今日の東京新聞「こちら特報部」から
次々と不可解な話が出る学校法人「森友学園」を巡る問題。
キーマンの前理事長籠池泰典被告と妻の諄子被告=ともに詐欺罪などで起訴=は、逮捕から二百日を超えた今も大阪拘置所の中にいる。
逮捕前の言動から、保釈しても二人が逃げ隠れする可能性は低い。
それなのに勾留は長期に及んでいる。
「政権に忖度した口封じ」という見方が広まっている。(大村歩、石井絶代美)
二人は「工事費を水増しした契約書を使い、国の補助金約五千六百万円をだまし取った」「幼稚園の人件費など約一億二千万円を大阪市や大阪府からだまし取った」という詐欺罪などで、公判が開かれるのを待つ。
逮捕は昨年七月三十一日。
この六日で勾留期間は二百十九日間になった。
籠池前理事長側は十一月中旬、保釈を請求したが、却下された。
弁護人は本紙の取材に対し、所属事務所を通じて「お話しすることはない」とした。
籠池前理事長の長男佳茂森氏ははツイッターで長期勾留の不当さを訴える。
「こうしている間でも二人は権力者達の犠牲になり続けています。もう6ケ月目に入りました。1日経過する毎に権力者の罪は重くなっています」「今日も大阪は寒い。拘置所内の二人はどうしているだろうか?勾留から7ケ月目に入っている。未だ面会がかなわない」
被告とはいえ、今は無罪と推定される立場。
なのに拘束が続くのは、検察の請求を受けた裁判所が「罪を犯したことが疑われ、か
つ、証拠を隠滅したり逃亡したりする恐れがある」と判断したため。
その拘束には有罪が確定した受刑者より厳しい側面がある。
籠池前理事長の場合、受刑者は面会できる家族に会うことができない。
こんな長期の拘束が、日本ではまかり通ってきた。
罪を認めると保釈され、否認すると初公判まで勾留が続くことが多い。
身柄を取って捜査当局の意に沿った供述を得ることから、時にそれは「人質司法」と批判される。
「籠池さんが心配でならない」。
沖縄平和運動センターの山城博治議長は案じる。
山城議長は二〇一六年十月、沖縄県の米軍北部訓練場の近くで、有刺鉄線をペンチで切るなどの罪で計百五十二日間勾留された。
山城さんが入った留置場は、窓に覆いがされ光が入らなかった。
関係者との接見は認められず、外の世界から遮断された。
「靴下の差し入れさえも許可されなかった」
室内に時計はない。
次第に時間の感覚がなくなっていった。
「いつ寝ようか、いつ起きようか、日常のリズムが分からなくなってくる。徐々に人間の精神のバランスも保てなくなり、気持ちがふさいでしまうことがよくあった。
山城さんがようやく保釈される際、「これはおまえの荷物だ」と言われ、初めて渡されたものがあった。
「山域ガンバレ」などと書いた、五百通にも上る励ましのハガキや手紙だった。
山城さんは「家族にも会わせない。当然、激励するような声も届けない。そうやって、こっちの精神が参るのを待っているんだろう」と憤った。
「検察は、長く勾留していれば自分たちのストーリーに乗ってくると思っている」。公共工事を巡る汚職事件で、戦後最長の四百三十七日間勾留された鈴木宗男元衆院議員は語る。
容疑を認めない鈴木元議員に、検察はあの手この手を使ってきた。
勾留中、カナダに留学していた娘の貴子さんが帰国した。
取り調べ中、検事は「お嬢さんが帰ってきてますね。希望であれば、特別に面会できるように手続きを取ります」。
情や子どもに弱いという鈴木元議員への揺さぶりだった。
この時は弁護士を通じて家族から「検察のわなだから乗らないで」と助言され、踏みとどまった。
鈴木元議員は「検察の思惑通りにしゃべれば、すぐに出られたが、作り話を認めるわ
けにはいかなかった。負けてはいけないと自分を必死に鼓舞した」と述懐する。
そんな状況が少しずつ変わってきている。
「否認している被告に、以前は『真実を述べる姿勢がなく証拠を隠滅しかねない』と勾留が認められてきたが、黙秘権を事実上否定するという批判が学説上強くあり、裁判官にも理解が広まりつつある。
このため保釈が認められるケースが出てきた」。
大阪大の水谷規男教授(刑事訴訟法)は語る。
裁判員裁判が影響しているという。
制度導入を議論する中で「被告が勾留中のため腰縄手錠付きで入廷すれば、裁判員へ有罪バイアスをもたらすのではないか」と問題点が指摘され、拘留を慎重に判断する裁判官が増えた。
実際、法務省の犯罪白書などによれば、検察官の勾留請求の却下率は〇二年の0・1%から一六年は3・4%に。
保釈率も〇三年の11・74%から一六年30・33%と右肩上がりになっている。
水谷教授は「国際水準に見合うとは言えないが、被疑者や被告人の身体拘束の状況は少しずつ改善してきた」と指摘する。
ただ、政治的なにおいのする事件は例外だ。
水谷教授は「裁判所は極めて保守的な対応になる。検察官はこうした事件では、『勾留請求しなければ罪証隠滅の恐れが高く、社会に自由に発信されると訴訟手続きの
妨害になる』と強固に主張しがちで、裁判所も同調しやすい」と指摘する。
さらに「籠池被告の場合、補助金不正事件の証拠書類はすべて捜査当局が差し押さえており、証拠隠滅の恐れはないし口裏合わせできる状況でもない。国有地の払い下げ疑惑について話してほしくないから勾留を続けているのではないか、ととられても仕方がない」と語る。
元検事の郷原信郎弁護士は、人質司法を「検察の常とう手段」と説明。
「被告としては少しでも早く外に出たいから、意に反することも認めてしまう状況がある。人質司法の問題はますますひどくなっている」
勾留の長期化を元裁判官の木谷明弁護士は別の角度から解説する。
今は保釈の判断をするのはへ実際にその事件の裁判を行う裁判官ではなく、別の勾留担当の裁判官。
「比較的若い人が多く、事件の詳細も知らない。そのため、検察の言いなりになってしまう傾向がある」。
裁判官が判断するとはいえ、検察の影響力が極めて強くなる。
木谷弁護士は籠池夫妻の勾留を長すぎると感じている。
「森友問題についてぺらぺらしゃべられると、政権にとって都合が悪い。口封じなのだろう。
検察と言えども法務省の管轄で、政府とは一体だ。
人質司法は虚偽自白を生む温床になる。
身柄の拘束は最低限にするよう、制度を改めるべきだ」と警鐘を鳴らした。
◆
急いで文字化。誤字脱字はご指摘を。