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鬼蜘蛛おばさんこと松田まゆみさんのブログの2月17日付「南相馬の恐るべき汚染」と題するエントリを読み、南相馬で「発見」された高濃度の汚染物質のことを知って、事の成り行きを見守っていたら、kojitakenさんの2月28日付「日記」で新たな展開を知った。 この問題がテレ朝の『報道ステーション』でセンセーショナルにとりあげられたことに対して、NHKのディレクター氏が自身のブログで批判の記事をアップしたのだ。
コメント欄は多少荒れ気味である。ウェブ上では、このNHKのディレクター氏の記事を批判するブログ記事も書かれている。
これを読んでも、なにがデマなのか良くわからない。そこで、「震源地」となった南相馬の大山市議の反論記事などを読む。
さすがNHKスケールが違う!(2月28日)
ここにとんでもないことが書いてあったので、このエントリーを上げた次第。
おそらく、「Bq/kgからBq/m2への変換方法について」(日本保険物理学会「暮らしの放射線Q&A])などの説明を誤読しているのだろうが、大山市議が書いていることは一種のデマである(デマの定義にもよるが・・・)。
大山氏のブログ記事や、そこにアップされた動画などを見ると、「黒い物質」はアスファルトの上の狭い範囲に、数mm程度の厚さで<薄く堆積>している。
地表5 cmと仮定してBq/m2に換算できるのは、汚染物質が5 cmの厚さに存在している場合、正確には、試料を地表5 cmの深さまではぎ取って1kgあたりのBqを測定した場合である。放射能がもっぱら表面の「黒い物質」に濃集している場合、それだけをかき集めてBq/kgを測定すると、当然高い数値になるが、5 cmの深さまで掘って採集した全体では、1 kgあたりのBqはかなり低くなる。
そしてまた、この「黒い物質」は、満遍なく地表を覆っている訳でもない。例えば、付近の地表の20%だけを覆って分布しているとすれば、Bq/m2に換算するには、逆に、その地表20%の「黒い物質」を全体に延ばし広げ、5分の1の濃度にしなければならないのである。放射能がもっぱら「黒い物質」だけに濃集している場合、深さを5 cmと仮定しても、15 cmと仮定しても、その下の土壌や岩石中の自然放射能分が割り増しになるだけで、Bq/m2の値はあまり変わらない。
別の言い方をするなら、仮にその「黒い物質」が広範囲に渡って1 m2当たり200 g存在しているとすると、自然放射能成分を除けば、108万ベクレルの5分の1、すなわち約22万 Bq/m2となる。もちろん、南相馬の放射能汚染は、この「黒い物質」だけに限らないので、実際にはもっと高くなる筈だ。
現在の南相馬市の放射能汚染度がどれくらいかは、公開された情報がいくらでもあって、誰でも知ることができる。たとえば、文科省が公開しているのは下記。
これらの報告書中、「セシウム134、137の沈着量の合計」を見ると、南相馬市は、西側で300万Bq/m2以上と大変高く、東側では6万〜10万 Bq/m2、ところによっては3万Bq/m2以下と低くなっている。『報道ステーション』によると、問題の「黒い物質」が採集されたのは、南相馬市のほぼ中央地点で、この場所のセシウム134, 137の合計の放射能は、10万〜30万 Bq/m2、もしくは30万〜60万Bq/m2のどちらかの範囲にある。100 万Bq/kgの物質が、あちこちに点在しているであろうことは、十分に予想される汚染量なのである。
実際に、このような「マイクロスポット」の存在は、NHKディレクター氏の指摘を待つまでもなく、かなり以前から報道されていたもので、それを地表の平均的な汚染の尺度であるBq/m2に換算しても意味がない。問題は、それで、実際の空間線量率がどれくらいになっているかという点にある。
大山市議の記事では、その点にふれて(計算上)「251.15 μSv/h」になると書いているが、唖然とするばかりである。smitaさんではないが、「最初に読んだとき、珈琲を飲みながら、或いは煙草を吸いながらでなかったのは幸い」である。現に、「黒い物質」直上で、数〜数十μSv/h という測定値が示されているではないか。どうしてこういう書き方になるのか理解に苦しむ。
もちろんこれが安全と言いたいのではない。要は、既に広く知られている現象、あちこちに高線量の物質が点在しているということを、あたかも新事実が発見されたかのごとくセンセーショナルに発表しているということ。
この「黒い物質」も、十分危険な汚染物質であるには違いない。市議としては、分布場所の詳細をただちに公開し、人が近づかないような策を講じ、除染に向けた取り組みを開始するといったことを粛々と進めるべきではなかったか。そういう動きが見られなかったのは、恐怖心を煽っているだけと批判されても仕方のない行為だと思う。尤も、それに便乗した『報道ステーション』の方が害悪が大きいかもしれない。
プルトニウムについても、既に福島第一原発の事故による放出が確認されていて、わかっている限り、問題にするほどの危険な量ではない。α線が検出されていると「警告」しているが、こちらの動画を見る限り、天然に存在するウラン系列(大気中にあるラドンや、雨とともに降り注ぐポロニウム、鉛ー210など)のレベルである。
ただし、α線は専用の表面汚染サーベイメータでも検出は大変むずかしく、数カウント/秒(cps)でもあれば、人工的な汚染を疑うべきで、今後も、プルトニウムの「ホットパーティクル」が、どこにどのように分布しているかは継続して追求されるべきだとは思う。
追記(3/5)
標高の高いところの高濃度の汚染は、やがて里山や市街地へ降りてくる。森林生態系への影響も避けられないだろう。100万Bqくらいでは驚かなくなる事態が怖い。 |
備忘録
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「沖縄タイムス」2月4日配信の「米、普天間の辺野古移設を断念へ」と題する記事が目に入った。
[CML 014772] にまっぺん氏の投稿がある。
「転載・転送大歓迎」とあるので、以下に貼り付けておく。
どうなるか、予断は禁物。
目取真俊(めどるましゅん)氏の記事に教えられる。
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昨年は年の瀬ギリギリまで仕事が忙しく、一年を振り返って区切りをつけることもできず、このブログも5ヶ月間放置したままであった。年初にあたって、取りあえず、積み残してきたことを備忘録としてメモしておきたい。 ●『伊丹万作エッセイ集』(大江健三郎編、筑摩叢書180)を読みかえす。 本書に収録された「戦争責任者の問題」(p. 75-85)で伊丹は次のように書く。 「そして、だまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも雑作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己のいっさいをゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。」 「『だまされていた』といつて平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによってだまされ始めているにちがいないのである。 一度だまされたら、二度とだまされまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。この意味から戦犯者の追求ということもむろん重要ではあるが、それ以上に現在の日本に必要なことは、まず国民全体がだまされたということの意味を本当に理解し、だまされるような脆弱な自分というものを解剖し、分析し、徹底的に自己を改造する努力を始めることである。」 昭和21年8月、伊丹が亡くなるひと月前に『映画春秋』創刊号に掲載されたものである。これに先立つ終戦末期に病床で書き付けられた「戦争中止ヲ望ム」(p. 61-62)では、 「現在ノママデ戦争ヲツヅケルカギリスベテハ絶望デアル。唯一ノ道ハイカナル条件ニモセヨ一旦戦争ヲ終結サセテ、科学ニ基礎ヲ置イタ国力ノ充実ヲ計リ、三十年五十年後ノ機会ヲ窺ウコト以外ニハアルマイト思ウ。科学を軽視シタ報イガイカナルモノカ。物力ヲ軽蔑シタ結果ガイカナルモノカ。民力、民富ノ発展ヲ抑制シタ罰ガイカナルモノカ。ソレラノ教訓コソハコノ戦争ガ日本ニ与エタアマリニモ痛切ナ皮肉ナ贈物トイウベキデアロウ。」 と書く。 さて、戦後は、「科学に基礎を置いた国力の充実を計る」ためにこそ、原発が導入されたのであろう。その真意は核兵器所有にもあったのかもしれない。 戦後間もない頃の原発への幻想が左翼陣営をも蝕んでいたことは、加藤哲郎氏による次の論考に明らかである。
そこでは、武谷三男氏や日本共産党の「原子力の平和利用」論の歴史的変遷について詳しいが、吉本隆明が『「反核」異論』(深夜叢書社、1982年)で示したシニシズムの果たした役割については押さえられていない。当時高揚しつつあった反核運動の担い手の中には吉本のエピゴーネンとも言える者らもいたことを知っているが、おそらく、当時、少なからぬ驚きと戸惑いも広がり、いくらかは反核運動の沈滞に手を貸すことになったのではないかと思う。 吉本への正面からの批判は土井淑平著『反核・反原発・エコロジー』(批評社、1986)によってなされている。要するに、吉本もまた、情勢認識のために必要かつ正確な情報を持っていなかった、つまり、体よくだまされたのである。 加藤氏の「ネチズンカレッジ」には少し前まで田中正造の言葉、 「真の文明は、山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」
が大きく掲げてあった。その田中正造に手厳しいのは、前田朗氏である。 伊丹万作著作集の編集にあたった大江健三郎は、編集後記のようなもので次のように書いた。 「僕は伊丹万作の遺したすべての文章の原則ともすべき中心に『演技指導論草案』をおき、(農民のなかで実践しつつ、その経験からうまれたところの真の法則を『農民芸術概論要綱』として書きしるした宮沢賢治を考えながら、そうしたいのであるが)、一翼に『シナリオ時評』を、そしてもう一翼に、病床の日記、ノート風の文章を置くことによって、伊丹万作の経験と思考のたどりついたところを、そのあまりに早すぎた晩年の全体を、把握したいと思うものである。」(p. 327) 宮沢賢治については、私自身、ここでも短い文章を書いたが、前田朗氏は、賢治に対しても手厳しい。 人は間違いを犯す。それは不可避である。自らは何ものにもだまされていないなどということは、すくなくとも当人にとっては証明不可能だ。だから、特定の個人を全面的に肯定したり、逆に全面的に否定したりすることは避けなければならない。 ● 島薗進氏のブログ「島薗進・宗教学とその周辺」を読む この間、もっとも良質の文章は、自然科学者によってではなく、宗教学者によって書かれたことを確認する。 |
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東電原発事故を受けて3月17日から適用されてきた飲食物の放射性元素暫定規制値の問題点については、既に4月30日の記事「放射性元素の食品暫定基準値のトリック、または、越境する科学」に書いた。ウェブ上では、この規制値の導出法についてフォローし、その問題点を指摘する記事なども見かけるが、そうした問題があること自体の認知度が低いというのが現状であろう。
しかし、前回の記事は、急ぎまとめたために説明不足で、不正確な記述もあって、改訂の必要性を感じていた。そのうち、きちんとまとめ直そうと思うが、とりあえずは、暫定規制値の導出法について、論評抜きに備忘録としてまとめておく。
以下、平成10(1998)年3月6日付の原子力安全委員会・原子力発電所等周辺防災対策専門部会・環境ワーキンググループによる「飲食物摂取制限に関する指標について」と題する文書(以下、「説明書」)に基づいて、野菜類についてのヨウ素131の暫定規制値である2000 Bq/kgという値がどのように導かれているかを記す。
基本となる計算式は、誘導介入レベルを求める下記の式1)である(「説明書」のp8)。
DILkj =( ILD/G)/(F・Wkj・ΣiSij・fi・(1 - exp (-λi・365))/λi) …… 1)
ただし、
添え字k:食品群を表し、ヨウ素の場合は、飲料水、牛乳・乳製品、野菜類(根菜、芋類を除く)の3群に分ける。
添え字j:年齢群を表し、成人、幼児(5歳児で代表)、乳児(3ヶ月児で代表)に分ける。
添え字i:個々の放射性核種を表し、ヨウ素群は、ヨウ素131, 132, 133, 134,135にヨウ素132の親核種であるテルル(Te)132を加える。このうちヨウ素131を代表核種とし、運用時にはヨウ素群全ての核種による被曝線量を考慮しつつ、ヨウ素131の測定値をもって判断できるよう定められる。
DILkj: 誘導介入濃度と呼ばれ、年齢群 j について、次のILD(介入線量レベル)に達する食品群 k 中の放射能濃度で、単位はBq/kg またはBq/リットルで表す。農産物の出荷制限などの規制値の基礎となる、許容上限の汚染濃度。
ILD:介入線量レベルと呼ばれ、公衆の放射線防護のため対策をとるべき被曝線量レベル( mSv/年)。ヨウ素グループについては、年間に許容される甲状腺等価線量を 50 mSvとして、その2/3 の 33.33 mSvを3つの食品群に割り当てる。残り1/3は3食品群以外のものに含まれる保留分である。
甲状腺等価線量の50 mSvは、全身に換算すると2 mSvに相当するとされる。
年齢によらず一定の値を採用するのは、年齢による感受性が線量換算係数(下記 Sij )の年齢群による違いに反映されているからである。
G:食品群に汚染がまたがる場合のDIL低減比で、ヨウ素群については G = 3 とする。つまり、上記ILDの33.33 mSv を3つの食品群に均等に分配し、例えば野菜類の摂取による被曝として11.11mSvまで許容するということ。
F:年平均濃度とピーク濃度との比、長期間にわたる汚染では、崩壊定数に従った減衰以外にも、時間的、空間的な希釈効果が働くと考える。ヨウ素群はいずれも半減期が短く、そのような希釈効果は考慮する必要がないので F = 1 とする。セシウム群ではこの値が0.5となる。
Wkj:年齢群 j による食品群 k の1日当たりの摂取量(kg/day)、ヨウ素群については、成人の1日当たりの野菜の摂取量を0.4 kgとする(「説明書」のp6参照)。
Sij:放射性核種 i を1Bq摂取した場合の年齢群 j の貯託線量 (mSv/Bq)、すなわち貯託線量換算係数のこと。ヨウ素群に対しては、甲状腺(貯託等価)線量換算係数とする。
fi:代表核種または核種群に対する核種 i の初期(核分裂停止0.5日後)の存在率。ヨウ素群の代表核種はヨウ素131。
λi:核種iの崩壊定数。半減期をTとすると、λ=Ln(2)/T として求められる。
Bij = Sij・fi・(1 - exp (-λi・365))/λi ………… 2)
とおくと、1)式は
DILkj =( ILD/G)/(F・Wkj・ΣBij) ………… 3)
と書ける。
2)式のBijは、年齢群 j について初期に1 Bqであった放射性核種iの量が崩壊定数にしたがって減り続けると仮定したときの、日々の摂取による貯託線量を1年間について積分した値となる。このような導出法が根本的な問題をはらんでくるが、この点については別の機会に改めて整理する。
ちなみに、D = N0(1-exp(-λt))と書けば、親核種の初期の原子数がN0であるときの時間 t 後の娘核種の数となり、放射化学の基本式の一つである(ただし、娘核種が安定同位体のとき)。
ヨウ素群の個々の核種の成人についてのBijを計算すると下記のようになる。
Bijの合計は、ΣiBij = 5.32E-03 となり、ほとんどがヨウ素131によるものであることがわかる。
以上の数値を3)式に代入すると、成人にとっての野菜の誘導介入濃度は
DILkj = (33.33/3)/(1×0.4×0.00532) =5221 Bq/kg
となる。
これが、「説明書」p10の表6に示された値である(ただし、5220と丸められている)。
同様に、幼児と乳児についての値を求めると、それぞれ、2500、3280となる。幼児より乳児の値が大きくなるのは、主に乳児の野菜摂取量が70 gと少量であることによる。
この中で、最も小さい値である2500に安全率を見込んで2000 Bq/kgとしたのが、暫定規制値ということになる。
こうして導出されたヨウ素の誘導介入濃度と現在の暫定規制値を以下にまとめる(「説明書」のp10, 19)。
ヨウ素群の誘導介入濃度と暫定規制値(Bq/kg) 代表核種はヨウ素131
赤色は、各食品群中の最小値を示し、安全率を見込んで、この値を下回るキリの良い値として暫定規制値が定められている。
セシウム群については、Sr-89とSr-90を含むものとし、代表核種はCs-134とCs-137の合計とする。また、介入線量レベルILD を年間の実効線量 5 mSvとし、食品を5群(飲料水、牛乳・乳製品、野菜類、穀類、肉・卵・魚介類・その他)に分ける。したがって、個々の食品群の介入線量レベルを5等分するため、1)、3)式のGを5と置く。さらに、セシウム群は比較的半減期の長い核種が多いので、1年を通しての放射壊変によらない希釈効果を考慮して、F = 0.5 とする。 以上に述べた導出法の問題点については、別途まとめる予定である。
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東電原発事故の放射能による土壌汚染の実態(核種構成の地域的な変化)を詳細に明らかにする文科省のプロジェクトが動き出し、私の所属する教室からも院生がかり出されている(ほとんどは自発的なボランタリー)。また、避難指示区域以外にも年間20 mSvを超えると予想される「ホットスポット」の存在が明らかにされ、放射線量の測定ポイントをさらに密に展開する必要性も指摘されている。
ところで、日本の大地からの自然放射線量の分布図が日本地質学会のHP上で公開されていて、この図を貼り付けたブログ記事などもみかけるようになった。これは、地上1m高で実測された空間線量率(空気カーマ)と、その地域の岩石や土壌の放射性元素(カリウム:K, ウラン:U, トリウム:Th)の平均濃度との関係から経験的に求められた換算式による値(単位:μGy/h)である(注1)。この場合、ほとんどγ線によるものと考えて良いので、そのままμSv/hに置き換えても、大きな違いはない。
この図を見ると、大地からの自然放射線量は地域ごとに大きなばらつきを示し、それ自体が「ホットスポット」を形成していることがわかる。全体としておよそ10倍の開きがあり、高い地域は0.127μGy/h以上となっている。
関東圏の全自然放射線量(大地、大気、宇宙線からの合計)は、ほとんどの地域で0.05μGy/h以下であることからすると、大地成分だけで0.1μGy/hを超えるのは、かなり高い値と言えるが、花崗岩類が広く露出している中部地方や中国地方には、局所的に0.5 μGy/hを超えるところもあるのである。
福島第一原発由来の放射能で、東京都内においても比較的高い線量を示す「プチ・ホットスポット」と呼べる地点があるとの指摘があり、東京都も独自に調査をおこなうことになった。
「日刊ゲンダイ」の独自の調査によっても、最大で2.91μSv/hという、異常に高い地点の存在も明らかになっている。東京都内の場合は、かなり局所的な現象で、汚染物質を特定して、それを取り除くといったことも比較的容易に行えるのではないかと思う。
一方、テレビ報道で、花崗岩の化粧板を貼ったビルの傍で放射線量を測定しているのを見かけた。建築石材のほとんどは中国、インド、北欧、南アなどから輸入されたもので、それらの中には、日本の平均的な花崗岩よりかなり高いK, U, Th含有量のものがある。大きなビルの玄関周りの化粧板としてよく見かける茶色っぽい卵形のカリ長石を主成分として含む花崗岩(石材名はバルチックブラウン、岩石学上の名称はラパキビ花崗岩)などは、特に高い放射線量を示すものがあるので、測定には注意を要する。
この場合、β線に感度のあるサーベイメータを用いて、石材に接近した時にカウント率が急上昇する傾向があれば、建築石材が原因とわかるので要チェックである。ただし、建築石材の場合は、土埃になって吸い込んだり、地下水を汚染したりといった危険性はないので、それ自体を恐れる必要はないと思う。要は、原発事故による放射能と混同しないよう注意が必要ということである。
身の回りには、比較的高い放射能を含むものがある。私が一番驚いたのは、ホームセンターで購入した砥石である。茶褐色の細粒の砂を焼き固めたように見えるものであったが、普通の花崗岩の40倍のβ線を放っていた(注2)。いろいろ調べて、砂粒の主成分がジルコン(ZrSiO4)という鉱物であることがわかった。おそらく、海外のジルコンサンドから作られたのだろう。ジルコンには、ウランやトリウムをそれぞれ最大2%程度含むものがあり、地質年代の測定に利用される。この場合は、台所で使用するものであり、口に入る危険もあるので、使用しないようにした。
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注1)この図の放射線量は、全国の河川底質の化学分析値から次式によって算出されたものである。
D = 13.0 CK + 5.4CU + 2.7CTh (Beck et al.,1972)
ここで、Dは、地上1m高での吸収線量率(nGy/h)、CKは重量%で表したカリウムの濃度、CUとCThは、それぞれppmで表したウランとトリウムの重量濃度。分布図ではこの式で求められたDを千分の一にしてμGy/h単位で表示されている。
河川底質は、おもに上流域の平均的な地質を反映するので、実際に露出している岩石や土壌からの放射線量は、この図よりもさらに大きなばらつきを示し、かつてのウラン探鉱の候補地には、平均の100倍を超える所もある。
下記に、日本列島の平均地殻組成(Togashi,et al., 2000)、岩石標準試料から、平均的な花崗岩であるJG-1および比較的放射能の多い花崗岩であるJG-2のK, U, Th含有量と、上式から求めたそれぞれの放射線量を示す。
注2)上記注1)に示した試料と平均的な組成のジルコン(U: 500 ppm, Th: 400 ppm)の1kg当たりのベクレルを算出すると下記のようになる。これらの放射能が問題になることがないのは、食する物ではないからである。
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