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『神がくれたサイン』
ニュージーランド、豪州の旅も終わりに近づきました。シドニー空港で少し時間が空きましたので数人の方々とコーヒーを楽しむことにしました。 どの方々も伝説のある人達でドキドキのしっぱなしでした。長旅でしたので一人一人話をたっぷり聞かせてもらえました。「さあ、これで店じまい」と鉛筆とカメラを置きコーヒーカップに手をかけた時です。ショップの端から一人の男が近づいてきました。男の身なりはけっして裕福な物ではありません。がっしりとした体格をしていま...す。 「サカタか」 と声がかかりました。ピリッと緊張感が走ります。デメと言われた坂田さんの目が大きく開かれます。 「そうだが」 「やっぱり」そう言って後ろの仲間に手を上げました。 自分はニュージーランド人で漁師だ。これから日本に行って漁船に乗る。日本の会社に雇われるのだ。日本ではあちこちの港に寄る。サカタ、お前の住む町に停泊したら電話をかけても良いか。ここに名前と電話番号を書いてくれ。 そんな話を一気にした男は紙を差し出すと、やや緊張した面持ちでじっと坂田好弘さんの顔をみつめました。坂田さんは、 「なんだそんなことか、お安いご用だ」 とペンを紙に走らせました。男は坂田さんが書き終わるのを待って、サッと紙を取り上げ、空にかざしました。で、言った言葉が、 「I got !(もらった)」でした。 空にかざしたのには訳があるのです。後ろにいる3人の仲間に見せているんです。それから男はこんな話をしだしました。 「俺はただの漁師だ。何にも良いことはなかった。でも一生懸命に生きてきた。家族を養うために海に出て働いている。そんな俺に今日は神が褒美をくれた。サカタだぜ。これサカタのサインだぜ」 コーヒーを奢らせてくれと言うのを坂田さんは断って、逆に4人分のコーヒー代を持たせて席に帰らせました。4人が立ち上がって坂田さんに最敬礼していました。「坂田はニュージーランドの英雄である」とまざまざと見せてもらったコーヒータイムでした。 坂田好弘、伝説のトライ |

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