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【IWJブログ】原発を抱えたまま戦争の準備を進める愚かしさ〜岩上安身による京都大学原子炉実験所・小出裕章氏インタビュー
安倍総理は9月8日のIOC(国際オリンピック委員会)総会で行ったプレゼンテーションで「福島第一原発の汚染水による影響は完全にブロックされている」「状況はコントロールされている」と、全世界に向けて明々白々の「嘘」を語った。しかし、汚染水は「コントロール」されるどころか、貯蔵タンクからの漏出が続き、その一部は排水溝を伝って海洋に流出したと見られている。
京都大学原子炉実験所の小出裕章氏は、2011年3月11日の事故直後から今日の事態を予測し、「汚染水は原発敷地内のタンクに貯蔵するのではなく、タンカーで廃液処理施設がある柏崎刈羽原発に運ぶべきだ」と主張していた。私は小出氏によるこの提案を、会見で東電に直接ぶつけている。しかし、東電側がこの提案を取り入れることはなかった。
10月3日、大阪府熊取町の京都大学原子炉実験所で、私は事故直後の2011年4月1日に初インタビューをして以来、通算6回目となる小出裕章氏へのインタビューを行った。福島第一原発の汚染水問題の他にも、まもなく使用済み核燃料の取り出しが始まろうとしている4号機の状況、立命館大学の山田廣成教授が提唱している鉛を使った収束方法の実現可能性、新潟県柏崎刈羽原発の再稼働問題、そして、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認など急速に「軍事国家」化を図る安倍政権の外交・安全保障政策まで、幅広くお話をうかがった。
■ダイジェスト動画■
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2013/10/03 「格納容器内は溶けた炉心が散乱している」 〜岩上安身による小出裕章氏インタビュー http://iwj.co.jp/wj/open/archives/104911 以下、インタビューの実況ツイートをリライトし再構成したものを掲載します
◆汚染水、「漏れるのは当然」◆岩上安身(以下、岩上)「福島第一原発の発災直後、私はすぐに小出先生にインタビューをしました(※1)。そのとき、すでに小出先生は汚染水の話をされていました。
先生は、とにかく早く炉心を水で冷やすべきだということ、そして汚染水を、廃液処理施設がある新潟県の柏崎刈羽原発にタンカーで持っていくべきだとお話されました。
私は、小出先生のこの主張を東電にぶつけています。しかし、東電側はできません、と」
小出裕章氏(以下、小出・敬称略)「海水でも構わないので、とにかく早く水を入れてくれと言いました。しかし、溶け落ちてしまった炉心に水をかければ、放射能汚染水が生まれるのは当然のことです。
そこで、私は汚染水をタンカーで外に運び出すべきだと主張しました。原発敷地内にタンクを作っても、増え続ける汚染水を保管するには間に合わないだろうと思ったのです。
福島第一原発の汚染水は、最近になって問題になっているかのように報じられています。しかし、汚染水というのは、事故直後から重大な問題だったのです。2011年5月の段階で、汚染現場と地下水の接触を断つよう遮水壁を作るべきだと提案しました。しかし、東電は、株主総会が間近に迫っていたことを理由に、遮水壁の設置を見送っていたのです(※2)」
◆猛烈な被曝現場だからこそ、簡易型タンクしか作れなかった◆小出「敷地内でタンクをしっかりと溶接することは非常に難しいのです。なぜなら、現場は大変な被曝環境だからです。だから東電は簡易型のタンクを作りました。しかし、そんなものを作れば、漏れるのは当然のことです」
岩上「ALPS(多核種除去装置)も、たびたびトラブルに見舞われています」
小出「東電は、ALPSによって汚染水の浄化をしようとしています。しかし、これもすぐに故障してしまっています。タンクと同じように、本格的な設備を作ろうとしても、現場の作業員が大量の被曝をしてしまうので、しっかりと組み立ての作業ができないのです。
それに、ALPSがたとえ稼働したとしても、海に流せるだけ放射性ストロンチウムを取り除くことはできないかもしれない。仮にできたとしても、トリチウムという物質に関しては、ALPSはまったくの無力です」
◆格納容器の中は誰も分からない◆岩上「先日、立命館大学の山田廣成先生にインタビューしました。山田先生は、汚染水の増加を防ぐために、原子炉に鉛を投入するというプランを提案しています(※4)」
◆散らばった炉心を鉛ですべて固められるか不安が◆小出「しかし、それにはいくつか不安な点があります。
現在、福島第一原発の炉心は、格納容器の中で溶け落ちてしまっています。政府と東京電力は、格納容器の底にはコンクリートがあり、まだ30センチ残っていると主張しています。しかし、格納容器のフタを開けて中を見ることは誰にもできないのです。
格納容器の中は、大変な動的環境にあります。大量の水をかけて冷やしているので、大変な量の蒸気が常に発生しています。
国と東電は、溶け落ちた炉心が格納容器の底に溜まっていると主張していますが、私はそうではないと思う。炉心は溶け落ちて分散し、格納容器の中に散らばっているのだと思います。だから、鉛を入れたとしても、散らばった炉心をすべて固めることはできないかもしれない。
それに、電力会社はこれまでに、鉛などの金属を格納容器に入れるということなど考えたこともありません。だから、そのためのポンプもないのです。既存の設備でやるしかありません。しかし、そんなことができるのか。
今のままでは、格納容器のフタを開けることがまずできません。フタを開けた途端、大変な量の放射能が外部に放出されるからです。そうなると、作業員の大量の被曝は避けられません」
◆東電が柏崎刈羽を安全に再稼働できる「道理がない」◆岩上「安倍総理は、政府が全面に出て解決すると言いました。しかし、そんなことが可能なのでしょうか」
小出「前提として、東電に任せることはできません。なぜなら、東電は一企業にすぎないからです。国が責任を持って解決するためには、まずは東電を倒産させて、その代わりに国が費用をすべて負担すると表明しなければいけません。しかし、今の国がそのようなことをできる状態にあるわけではありません」
岩上「そのようななかで、東電は柏崎刈羽原発の再稼働をしようとしています。先日、東電の廣瀬社長が新潟県の泉田裕彦知事と面談(※5)し、その後、泉田知事は条件付きでの安全審査申請を了解しました」
小出「柏崎刈羽原発が安全に稼働できるなどという道理がありません。いまだに、福島第一事故の原因すら明らかになっていないのです」
岩上「福一の4号機について。使用済み核燃料の取り出しがようやく始まろうとしています」
小出「4号機のプールには、広島に投下された原爆1万4千発分の放射能が眠っています。東電は、今年の11月から、使用済み燃料をプールからクレーンで吊り出す作業を始めます。
しかし、使用済み燃料の回りには瓦礫が転がっていますし、燃料自体が破損しているかもしれません。1331本の燃料を一つひとつキャスクに入れて移動させるのです。大変困難な作業になります。
さらに、4号機の取り出し作業が終わっても、1号機、2号機、3号機で同じことをしなければなりません。しかし、その具体的な工程を、国も東京電力も示すことができていません」
◆原発を抱えたまま戦争をするなんて馬鹿げている◆岩上「最後にお聞きしたいことがあります。現在の安倍政権は、まさに軍事国家に突き進んでいるように思えます。秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、日本版NSC構想、さらには敵基地攻撃論まで言われ始めました。
私が入手した日米軍事演習『ヤマサクラ』の見積もり書によれば、中国と北朝鮮を仮想的とした戦闘が若狭湾で行われることが想定されています。
ところで、若狭湾には原発が並んでいます。日本は、原発を抱えたまま戦争をしようとしているのです。私は『原発×戦争』リスクということをずっと言っているのですが、なかなか理解してもらえません」
小出「原発を抱えたまま戦争のシュミレーションをするなど馬鹿げています。軍事に関わっている人が、原発の存在を許す理由が分かりません。
戦争をするということは、米国についていくということです。しかし、日本はいまだに米国の属国です。米国の属国状態から抜けだそうとした政治家は抹殺されてきました。鳩山由紀夫さんも小沢一郎さんもそうでした。米国の属国のまま、政治も経済もマスコミも動いてしまっているという現状があります。まずは、米国との関係をしっかりと見直す必要があると思います。
秘密保護法が成立してしまうと、原発の情報がこれまで以上に出なくなると思います」
岩上「絶望的なことばかりですが、最後に何か希望のあることをお願いします」
小出「福島では、今でもくじけずに戦おうとしている方がいます。そして、全国で支援する方々もいる。決して、希望がないわけではないと思います」
(了)
◇関連記事◇
・2011/04/01 「政府はパニックを恐れて『SPEEDI』の情報を隠している」 〜小出裕章助教(京大原子炉実験所)インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/793 ・2011/04/10 「原子炉圧力容器に穴が開き、冷却水が漏れ続けている」小出助教、メルトダウンの可能性を指摘〜 小出裕章助教(京大原子炉実験所)インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/682 ・2011/05/10 「原子力に携わってきた人間として、私にも責任がある」最悪の事態を迎える福島原発事故 小出助教「シニア決死隊」への参加を明らかに 〜小出裕章助教(京大原子炉実験所)インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/662 ・2011/06/07 2011/06/07 「原子力は『何があっても絶対に責任は取らない』という異常な世界だった」 〜小出裕章助教(京大原子炉実験所)インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/7738 ・2012/11/29 「原発推進の理由は、核兵器に転用できるプルトニウムを保持したいという『国家的欲望』にある」 〜岩上安身による小出裕章 京都大学原子炉実験所助教インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/42584 2013年10月の記事です。
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小出先生のお話
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植草一秀の『知られざる真実原発事故の日じっくり視聴すべき小出氏最終講演 2015年3月11日
あの地震、津波、原発事故から4年の歳月が流れた。 この日に、時間をかけて見ていただきたい講演録がある。 京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏が2月27日に行った最終講演である。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/235922
岩上安身氏が現場に復帰されたが、岩上氏が主宰するIWJがアーカイブ映像を配信している。 全篇は会員のみ視聴可能で、ダイジェスト版が一般公開されている。 質疑応答も含めて長時間の動画映像であるが、じっくりと視聴していただきたい内容が盛り込まれている。
この実験所の6人の研究者が反原発の研究活動を継続してこられた。 地名に因んで「熊取6人衆」と呼ばれている。 その1名が小出裕章氏である。 「熊取6人衆」は 1980年から 自主講座「原子力安全問題ゼミ」 を開講し続けてきた。 その第111回ゼミナールが、この2月27日に開講され、小出裕章氏が 「原子力廃絶への道程(みちのり)」 のタイトルの下で講演を行った。 小出氏はこの3月に定年を迎える。 定年に際して、最終講演を行なったものである。
日本政府が原発を推進する最大の動機がこの部分にある。 これが「熊取6人衆」が、日本で最も早い段階で公にした見解である。 小出氏の主張の裏側には、この認識が存在していると思われる。
ウラン濃縮、原子炉、核燃料再処理 核兵器の独占保有を維持している第二次大戦戦勝国で国連安保理常任理事国以外で、この三つの技術を保持しているのは、実は日本だけである。 小出氏は、この事実を指摘する。 1969年9月25日の日本政府による外交政策大綱は、日本の核武装オプションの保持を明確に宣言している。 1954年に中曽根康弘氏、正力松太郎氏が主導して急始動した日本の原子力開発の裏側には、日本の核武装潜在能力の保持の狙いが存在していたと考えられる。
そして、裁判嫌いである。 その理由は、日本の政治と裁判の本質を見抜いてしまっているからであると考えられる。 小出氏は若い時代に原子力の平和利用に夢を抱いた。 その夢を実現するために原子力研究の道を選んだ。
爾来、原子力を廃絶するために活動を続けてきた。 原子力を廃絶するためには、現実的には、政治を避けて通ることはできない。 裁判を避けて通ることはできない。
その判断はいまもぶれない。 その代り、小出氏は、自分でしかできないこと、自分だからできることに特化して活動を続けてきたのである。 小出氏は原発事故を引き起こしてはならないと考え、そのために行動を続けてきたが、福島の事故は起きてしまった。 原発推進勢力は、「原発絶対安全神話」を唱え続けてきたが、原発事故が起きた。 広島原発168発分の放射能を撒き散らした福島原発事故を発生させたにもかかわらず、責任ある当事者が、誰一人として責任を問われていない。 小出氏は、「責任者」ではなく「犯罪人」であると明言する。 法律がありながら、法律を踏みにじる罪を犯すと、法律そのものを踏みにじってしまう。 こんな国の、政治と裁判に期待できるものは何もない。 小出氏がそう考えるのは当然のことかも知れない。
あの福島原発事故が発生して、日本の司法もようやくこの段階にたどり着いたと率直に評価するのである。 しかし、判決は一審のものである。 優れた判決は、下級裁判所からしか示されない。 上級裁判所に進むに連れて、司法判断の腐敗が進行するからである。 樋口英明裁判長判決の勝ちは限りなく高いが、この判決が闇に葬られることのないよう、市民が監視しなければならない。
現実を冷徹に見つめる小出氏の現状判断は極めて厳しい。 先の大戦で、一般国民は、戦後に 「私たちは騙されていた」 と自己を正当化したが、本当に騙されていたのかと問うのだ。 「騙されていた」のではなく、「積極的に戦争を推進していたのではないか」と問うのである。 すべての国民が、あの原発事故から4年たったいま、小出氏の問いを見つめ直す必要があるだろう。
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★ラジオ オンエアのお知らせ★
今日3月10日(火) 午後4時から ラジオカロスサッポロ FM78.1 『つたえるコトバ つながるミライ』 生放送です。 ゲスト:UHB北海道文化放送解説委員長 高橋純二 さん お電話:京都大学助教 小出裕章先生(16:10ごろから) (動画は、2011年5月23日参議院・行政監視委員会 での 小出先生。 約4年前になりますが 今、もう一度見ておきましょう。聞きましょう。) 明日3月11日で 震災・原発事故から4年を迎えます。
その日を前に 番組前半は、小出先生とお電話をつなぎ、 汚染水漏れ問題をどう見るべきか、 これから、どんな点を注視していくべきか、 そして、4年が過ぎようとしてる今、小出先生の思い、ご退任後の これからを うかがって行きます。 後半は、小出先生のお話を受けて、スタジオの高橋純二さんと
この4年間のこと、今までのそして今後の報道について、等 お話していただきます(予定。たぶん脱線します)。 お届けする曲は3曲(これも、予定)。 ① 小出先生からのリクエスト 2012年のある講演会で、「この曲だけは聞いていただきたい」とおっしゃって、流したのがこの曲だったそうです。
「絶望したら、諦めたら、負け」とおっしゃった小出先生は、泣かれていたそうです。「どんなに苦しくてもつらくても、明日は来る」希望を持って前に進むための、ステキな曲です。 その、名曲、お送りします。曲名? 聞いてのお楽しみです。 ② 3月の卒業シーズンにあわせて、そして、多くの人たちの希望である「原発、原子力からの卒業」という意味も込めて、送ります。
高橋優 「卒業」 ③純二さんセレクション 聞いてないからわかりませんが、たぶんラブソングを持って来て下さると思います。
これもお楽しみに。 札 幌市外、北海道外でも、PCやスマホで聞くことができます。
リッスンラジオ、サイマルラジオでどうぞ! (便利な世の中になりました!) 本日も、オンエア中にテレビカメラが入ります。 ちょっとワサワサしてるかもですが、どうぞご了承くださいませ。
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2015/03/08 に公開
小出裕章・京大助教 講演
演題「福島第一原子力発電所事故から被害者と加害者が学んだ教訓」 2015年3月7日(土)、円山公園・円山野外音楽堂(京都市東山区)で開催された『バイバイ原発3.7きょうと』メイン集会での小出裕章さんのスピーチです。
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