小説の習作

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有希子(1)(2)(3)

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有希子(3)

直接、彼女から聞いた訳では無いが、そして

、いまだに聞いてはいないが、彼氏とは、学生

の頃からの付き合いで、暫く別れていたが、互

いに社会に出てから、また、付き合い始めたと

、彼女の友だちが、教えてくれたことがあった

。その友だちは、彼女が、ちょっとの間、モデ

ルの仕事もやっていたと言った。私は、尤もだ

と思える程、彼女は美しかった。

 私は、会ったことも無い彼女の男に、複雑な

感情を持って、そして、彼女に会うたびに、そ

の複雑な感情を癒してほしい、衝動を抑えるこ

とが苦しくなり、ついには、わざと冷淡に当た

る様になって、彼女との間には、異次元の隔た

りが出来た。彼女にとって、私のそういう行動

は、今まで散々経験してきたひとコマに過ぎな

かっただろう。私が、彼女に自分の思いを伝え

ても、もし仮に、彼女が悪くない返事を返して

くれても、私のイメージはそこまでで、その後

、どう付き合えばいいのかは、全く浮かんで来

なかった。いわゆる私は、イケテル男ではなく

また、そういう男のやる仕草や物言いが、鼻に

ついて仕方がなかったし、好きな女に「愛して

る」という言葉が使えない男だった。それは、

自分の思いと、かけ離れた言葉だった。

 一度付き合った娘と、リングを買ってやる為

に、一緒にジュエルショップに行ったことがあ

るが、あの異常な程の照明とやたら光の反射す

る店内で、鼻持ちならない店員の言葉遣いや、

仰々しい仕草に付き合わされてる自分が、まる

で鏡の檻に入れられた、筑波山の蟇蛙のように

油汗を垂らしたことを思い出す。店員の歯の浮

く様な褒め言葉と、持って回った言い回しに、

どう対応していいか解からず、背中が汗だらけ

になって、独りで逃げ出したい衝動に襲われた。

つまり、何か洒落た振る舞いを求められる雰囲

気に飲まれて、踊らされてる自分が嫌になる。

 私は、彼女とは釣り合わないと思った。

しばらく仕事の些細な事以外は、顔を会わずに

いると、昂ぶった感情は消え失せて、彼女の前

でも、いつも通りの事が、いつも通りに進む様

になり、蝉の声が鳴き止む様に、心の中もまる

でそんなことが無かったかの様に平静を取りも

どした。

 仕事の方は順調に行き、ひと段落ついた時、

関係者を呼んで打ち上げパーティと忘年会を、

一緒にやることになった。その頃はもう、私

も何の気兼ねなく、彼女と打ち解けた話をす

ることが出来たので、酔いも手伝って、「彼

氏とは、上手くいってる?」くらいの話しが

できた。すると、横にいた例の友だちの女が

、「あれっ、知らないの?ほら、あそこに彼

氏がいるでしょ。」と首を動かして顎を、あ

る男を方に向けた。私は「えっ」と言った。  

 その男は、まだ名前は出ていないが、うちの

会社の宣伝の仕事で、優れた力を認められたデザ

イナーで、次の仕事では私と組むことになって

いた。

 「ああっ...あの男が...。」

ゆきこ(2)

「愛」とは、主体の、「認識」から生まれる

感情ではない。つまり、愛してはいけない「認

識」を自覚していても「愛」は生じる。他者に

よる強制とか圧力はもちろん、主体の義務とか

責任からも生まれない。それは本能的感情で、

「認識」以前のものである。もちろん現代は複

雑化しているので認識によって「愛」が生れる

様に見えることもあるだろう。所謂、情が移る

こともある。が、逆に、「憎しみ」が生まれる

こともある。

「愛国心」の義務化は、「偽愛国者」を増やせ

るだろうが、同時に、「憎国者」(言わないか

)も増やすだろう。私は、認識によって生まれ

た「愛」を「偽愛」と呼ぶ。

 私と有希子の関係は、その「偽愛」と言って

よかった。「愛情関係」は、二人の相互関係で

ある。どちらか一方が「偽愛」であっても、バ

ランスが壊れる。始まりは「相愛」関係であっ

ても時間の経過でそうで無くなることもある。

そうで無くなるだけなら良いが、憎しみ合うこ

とだって起こる。現代人はやたら「愛」を説く

が、それは欧米文化の影響で(つまり、キリス

ト教の影響で)イエスの「博愛」の思想から来

ていると思う。しかし、神の使徒が説く教えは

、信者にとっては強制以外の何ものでもなく、

古くからヨーロッパの文学者はその「偽善」

性を指摘している。ニーチェは、「愛」は、

「憎しみ」とおなじところから生じる感情だ

、と言ている。何の感情も持たない者に、「

憎みなさい」も「愛しなさい」も、 「えっ

何で?」となる。もちろんキリストの説く「

博愛」と、私の周りで飛び交う「愛」は全く

別のものであることは、断るまでもない。  

 私は、有希子が、私のことを何も気にしてい

ない時から、好きだった。それは、ほとんど、  

会った瞬間からと言ってもいい。しかし、彼女

は、全くと言って良い程、私の感情を、それこ

そ、床に落ちたクリップ程にも、気付かなかっ

た。いや、今にして思うと、薄々は気付いては

いたが、拾う気も無いクリップだったと思う。

私は、何度も、彼女の前で、込み上げてくる感

情の所為で、口ごもった。彼女が仕事場に、突

然現れた時などは、それまでの仕事の話ですら

、別人と思われる程、トチッタ。「どうしたん

ですか。」と言われたことを思い出した。

 彼女には、公然の彼氏がいた。

有希子(1)

 家に帰ったら、有希子が居なかった。

 私は、あまり頻繁にメールを使わないが、仕

事が終わって帰る時は、もちろん知らせる事に

にしている。いつもの様に、メールを送ろうと

したら、有希子からの着信メールが届いていた。  

 「ちょっと留守にします。外で夕食お願い。」

もっと色々、絵文字を使って飾ってあったが、私

は、それが再現出来ないので、意味だけを伝え

ると、そういう事だった。そもそも、あの絵文字

を使ったメールは、付き合ってる時から、 意味が

解からなくて、意味が解かった後も、真意が伝わ

ってこないので、あまり私が、使うことが無かっ

た。おかげで、日に日に疎くなり、携帯そのもの

も、直接的な情報以外、使わなくなった。

 そんな事より、外で飯をとって、家に帰った頃

は、もう十時を回っていた。私は、束縛されるの

が嫌いで、彼女の行動にも、いちいち言い訳を求

め無かった。言い訳というのは、本心とは別のと

ころで考えるものなので、いくら理に適った言い

訳をしていても、そう思っていない事のほうが多

い。あのテレビで見る、「社会的責任を痛感して

...」と、やっているお詫び会見だって、とにかく

、「謝っとけ」で、本心から言っている訳がない。

だいたい、謝罪だとか、奉仕だとか、そういうの

は、本人自身のどうようもない感情に動かされて

、行うもので、先に動かしても、感情は生まれて

こない。この国は、「愛する」とかの感情を、簡

単に、他人に対して求める過ぎる。「愛さ・な・

け・れ・ば・ならない」多くのものは、破たんする

に違いない。

 その夜、有希子がいつ帰って来たのか知らなかった

。私は、缶ビールを飲んだ後、疲れていたので爆睡

した。朝になって、コーヒーの匂いがして、戻って

いることを知った。しかし、私の方から、その事に

ついて問わなかった。もちろん、彼女が、言ってく

るからだ。「ごめんなさい、昨日は。」私の方を見

ずに言った。背中を向けて、コーヒーを入れながら

、「どうしても、行かなければならないことが出来

たので...。」と言い、反転して、それ以上は私の目

を見ながら、「もっと、知りたい?」とも、「もうい

いでしょ?」とも、どちらとも取れる眼差しを投げて

きた。もちろん私は、それ以上の質問をしなかった。

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