さつきのブログ「科学と認識」

福島第一原発、アンダーコントロールで、わざと昨年の2倍の放射能を放出か

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 「プルトニウムは飲んでも平気」、「水蒸気爆発は起こるわけない」、「メルトダウンじゃないだす」・・・他にもあったような。まあ、たいがいにして欲しいが、ここへ来て原発迷言に新たな1ページが・・・

産経ニュース
から一部を引用:
エネルギーを専門とする北海道大大学院の奈良林直教授は、「大規模な火砕流が起きれば火力発電の燃料タンクが破壊され、火山灰で太陽光や風力などは停止する可能性が高い」と指摘。その上で、新規制基準に適合した原発の堅牢(けんろう)性を主張し、「破局的な事態でこそ、最後に残るエネルギー源として活用すべきだ」と話す。・・・

 これは12月13日、広島高裁の伊方原発3号機運転差し止め即時抗告審で運転差し止めを命じる決定が出されたことへのコメント。記事は安定の産経クオリティだが、奈良林さんは、破局的噴火の大火砕流が襲っても原発だけは大丈夫と言っているわけだ。規制委員会の火山影響評価ガイドでは、破局的噴火の火砕流には対処しようがないので、そのような危険があるところに原子炉を設置してはならないとされているのに、メディアの取材にこんなコメントを言えるとは、これぞ原子力ムラ住民の鏡と評すべきか。破局的噴火の火砕流がどんなものか知らないのか、それとも知ってて言っているのか。

阿蘇4火砕流の到達範囲
 まず、阿蘇4火砕流の到達範囲を確認してみよう。図は産総研地質情報総合センターが公開している20万分の1日本シームレス地質図を利用して作図したもの。ピンク色は凡例番号 900(九州内)と902(山口県内)で、この範囲ではほぼ阿蘇4火砕流堆積物に相当する。

イメージ 1

 これは9万年間の削剥を免れて残された部分であり、より若い火山岩などに覆われて、表示されていない部分もある。地表に露出しているもののほとんどは、高温のために火山ガラスが癒着した溶結凝灰岩である。非溶結部の大部分は削剥されてしまっているので、もとはもっと広い範囲に分布していたはずだ。

 緑色の線は群馬大の早川由紀夫さんが推定した阿蘇4火砕流の到達範囲であるが、実際はこの外にも結構分布している。例えば、山口県内の青丸は、阿蘇4火砕流の定置温度を求めるために熱残留磁気の測定が行われた試料採取位置であり(後述)、最も遠いのは、阿蘇山から165 km 離れた日本海側の萩市南部のものである。また、玄海原発に近い福岡県の糸島半島にも残っている(赤丸)。重要なのは天草下島のもの(赤楕円)がしっかり溶結していることだ。これは、「御領石(ごりょういし)」と呼ばれる石材として、石垣や石灯籠などに利用されている。ちょっと高額だが御領石製のくまモンが売られているので、確かめたい人はどうぞ。噴出源から遠いので結構細粒になっている。

イメージ 2

 この位置で石材に使えるほど溶結しているということは、非溶結部がさらに遠方まで広がっていたことを意味する。実際に160 kmを超えて到達しているのだから、規制委員会が作成した火山ガイドで大規模火砕流発生について検討すべき火山の「地理的領域」を原発から160 km の範囲としているのは当然のことである。

風速 200 m の「暴風」
 VEI=7 に達する破局噴火では巨大な噴煙柱の崩壊によって発生する火砕流の流下速度は想像を絶するものになる。九電が規制委員会の求めに応じて行った川内原発の火山影響評価(pdf-29.5 MB)で、姶良カルデラの入戸(いと)火砕流を比較的よく再現しているとされたシミュレーション結果を見ると、噴出源から5分で 65 km、10 分で125 km まで到達しているので、時速 720 km、秒速 200 m 以上ということになる。大規模火砕流の流速が時速 700 km 以上になることは、こちらの講義用テキストの p. 37「火砕流」の項目にも記されている。火砕流は粘性流体として振る舞う密度流で、瞬間風速 200 m 以上の、大気よりずっと高密度の「暴風」に晒されることになる。

 阿蘇4火砕流の「暴風」がいかに凄まじいものであったかは埋れ木の少なさが物語っている。調べても、大分県日田市小野川のものと佐賀県上峰町八藤丘陵のものしか見つからない。小野川は阿蘇山から約 60 km で、埋れ木の直径は大きいもので1メートル以上あり、こちらのサイトによると樹木表面に火山礫が刺さっているものがあるらしい。八藤丘陵は阿蘇山から約 80 kmで、最大直径1.5 m、長さ22 mの巨木が含まれ、吹きだまっているように見える。阿蘇4火砕流の基底部の露頭は至る所で観察されるのに埋れ木の報告が稀なのは、地表に立つもののほとんどが吹き飛ばされてしまったということだろう。

400〜900℃の高温
 火砕流の定置温度を見積もる研究は古くから多数なされている。阿蘇4のように溶結凝灰岩を含む厚い火砕流の典型的なものは、冷たい基盤に接する基底部に1〜2mの非溶結部があって、その上に溶結凝灰岩が重なり、全体の上半部〜3分の1が非溶結となっている。当然、部位によって温度は異なっている筈だ。基底部の非溶結部に覆われた埋れ木は、炭化が不完全で、400℃の温度見積もりがなされているが、その上の溶結部はかなり高温になる。鈴木(1970)の軽石の軸圧焼結実験によると、溶結作用は、ドライな場合で 850℃くらいから、また火山ガラスがH2Oを0.45 %含む場合には600℃くらいから進行するようだ。強溶結部では900℃程度との推定が一般的。藤井・中島(2008)は、阿蘇4火砕流の到達縁辺部に相当する山口県下から採取された非溶結の試料について、日本海側の萩市南部(阿蘇山から165 km)のものを除き、安定した熱残留磁気を得て、定置温度を400〜550℃と見積もっている。

大規模火砕流が原発を襲ったらどうなるか
 以上のような破局的噴火の火砕流の特徴を理解したら、原発は大丈夫などとは決して言えない筈だ。まず、密度流の暴風によって送電線の鉄塔は全てなぎ倒され、格納容器は無事でも、それ以外の建屋は第一撃で壊滅してしまうだろう。しかも、あっという間に数十mの厚さの高温の火砕流堆積物に埋まってしまう。たとえ火砕流の厚さが数mと薄くても辺り一面火の海になるだろう。火砕流は、数ヶ月以上も人が近寄れない程の高温状態を保つ。海は厚い軽石層で覆われ、取水口は塞がれるだろう。何れにしても、冷却どころの騒ぎではない。

 例えば、Flying Zebra @f_zebra さんの思考実験がいかに楽観的過ぎるものであるか、多くの人に知ってほしい。

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引用文献
鈴木(1970)pdf: 788 KB)
藤井・中島(2008)(pdf: 2.7 MB)

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