さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

 四国電力伊方原発3号機の運転差し止め仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁は12月13日、運転差し止めを命じる決定を下した。(毎日新聞ニュース

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを広島、愛媛両県の住民が求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、申し立てを却下した今年3月の広島地裁の判断を取り消し、四電に運転差し止めを命じる決定を出した。野々上裁判長は「阿蘇山(熊本県)の噴火で火砕流が原発敷地に到達する可能性が十分小さいと評価できない」などとし、火山災害による重大事故のリスクを指摘した。高裁レベルの差し止め判断は初めて。差し止め期限は来年9月末まで。仮処分はただちに効力が生じ、今後の司法手続きで決定が覆らない限り運転できない。
(以下略)

 この申し立ては、本年3月に広島地裁で却下されたことから、即時抗告されたもの。広島地裁では別に本訴が進行中で、異なる判断が下される可能性を考慮し、運転停止期間は18年9月30日までとされた。原発マネーと無縁な多くの地震学・変動地形学・地質学の専門家が指摘するように、伊方原発は、浜岡原発に次いで、もしくはこれと同等に世界一危険な原発である。その運転の差し止めを認めた広島高裁の決定をひとまず歓迎したい。

 広島高裁(野々上裁判長)の決定はどのような理由によるものか、また、同じ争点を持つ九州電力川内原発の運転停止を求める仮処分申請の即時抗告審における福岡高裁宮崎支部の棄却決定の理路とどの点で分岐したのか。これらの点について整理することは、仮処分申請を却下した広島地裁で争われる本訴にとって重要であろうから、弁護団では詳細な検討が続けられている筈だ。ここでは、いくつかの争点について備忘録としてまとめておく。

 広島高裁の決定文(pdf-22.5 MB)は、400ページを超える長文で、92ページから以下に示す争点毎に双方の主張が整理され、175ページ以降において、個々に高裁の判断が述べられている。

(1)司法審査の在り方(争点1)
(2)新規制基準の合理性に関する総論(争点2)
(3)新規制基準の合理性に関する各論(争点3)
  ア 基準地震動策定の合理性(争点3の(1))
  イ 耐震設計における重要度分類の合理性(争点3の(2))
  ウ 使用済み燃料ビット等に係る安全性(争点3の(3))
  エ 地すべりと液状化現象による危険性(争点3の(4))
  オ 制御棒挿入に係る危険性(争点3の(5))
  カ 基準津波策定の合理性(争点4の(6))
  キ 火山事象の影響による危険性(争点3の(7))
  ク シビアアクシデント対策の合理性(争点3の(8))
  ケ テロリズム対策の合理性(争点3の(9))
(4)保全の必要性(争点4)
(5)担保金の額(争点5)

司法審査の在り方(争点1)について
 争点1において、高裁の決定は、「人格権に基づく差止請求の要件」について検討する中で、伊方原発から 60 km の松山市に居住する抗告人1名について、伊方原発の事故によって「生命、身体に直接的かつ重大な被害を受ける地域に居住する者に当たる」と認定し、同 100 km の広島市居住者3名についても「重大な被害の及ぶ蓋然性が想定できる地域に居住する者といえる」とし、当事者性を認定している。原発から 100 km の距離に住んでいることで当事者性を認めたのは画期的とも言えるが、これは地裁による原決定を追認したものである。その上で、被害の発生が危惧される全ての論点に渡って相手方(四電)の説明が抗告人の主張をことごとく退けることに成功しているかどうかが(差止を認める)最終判断の基準になるとしている。

 付言として、本件の争点は「抗告人らの生命、身体等の人格権が侵害される具体的な危険があるかどうかであり、その危険がある場合には、相手方が本件原子炉の運転を継続することは違法であって、原子力発電の必要性や公益性が高いことを理由として、本件原子炉の運転を継続することは許されないというべきである」(p. 179)としている。これは、決定が出されると、例えば「わがままな訴えだ」とかなんとか巷でいろいろと取り沙汰されるであろうことを見越して、争点以外の論点を持ち込まないのが法律論であり、裁判のルールなのだと「世間」に向けて、予め釘を刺している訳であろう。このことは、後に述べる「争点3の(7)」をめぐる決定にとっても重要な視点である。

 また、原子炉等規制法1条の「大規模な自然災害」は「合理的に予測される範囲を超える大規模な自然災害」と解すべきであるとする抗告人の主張に対して、「最新の科学的、専門技術的知見を踏まえて合理的に予測される規模の自然災害」と解すべきとする四電の主張を是とする判断も、同様に重要である。このを点めぐってもまた、現行法の論理構造が法律論に則って厳密に検討されており、個々の条文の是非が争点になっていない以上、現行法に厳密に従った「訴訟指揮」がなされることを示している。その上で、争点3の(7)以外、抗告人の主張を退け、原子力規制員会の判断と相手方の主張の合理性を認めているのである。

基準地震動策定の合理性(争点3の(1))について
 争点3の(1) についてはP. 212〜316に渡って詳細に検討されているが、島崎邦彦元原子力規制員会委員長代理が提起した現行のモーメントマグニチュード(Mw)の見積もり手法の欠陥についての指摘も、現行の予測手法(いわゆるレシピ)に変更を迫るものではないという趣旨の判断が示されている。争点3の(1) はこの申立の核心部分であったと思われるが、高裁の決定文を読むと、この争点での敗北は、私の本年2月26日の次の記事で指摘した危惧が現実のものとなったことを示している。


 SSHACの確率論的地震ハザード解析ではロジックツリーの構築と分岐点の重み付けは多数の専門家のチェックを受けることが前提とされているが、日本においては伊方原発について民間の組織(電中研)主導で試行的に検討が開始されたばかりで、まだ完了していない段階のものであり、決定文p.316の「合理的」とする結論は不当である。

 このことはまた、島崎さんの、政府の諮問委員会の中で科学が捻じ曲げられるという経験が、予測の不確かさの表現をめぐるものであったことを想起させる。重大な事故に繋がりかねない事象の予測が不確かであるほど、当然、予防的な措置にも不確かさに応じた大きな余裕(安全率)が見込まれるべきと考える専門家と、不確かであるほど重要視しなくても良いとする「原子力ムラ」の考え方が対立しているとき、高裁の決定は後者に与したと言える。島崎さんの言を借りれば「練達の行政マンにとって,世間を知らない裁判官を操ることは容易だ」ということになろう。いずれにしてもSSHACの理念への批判的視点の確立は、今後の裁判闘争にとって避けて通れない課題となった。

火山事象の影響による危険性(争点3の(7))について
川内原発のケース
 この決定で唯一申立人の主張が認められた争点であるが、先に、同じ争点で却下された川内原発の運転停止を求める仮処分の即時抗告審における福岡高裁宮崎支部の決定を見ておこう。


 この争点の核心部分は、カルデラ噴火のような火山爆発指数(VEI)が7に達する破局的噴火の可能性が原子炉の立地評価に影響するかという点にある。福岡高裁の決定理由では、現在の噴火予知の科学水準が十分ではないとの認識から、「発電用原子炉設置の安全性確保のための火山事象の想定においては「我が国の社会がこれに対する危険性をどの程度まで容認するかという社会通念を基準として判断するほかない」(p.221)として、次のように述べている。

 そうであるところ、少なくとも今日の我が国においては、このようにその影響が著しく重大かつ深刻なものではあるが極めて低頻度で少なくとも歴史時代において経験したことがないような規模および態様の自然災害の危険性(リスク)については、その発生の可能性が相応の根拠を持って示されない限り、建築規制をはじめとして安全性確保の上で考慮されていないのが実情であり、このことは、この種の危険性(リスク)については無視し得るものとして容認するという社会通念の反映と見ることができる。 
 そうであるとすれば、発電用原子炉施設の安全性確保についてのみ別異に考える根拠はないというべきであり、上記の通り発電用原子炉施設についてのみこの種の自然災害の危険性(リスク)についてまで安全性確保の上で考慮すべきであるという社会通念が確立しているとまで認めることはできず、このような危険性(リスク)をも発電用原子炉施設の安全性確保の観点から自然災害として想定すべきか否かは、結局とのところ政策判断に属するものというべきところ、少なくとも原子力利用に関する現行法制度のもとにおいては、これを自然災害として想定すべきとの立法政策がとられていると解する根拠は見出し難い。(p.222)

 結論的には、規制委員会の審査で採用されている原子力発電所の火山影響評価ガイド(以下、「火山ガイド」: pdf-12.1 MB)が、原子炉設置の立地条件としてカルデラ噴火を考慮すべき自然災害として想定していることを「立法政策」とは認定せず、社会通念に照らして「不合理」とする判断を下している。

 一方でまた、九電が規制委員会の求めに応じて行った川内原発の火山影響評価(pdf-29.5 MB)をもとに、破局噴火発生の可能性が相応の根拠を持って否定されていると認定している。さらに、影響を及ぼす最大の噴火として九電が想定した 噴出量 10 km^3 (入戸火砕流の1/20)の桜島薩摩噴火規模の噴火への備えで十分であると認定している。その上で次のように結論する。

 立地評価に関する火山ガイドの定めは、少なくとも地球物理学的および地球化学的調査等によって検討対象火山の噴火の時期および規模が相当前の時点で的確に予測できることを前提としている点において、その内容が不合理であると言わざるを得ないが、相手方が火山影響評価の検討対象火山として抽出した火山に含まれるカルデラ火山との関係において立地不適としなくても本件原子炉設置が客観的に見て安全性に欠けるところがあるということはできず、・・・(p.257-258)

 以上は、現在の火山学は噴火の時期や規模を相当前の時点で予測できるレベルにないが、九電の予測だけは信頼に足るものであるとの前提に立っており、福岡高裁の決定は不当である。また、立地評価に関する火山ガイドの定めが検討対象火山の噴火の時期および規模が相当前の時点で的確に予測できることを前提としているという記述も誤りであり、正しくは、「影響を及ぼす可能性が十分小さいか」どうかについての判断を求めているにすぎないものである。「十分小さい」が、どの程度の確率を指すのかについて議論するならまだしも、破局噴火はあり得ないとする九電の「予測」を的確と評価する決定に唖然とする。

 さらにまた福岡高裁の決定は、火山ガイドの定めが社会通念に照らして妥当かどうかといった、争点としては明示されていない論点を勝手に持ち込んでいる点も見過ごせない。この点で次に述べる広島高裁の決定と対照的である。

広島高裁の決定
 争点3(7)に関わる広島高裁の決定では、先ず、「第2 事案の概要」の「2 前提事実(争いのない事実又は疎明資料等により容易に認定できる事実)」の中で、火山ガイドの考え方について、立地評価と影響評価の二段構えになっていること(p.69-70)を述べた上で、それぞれについて解説されている。ここでは、立地評価について示された以下の手順が重要である(p.70-73)。

(ア)原発から半径 160 km 範囲の領域にある第四紀(約 258 万年以降)に活動した火山を抽出する。(範囲を160 km とするのは、国内最大の噴火であった阿蘇4噴火(9万年前)の火砕流の到達距離が 160 km であったから)
(イ)この領域に第四紀火山がある場合には、完新世(約1万年前以降)に当該火山の活動があったか否かを評価し、完新世に活動があった火山は将来の活動可能性のある火山とする。
(ウ)a 運用期間中の火山の将来の活動可能性の評価を行う。 b 設計対応不可能な火山事象の到達可能性の評価を行う。 調査結果から原発運用期間中に発生する噴火の規模を推定できない場合は、検討対象火山の過去最大の噴火規模を想定する。 次いで、設定した噴火規模における設計対応不可能な火山事象が原発に到達する可能性が十分小さいかどうかを評価する。

 もし、設計対応不可能な火山事象が原発運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価されない火山がある場合は、原子力発電所の立地は不適となり、この場合、当該敷地に原子力発電所を立地することは認められない。今回の決定は、まさに上記(ア)→(イ)→(ウ)b の手順に従って、阿蘇4規模の火砕流の伊方原発への到達可能性が十分小さいと評価できないことをもって、立地不敵と判断された訳である。

 この点について決定理由では、まず、「火山学者緊急アンケート」(pdf-947 KB)や専門家の陳述書などを引用しつつ、現在の火山学では、破局的噴火へ至る経過、時間スケール、規模等の予測が全く不可能であり、したがって、阿蘇4規模の噴火の可能性が十分小さいことを評価できないことが示される(p. 351-358)。そこで問題は大規模火砕流の到達可能性であるとして、阿蘇4規模の噴火があれば伊方原発へ火砕流が到達する可能性が十分あることが論証され(p. 359-362)、「本件は、地理的領域内に「設計対応不可能な火山事象が原子力発電所運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価されない火山がある場合」に当たり、立地不適ということになる」と結論される。

 ついで、福岡高裁宮崎支部の決定と、これを踏襲した広島地裁の原決定が論拠とした「社会通念」に同意する立場から、「火山ガイドが立地評価にいう設計対応不可能な火山事象に、なんらの限定を付すことなく破局噴火(VEI7以上)による火砕流を含めていると解することには、少なからぬ疑問がないではない」としつつ、そのことは「多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門的知見に基づく総合的判断が必要とされ」ることであり、原子力規制委員会に専権事項として委ねられているのであるから、原決定判示のような限定解釈をして判断基準の枠組みを勝手に変更することは許されないとの原則的立場が示される。

 争点3(7)に限っても、論点は多岐にわたるが、この点についての広島高裁の決定は妥当なものと評価できる。何より、仮処分申立の即時抗告という、短期間で結論を出さなければならない事案について詳細な検討がなされていることに驚いたが、疑問もない訳ではない。例えば、冒頭に「世界一危険な原発」と書いたが、その危険性の本質は中央構造線系活断層帯による地震ポテンシャルの高さにある。その点で、この決定が規制庁の審査結果を追認するにとどまったのは残念である。

 参考までに関連するYouTubeの動画を貼っておく。今更感もないではないが、松田時彦さん(5分くらいから)他の貴重な証言が聞ける。



全1ページ

[1]


.
さつき
さつき
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!
CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事