La Bazzecola “ラ・バッゼーコラ”

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自分の作業場の片付け云々で約30分の遅刻。
『チャオ。』無愛想極まりないアタシ。
社長室に通されて・・・
「まぁ座って。どう、調子は?」
『いいですよ』
「怒ってる?」
『怒ってるとは?・・・いいえ、怒ってるというよりは、ひどく感情が高ぶっていますけど。ナーバスです。当然ですよね』
「いや、あの件に関しては・・・。君の誤解だったとしか言いようがない。フランチェスコはピエモンテの仕事でのギャラの未払いがあったんだ。だからその分として支払いをこの間やってすませたんだよ。とにかく、ほかの誰にもギャラは払っていないから」
そんなことは私個人にとっては興味のないことである。
それよりも、こういうことは既に私の周囲から耳に入れられていて、予想していた通りの台詞は逆に私を呆れさせるだけだった。
こんなことを聞かされていた。
そんなの簡単に言いくるめられるわよ。口裏を合わせるように周りに命令するんだから。その人たちなんて、その会社とずっと組んで仕事してきているんでしょ?これからの仕事をもらうためにも、あなたひとりに嘘をつくくらい平気でやるわよ

社長はすぐ
「この間の件に関しては一切のギャラは支払って上げられないけれど、君に2枚の絵画修復の仕事をあげようと思って・・・。君が見積もりを出して、そこにこの間のギャラの分を上乗せすればいいじゃないか」
・・・これも予想していた通りだった。
以前のアタシならば、多分そのまま流されただろうと思う。
でもね、もう疲れたの。みんな、ほんとにみんな・・・こんな人。こんな人ばっかり、ほんとゴロゴロ転がってる。
今回ばかりは騙されない。
アタシは即答していた。
『いえ、結構です』
「いらないというのか?」
『はい。今の仕事はありますし、今後の仕事探しを今ここでするつもりもありませんし。』
そりゃあそうだ。もはや、こんな人たちに都合よくもてあそばれるのにはうんざりなのだ。それになにより、もう長居する予定はない。
「・・・!!!
『あの、どうでもいいですけど、今も未来も興味ないですから。私がきちんとしてもらいたいのは、既に行った仕事のことです。その支払いが済まない限り、私は一切そういったことに関してのお話をするつもりはありません』
「・・・そうか。それは残念だ。でも、僕たちはこれからも一緒に仕事をしていかなければならないんだよ」
『ええ、そういった関係は、すべきことをきちんとしていただいて保つことができるものですから。残念です』
『では』と、立ち上がった私に
「仲直りはできないのか」
『仲直りも何も、一方的に私をこういう状態にさせたのはそちらですから』

いったい『では』を何回言わせるのか・・・引止めを繰り返す社長。
「まぁ、座って」
なんとしても、二枚の絵画を引き受けさせようという社長。
『大体予想つきますけど・・・フランチェスコとイヴァノと組んで修復させようと考えているんじゃありませんか?絶対にあり得ませんから。あの人たちはどちらも修復士でもなんでもないですよ。絵画消した、絵画層剥がした・・・そんなのばっかり。ありえません!
「君ひとりに全部任せるんだ」
『どこで?場所は?』
「うちの作業場をつかえばいい」
『お断りします。』
会社が絵画修復部門にも本格的に乗り出そうと計画していたことは、以前耳にしたことがあった。
でも、こういうのもまた今となってはまったく興味をそそらない。
アタシはもう42歳で、こんな利益ばかりで本当の仕事、本当の修復というものをまったく重視しない会社に付き合っている余裕はない。
フランチェスコを溺愛するのは、彼がまさにそういうタイプだから。利益だけを尊重し、仕事の中身はどうでもいい。そういう人が気に入られる会社とアタシの心が通じ合えるわけもない。
『もし、どうしても私に引き受けさせようと思うのであれば、場所は私が選びます。私の今現在の居場所はあの工房ですから。さらに、実際にその絵画を見て気に入らなければ・・・』
「気に入らないとは?」
『適当にその辺から見つけてきたようなものとか、大事にされないものとか・・・』
「どうしてそういう言い方をするのか?」
『そういうものは、私が長年働いてきた工房では、実習生や経験の少ない人たちが練習のために手がけるものなので。』
「・・・!!!

「とにかく、近日中に君にその絵画をみせるようにするから。そして君が気に入ったら引き受けてくれ。僕もまだ、その絵画はみていないから、今は何にも言えない」
そして手を私に差し出した。
「許してくれるか?これで機嫌を直してくれないか?和解できないか?」
一瞬迷って・・・
「嫌なら無理に握手をしなくてもいい」
『あぁそうですか。すみません。和解に至っていませんから。では・・・残念です。さようなら』
さっさと会社を後にした。

ムカついてムカついて・・・で、
やっぱり工房の上(責任者)に電話をして、まぁこういうことになったんで、万が一のときは絵を2枚工房でやるかもしれないけど・・・なんて、まず報告して。
勿論快く承諾。
憤りはやっぱりおさまらず、家に帰ってきて
隣に住んでいる友達にぶちまけようと・・・電話を一本。
『いま、ちょっと話せる?
「じゃ、うち来て!子供が寝てるところだから、こっちに来てよ!」
で、うっかり自分の家の鍵を中に置いたままで、ドアを閉めてしまい・・・

近所に住んでいる家主さんが帰るまで、4時間ほど隣の家でご厄介になっていました。
散々な一日。

でも本当、こんなの(会社とのこと)
本当、いつものこと。
こんなのばっかりなの。
工房での仕事だって、
アタシはもう知ってるし、そういうことは工房側もアタシに気を遣ってくれているから
アタシにはもう直接起こらないことだけど(個人所有の美術品に限っては。)
お客さんで、仕事頼むだけ頼んでおいて、絵画を受け取って
そのあと何ヶ月も行方知れず。
何ヶ月もたって、やっと支払いにくる。
ひどい人だと、一方的に分割にして。ちょっとずつ、ちょっとずつ・・・。みたいな。
個人からの依頼だけならまだしも、今はもう公のものだってよくわからない。
いったい何ヶ月掛かるのか・・・。

だからね、もうよくわからない。いろんなことが。いろんなひとが。
なんかもう、めちゃくちゃ・・

昨日はあまりの憤りで、この一通りを吐き出そうと隣に住む付き合いの長い友達のもとへ。
2分後、自分の家の鍵を中に忘れたまま飛び出したことに気づき、遅くまで自宅に戻れなかった!・・・という。どんだけブチ切れていたんだか。

周囲に言わせると、2枚の絵画の仕事を素直に受けて、イランでの仕事のギャラも上乗せして請求するというのはアリ!らしい。
けどな・・・
アタシはその修復を直接依頼する‘絵画の所有者’のことも考えずにはいられないし。
会社が払うもんは、会社が負担すべきだし・・・
どんだけマージン取るんだよ!って、それはいつも腹立たしいことだし。

それに・・・
もうその会社には関わりたくない。それは本当に強く思う。
利益ばかりに頭があって、人の心は感じられない。
修復は、そんな人がやっていいことじゃあない・・・絶対ない。
だから、嫌いなんだ。
その会社も、
そこでへこへこ頭下げて社長の機嫌とって、なんでも・・・それが自分の技量にかなわないことだとわかっていても二つ返事で引き受けて、絵画を消してしまっても、笑って「こりゃあいいや!はっはっはー!」みたいな人たちも。それでいて、結構高給(イタリアにおいては)をとってるわけです。
そんな人たちもいるわけです。

そんなところに長々と縁を繋がれ飼い殺しにされるくらいなら・・・
アタシは小さくでも、ひとりきりでも、細く長く続けていきたい。
最後まで頑固に、社長をにらみつけながら逆らいきった自分のこと
周囲は逆に心配するけど
やっぱりアタシらしいと、今も思える。

地道にがんばるよ、・・・うん。

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