さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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先ず原発を止めろ、話はそれからだ
 原発から排出される高レベル放射性廃棄物の地層処分に関わっている研究者達の合言葉は「原発に賛成であろうが反対であろうが、現に溜まってしまったゴミは何とかしなければならない」である。これはもう、30 年以上前から変わらない。資源エネルギー庁の担当者や所管の NUMO の幹部達も口を揃えて同じことを言う。日本の電力の相当部分を原発に頼ることは、廃棄物の処分方法が決まらないままスタートすることも含めて、国家的な事業として民主的な手続きを経て意思決定された結果であり、次世代にツケを残さないためにも核廃棄物の処分は現世代で解決しなければならない課題である、という訳である。

 うっかりすると騙されそうになるが、ちょっと待てよと思う。楽観論を振りまいて国民を騙し続けて来た結果だろうが、と思う。現世代で解決しなければならないから協力してほしいと言うなら、まず、これ以上ゴミを増やすことを止めるのが現世代としの先決事項である筈だ。一般の中小企業が行き場のないゴミを出し続けていたとしたらどうなるだろう。もうとっくに操業停止の行政処分が下されているレベルだ。原発だけ、なぜそれが許されるのか。こんな常識的で簡単な理屈もわからないのは、科学者達の世界でモラルハザードが進行しているからではないのか。倫理崩壊の科学者集団は何をするかわからないから、皆んな気をつけた方が良い。

 昨年全国で開催された地層処分意見交換会で配布された説明用参考資料 に、2016年3月末時点で「原子力発電所などで保管されている約 18,000 トンの使用済燃料を今後リサイクルすると、既にリサイクルされた分も合わせ、ガラス固化体の総数は約 25,000 本となります。」とある。「既にリサイクルされた分」というのは貯蔵管理中の 2,300 本のガラス固化体のことである。六ヶ所村の再処理施設はまだちゃんと稼働していないので、ほとんどはこれから準備することになる。それもいつのことになるかわからない。

 見過ごせないのは、計画されている地層処分場が 40,000 本以上を処分できる規模であることだ。現時点の廃棄物は 25,000 本相当だから、今後 15,000 本相当以上の高レベル廃棄物が増えることを前提とした計画になっている。「以上」とあるから、5万本になったり6万本になったりするかもしれない。100 万kW 級の原発を稼働率 85%で1年間動かすとガラス固化体にして 26 本相当の高レベル放射性廃棄物が発生する。15,000 本以上の余裕は、10 基の原発を 58 年間以上稼働させるくらいのことが想定されていることを意味する。

 「まず、これ以上ゴミを増やすことを止めるのが先決」と言わずしてこれらの事業に協力するということは、そのような計画の全体に協力するということであり、実質的には原発の再稼働を後押しすることになる。

 地層処分場の規模をどうするかは重要な政策課題であるはずだが国民にはその重要性が知らされないまま、もう決まったことだと言う。いつだってそうだ。倫理崩壊の人たちというのは油断も隙もあったものではない。「原発に賛成であろうが反対であろうが、云々」というのは、原発に決して反対などしないことをカモフラージュして、市民を、そして自らをうまく騙すレトリックに過ぎない。

JAMSTECよ、お前もか(南鳥島の問題)
 ところで、NUMO のウェブサイトの「自治体のみなさまへ」のページの、いまは休止中となっている「応募関連情報」の中に、地層処分場候補地として自治体が応募する際の南鳥島を例とする様式 がリンクされていた。これは、今はリンク切れとなっていて、表からは辿れないようになっている。

 なぜ南鳥島が例示されているのか。これには伏線がある。ここ数年来、日大教授の高橋正樹さんが、南鳥島を「トリプルA」の候補地として推しているのだ。例えば、北方ジャーナル誌の 2014年11月号のインタビュー記事 がある。学術の場で公式に表明されたのは昨2016年9月の地質学会での講演 が最初ではないかと思う。高橋さんが推す理由は、長期に安定しているに違いないという推定と、周囲 1,000 km 以内に「一般住民」が住んでいないことによる。ここには自衛隊の施設や気象庁・国土地理院の観測所があるだけで、候補地となっても誰も文句を言わないだろうという訳である。

 これに資金不足に喘ぐ(といっても地方国立大よりはマシな)JAMSTEC が目を付けた。今はリンク切れとなっている 2016年12月25日の NHK NEWS WEB の記事から引用しよう。

原子力発電所から出る、いわゆる「核のごみ」をめぐり、国の海洋研究開発機構が、深さ5000メートル規模の地下に処分する、新たな技術の可能性を探る基礎的な調査研究を太平洋の南鳥島で行うことを検討していることがわかりました。
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」について、国は地層処分と呼ばれる地下300メートルより深い安定した地層に処分する計画で、現在、処分場の候補地を探す作業が続けられています。

こうした中、国の研究機関、海洋研究開発機構が、今の計画とは異なる深さ5000メートル規模の地下に処分する、新たな技術の可能性を探る基礎的な調査研究を検討していることがわかりました。

調査は地質学的に安定した太平洋プレート上にある南鳥島で、来年度以降、海洋探査船などを使って、地形や地質などのデータ収集を行う方向で調整を進めたいとしています。

地下5000メートル規模の深さでの処分技術は、海外で研究が行われていますが、技術的な課題が多く、確立されていません。国が国際的に有望な今の地層処分を前提に計画を進めていることから、海洋機構は、まずは独自に研究を始めることも検討しています。
(以下、略)

 高橋さんは地質学会の講演要旨に次のように書いている。

 ・・・ハワイ諸島と同じくホットスポット起源と考えられる.ハワイ火山と同様の構造を持つとすると、南鳥島は、深さ4000mの海洋底の上に溶岩とその崩壊物である火山角礫岩などからなる深海底盾状火山が形成されており、その上に枕状溶岩やハアロクラスタイト(ママ)からなる浅海性海底火山体が、そしてその上に陸上盾状火山が数kmの厚さで重なっていて、最上位には厚い石灰岩からなるサンゴ礁が形成されている.サンゴ礁の下位には安定した陸上溶岩からなる層が存在しているはずであり、処分場設置に適した環境である可能性がある.・・・

 南鳥島周辺の深海平原の深さは、実際は 5,500 m くらいで、海底下 500 m の厚さの部分は遠洋性堆積物からなっている。したがって「深海底盾状火山」が乗っている海洋底基盤の上面深度は 6,000 m くらいである。現在、南鳥島の地表部分を構成している礁性石灰岩は太陽光線の届く浅い海で成長するので、海底火山で噴出した玄武岩は一旦は陸上に顔を出すまで積み重なったと推定される。高橋さんが処分場として推すのは、かつて陸上で噴出し、今は石灰岩の下に埋もれている「数kmの厚さ」の玄武岩層である。

 海洋プレートは、平均 2,500 m の深さの中央海嶺で生まれ、拡大を続けるとともに冷却によって沈降する。海洋底基盤の上面深度 D (m) は、 中央海嶺で生まれてからの経過時間 T (百万年単位)とともに、D = 2500 + 340 √T の式で近似されるように次第に深くなる(ただし誤差は大きい)。これに伴い火山活動の止んだ海洋島も沈降する。礁石灰岩は海洋島の沈降とともに海面すれすれに成長を続け、次第に厚くなる。現在の南鳥島の石灰岩の厚さは、陸上火山活動がいつ止んだのかがわからないと推定は難しいが、3,000 m を超えるとは考えられない。したがって、処分場建設のための掘削深度を 3,500 m 以深に設定する必要はない。もしかしたら 2,000 m くらいで済むかもしれない。

 にもかかわらず JAMSTEC がわざわざ困難を極める 5,000 m 規模の調査掘削を表明するのは何故か。深海掘削船「ちきゅう」の出番であるという宣伝のための意思表示なのであろう。もちろんそれは、「何とか金を取ってくるため」の宣伝なのであろうが、巨大科学の現場で、組織を守るために,あるいは組織を拡大しようとして科学そのものがねじ曲げられようとしているのではないか。

 一市民としての人のあるべき倫理に照らした内省を迂回し、外形的な多数決主義を「民主主義」と称する錦の御旗として用いるなら全体主義となんら変わらない。このブログの記事、ハンナ・アーレントの「悪の陳腐さ」のテーゼから学ぶこと  の最後に書いたことを再掲しておく。

 全体主義の元で法に従ってなされる罪の問題を掘り起こしたアーレントの功績は確かに大きく、学ぶべきことは多い。組織化された巨大な罪を個々にたどれば,凡庸な人間の、落差の大きさに笑ってしまうほどの陳腐な動機に基づくものであることが多い。日本においても全体主義が芽生えようとしているのではないかとの危機意識にたつとき、その危機の本質は、歯車に過ぎない小役人が、あるいは善良な科学者や企業人が、重大な犯罪に手を貸し、「人道への罪」、「人類への罪」を犯してしまうことにあり、今まさに凡庸な多くの市民さえ、その罪を犯しつつあるのではないかと思われてならない。

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