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食事代は高く付いた。持ち合わせが無か
ったのでカードで支払った。分割にした。
彼女は、ワインがまわってきたのか、外へ出
るなり急に陽気に振舞った。まるでつらいこ
とは全部、店の中に閉じ込めてきたかの様に
はしゃいだ。タクシーを捕まえようとすると
叱られた。
「これからじゃない!」、名前の後に肩書
きを付けて言った。
彼女は、まだ人が行き交う大通りを斜めに
横切り、細い路地に迷わず入った。私は迷い
そうになりながら後に続いた。
カウンターのBARだった。彼女はやっぱり
ワインを飲んだ。私はマティーニをオーダー
した。
若い頃、アメリカ映画で度々出てくるドライ
・マティーニが飲みたくて酒屋を何軒も探した
ことがある。ついに勇気を出して店の人に聞い
て、初めてカクテルだと知った。それからは、
こういう場所では、マティーニときめていた。
彼女は、前にも増してワインを流し込んだ。
おかげで私は、何度も首の「縦の線」を堪能
した。話しは、男と女の事、とりわけ男の事
を、ちょっと先輩ずらして話した。
志のない男はつまらないし、一旦志を持て
ばそう簡単に諦められないものだ。古くは、
西洋の科学者からライト兄弟まで、成すまで
は止めれんのが男だ。と言いながら、自分は
何の夢も無い事に気付き、黙りこくった。
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