読書の愉楽

吉澤嘉代子の「女優」の歌詞にゾクゾク。美しくて残酷。

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 シーラッハ短編集の二作目である。今回は前回にもましてコンパクトにまとめてあって、遅読のぼくが

ほんの数時間で読了するくらいスルスルと読めてしまった。長いものでも30ページ短いのならほんの3

、4ページの作品ばかりだから読みやすいことこの上ない。というわけで今回の収録作は以下のとおり。

 「ふるさと祭り」

 「遺伝子」

 「イルミナティ」

 「子どもたち」

 「解剖学」

 「間男」

 「アタッシュケース」

 「欲求」

 「雪」
 
 「鍵」

 「寂しさ」

 「司法当局」

 「清算」

 「家族」

 「秘密」

 以上15編。中にはあまりインパクトがない万引き主婦の話なんかも入っているが、総じておもしろか

った。これが事実をもとにした話だというのなら、おおいに興味を惹かれる。今回も前回同様、不条理に

満ちた事件があって、巻頭の「ふるさと祭り」などそのもっともたるもので、いったいぜんたいどういう

思考でそんな事件を起こしてしまうのか理解に苦しむ。また偶然がまねいた事件の結末を描く「イルミナ

ティ」や「解剖学」なんてのは、まさしく事実は小説より奇なりって感じだったし、不気味な通奏低音が

流れている「アタッシュケース」やクライム物として完成された感のある「鍵」や完全犯罪を描いた「清

算」など、なかなかバラエティに富んだ短編集だった。よく前回の短編集を引き合いに出して、今回はあ

まり印象に残らないなんて感想を見るがそんなことはない。この弁護士さんは才能ある作家でもある。短

い作品の中で事件を効果的に印象づける術をこころえている。事件の成り立ちを逆に辿ることで興味を持

続させたり、短い段落で区切って効果的に話を進めたりと、オーソドックスだが小説として成り立つテク

ニックを多用しているところなどは堂に入ったものだ。感情を排し、ほとんど機械的に進められてゆく簡

潔な文体は作者の技術なのかクセなのかよくわからないが、それが一種のリズムを刻みひとつのブランド

として定着しているところも素晴らしい。

 今度は長編の紹介になるのかな?さて、短編の腕前はよくわかったが、長編の仕上がりはどうか楽しみ

なところである。

閉じる コメント(12)

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ああ、これ、今図書館にリクエスト中で、もうじき届くはず。
前作がおもしろかったので、期待しています。
長編の執筆予定もあったのですか?

2012/5/5(土) 午前 9:37 Tomato 返信する

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ちょうど今「犯罪」の方を読んでいます。
まだ読み始めたばかりですが、一文が短く印象的に書かれていると感じています。
最近あまり本が読めていないので、読書メーターに登録してみました。お気に入り登録させて頂きました^^

2012/5/5(土) 午後 9:02 ねこりん 返信する

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「ふるさと祭り」は、本当に最初から最後まで最悪でした。
とはいえ、淡々としながらも、バラエティに飛んだ作品集で、よかったですよね♪
こちらからもトラバさせてください☆

2012/5/5(土) 午後 10:43 [ タカ ] 返信する

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一作目が好きだったので、こちらも是非読もうと思ってます。この作者さんのフェアな視点が好みです(^^)次は長編でしょうか?そちらもとても興味あります。

2012/5/6(日) 午前 0:15 [ sinobu ] 返信する

次作は長編らしいですよTomatoさん。たぶん翻訳されるでしょう。本書もいろいろバラエティに富んでておもしろかったです。お楽しみに^^。

2012/5/7(月) 午後 11:48 beck 返信する

こちらもお気に入りさせていただきました、ねこりんさん^^。よろしくお願いします。そういえば「犯罪」の記事書かれてましたね。これから伺います。

2012/5/7(月) 午後 11:50 beck 返信する

「ふるさと祭り」は、まったく不条理な事件ですよね、タカさん。短い枚数でこれだけ印象深いのは、やはり書き方なんでしょうね。おもしろいです。

2012/5/7(月) 午後 11:52 beck 返信する

これだけ簡潔に処理しちゃうシーラッハさんが書いた長編って、いったいどんな仕上がりになっているのか興味津々なんですよsinobuさん^^。翻訳が楽しみです。

2012/5/7(月) 午後 11:53 beck 返信する

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ベックさんのおっしゃる通り、短い枚数なのにとても印象的な短編ばかりでしたね。
事実が下敷きになっていると思うと、よけいに事件の不条理さを強く感じます。

2012/5/20(日) 午後 11:51 ねこりん 返信する

読ませますよね、ねこりんさん^^。こんなに短いのに、それぞれインパクトが強くて。今度は長編みたいですが、いまから楽しみですね。

2012/5/26(土) 午後 9:46 beck 返信する

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ひとつのブランドというのはまさにその通りですねえ。「ふるさと祭り」は気分が悪くなりました。そうそう、万引きのお話だけなんか軽かったですよね。しかし総じて面白かったので次作が楽しみです。

2016/4/4(月) 午後 10:45 ゆきあや 返信する

> ゆきあやさん
この人は、もう間違いなくひとつのブランドとして確立されてますね。新刊が出れば必ず読む数少ない作家の一人です。

2016/4/18(月) 午前 1:56 beck 返信する

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