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(三十三)
私の偽装入水自殺未遂事件は、二日後のスポーツ紙に社会欄の
頁に載った。朝の、工場ではラジオ体操を終えて従業員が持ち場
の仕事に着いて働き始めた頃、私はまだベッドの中で、バロック
の彼女が電話を掛けてきて教えてくれた。その声はまるで楽しい
事を伝えるように聞こえた。私はすぐに誰がリークしたのか解っ
た、元芸能人の女社長に決まっている。しばらくして、バロック
の彼女が息子と、スポーツ紙を持ってやって来た。
「元ネットカフェ難民の画家〇〇 自殺未遂?」
そこには、日時から河の名前、助けられるまでの経緯など詳し
く書かれていた。そして画業の行き詰まりから思い悩み、死を選
ぼうとしたが、自殺する者が服を脱いで入水することは考えられ
ないとして、いざとなってやはりタメライがあったのだろうと終
わっていた。私の入水自殺未遂は、本人の言い分を無視して社会
的事実になってしまった。何故こうなってしまうのか?私は当事
者の言い分を取り上げ様としないマスコミに腹が立った。
するとバロックの彼女が、
「きのう、新聞の人から電話はありましたよ。」
「それで、どうしたの?」
「確認だけさせてほしいと言うので、応えましたけど・・・」
「何を答えたの?」
「だって、何もかも知っているんだもん。」
私は早速、女社長に電話をして記事のことを伝えた、
女社長は、
「名前が売れて良かったじゃない!」と、言った。
「やっぱり、あんたかっ!」
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