小説の習作

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有希子(13)

  ベッドの上の暖房で、ようやく部屋が暖

まり、彼女は寝ながらコートを脱ごうとジタ

バタした。コートの呪縛から解放してやる為

に、袖から二本の腕を抜いてやり、かがんで

コートを取ろうとした時、下から腕を延ばし

て私の首に絡めた。私は何か洒落た言葉を言

おうとしたが、蛇に睨まれた蛙のように固ま

って、思わず「ゴクリッ。」と固唾を呑んだ

。両方の耳の奥でその音が響いたので、部屋

中に聞こえた様に思えた。まるでそれが、待

ち焦がれたご馳走にありつけた時に、口の中

に溜まった「よだれ」を飲み込む時の音と同

じだったので驚いた。

 「抱いてほしい。」と、今まで聞いた事の

ない、せつなく囁くような声で彼女は告げた



 男と女のコトを、子供はいつ頃から知り始

めるのだろう。テレビである歌舞伎役者が物

心が付いた時から知ってた、と言っているの

を聞いて驚いたことがある。その時代とおか

れた環境に因ると思うが、私は12歳まで知

らなかった。勃起するペニスの意味が全然、

解からなかった。勃起する度に何かの病気だ

と青ざめた。学校の休み時間に級友が、何の

脈絡もなく教えてくれた。彼にとっても驚く

べき最新情報だったんだろう。その言い方が

ひどく忌わしいものの様に言った。

 「女のおしっこする穴にちんちん入れんね

 んどー」

しばらく、そのことが私の頭を支配した。そ

れまでの自分の理想が、世界観が、重大なフ

ァクターを見落として構築されていた事を知

らされた。私は早速SEXに関する情報を手当り

次第、手に入れようと必死になった。その頃、

異性と勃起が頭の中で繋がった。

 今のように情報が無かったので、もう一つ

リアルなイメージが湧かなかったし、なによ

りも女性器そのものイメージがなかった。も

しも、その画像が、どこそこの川原に在ると

言われたら、その頃なら何百キロ先でも、何

はさて置いても駆けつけて、何時間でも探し

ただろう。

 もちろん、今は何を為るのか知っている。

彼女の上に重なって、私は、長いキスをした。



    
 窓のカーテンがしっかり閉まってなかっ

たので、そこから東京の夜景が見えた。

すでに東京は、寝静まっていた。っと、

その夜景の手前の窓ガラスに、部屋の薄明

かりを受けて、怪しく動く自分の下半身が

映っていた。カーテンを閉めに行こうと思

ったが、彼女が漏らす甘い声に、止める訳

にはいかなかった。時折、奇妙に動く自身

の臀部を眺めながら、今まで見ることの無

かった情けない格好に、説明のつかない哀し

さを感じた。半開きのカーテンからは、激

しく腰を振る自分と、その向こうの東京の

夜景が重なって見えた。

有希子(12)

 彼女は、死んだ様になっていたが硬直し

ていなかったので、それが余計に厄介だっ

た。部屋の前に着いた時、あと10メート

ルも先にゴールがあれば、この二人三脚の

レースは棄権しただろう。お客の荷物を放

り投げるエアポートのパート係員の様に、

彼女をベットに放り投げて、レースは終了

した。



次に生まれるとしたら男と女のどっち

がいいか?って聞かれて、女は、懲り々々

だと思わせるものの一つに、このバックが

ある。必要な物が、こんなにあるとは思え

ない。散々カバンの中を捜した挙句、肝心

のモノが見当たらず放り出されたものは、

何週か前に買った本やら、フリーペーパー

マガジン、旅行案内冊子、行くことない店

のポイントカード多数、マッサージ器、数

種類の薬、携帯電話の分厚いマニュアル本

、分厚い手帳、マーカー数本、メガネケー

ス、飲みかけのペットボトル、謎のポーチ

、もう一個、謎のポーチ、駄菓子。結局、

捜しているモノは見つからないと言う女が

いた。手ぶらで事が足りるのが最良だとす

れば、どうしてそんなにハンデーをぶら提

げて歩くんだろう。

 コートを脱がせようと転がしたら、

「水...。」と言って反転してきた。

コップに水を入れて渡すと、やおら起き上

がり一気に飲み干して、

「もう一杯...。」と言って、また倒れた。

すっかり酔いの醒めた私は、ソファーに前

屈みで腰を下ろし、静寂が支配する部屋の

中で、水を飲んだ。

有希子(11)

気が付かなかったが、彼女は眠っていた。

右肘を支えにして顔を預け、「わかる、わか

る」と頷く時の様に、軽く目を閉じながら、

顔は爬虫類の様な手の奥に深く沈め、止まっ

ていた。私は気付いた時に、何時から眠てい

たのか気になった。てっきり、話しに納得し

て聞き入っていると思っていたので、少しバ

ツがわるかった。気付かずに話し掛けていた

私も随分、酩酊しているのがわかった。勘定

を済まして、彼女に「帰ろう」と言ったが、

彼女は夢の世界にいた。肩を揺すると、微か

にいびきが聞こえた。私は、それよりも初め

て触った肩の感触に意識がいった。「こんな

に細いのか」と思った。 私は、決して肉つ”

きのいい女性が嫌いでは無いが、こうして酔

い潰れた女性を、介抱して歩かせる時は、楽

だった。

 男がもし競走馬だとしたら、上に乗せる騎

手は軽いに限るし、ああっ、こんな風な相手

の捉え方もあるのか、と意味の無い事に感心

した。たとえば、何もかもに嫌気が差し、気

力も萎えた時には、一緒にいる女の存在感が  

絶望的に重荷に感じることがある。二日酔い

の朝にホルモン焼きを食べたくない。そんな

時に、たとえ身体さえでも華奢であってくれ

たら、なんか気になる事の一つが消えた様な

軽さを感じる。私も酔いが回ってきた。

 迷いながら来た道を、酔いながら帰った。

彼女を肩で支えながら、今度は肩以外のあら

ゆるところを触れる口実ができた。こうして

42.195Km 歩けると思った。タクシー

に放り込んで横に乗り、ドアを閉めた時、彼

女が何処に住んでいるのか知らない事に気が

ついた。いや知っていて、酔っているので思

い出さないだけか、と思い色々考えたが、や

っぱり聞いていなかった。ドライバーが痺れ

を切らして、突けんどんに「何処?」と言う

ので、とっさに、自分のマンションを告げた。

有希子(10)

食事代は高く付いた。持ち合わせが無か

ったのでカードで支払った。分割にした。

彼女は、ワインがまわってきたのか、外へ出

るなり急に陽気に振舞った。まるでつらいこ

とは全部、店の中に閉じ込めてきたかの様に

はしゃいだ。タクシーを捕まえようとすると

叱られた。

 「これからじゃない!」、名前の後に肩書

きを付けて言った。

 彼女は、まだ人が行き交う大通りを斜めに

横切り、細い路地に迷わず入った。私は迷い

そうになりながら後に続いた。

 カウンターのBARだった。彼女はやっぱり

ワインを飲んだ。私はマティーニをオーダー

した。

 若い頃、アメリカ映画で度々出てくるドライ

・マティーニが飲みたくて酒屋を何軒も探した

ことがある。ついに勇気を出して店の人に聞い

て、初めてカクテルだと知った。それからは、

こういう場所では、マティーニときめていた。

 彼女は、前にも増してワインを流し込んだ。

おかげで私は、何度も首の「縦の線」を堪能

した。話しは、男と女の事、とりわけ男の事

を、ちょっと先輩ずらして話した。

 志のない男はつまらないし、一旦志を持て

ばそう簡単に諦められないものだ。古くは、

西洋の科学者からライト兄弟まで、成すまで

は止めれんのが男だ。と言いながら、自分は

何の夢も無い事に気付き、黙りこくった。 

有希子(9)

彼氏は、彼女を幸せにする自信のないこと

を告げた。それは、他に好きな女性がいる訳

ではなく、今の仕事についての不安だった。

常に、新しいモノを作りつつ”けなければな

らない仕事で、明日いらないといわれるかも

しれないこと。そうならない為に、異なった

視点でモノを見る事をいつも強いられること

。まだ、自分は認められていないこと。など

など考えてると、何故、父が家庭を顧みなか

ったかが薄々理解出来るようになった。父も

不安だったんだ。それじゃあ自分は、結婚し

て家庭をもって今の仕事を上手くやっていけ

るか。もちろん彼女を幸せにしながら、仕事

も上手くいけば本望だが、幼い頃の記憶が蘇

ってくる。母の思い詰めた顔、父への憎しみ

、父への憧れ、取り残された思い、行く末の

不安、あんな父親にだけは絶対なってはいけ

ない、という母の言葉。

 自分は、本当に父親とは違っているのだろ

うか。もし、同じ道を歩いているなら、とて

も結婚して彼女を幸せになんかできない。

 今は、仕事を認めてもらうことが優先する。

本当は待ってて欲しいと言いたいが、彼女に

は彼女の人生がある。仕事が認められないか

もしれない。挫折するかもしれない。別の女

性を好きになるかもしれない。君を幸せにで

きないかもしれない。

 「君のことは、君が決めていい。」

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