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戦争は戦争のために戦われるのでありまして、平和のための戦争などとは嘗て一回もあったことはありません

かい人21面相

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「電波」たどると八幡市周辺に“拠点”


木津、宇治、桂川が合流する交通の要所。西国街道を行き来する人々を、八幡市の男山(147メートル)は見続けてきた。一九九四年二月、その山に座す石清水八幡宮境内の展望台に、グリコ・森永事件の府警の元専従捜査員が登った。社長誘拐事件の時効まで、あと一か月。

 一連の事件は二〇〇〇年二月に完全時効となった。だが、犯人グループが利用した「電波」をたどると、事件のシナリオを書いた人物の生活圏が、八幡市周辺にあったことをうかがわせる事実が浮かび上がる。

     ◇

 淀川の向こうに西から高槻市、島本町、大山崎町の山々が連なる。元専従捜査員は山腹にあるサントリーの工場の東側を凝視した。天王山だ。

 JRの電車を目で追いながら、「かい人21面相」を名乗るグループが読売新聞大阪本社に送りつけた挑戦状の一節を思い出した。

 「タカツキから 山崎え むせん とどきにくい わしが まん中に おって れんらく するんや」

 八四年六月二十八日夜、犯人グループは丸大食品に五千万円を要求、「白旗が見えたら、普通電車の窓から金が入ったバッグを投げろ」と指示した。その日、バッグは投げられなかったが、キツネ目の男が初めて車内で素顔をさらした。

 事件後、元専従捜査員は技術者を連れて天王山に登り、そこが警察無線の不感地帯であることを確認した。警察が知らない状況を犯人グループは知っていた。〈もし、ここで、警官に見つかっても、応援は呼べない〉。

 挑戦状の「わし」が、天王山の闇の中にアンテナを立てて仲間の無線を中継している姿を、何度も思い浮かべた。

  ◇

 21面相との戦いが二年目に入った八五年一月、キツネ目の男の似顔絵が公開された。警察庁指定・広域重要114号事件を抱えた若田末人・府警本部長は年頭視閲で「総合力で解決を」と訓示した。吉野毅・兵庫県警本部長も同様、神戸・ポートアイランドで部下を叱咤(しった)した。

 それから九日後、読売新聞大阪本社に届いた挑戦状には、こう記されていた。

 「全国の けいさつファンの みなさん え。 ポートアイランドの よしのくん かっこよかったで」

 兵庫県警の視閲式を放送したのは、神戸市のUHFテレビ局だけだ。映像は兵庫県内でしか見られないと思われていたが、電波は八幡市周辺にも届いていたことがしばらくして判明した。

 「21面相のリーダーは、吉野本部長の姿を見ていたんだろう。当時の捜査員が思いもつかない、八幡市辺りの隠れ家で」

 神戸からのUHF波が届き、「わし」が仲間の無線連絡を中継した天王山付近を見渡す場所。それぞれの点が線になっていく……。

 合同捜査本部は警察の威信をかけて府南部のローラー作戦を繰り返したが、グループの影を押さえることはなかった。

     ◇

 事件後、警察無線はデジタル化され、隣接府県警と乗り入れ可能な共通周波数を導入した。警察法の改正もあり、府県の壁を超えた初動捜査での連携も強化された。

 七五三詣での家族連れでにぎわう石清水八幡宮を思い浮かべながら、OBとなった元専従捜査員は今月中旬、事件を題材にした単行本を開いた。

 「東海道線、名神高速、天王山。パノラマのように広がる風景を、奴(やつ)らも見ていた」

 その思いは今も変わらない。

<ご当地記者>

京都と深いかかわり確信

 元西陣署巡査部長の連続強盗殺人事件の発生から一か月後。ポケベルの呼び出しで青酸入り菓子が見つかった京都市西京区のスーパーに転戦、騒然とした現場周辺を何日も聞き込み取材した。

 その後も京都、大阪両府警を担当し、「かい人21面相」の素顔を追い続けた。が、結局、その影すら見ることができなかった。怒り、悔しさ、疲労感……。後味の悪さが頭の片隅にこびり付いて離れない。

 ヤツらは間違いなく、京都と深いかかわりがある。今も、この町のどこかで息をひそめている。そう思えてならないのだが。

(社会部 松尾 徳彦)

<1980年代 こんな10年>

1980 京都駅前に地下街ポルタがオープン

 81 福井謙一さんにノーベル化学賞

 83 京都市議会が古都保存協力税案を可決

 84 京都・大阪の連続強盗殺人事件で元西陣署巡査部長を逮捕

 85 関西文化学術研究都市の起工式

 86 チャールズ皇太子とダイアナ妃が京都へ

 87 統一地方選。売上税で自民苦戦

 88 古都税廃止

 89 京都市内の基準地価が急騰




京都タワー 観光の顔に
新目玉作れず最近は若者離れ
冴(さ)えざえとした初冬の冷気に、古都の街並みが凛(りん)としていた。御所の杜(もり)、鴨川、北山連峰――。眼下を、二か月前に開業したばかりの新幹線が、白い帯となって通り過ぎた。

 一九六四年十二月。二十八歳の久貝信也さんは開業間近の京都タワー(地上百三十一メートル)の展望台にいた。運営会社「京都産業観光センター(現・京都タワー)」の社員。足元の街の容貌(ようぼう)は、少年時代から親しんだそれと違って見えた。

 「きっと、京都の新しい観光スポットになる」



 東京五輪を控えた一九六〇年前後。国内の大都市で観光のシンボルとしてタワー建設が相次いだ。東京、横浜、そして神戸。

 京都でも、国鉄京都駅前にできるビルに、タワーを併設する構想が持ち上がった。横浜マリンタワーを見たセンター役員が「京の表玄関にも」と言い出した。

 だが、ビル上の巨大タワーは世界でも珍しかった。九階建てビルは高さ三十一メートル。当時の高度制限ぎりぎりの設計だった。「タワーは建造物と違う。屋上の『工作物』だ」。高さ百メートルの工作物というアイデアが生まれた。

 「応仁の乱以来の京都の破壊」「卑俗な観光塔」

 後年の景観論争を予感させる反対の合唱に、構造設計に加わった京都大名誉教授・金多潔さん(72)(当時は助教授)は悩んだ。機能性、それとも芸術性。

 「東京タワーのような鉄骨むき出しの外観にはしたくない。古都になじむ、丸み、温かみを醸し出そうと思った」

 塔身は特殊鋼を使った円筒型、デザインは乳白色にした。いつのころからか、市民は照明に浮かぶ夜のタワーを「和ろうそく」と言い表すようになった。

 久貝さんの予感は的中した。タワー来場者は、翌六五年だけで百九万人に達した。

 経済成長とともに、「観光の時代」が到来していた。六三年に二千万人を超えた京都の観光客は、大阪万博開催の七〇年、三千万人を突破した。タワーは確かに、その牽引(けんいん)車だった。



 「おばさん、大阪まで電車で何分?」。旅館にカバンを置くやいなや、修学旅行の女子中学生が女将(おかみ)に質問する。最近、京都見物もそこそこに、大阪・アメリカ村に急ぐ生徒が目立つようになったという。

 京都市の観光客数は昨年、四千百三十二万人で最多を記録した。だが、七割は日帰り客。宿泊客の半数以上は一泊だけだった。

 都市観光に詳しい坂上英彦・京都嵯峨芸術大教授(50)は嘆く。「観光客増加はユニバーサル・スタジオ・ジャパンの波及効果もある。寺社や祭りなど、京都は大昔からの遺産でやり繰りしている。観光資源と若者のニーズはかい離しているのに、新しいものを提供する姿勢が見られない」

 だが、千二百年の古都で寺社の集客力は他を圧している。市が四年前に観光振興計画をまとめた際、「旧来の観光資源では不十分」という声もあったが、京都仏教会は「寺社に頼らない観光など考えられない」と一蹴(いっしゅう)する。

 タワーを継ぐ観光資源は現れず、社寺観光に新たな付加価値も見出せないまま、市が掲げた「二〇一〇年に観光客五千万人」の目標だけは微動だにしていない。



 六十六歳になった久貝さんは今、タワー会社の常勤監査役。毎朝、通勤電車をJR京都駅で降り、中央口を抜ける。足を止め、いつものように天を仰ぐと、三十八歳を間近にした「わが子」がいる。

 昨年のタワー来場者は約四十万人。ピークの半分に満たない。低迷か、健闘なのか。白亜の塔は今日も、〈不変の街〉に抗(あらが)うように、京随一の高さで冬の空に伸びている。


タワー着工前から「すごいものができるらしい」と記者の間で話題になった。東京生まれの私は「東京タワーのまねをしなくても」と思ったが、完成した姿を見ると、優しい感じに京都らしさが出ていた。歴史を重んじる一方、日本初の路面電車のように、新しいものを取り入れる機運が高いのも京都の良さ。退職後は京の街に住み、今もタワーを見上げて過ごしているが、すっかり京都に溶け込んだように思える。(元京都支局次席 佐々木八郎さん)



1961 京都市電の北野線が廃止

   第2室戸台風で府内に大被害

 63 「38豪雪」で死者5人

 64 東海道新幹線開業

 65 名神高速道が全線開通

   嵐山パークウェイが完成

 66 国立京都国際会館がオープン

 69 京都市立芸術大学が開校

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