さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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福島原発事故の放射能の危険性について、専門家の言うことがまちまちで、戸惑いが広がっている。マスコミではしばしば「通常の線量の○○倍であるが、直ちに健康に影響が出るレベルではない」ということが語られる。直ちに健康に影響が出たら大変だが、ほとんどの人はそんなことは心配していない。むしろ、将来的にどれくらいの影響が出るのかについて大きな不安がひろがっているということであろう。不安は未知であることからくる。
 
そこで、「日本は世界一のがん大国で、2人に1人が、がんになります。つまり、50%の危険が、100 mSvあびると50.5%になるわけです。タバコを吸う方がよほど危険です」などと諭される(資料1)。この説明はマスコミを通じて広く知られるようになったが、その過ちを指摘する専門家も居る。
低線量被ばくの人体への影響について:近藤誠・慶応大

要約すると、以下のような内容である(原文の構成から順番を変えた)。

1)「もともとある50 %の危険性が、100 mSvの被ばくによって、50.5 %になる」との説明があるが、50 %は癌の罹患率、0.5%の増加分は癌の死亡率についてのもので、両者を混同している。

2)50 mSv以下でも発がん率が上昇するという複数のデータがある。

3)癌死亡率30 %の日本では、最新のデータによると10 mSvを被曝すれば癌の死亡率は30.3 %、100 mSvでは33 %になる。

4)人は「発癌バケツ」をかかえていて、いろいろな発癌因子がたまっていっぱいになると癌になると考えて良い。ある人のバケツがそれまでどのくらい満たされていたかで、今回被ばくした量が同じでも、発癌する、しないに違いがでる。

解釈の違いではなく、専門家としては明らかな過誤という訳である。ここでは、近藤誠さんの上記解説を通して考えたことについて述べる。
 
私は、国家資格である「エックス線作業主任者」の免許を持っているが、その取得は、国立大学が法人化されるにあたって一般企業並みの労務管理が義務づけられたことにより、半ば強制されたという事情による。試験内容は、1)X線の発生と性質および管理、2)X線の計測、3)放射線の生体に及ぼす影響、4)関連する法令、の4科目からなり、計算問題もあったので電卓持ち込みが指示されていた。それぞれに必要最低得点が設定されていたが、1)と2)はともかく、3)と4)は素人同然だったので、中年になってからの受験勉強には苦労した。特に3)については、資格を取得した今でも専門家とはほど遠い知識しか持ち合わせていない。したがって私には、具体的な放射線量の危険性について、何か断定的なことを言う能力などない。ここでは、ICRPの勧告や原爆による被曝認定などの基準が科学的に正当なものであるとの前提で出発する。当然だが、それは、絶対に正しいということを意味するものではない。
 
私には、所属研究科の「エックス線作業主任者」に任命された者としての職務がある。それは、X線発生機器のある管理区域やその周囲において、法令に定められた限度量を超えるような被曝事象が生じないよう管理することである。ICRPの勧告による被曝限度量は、一般公衆において年間1 mSv、放射線を業務として取り扱う者においては年間50 mSvかつ5年間の累計で100 mSvと定められており、国内の法令においては、これを具体的に実現するための方策が指示されている。したがって私は、表向き、「年間数 mSvくらいなら健康に全く影響がないので気に病むことはない」なんてことは、絶対に口にしてはならないのである。しかしここでは、その「立場」というものから離れて、フリーに考えてみたい。
 
さて、ICRPの勧告に基づく現在の放射線防護の指針は、元を辿れば、広島・長崎の原爆による尊い犠牲の上に築かれたものである。原爆による放射線障害で大勢の人が亡くなったり後遺症に苦しんだりするということを、これまた大勢の人々が目の当たりにするということがおこるまで、放射線の生体への影響についてはほとんど未知であった。
 
原爆によって広島・長崎市内は壊滅状態となったために、救助された被爆者は周辺地域の病院へと担ぎ込まれた。多くは即席の野戦病院のようなものであったが、それなりの設備とスタッフの陣容を備えた病院もあった。その中の一つに、広島から30 kmほど東の八本松という所にあった「傷痍軍人広島療養所」がある。この病院の医師達が診療の過程で見知ったことは、当時、世界中の誰も知らないことばかりであった。戦後まもなく、次々と公表された彼らの経験や研究成果は全てが最先端で、世界の医学界が注目した。彼らの研究によって、マリー・キュリーの死因が放射線障害によるものであったことも明らかになったのである(注1)。彼女の死後15年以上を経た頃であった。
 
原爆による放射線被曝には、爆発時の放射線によるものと、残留放射能によるものがある。前者による致死率や症状の重さ、癌罹患率などは、爆心地を中心としたきれいな同心円状の分布を示していたことから、まずはこれをもとに放射線の強度と人体への影響との関係が定式化された。しかし、被曝の影響が直ちには現れない低線量の領域において被曝許容量をどのレベルに設定するかは、確率的な取り扱いとなるため、価値論に基づいて線引きする他ない。ICRP勧告が一般公衆の被曝限度量を1 mSvと定めているのは、通常の自然放射能から受ける被曝線量からばらつきの多いラドンの吸入になどによる体内被曝成分を除いた世界の平均がおよそ1 mSvであることから、これに倍する被曝がないようにとの発想に基づく。内部被曝成分を加えた自然放射能による全体の被曝線量の世界の平均は2.4 mSvとなる。原爆被爆者の認定基準のいろいろな指標、例えば被爆者手帳交付の基準の一つである爆心地からの半径12 km以内での被曝(2 mSv以上)といった線引きも、こうした自然放射能からの被曝線量が一つの目安として用いられている。
 
ICRP勧告に基づく一般公衆の被曝限度量は、自然放射能による被曝とレントゲンなどの医療被曝に、さらに年間1 mSvを超える被曝を加えることは避けなければならないという意味であるが、福島原発の事故に際してはこの値がほとんど無視されている。それは、多くの専門家が、世界のいろいろな地域における自然放射能のばらつきの大きさから考えると、平均的な自然被曝の数倍程度の被曝量は問題にする必要がないと考えているからであろう。
 
冒頭に紹介した近藤誠さんの記事にある「発がんバケツ」という発想は、そうした考え方に警鐘を鳴らすものである。そもそも日本において癌罹患率が増加したのは日本人が長生きするようになったからと説明されているが、そのため、「発がんバケツ」はただでさえ自然放射能によって満たされてしまう運命にある。それに加えて余計な被曝は寿命を縮めるだけだ。低線量被爆は長寿国ならではの問題をはらんでいると考えることもできる。
 
これに対して、特別に高い自然放射能に曝されている地域に住む住民の疫学調査の結果から、やはり、年間数10 mSv程度の被曝では健康被害は全く認められないと主張する専門家もいる。低線量被爆の危険性については従来よりその確率分布に相反する二つの考え方があった。損傷した遺伝子の修復メカニズム(資料2)から、放射線被曝には健康影響が全く現れなくなる「しきい値」が存在するという立場をとる専門家は、もう一つの日本特有の問題である放射能泉に注目する。日本ではラジウム泉、ラドン泉といった放射能泉に特別の治療効果があると一部で信じられているが、その中には極端に高い放射能を有するものがある。山梨県の増富温泉(冷泉)はラドン含有量が1リットルあたり約16万ベクレル、鳥取県の三朝温泉は2,400〜9,400ベクレルと極めて高い(資料3)。
 
ラドンはウラン238起源の希ガスで、直接にはラジウムのα崩壊によって生み出され、それ自身も高エネルギーのα線を出すので、従来から吸入による肺がんのリスクが懸念されていた。WHOは 2005年、International Radon Projectを立ち上げ、ラドンの肺癌リスクに強い警告を発している(資料4資料5)。
 
その三朝温泉にWHOの調査団がラドンの健康影響調査に入るという話を聞いたのは90年代中頃、3月22の記事に書いた故大庭里美さんからであった。長年当地で暮らしながら働いている温泉旅館の従業員に対して、染色体異常をはじめとした徹底した疫学調査がなされるということであった。当時彼女は、これで低線量被爆の危険性が証明されるのではないかと話していた。ところが、WHOによる調査結果はなかなか表に出て来なかった。そうした中で、既に岡山大学医学部附属病院三朝分院による同様の調査が行われていて、その結果が公開されていることを知った。

この調査とWHOによる調査との関係は調べていないが、「ATOMICA」による解説記事(資料3)によると、三朝温泉地域住民は、WHOの警告基準より遙かに高いラドン濃度に曝されているにもかかわらず、放射線被曝特有の染色体異常は周辺地域より少なく、癌死亡率も少ないという結果になったのである。私の当初の予想とは逆の結果であったが、そして、喫煙率などの他の因子を考慮した場合、どこまで一般化できるかという問題も残されているが、放射線被曝特有の染色体異常が少なかったという事実は無視できない。一方で、近年WHOがまとめたラドン被曝についての疫学データは、質、量ともに三朝での調査を凌駕するものがある。
 
いずれにしても、「しきい値」の有無や安全なレベルについて専門家の間でコンセンサスが得られていない現状では、予防原則を適用するしかない。個人的には、現在の規制指標として最も軽い被曝限度量である年間1 mSvという値だけが、一般人にとっての<安心の目安>として推奨されるべき地位を有していると考える。なにしろこれは、法令に定められた限度量であり、法治主義の立場からも無視してよい訳がない。平常時の空間線量率を加えると、年間の平均が1時間あたり0.18 μSv以下であれば、まずは安心して良いと考えている。もちろん、無用な被曝はできるだけ避けるというのが基本であろう。
 
その上で敢えて言えば、非常時には非常時なりの規制値というものがあっても良い。避難を強制されることからくるストレスの方が健康への害が大きいということも良く言われることである。政府は、事故発生から1年間の放射線積算量が20 mSvに達する恐れがある地域については個別に避難指示を出す構えで、子供については放射線の影響が大きいことから、学校再開基準を10 mSvとする方針とのことであるが、おおむね妥当な判断ではないかと思う。専門家の中には、過剰な反応と批判する者もいるが、そこには、癌死亡率30%が30.3%になってもたいしたことはないという発想がある。水俣病にかかわって、原田正純氏が力説した「環境汚染」ということの意味が、いまだに理解されていないのを残念に思う。
 
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注1)マリー・キュリーは亡くなる前に「再生不良性貧血」と診断されている。後に、その他の症状も合わせて原爆症と酷似していたことがわかり、ラジウムの放射線による被曝が原因と断定されたが、その後、ラジウムではなくX線による被曝が原因と改められたようである(資料5)。
いずれにしても放射線障害には違いないが、X線により被曝したという十分な証拠はないので、個人的にはこの解釈変更は納得できない。彼女の実験室や遺品、指紋などから高レベルの放射線が検出され、しばらくの間一般への公開が叶わなかったことは有名な話である。

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