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なんとなく、百記事目になったんです。
皆様のおかげです。いつもお世話になっております。どうもありがとうございますですー。
皆様のご清栄を、心よりお祈りするしだいです。
なんですが、おりしも今日は日曜日。天気はいいし、春だし、お気楽にアソんでみました。
寝物語なら、私が枕元で語ってさしあげたいところなんですけど、
どうぞお好みの朗読美女を想像してくださいませ。
これは、今からずっと、ずっと先のお話です。
そのころには、人間たちは今よりもずいぶん数が少なくなっていました。それは昔あった大きな戦
争や、疫病や、災害などのせいでした。以前にはそういうことがよくあったものなのだと年とった人
たちが言いました。けれど彼らも子供の頃に、昔はそんな事があったのだ、という話を、おじいさん
やおばあさんから聞いて知っているだけなのです。今はそんなことはなにもなく、人間たちは畑を
耕したり蜜蜂を飼ったりしながら、川のそばや肥沃な平野に、ぽつぽつと小さな村を作って暮らして
いるのでした。
ところでその村には人間とは少し違う種族が人間に混じって住んでいます。少し違うと言っても、
顔や姿形は普通の人間とどこも違うところはありません。ただ彼らはどこへでも思ったところへふい
に現れることができ、人の気持が言葉で聞かなくても解るのです。超能力とか、テレパシーとかとか
いうのでしょうか、とにかくそんなふうでした。
普通の人間は、思いがけないときに突然現れられたりしたら嫌な時だってありますよね。けれど
彼らはそんな気分もわかるのか、人が嫌がりそうなときには不思議とそんなことをしないのです。
とにかく彼らは意地悪ではなく、ずうずうしくもなかったし、それにそんな彼らがかえって役に立つ
ことだってあったので、人間たちは変なやつらだと思いながらも、何となく彼らを受け入れて何事も
なく一緒に暮らしていました。
ある日のこと。普通の人間の少年が、その人たちの若者の一人に尋ねました、君たちはどうやって
子供を作っているんだい?その少年はやっぱり人間と同じようにしているんだろうと思ってはいたの
ですが、人間にはもちろん相手の考えが解りませんから、つきつめて知ろうとすれば尋ねてみるしか
ないわけです。
でも、ずいぶん失礼な質問ですね。相手によっては怒ってしまうかもしれません。けれど彼らは普
通の人間とはすこし気持も違っていますから、尋ねられた若者は笑って答えました。
それじゃあ僕らが子供を作っているところを見せてあげようか。それもただ見るだけじゃ面白くな
い、そうだなあ、山のふもとに誰も住んでいない石造りの塔があるだろう、今日、日が暮れてすぐの
頃、あそこに来てごらん、僕らは子供を作っているところを影絵にして君に見せてあげるからね。
そりゃあ面白そうだ、きっと行くよと少年は答えました。友達と一緒に行ってもいい?ああいいよと
彼らは別れました。
その日の日暮れ、ふもとの塔に向かう人影は十何人かになっていました。少年と彼の友達が数人、
それからおじいさんと子供が一人、それにどういうわけか「彼ら」のうちの若い男も一人いました。
彼は自分たちがどうやって子供を作っているかとうに知っているはずですのにね。もっとも、その男
はいつも人と違った白い長い衣を着ているので、少し変わり者だと思われていました。
夕焼けの茜色が夜の闇に溶けかかって山の上に青くにじみ、空の高いところには森のねぐらに帰り
を急ぐ鳥たちが弧を描いているのが見えました。
みんながふもとの塔に着くと、塔から十歩ぐらいのところに椅子が幾つか並べてありました。きっと
これが観客席のつもりなのでしょう。それで皆めいめいそこに座り、または地べたの上に座りました。
塔の一階の窓は大きく開き、そこに白い薄布が掛けられていました。その端っこの隙間から、若い
女が一人、ちらりと顔を覗かせました。女は彼らを見てちょっと驚いたようでした。布の後ろで、女
が若者に何か言ったようでした。そのとき風で布がふわりと揺れて、たそがれの光の中の女の裸の腰
に、生まれつきの大きな赤い痣があるのが見えました。
やがてほんのりとランプが灯され、柔らかいあかりの中に若者と女の影が見えました。女の乳房や
若者の腰の形がはっきりと映り、彼らが何も着ていないのがわかりました。彼らは向かい合い、若者
は女にキスをして、肩から背中にかけて優しく撫でてなにか囁き、女がそうねと言うように頷くと、
二人はそこにあるらしい寝台のうえに静かに横になりました。
そしてそれきり、なんの動きもありません。
みんなはずっと見ていたのですが、布には彼らの影すら映らなくなりました。いったいどうしたの
でしょう?
とうとう白い長い衣の男が立って、つかつかと塔の窓に歩み寄ると、薄布の隙間から覗いてみたの
です。するとどうでしょう、彼らはただのんびり寝そべって、皿の上に積み上げた木の実を食べてい
るだけだったではありませんか。
こんなところまで人を呼んでおいて、なんて気まぐれなのでしょう。
白い衣の男は驚いて、ちょっとあんたたちなにしてんの、と大声をあげました。寝台の上の二人は
びっくりしてとび起き、それからけらけら笑い出してしまい、しまいに二人で抱き合ったまますうっ
とどこかへ姿を消してしまいました。
消えてしまった者を追いかけることはできません。白い衣の男はぷんぷん怒りながらみんなのとこ
ろへ戻ってきて、こんなふうだったと話しました。
ちぇっ、そんなことだろうと思ったよ、笑っているものもいましたが、なんだか残念そうな人もい
ました。なあんだつまんないどっかに行っちゃったの?と子供が不思議そうにおじいさんに尋ねまし
た。そうだよ、とおじいさんが答えました。やっぱり恥ずかしかったんだろうさ、仕方がないからも
う帰ろうね。
ここから見ると村の家々はもう黒い影ぼうしだけになり、灯された明かりが窓の形に光っていまし
た。そこは暖かで、きっといいにおいがするだろうと子供は思いました。今日の晩ご飯は何だろうな。
嬉しくなって、子供は走り出しました。見上げると山の上には一等早く輝きだした大きな星が、丘
のてっぺんにはぼんやりと十三夜月がありました。
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