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私が、余りにも視線を向けていたので、彼は
、怪訝そうに、二度ほど横に目を逸らした後、
まるで万引きが見つかった少年の様に、私を見
て頭を下げた。私は、ちょっと驚いて遅れて軽
く頷いた。すると、非常事態発生の時の地球防
衛隊員のように、ウルトラセブンは飛んできた。
「今度ご一緒させて頂きます□□です。ご面
倒をお掛けしますが、どうぞよろしくお願い致
します。」と言って深々と頭を下げた。私は、
彼の後頭部から襟足にかけてのタテガミを暫く
観察した。
私は、ベンチャーを志す若い者が、かつての
日本の企業道徳だとか慣習を、何のてらいもな
く受け入れることにいつも驚かされる。一言で
言うと、気持ち悪いのだ。起業を志した時の、
古い日本型経営の因習に嫌気がさし組織の在り
方を変革する気概も、運よく成功を手にした途
端、今度はそれにしがみつき立場を守ろうと、
忌み嫌ったはずの慣習を踏襲する青年起業家に
は、がっかりさせられる。
彼の慇懃な態度に少しうんざりしつつ、と言
うのも、私は、若者の多少の無礼は許せるが、
クソ丁寧な若者を見ると、なんかウソ臭く感じ
るので、私の方から名刺を渡し、手を出して握
手した。彼は慌てて自分の丸い名刺を、恥ずか
し気に出して、その丸い名刺に驚いてる私を見
ずに、彼女にウィンクした。
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