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『ベルエアガーデンの住人』(二月初旬)
ベルエアガーデンの駐車場を散歩中、こんな張り紙を見つけたのは今年に入って間なしの頃でした。 「Your walker is in the lobby.」 「ディジーのだって?」 ディジーとはここの住民きっての金持ちでです。そして美人です。噂に寄りますと北部の新聞社主の何人目かの愛人であったとか。なのに何故こんな貧乏人の住まうレジデンスに入っているのかといぶかりました。謎はすぐに解けました。お金だけもらって質素に暮らすのが性に合っているのだそうです。 早速、ディジーの部屋に電話がかけられました。しかし、私のではないと言われてしまいました。しかし、walkerは確かに彼女の物でした。 「ミスター、あなたはどこの国の人でしたっけ」
「私は日本人です」 「そう。お名前はなんと」 「BABAと言います」 これはこの一ヶ月、ディジーと顔を合わせる度に交わす会話でした。 私は密かに覚悟しました。ここ数日で彼女とはお別れだなと。 「My dear」と私は彼女の手を握りました。ディジーは美しかったであろう横顔をこすりつけるようにして私をハグしました。そしてククッと笑いました。 その日以来、ディジーを見ることはありませんでした。 |
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