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『星影のワルツ』
それは1983年5月の夜のことでした。 「別れることはつらいけーど しかたがないんだ君のため」 と『星影のワルツ』の一節が流れました。主将尾崎真義が歌い出したのです。 総勢30名近くの日本人がニュージーランド最後の夜をオークランドで迎えていました。日本人とは20数年前、1968年にニュージーランドへ遠征しオールブラックスJrを破った選手達とその家族、友人達でした。センチメンタル・ジャーニーに私もちゃっかり参加させてもらっていたのです。 レストランの二階でお別れ会がもたれました。ニュージーランド学生ラグビー協会のジェフさんが来てくれました。ジェフさんは終始つきっきりで世話をしてくれた方です。 ウエリントンを皮切りに各地を訪問していきますと、あの強かった日本がやってきたと行く先々で試合を申し込まれました。それをさばくのがジェフさんでした。ある試合会場に入りますとクラブハウスの窓ガラスが割られていました。どうしたのだと聞きますと、 「試合の申し込みが多数あった。一つに絞らなければならない。選にもれたチームの誰かが嫉んで窓を割った。凄い人気なのだ」 とジェフさんは言ってウインクしました。 試合は親善試合でしたから殺気だった物はありません。ですが、さすがに全日本です。接戦でも最後は山口良治さんのゴールキックで突き放すといった展開で日本は勝っていました。 各地で大評判でした。ダニーデンでは地方予選の決勝があり見学に行きました。席に着きますといきなり「1968年オールブラックスJrを破った日本代表が会場に来ています」と紹介がありました。ラグビー場は全員起立で大きな拍手に包まれたのです。 そんな思い出を一杯貯めていよいよサヨウナラです。お別れの最後に主将尾崎真義の挨拶です。それがいきなり歌になったのです。それは計算された物ではありませんでした。尾崎にはそれしかなかったのです。ジェフさん、ありがとうは言葉では足りなかったのです。尾崎は「星影のワルツ」を懸命に歌いました。別れの歌だと言うことが通訳されますとジェフさんの目が真っ赤になりました。僕達は一番しか歌詞を知りません。 サヨウナラありがとうジェフさん、と気持ちをこめて歌いました。尾崎は泣いていました。ジェフさんもこらえていましたがとうとう大粒の涙をこぼしました。 外は南十字星、別れにはワルツが似合いました。 1968年ニュージーランド遠征組
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遅くなりました。ありがとう。ダニーデンに行かれたんですね。懐かしい。
2014/7/2(水) 午後 3:17 [ 馬場信浩 ]