レフト・シンチーのオペラ

昼は本を読み、歌を詠み、夜は酒を呑む。私です。

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新年度から新房昭之さんの最新作である『夏のあらし!』が放映されているのですが、第一話を観た段階でいまいち何がしたいのかを図りかねてしまい、どう感想を述べてよいのやらと考えてしまったため、とりあえずシリーズが動き出すのを待ってみました。一応、全キャラクターが登場し終えて、全員の相関関係みたいなものも見えてきました。中間的な感想を述べるにとどめておきます。
まず第一話が、実質的な第一話ではなく、全員が知り合った段階とそれぞれの特性を理解し合った段階から始まったのは、なぜでしょうか。おそらくこの作品は、あらしたちのタイムスリップが基本になるストーリーであるので、筒井康隆さんの『時をかける少女』のようなことをやってみたかったのではないかな、と推察します。同作はいわずとしれた主人公が、同じ時間帯を繰り返し経験することで、過去の失敗を克服していって自分が思い描いているような結果に導こうとするストーリーです。それが思い通りにいかないのが魅力なのですが。『夏のあらし!』の第一話では、カヤのケーキがどこにいったのかを、ずっと繰り返し探求し、その中でいわゆるタイムスリップの干渉とでもいいましょうか、過去の物体を現在に持ってきてしまっては、過去のその時点ではその物体が消失したことになる、というあれです。あのトリックを決して矛盾を出さないように実行していきます。これは非常に面倒な作業でしょう。観ている側も随時、気づきながら観ていますから、正直いって疲れます。しかし、それを楽しむものですから、脚本家の苦労をお察しします。そうした始まりだったので、これからそのパターンを堅持するのかと思えば、第一話はホントに表面をなでただけ、シリーズの確信に全く触れないお試し編のように制作されていました。第二話以降は、あらしとはじめの出逢いから描き直されます。せっかくタイムスリップを扱っているのでからという心持ちだったのでしょう。
そして、あらしの目的が過去の、特に第二次世界大戦中の日本での起こってしまった小さな悲劇を解消していくことにあることが示されます。罪刑法定主義の世の中ですから法的には問題ないのですが、タイムスリップをして過去を変えてしまうことは、よく『ドラえもん』で出てくるような時間犯罪法に抵触するような行為に思えて仕方がありません。現在ではタイムスリップは到底不可能ですし、それを予期した法律もありませんから、あらしの行為は彼女の都合によって未来を歪曲させてしまうこととなり、そこには倫理的責任を問う以外に他ないことになります。そんな細かなことを述べていては、作品を楽しむ上で邪魔なのですが、刷り込みといいましょうか、過去は変えてはいけないのだという長年の認識がありますから、どうしてもあらしの行為を認めることができません。
また、この作品は新房さんが監督をしているということで、彼らしい演出が含まれていると予想していましたが、比較的、軽くその演出が見受けられるだけで、むしろ『ぱにぽにだっしゅ!』以降、受け継がれているパロディとギャグを散りばめた作品になっています。確かに観ているときは十分以上に楽しんで、面白おかしく観ているのですが、そろそろ別の演出がほしいところです。2000年付近のシリアスなアクション作品から、ギャグ・パロディの色調へと変化している新房さんの傾向ですが、また違った路線も観てみたいところです。
同作は作中で不自然な、というか果たして必要なのかと思えるようなカットがたくさん出てきます。特に「塩ください」とことあるごとに催促する青年のカット、あれは一種のワイプと考えるべきなのでしょうか。しかし、ワイプを設けるとすれば、ワイプ間のストーリーはストーリーの切れ目か、演出の切れ目でなくてはなりません。ただカメラワークを変えるだけならワイプを設ける必要がありませんから。いうなれば上方落語の小拍子の役割です。今のところ本編を見ている限りでは、場面が大きく変わる出もなく、ストーリーが変わるでもなく、何のために設けられているのかがいまいち理解できません。
また同作では特撮のカットが頻繁にあります。喫茶方舟が嵐で流されてしまうカット、爆発するカット、コーラまみれになってしまうカット、これからも色んな特撮が出てくるのでしょう。アニメ本編に特撮を設けるようになったのは、『ぱにぽにだっしゅ!』の第二十四話のときでした。一条さんの背中に「オスナ キケン」と書かれたスイッチがあり、姫子が興味本位でそれを押してしまうと、スクエニのビルが爆発してしまうというオチでした。そのあと『ひだまりスケッチ!』でもひだまり荘が爆発するという冗談をアバンタイトルに設けたことがありました。特撮は脚本を書いている高橋カツヒコさんが監修を行っています。これまで一部でしか用いられていなかった特撮を、ここにきて一遍に織り交ぜてしまおうという魂胆なのでしょうか。その意図もいまいち図りかねます。
さらに付け加えておくとCパートおまけの「ごきげんよう、やよゐ」のコーナーがどう本編と絡むのかも気になります。やよゐが可奈子に自分が読んだマンガを話きかせるというオマケですが、これは『ネギま!』のCパートのような使いにしておくのが正解でしょう。このコーナーは本編から独立しており、本編で散々悩まされた後のデザート感覚で軽く観る方が楽しめます。なので深くは言及しません。それよりも肝心なのは、やよゐがどの辺りで本編に登場するかです。
この作品は、観ていて決して不愉快なものではないし、面白いのだけれど、何となく細々した点が気になってしまいます。アニメの観方が変わっただけなのかもしれませんが。ところで、今年の七月から、新房さんが二作同時に監督を務めるということで、どのような出来になるのか楽しみです。一本は『化物語』という原作も知らない作品です。もう一本はおなじみの『さよなら絶望先生』第三期です。第三期までする必要があったのかとも言いたくなります。いうなれば永遠に継続可能ですし、継続する理由もありません。そのくらいの作品ですから、いつも通りに軽く視聴したいと思います。

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初めまして、原作を読んでいる者です

>どうしてもあらしの行為を認めることができません

これについては、あらし自身も葛藤していることで、おそらくあと2話くらいでこの話が出てくると思います。
それについての解答(?)も原作では既に出ていますので、その辺は安心していいと思います。

2009/5/13(水) 午後 1:08 [ ピース ] 返信する

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そうですか。どうも過去を操作するという行為によいイメージを持っていないので。それはやはりタイムパトロール的な影響があるのでしょうけど。
そのあたりはこれからのストーリーを追って解消することにします。

2009/5/13(水) 午後 8:59 [ savarin20022000 ] 返信する

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