ、病院の外来診療も中止される、等々。

 そのため、ここで言われる「予知」とは、確率予測ではなく、東海地震があるかないかを明確に断言する「短期的直前予知」である。そうでなければ、強制措置を発動する根拠として説得力がないからだ。そして、パニックによる防災機能の麻痺を回避して震災軽減を実現するには、そのような計画的・強権的な社会活動の制御が不可欠であると考えられている。仮に予知が不発に終わった場合、当然ながらその損失は国家が保証することになる。

 さて、「民間地震予知」のグループからしばしば発せられる「予知情報」は、ほとんど全て曖昧な内容ばかりである。曰く「○○の地域において○月末までにマグニチュード6〜7程度の地震が起こる可能性が高いので注意するように」。こんな予知情報に接したらどうしよう。よくある「落石注意」のようなものか。「可能性が高い」とは、どれくらいの確率なのだろう。マグニチュード6と7では地震のエネルギーは32倍も違うし、震源の深さ次第で最大震度も大きく異なってくる。地震に神経質になって、最悪のことを想定して仕事を休み、家族で避難しようとする者も現れるかも知れない。

 こうした予知情報は、しばしば、成り行き次第で予測内容が変更されたりする。いつ、そしていつまで避難したら良いだろう。結果、予測がはずれたら訴訟沙汰も起こるかもしれない。自己責任だとの言い逃れは通用するだろうか。

 実は「気象業務法」というのがあって、気象庁の許可を受けずに勝手に地震予知をやって公表したりしてはいけないことになっている。
http://www.houko.com/00/01/S27/165.HTM#s3

第17条 気象庁以外の者が気象、地象、津波、高潮、波浪又は洪水の予報の業務(以下「予報業務」という。)を行おうとする場合は、気象庁長官の許可を受けなければならない。

違反したら、罰則規定もある。
第46条 次の各号の一に該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
2.第17条第1項の規定に違反して許可を受けないで予報業務を行った者

「業務」として行うのでなければかまわないという解釈もあるが、これらの条文は、社会に無用な混乱がおこることを避けるために設けられたと解すべきだ。素人であっても、その辺りのことは真剣に考えた方が良いと思う。

「民間地震予知」は、進歩しているか
 東海地震の予知態勢に組み込まれている「伝統的」な地震予知は、前震の観測や地殻応力の測定、GPSによる測地などを併用した、いわゆる「地震学的手法」によるものである。しかし、文献1を読むと、これまで専門家によって科学的に捉えられた地震の前兆現象には実に様々なものがあることが分かる。その中でも有力視されているのは、地電流の観測(ギリシャで成功したとされるVAN法)、井戸水位の観測(産総研が大規模な実験を行っている)、湧水中のラドンの観測(兵庫県南部地震の際に前兆として捉えられた)などである。しかし、いずれも実用レベルとはほど遠い段階にある。

 また、地震の専門家でなくとも、それなりに科学的な手続きを踏んでなされた研究から、多様な前兆現象が捉えられている。一例を挙げれば、東京都水産試験所による10年あまりの研究の結果、ナマズには確かに地震の前兆を捉える能力のあることが示されている。ナマズの電気的感度は「琵琶湖に乾電池が1個投げ込まれたとき、そのことを数キロメートル先で感知できる」ほどであるという。しかし、その研究は打ち切られてしまった。なぜなら、先に掲げた地震予知の三要素を満足する結果を得るのは絶望的であることが明らかになったからである。

 一部のトンデモ(注2)を除くと、多くの「民間地震予知」は、それらのいずれかと何らかの関係のある前兆を捉えようとしているようだ。しかし、そのほとんどは、当事者が「未科学」であることを口にするほどレベルの低いものである。専門家でもなく資金も十分でないとすれば、レベルの低さ自体は決して批判されるべきことではないのだが、成功例とされたものは、本当に成功と言えるのか、それが偶然に当たったように見えるだけではないかという点は大変気になる。成功例を誇示する一方、失敗例を隠す傾向が伺われるが、これでは自ら進歩の機会を失うことになるだろう。

 「気象庁一元化地震カタログ」(注3)から、2000年1月1日〜2007年12月31日の8年間に日本付近で起こった、震源の深さ40 km以浅、マグニチュード6以上の地震を検索すると60回に及ぶ。同じ場所でたて続けに起こった地震を一つとカウントすると、平均1.9ヶ月に1回の割合である。そこで、偶数月の1日、例えば2月1日、4月1日・・・がやってくる度に、「一ヶ月以内にマグニチュード6以上の地震が日本周辺で起こる」との予報、つまり、上記8年間に48回の疑似予報を出すとする。予報が出されたその月に2回以上の地震がおこっても当たった回数を1回と数えよう。そうすると、このいい加減な予報が偶然に当たった回数は21回であった。44%の確率で当たったことになる。

 地域を限定しなければ、こんないい加減な予報でも結構「当たる」のだ。地域をある程度限定してもマグニチュードの下限を下げれば同程度の確度になる。要は、警報が出される頻度をその予知システムの感度を調整して地震の頻度に合わせようとする限り、どんなにデタラメな予報を出したとしても同程度の確率で当たることになる。

 また、一度出した予測内容を状況に合わせて途中で変更することはやってはいけない。これでは何が予測されたのかわからなくなり、システムの問題点が見えなくなってしまう。「予知」に関する限り、ポパーの反証可能性ということを真剣に考えるべきである。つまり、予め、予知の成功と失敗の基準を明確に定めて望むべきである。そしてその基準は、その予報が、不安を煽り、社会的混乱を引き起こすマイナス面を凌駕するような積極的な側面があるかどうかという観点で定めるべきである。

 最後に、この10年の間に「民間地震予知」の進歩はあったのかと問われれば、私自身は全くなかったと考えている。その原因は、つまるところ、科学的とはどういうことかについての自省が不足しているからだ。

----------
注1)いわゆる「地震予知」には、数ヶ月先までの確率予測を出すものから、一週間以内の地震についてあるなしを断言する「直前予知」まで様々なレベルがある。これとは別に、「中・長期的地震予測」と言われるものがあるが、これは、歴史地震や活断層の調査・研究から、特定の断層やプレート境界の「固着域」毎に地震の再来周期を見積もり、数十年スパンでの地震の規模と発生確率を予測する。

注2)個人の体調不良を基にしたり、電卓のエラー表示を地震に結びつけたりするものなど多数。例えば下記は、常温核融合の応援サイトにリンクされている真性の「トンデモ」。
http://www.ailab7.com/index.htm

注3)地震のデータは「東京大学地震研究所地震予知情報センター」の下記サイトから得ることができる。
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/CATALOG/index-j.html

文献1:「地震予知 ―発展と展望−」力武常次著 日本専門図書出版2000年

開く トラックバック(1)

全1ページ

[1]


.
さつき
さつき
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫
数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事