小説の習作

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短いやつ

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 世界は、終わろうとしている。
いや、終わろうとしているのは私かもしれない。

その日常は、排水で満たされた水たまりの様に、
もはや、自力で流れ出すこともできず、どす黒い
水面は、いかなる進入も拒むかのように、メタリ
ックな光を反射し、ただ人々が吐き出す排水だけ
が、気がつかないうちに脇をつたって流れ込み、
溜まる。流れを失った水は、すでに時間を無くし
、まるで有史以前からそうであったかの様に、ふ
てぶてしい反射を返す。そして、私はその中で、
ただ浮遊するボウフラだ。
時間を失った日常は、場所を失い、方向を失い、
そして、ついには重力すら失い、全ての関係が消
え失せる。まるで、ブラックホールに吸い込まれ
る微粒子の様に、「世界」の引力から切り離され
、繋がりを失い、自由を失い、ひとり取り残され
た無重力空間の中で、必死になって手足を動かし
ても、伝わってくるのは、真空の虚しさだけだ。
私は、自由を失ったのか。それとも、重力からも
開放された、これが本来の自由じゃないのか。尚
も遠ざかっていく「世界」を視ながら、足掻き苦
しむ無駄を悟り、やがて「世界」は、点になり、
宇宙の暗黒がそれを塗りつぶす。無限に広がる宇
宙空間で、ボウフラの様に浮遊しながら考えた。 
 果たして、「私とは何か。」
 いや何故「私とは何か。」と、私は問うのか。
もはや、世界は消え去った。「私は神である。」
と言おうが、「私は水溜りのボウフラである。」
と言おうが、それがいったい何の意味がある。「
世界」の消滅と共に、全ての認識も無意味になっ
た。「在るのは私だけだ。」
 認識は、主体が対象との関係の上に成り立つと
すれば、全ての対象が消滅した時、関係が生まれ
ない。私が持ち得る認識は、主体としての私が、
対象としての私に関する認識だけだ。
 即ち、「私は、存在する。」
 ところで、認識は存在に拠っている。つまり、
 「私は、存在しない。」と言う認識は、成り立
たない。
 つまり、「我在り、故に我思う。」と。

 そう囁いた時、頭が急に熱くなったので、思わ
ず手を頭に載せた。ところが、その手の甲が同じ
様に熱くなったので、私は、頭を上げて私にとっ
ての上を見た。すると巨大な流星が、文字通り火
の玉となって、私の上を今まさに静かに、しかし
凄い勢いで通り過ぎたその時、私の体は流星に吸
い込まれる様に、その後を信じられない速さで追
って行った。暫らくすると、かつて私が、へばり
付けられ、歩かされ、走らされ、登らされ、落と
され、こかされ、倒され、ぶつけられた、あの、
あの、あの地球が、あの世界が、あの日常が、ま
るで私を迎えるかの様に、私の方へやって来た。
私は、もう一度、自分に言い聞かせる様に、小さ
な声で囁いた。
 「我在り、故に我思う。」

 春の温い日差しを受けて、止まっていた水の流
れも、時の流れを取り戻し、空から山へ、山から
川へ、川から土へ、土から木々へ、と忘れていた
ことを思い出した時のように、動き始めた。管を
伝わって垂れ落ちる排水の水溜りにさえ、蚊柱が
、生まれてきた悦びを震えながら感謝を捧げる。
その下では、頑なな水面を少しは和らげる日差し
のお陰で、返す光も穏やかになった「日常」の中
の、我がボウフラが、有史以前からの浮遊を超え
て、大きく羽ばたいて、今飛び立った。
 もう一度、自分に言い聞かせる様に、小さな声
で囁きながら、「我在り、故に我思う。」

おわり 


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