さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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6月6日,国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構(JAEA) 大洗研究開発センター実験室内において,プルトニウムが飛散し,作業員が被曝するという事故がおこった。


 当初,一人の作業員について合計の吸入量は36万ベクレルとされたが,その後の再検査で,体表面の除染が不完全なまま測定したために内部被曝を過大に見積もった可能性が高いとの情報がもたらされた。

 それにしても,どうしてこのような事故がおこったのか。ビニールバッグが破裂した原因についてはプルトニウムのα壊変によって放出されたヘリウムガスが原因であろうとの見方が示されているが,本当だろうか。報道によると,作業員がステンレス容器の上蓋にある6本のボルトの内2本4本を取り外したところでガスが吹き出し,さらに残り4本2本を外して上蓋を開けたところでビニールバッグが破裂し,黒い粒子が飛散したという。

 最初に吹き出した気体は内部で膨張したビニールバッグに押し出された大気で,蓋を取り外す直前にはビニールバッグは容器内いっぱいに膨らんでいて,それがさらに破裂したということであろう。公開された資料の図面からステンレス容器の容積はおよそ2.7リットルと見積もられる。黒色の粉末がドラフトの外まで飛び散っているので,少なくとも1リットル以上,おそらく2リットル程度のガスが発生していたと思われるのである。

 ところが,どう計算しても発生するヘリウムの量が1〜2桁少ない。現実的ではないが,アボガドロ数(6.022045E+23)と同じ個数の原子からなる1モル239 gのプルトニウム239(239Pu)が含まれていたとしよう。酸化物にすると271 gになる。これは26年経つと24110年の半減期でα崩壊して6.01755E+23個になる。その差4.500E+20が崩壊した原子数で,これと同じ数のヘリウム原子を生じる。これをアボガドロ数で割った0.000747がヘリウムのモル数である。1モルの気体の体積は標準状態で22.4リットルなので,発生したヘリウムの体積は,22.4 × 0.000747 × 1000 = 16.7 ccとなる。これではビニールバッグを破裂させることは不可能だ。

 どうしても気になるので,もっと半減期の短い核種を含む場合で,それらの系列核種からの寄与も合算してみた。計算には26年前の初期条件としての化学組成・同位体組成を仮定する必要があるが,過小な見積もりにならないよう,ウランとプルトニウムの混合比を1:2,すわなちプルトニウムの酸化物200 gを含むとした。ウランはプルトニウムに比べて半減期が長いものばかりなので,プルトニウムの同位体組成だけが問題となる。ATOMICAに核兵器級プルトニウムと原子炉級プルトニウム同位体重量比の例が示されているが,この中で合計のα崩壊頻度が一番高そうな加圧水型原子炉(PWR)の使用済み燃料から分離されたプルトニウムの同位体組成を用いることとする。その重量比は次のとおりである。

238Pu: 2%,239Pu: 63%,240Pu: 19%,241Pu: 12%,242Pu: 4%

 この内,242Puは半減期が37万年と長く,無視できるので,これ以外とその系列核種が問題となる。検討対象としたのは以下のとおりで,括弧内は半減期。

238Pu(87.7 年)→ 234U(245,500年)
234U はウラン系列であり,混合されているウランにも僅かだが含まれているので,念のため初期的に 0.1 g 含むと仮定した。数十年単位の放射平衡の検討において数十万年以上の半減期をもつ核種(この場合 234U)はバリアーになるのでこれ以降の系列核種は無視する。以下,同様である。

239Pu(24110年)→ 235U(7.038E+08年)
アクチニウム系列に属する。235U は混合されているウランに含まれているので初期的に 6 g 含むと仮定した。

240Pu(6561年)→ 236U(2.342E+07年)
240Pu は自発核分裂をおこし易く,これによって希ガス(Xe,Kr)が発生するが,その寄与は無視できる。

241Pu(14.29年)→ 241Am(432.6年)→ 237Np(2.14E+06年)
241Pu はβ崩壊するのでそれ自身は無視できるが,娘核種の 241Am は重要で,親核種の半減期が短いので精製後に生じた分として初期的に 2 g含まれると仮定した。

 計算結果を表に示す。

イメージ 1

 計算の結果,合計のヘリウム生成量は120 cc 程度であり,ビニールバッグを破裂させ,内容物をドラフトチャンバーの外に飛び出させるには1桁少ないのではないかと思われる。ヘリウム生成の寄与率としては主成分である 239Pu より,半減期の短い 238Pu と 241Am が高いことがわかる。これらの核種を濃縮するとヘリウム生成量は多くなるが,そのようなものをウランと混合する意味はないだろうし,熱出力が高くなってプラスチック容器に入れるという発想もおこらなかっただろう。

 おそらく,強烈な放射線(25兆ベクレル)によってプラスチック製の容器や袋が劣化して水素ガスなどが発生したのであろう。そうだとすると,静電気によって着火し,爆発する危険性もあったのではないか。それにしても,そうした可能性を考えもせずに,このような事態を招いたことは,専門知識の欠落した集団が原子力開発・研究を担っているということになる。つまり,今後もこのようなことが度々おこることを予想させる「事件」として認識すべきである。実際,JCO臨界事故など,過去にも度々おこってきたのであり,なにも反省されていないということを意味する。

 もう一点,今回は人身への健康被害はさほど心配しなくてすみそうであるが,多少とも危惧されるのなら業務上過失傷害の疑いが生じる訳であるから,現場の保存と原因の徹底した究明,それらの公開が求められる。もとより原子力の平和利用は自主・民主・公開の三原則の上に許されている訳であるが,その基礎は情報公開である。まずもって,この容器に保管されていた物質の成分・同位体組成の公開を強く求めたい。

以下,追記(6月12日)

 今日になって,この記事を投稿する少し前に次のような報道がなされていたことを知った。


 茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで起きた被曝事故で、原子力機構は、核燃料物質を入れていたポリエチレン製容器の耐久性を検証する方針を決めた。ポリエチレンが劣化してガスが発生、破裂につながった可能性があるという。核燃料物質の長期保管には不向きとの指摘もあり、事故との関連を調べる。6日の事故で飛散したプルトニウムなどは、茶筒のような形のポリエチレン容器に入っていた。これを二重のビニール袋に包んだうえでステンレス製容器に密閉、1991年から26年間、一度も開けていなかった。今回、男性職員がステンレス容器のふたを開けたところ、ビニール袋が膨張して破裂、粉末が飛び散った。原子力機構の関係者は、「ポリエチレンが劣化して、粉末がビニール袋内に漏れ出ていた可能性がある」との見方を示す。

 ポリエチレンは水素と炭素だけの重合体なので,発生するガスとしては水素かメタン,おそらくメタン(CH4)の可能性が高い。いずれも発火性のガスである。これを二重に包んでいたビニールバッグは,そのラベルにPVCの文字が見えるのでポリ塩化ビニルだとわかる。これが劣化すると塩素を含むガスが発生する可能性があるが,「破裂」するのに必要な強度を失うので,こちらの劣化はそれほどなかったと思われる。ドラフトチャンバーの前の床に飛び散っている小さな黒い欠片状の物質は炭化したポリエチレンかもしれない。


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