備忘録(2019年7月4日)
第2次世界大戦中に朝鮮半島から動員され、日本本土の工場などで過酷な労働環境で働かされたという、いわゆる徴用工問題。昨年10月、韓国の最高裁判所にあたる「大法院」は、元徴用工の人々の主張を認め、新日鉄住金に損害賠償を支払うことを命じる判決を言い渡した。
この判決に、安倍政権は強く反発。日本の各メディアも一斉に韓国側を批判するという、ある種の集団ヒステリー状態となっている。こうした日本での反応の背景には、ナショナリズムだけでなく、国際法や人権への無理解があるのだろう。
4月20日、日本弁護士連合会が主催したシンポジウムで基調講演を行った山本晴太弁護士(日弁連人権擁護委員会特別委嘱委員)は「徴用工問題は解決済み」とする日本側の主張の問題点を指摘した。
<以下略>
【コメント】 この件を、安倍政権が国際司法裁判所に提訴したら負けて、対韓国水産物WTO敗訴に続いて、再び、日本は世界に恥を晒すことになる
●徴用工問題について、この記事で山本弁護士は主に以下の3点の問題を指摘した。
<A>:日本側は、1965年の「日韓請求権協定」(以下「協定」)で解決済みの徴用工問題を韓国側が蒸し返した」と主張しているが、同「協定」で「解決済」とされて放棄されたのは、国家対国家の「外交保護権」であり、これは日本側も国会質疑で認めている。
つまり、被害者である元徴用工の、加害者である日本企業に対する「個人の請求権」は現在も有効なのである。
<B>:また、日本側は、「『個人の請求権』は消滅していないが、これで訴えても救済は拒否される」と主張しているのだが、この主張の元となっている最高裁の判断(2007年4月27日)は法的な根拠が乏しい。
また、同判決も、「個人の請求権」を完全否定したわけではなく、日本の加害者側の「自発的対応」を促すものであった。そして、韓国の大法院は国際法に従って、「個人の請求権」と「裁判による権利行使」も認めている。
<C>:日本側は、「韓国側の主張は国際法上あり得ない」と主張しているが、むしろ、「裁判による権利行使」を認めないことの方が、国際法上あり得ない。
★したがって、山本弁護士は今回の徴用工問題は決して、「解決済み」の問題ではないと明言した。
●次に、山本弁護士は上記の<A>〜<C>について、詳しく解説している。
<A>
徴用工問題についての安倍政権は、「協定」によって完全かつ最終的に解決していると主張しているが、これはあくまで国家の権利である「外交保護権」のことである。
この「外交保護権」とは、外国によって自国民の身体・財産が侵害された場合、その侵害を自国に対する侵害として、国家が相手国の国際法上の責任を追及することである。
(この「外交保護権」が対象とするのが、交通事故の場合であれば、被害者側の自動車の修理費や怪我の治療費などの財産的被害)
これに対し「個人の請求権」とは、被害者が加害者を直接、裁判等で責任追及するもので、この「協定」が締結された当時の政府刊行物『時の法令』別冊やその後の国会質疑(1991年8月27日:柳井俊二・外務省条約局長)などでも「放棄されたのは『外交保護権』」、「『個人の請求権』は消滅していない」とされている。最近でも河野太郎外務大臣及び、外務省の三上正裕国際法局長が、同じ答弁をしている(2018年11月14日衆院外務委員会)。
(この「個人の請求権」が対象とするのが、精神的被害に対する慰謝料に相当する。日本と韓国の国家間の「協定」では、この修理費と同じ財産的被害の件しか解決されていない。だから、韓国の元徴用工には、慰藉料の請求権はあり、日本の最高裁も、2007年の判決で和解を勧めたことでも分かるように、この権利は認めている)
<B>
個人が加害企業を訴えることは法的に可能であり、河野外相及び三上国際法局長は、日本政府は『個人の請求権』は消滅していないが、「法的に救済されない」との立場を取っている。
そして、この「法的に救済されない」という日本政府の主張は、西松建設による中国人強制連行・強制労働訴訟、中国人慰安婦訴訟に対する最高裁判決(両方共に2007年4月27日)での、最高裁の特異な『サンフランシスコ平和条約の枠組み』論が根拠となっている。
この『枠組み』論とは、平和条約締結後に混乱を生じさせ、条約の目的達成の妨げとなる恐れがあるので、『個人の請求権』について民事裁判上の権利は行使できないという代物。
日本は、この日本の最高裁の特異な「解釈」に基づいて、日中共同声明や日韓請求権協定も『枠組み』に入るものとしてしまい、『個人の請求権』は裁判で行使できないと解釈するようになった。
しかし、サンフランシスコ平和条約には『個人の請求権』について民事裁判上の権利行使をできないようにするとは、どこにも規定していない。また、そもそも、第二次世界大戦後の連合国と日本の講和条約であるサンフランシスコ平和条約には、中国も韓国も参加していない。
だから、サンフランシスコ平和条約の『枠組み』が、同条約を締結していない国々にもその効果が及び、戦争被害者から民事訴訟による解決機能を奪うという解釈は成り立たない。
2007年の最高裁判決の根拠は、『サンフランシスコ条約の重要性』だけであるが、日本がどんなに重要な条約と見なしても、サンフランシスコ条約に参加していない中国や韓国の法的権利まで、この条約で制限できるという法的論理はあり得ない。
もし、日本の最高裁が正しいのであれば、今回、日本は「国際捕鯨取締条約」から離脱したが、仮に、この条約の参加国が、<この条約は非常に重要。したがって、この条約に参加していない日本も、この条約を守らなければならない>と主張したら、日本は従わなければならなくなってしまうのである。しかし、参加していない国にまで効力が及ぶような<条約>など、あり得ない。
この判決では、西松建設側に対して「任意の自発的な対応を妨げられるものではない」と述べて和解を促していたので、両者は和解した。最高裁が「個人の請求権」を完全否定したら、和解など促すはずがないので、和解を促したということは、最高裁も、『個人の請求権』を完全には否定していないことを示している。
サンフランシスコ条約の『重要性』という日本側の評価を根拠して、同条約に参加していない中国や韓国の法的権利まで制限できるという「枠組み」論は法律論とは言えない。したがって、「協定」によって『個人の請求権』は権利行使できないという日本側の主張は、法律論から外れた日本側の恣意的な主張である。
<C>
そもそも、安倍首相やマスゴミ、ネトウヨ売文屋たちの「国際法上あり得ない判断」という主張の方が国際法上、あり得ない主張である。2007年の最高裁判決も、「個人の請求権」を完全否定したわけではなく、日本の加害者側の「自発的対応」を促すものであり、韓国の大法院も国際法に従って、「個人の請求権」と「裁判による権利行使」も認めている。
この記事は、韓国では条約を解釈する権限は大法院にあり、大法院は条約法に関するウィーン条約の元となった慣習国際法に依って解釈していると指摘している。
更に、日本は世界人権宣言10条、国際人権規約14条に定められた、裁判を受ける権利を保障するという国際法上の義務を負っているので、訴訟によって請求できないとする日本側の主張こそ、国際法に照らしてあり得ないと、この記事は指摘しているが、極めて妥当な指摘である。
●この問題について、安倍政権やマスゴミは暴論で対応しているので、日本が国際裁判で負ける可能性は極めて高い。
たとえば、彼らは『徴用工問題については韓国政府が処理することを約束したはずだ』と逆切れしているのだが、韓国政府の被害者向けの支援法などは「協定」とは無関係な『人道的見地』・『国民和合』のためのものだった。
更に、韓国政府に大法院への“対処”を要求する日本政府やマスゴミは、中学生でも知っている<三権分立>の原理を蔑ろにしていて、かつて、中国が日本に要求し、日本が<三権分立>を根拠に拒否したことと同じである。
また、「政府が被害者個人と民間企業の訴訟に介入して支払や和解を妨害したり、事実に基づかない批難を繰り返したりということはあってはならないこと」と山本弁護士は指弾している。
山本弁護士は、鹿島建設や西松建設が和解し、謝罪したように、この問題でも、同様の解決は十分可能と述べた。そして、今の日本に必要なのは、植民地支配や人権侵害に対する反省を踏まえ、冷静かつ事実に基づく議論をした方が、日本にとっても望ましいと言っているが、その通りである。
★この記事は、このように主張し、安倍政権が国際司法裁判所に提訴したら、逆に、日本側が負けて恥を世界に晒すと心配し、警告している。