|
ボルトの破壊にはいろいろな形態があるのだが、分析すると疲労によるモノが多く見られます。
特に強度区分が高いモノほど疲労破壊について注意を払う必要があります。
締め付け後にボルトが繰り返し変動荷重を受ける場合、荷重全体の大きさは弾性限度内であってもボルトが破壊される場合があります。
このような場合は疲労破壊の可能性が高いと思います。
締め付け後にボルトが変動荷重を繰り返し受けるうちに、表面の一部または複数の箇所に、微細な亀裂が発生し、この亀裂が荷重の繰り返しにより徐々に進行し、残った断面積が変動荷重に耐えきれなくなって破断するケースがほとんどです。
そのほとんどがネジ部で発生し、特に雄ねじと雌ねじがはめ合っている第一山付近での発生が最も多いようです。
その理由は、ネジの締結体でもっとも付加外力を受けやすいからです。
ボルトの締結体に締め付け力にプラスして繰り返し応力が発生する時、無限会の繰り返しに耐えられる応力の上限値を疲労限度と呼んでいます。
一般にボルトの疲労限度は、平均応力と応力振幅の関係で実施した疲労試験で得られたS-N曲線で求められ、通常10の7乗回もしくは5×10の6乗回繰り替えし振動を与えても疲労破壊しなければ、永久に破壊しないと見なしても良いとされており、その時の応力振幅の値を疲労限度の値と呼んでいます。
一般に締め付け力がボルトにきちんと軸力として与えられていれば、ボルトは疲労破壊を起こすことが少ないと言われています。
締め付けにより適正な軸力が与えられていないと、ボルトは緩んでいる状態置かれていることになり、疲労破壊が想定されることになります。
疲労限度の向上は、いくつかの設計上の要素もあるために後から変更することは困難です。
このためにユーザーとしては適正な軸力で締め付ける以外に方法はありません。
さて、そこでチタン合金がいかに疲労強度があるかです。
チタン合金は引っ張り強さに対して疲労強度が極めて高く、疲労比(疲労強度/引っ張り強さ)は0.5〜0.6を示します。
ちなみに鋼の疲労比は0.2〜0.3程度です。
|
ネジの話
[ リスト | 詳細 ]
|
久々にボルトの話。
バイクの改造で、きれいだから、錆びないからという理由で使われることのあるステンレスボルト。
安易に使うのはやめた方が良い。
これは、それをまとめた表。
見えないか^^;
問題になるのは引っ張り強度と0.2%耐力である。
S45Cと言う一般に使われる鋼は、引っ張り強度が570N/mmで0.2%耐力が345N/mm。
これに対してボルトで使われるステンレス鋼のSUSXM7 A2-50は引っ張り強度が500N/mmに対して0.2%耐力が210N/mmしかない。
このグラフを見て欲しい。
引っ張り強度は最大応力のかかるところ。
0.2%耐力は降伏点である。
S45Cの場合は降伏点が61%であるのと比較すると、SUSXM7は42%しかないことがわかる。
鋼に対して弱いばかりでは無く、降伏点も低いために、何か過大な力がかかると容易に破断する。
上の表のように、金属材料には設計範囲というものがあり、これを超えて設計することはできない。
つまり、いくら引っ張り強度が高くても0.2%耐力が低い材料は、同じ形状や構造でもその性質から十分な強度が担保できないことになる。
それでは各素材別に見てみよう。
それぞれ引っ張り強度と0.2%耐力である。
SCM435 800 640
アルミA7075 510 440 純チタン 340 215
Ti-6Al-4V 895 825
アルミは7000番でも強度が元々無いんですね。
ですから鉄のネジの代わりには使えない。
純チタンも同じで、チタンだから強いというわけではないんです。
64チタンじゃ無いとダメな理由はここです。
SCM435は通称クロモリ綱と言われていますが、これは十分な強度を持っています。
一番下がいわゆる64チタンです。
強いですね。
クロモリを凌ぎ、0.2%耐力もクロモリの80%に対して92%です。
64チタンが安心してネジに使えるのはこういうことなんですね。
逆にクロモリの場合は、SCM435を表記するならば、質別を明らかにしなければなりません。
S45Cの質別8.8の鋼とあまり変わらないと言うことになります。
これは後で補足します。
チタンは突然破断するから危ないと言われますが、もし突然破断したのなら、同じ場所に鋼のボルトやクロモリボルトならば、それ以前に破断していると言うことになります。
さて、ではステンレス鋼は本当にこんなに脆弱なのでしょうか?
表を見ることができれば、同じ材料で質別の違いに気付くでしょう。
SUS630 H900というステンレス鋼があります。
これは引っ張り強度が1310で0.2%耐力が1175あります。
耐力は90%です。
強いですね。
こういうステンレス鋼もあります。
しかしこれは、特殊な処理をしているためです。
あなたが使っているステンレスボルトはこの素材ですか?
わかりませんね。
だから安易に使ってはならないのです。
さて、ボルトを買うときに、素材を確認して買っているでしょうか?
「このステンレスのボルトの素材は何ですか?」
でも、聞いても売っている人はほとんど知りません。
専門にネジを扱っているならともかく、ホームセンターの店員のレベルでは、ほぼ知りません。
車やバイクのショップでもそうですね。
経験的には知っているでしょうし、ある程度の知識は持っていると思いますが、それがなぜとなれば答えに窮するでしょう。
このアルミボルトは7075ですか?6061ですか?それとも5052ですか?
一般的に知識の無い人は聞いて買わないし、もしパッケージになっていても、ほとんど書かれていませんね。
金属の場合は、素材の成分によっても性質が変わりますし、処理方法によっても変わります。
確かめて買わないと痛い目に遭います。
それからもう一つ。
熱膨張の違いがあります。
S45Cの熱膨張係数は12程度。
アルミ系は23を超えます。
チタン系は8.8、ステンレスは14程度。
熱を加えたときの膨張率が違います。
つまり、鉄のボルトが入るようになっているところにステンレスのボルトを入れてしまうと、そもそも鉄のボルトが入るように設計されているところでは無理が生じることになりかねません。
これも考慮する必要がありますね。
次は金属疲労に関して書きます。
|
|
BMWのバイクに多く使われているトルクスネジ。
今まではヘックスネジが多かったのだが、ヨーロッパにおいては今ではこちらの方が一般的。
日本ではあまり見かけることが無い。
プラスやマイナス、ヘックスなどと比べると、トルクがかけやすく舐めにくいと言う特長がある。
しかしビットを新たに購入する必要があるのも確か。
BMWに乗るならば必ず必要になる工具なので、一通り揃えておくと良いだろう。
さて、このネジは小生が開発したもので頭の形状はトルクス。
実はどのネジにもちょっとした工夫がされていて、ノーマルには無い特長がある。
日本国内では、このトルクス形状のチタンボルトは今のところ無い。
あってもヘックスである。
頭部の形状を作る「型」の問題なのだ。
実はこのボルト、海外で作らせたもの。
あるヨーロッパの有名なホイールメーカーが数十万個という大量のチタン製ホイールボルトを作った際に、一緒に製作してもらったのだ。
その設計ノウハウや製造上の技術、そして素材などは全く同じ。
説明はしていないが、実はそういうものなのである。
クオリティから考えればかなり安いと言える。
ヘックスとトルクス、単純に形状が違うだけじゃ無いかと思うかも知れないが、実は違うんですね^^
|
|
チタンのブレーキディスクボルトの話をしていたら「チタンじゃなくてもステンレスでも強度は増すし、錆にくいし、安価でいいと思うが」と言われた。
確かにステンレスは錆びにくいし安価ではある。
しかし極めて脆い。
それに錆びないわけでは無い。
エンジン周りに使う人も中にはいるが、エンジンに使われている金属と熱膨張率が大きく異なるので、恐ろしい。
齧り付きも発生するし異種金属接触腐食も発生する。
「ステンレスのボルトはお取り扱いしていません」と返したが、本当は細かく説明したかったところである。
見た目だけならば他にいろんな素材はあるし、きらびやかな色のパーツもある。
いかにもという装飾品は多いのだ。
しかしそれが果たして機能するのかと言われれば、そうでは無いことが多い。
チタンだって例外では無い。
純チタンなどは64チタンと比較すると極めて脆い。
それに良いと思って使う64チタンだって、摩擦に弱かったりコストがかかりすぎたり、ウイークポイントはある。
ものは全てそうだが、半永久的に使えるものなど、この世の中にはほとんど無い。
完璧なものも無い。
つまり素材や構成部品を正しく理解し、正しい取り付け方をし、定期的にチェックすることが重要なのだ。
だから電導率の高いカッパーグリスであったり、適正なトルクで締められるトルクレンチであったりするのだ。
ブレーキディスクボルトにステンレスは驚いたが、車両によってはステンレスのアクスルシャフトを作ると言うこともあるようだ。
素材の知識も無いのにホームセンターあたりでステンレスのボルトを買ってきて、見た目だけでチャカチャカ交換するのだけはやめた方が良いと思うが。
確かにアルミのネジなんかに比べると、しっかりしてそうに見えるんだよなぁ。
|
|
今回は材質に関して。 |




