小説の習作

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有希子(7)〜(11)

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有希子(11)

気が付かなかったが、彼女は眠っていた。

右肘を支えにして顔を預け、「わかる、わか

る」と頷く時の様に、軽く目を閉じながら、

顔は爬虫類の様な手の奥に深く沈め、止まっ

ていた。私は気付いた時に、何時から眠てい

たのか気になった。てっきり、話しに納得し

て聞き入っていると思っていたので、少しバ

ツがわるかった。気付かずに話し掛けていた

私も随分、酩酊しているのがわかった。勘定

を済まして、彼女に「帰ろう」と言ったが、

彼女は夢の世界にいた。肩を揺すると、微か

にいびきが聞こえた。私は、それよりも初め

て触った肩の感触に意識がいった。「こんな

に細いのか」と思った。 私は、決して肉つ”

きのいい女性が嫌いでは無いが、こうして酔

い潰れた女性を、介抱して歩かせる時は、楽

だった。

 男がもし競走馬だとしたら、上に乗せる騎

手は軽いに限るし、ああっ、こんな風な相手

の捉え方もあるのか、と意味の無い事に感心

した。たとえば、何もかもに嫌気が差し、気

力も萎えた時には、一緒にいる女の存在感が  

絶望的に重荷に感じることがある。二日酔い

の朝にホルモン焼きを食べたくない。そんな

時に、たとえ身体さえでも華奢であってくれ

たら、なんか気になる事の一つが消えた様な

軽さを感じる。私も酔いが回ってきた。

 迷いながら来た道を、酔いながら帰った。

彼女を肩で支えながら、今度は肩以外のあら

ゆるところを触れる口実ができた。こうして

42.195Km 歩けると思った。タクシー

に放り込んで横に乗り、ドアを閉めた時、彼

女が何処に住んでいるのか知らない事に気が

ついた。いや知っていて、酔っているので思

い出さないだけか、と思い色々考えたが、や

っぱり聞いていなかった。ドライバーが痺れ

を切らして、突けんどんに「何処?」と言う

ので、とっさに、自分のマンションを告げた。

有希子(10)

食事代は高く付いた。持ち合わせが無か

ったのでカードで支払った。分割にした。

彼女は、ワインがまわってきたのか、外へ出

るなり急に陽気に振舞った。まるでつらいこ

とは全部、店の中に閉じ込めてきたかの様に

はしゃいだ。タクシーを捕まえようとすると

叱られた。

 「これからじゃない!」、名前の後に肩書

きを付けて言った。

 彼女は、まだ人が行き交う大通りを斜めに

横切り、細い路地に迷わず入った。私は迷い

そうになりながら後に続いた。

 カウンターのBARだった。彼女はやっぱり

ワインを飲んだ。私はマティーニをオーダー

した。

 若い頃、アメリカ映画で度々出てくるドライ

・マティーニが飲みたくて酒屋を何軒も探した

ことがある。ついに勇気を出して店の人に聞い

て、初めてカクテルだと知った。それからは、

こういう場所では、マティーニときめていた。

 彼女は、前にも増してワインを流し込んだ。

おかげで私は、何度も首の「縦の線」を堪能

した。話しは、男と女の事、とりわけ男の事

を、ちょっと先輩ずらして話した。

 志のない男はつまらないし、一旦志を持て

ばそう簡単に諦められないものだ。古くは、

西洋の科学者からライト兄弟まで、成すまで

は止めれんのが男だ。と言いながら、自分は

何の夢も無い事に気付き、黙りこくった。 

有希子(9)

彼氏は、彼女を幸せにする自信のないこと

を告げた。それは、他に好きな女性がいる訳

ではなく、今の仕事についての不安だった。

常に、新しいモノを作りつつ”けなければな

らない仕事で、明日いらないといわれるかも

しれないこと。そうならない為に、異なった

視点でモノを見る事をいつも強いられること

。まだ、自分は認められていないこと。など

など考えてると、何故、父が家庭を顧みなか

ったかが薄々理解出来るようになった。父も

不安だったんだ。それじゃあ自分は、結婚し

て家庭をもって今の仕事を上手くやっていけ

るか。もちろん彼女を幸せにしながら、仕事

も上手くいけば本望だが、幼い頃の記憶が蘇

ってくる。母の思い詰めた顔、父への憎しみ

、父への憧れ、取り残された思い、行く末の

不安、あんな父親にだけは絶対なってはいけ

ない、という母の言葉。

 自分は、本当に父親とは違っているのだろ

うか。もし、同じ道を歩いているなら、とて

も結婚して彼女を幸せになんかできない。

 今は、仕事を認めてもらうことが優先する。

本当は待ってて欲しいと言いたいが、彼女に

は彼女の人生がある。仕事が認められないか

もしれない。挫折するかもしれない。別の女

性を好きになるかもしれない。君を幸せにで

きないかもしれない。

 「君のことは、君が決めていい。」

有希子(8)

 「別れちゃった。」

 バッハの協奏曲が緩徐楽章から、最終楽章に

移って、「さあ、聴け。」とばかりに、激しく身を振る

弦楽奏者の姿が浮かんでくる音の調べに、

促されるように、彼女は言った。

 聞かされた私も、曲に促されるように何かが込み

上げてきて、しばらく身動きができなかった。

 閉店間近なのが、空席でわかった。

彼女は、ワインのグラスを取って、残りをいっきに

喉に流しこんだ。

 その首筋で、肌から透けて見える静脈の青と、

ワインで染まっていく皮膚の赤が、交じり合っ

た。長く伸びた首は、ひたすら上をめざす樹木

のようにまっすぐで、その繊細な縦の線に目を

奪われた。私の中で、かつての感情が蘇ってき

た。

有希子(7)

ほとんどデザインを変えただけの新製品の

売れ行きは、まずまずだったが、売れなくな

る前に、性能そのものを上げる為の会議が連

日続いた。普段の仕事が終わってから始める

為、帰る頃には時計の針が、ナイキのマーク

のようになっていた。

 「もう、誰もいません。」と守衛室に言っ

て、会社を出てしばらく歩くと、 

 「いつも、こんなに遅んですか?」と後ろ

から呼び止められた。有希子だった。

 澄みきった冬の寒さが、いらなくなったも

のを消し去り、在るものは鮮やかに際立たせ

、凍てつく大気に負けじと紅潮する頬は、た

まに会社で見る彼女とは違っていた。彼女の

背中には奇跡のような大きさの満月が、後光の

ように輝いていた。私は、思わず大きな息を飲

み込んだ。そしてその息を吐き出す勢いに合わ

せて言葉を発した。

「何しているの?」

夜の静けさに不釣合いな、大きな声だった。

 「ちょっとね...」「それよりご飯食べました?」

私は、昼から何も食べていなかった。

 「いいとこ知ってるから一緒にいきません?」

彼女は、驚いたことにタクシーまで止めていた

。告げた行き先は、男が独りで歩ける街じゃな

かった。彼女はモデルをやっていたんだ、と思

い出した。  

 店の名前は覚えてない。覚えようとしても、

カナが振って無いし、子音が重なったりして、

読めなかった。ただカナが振ってない店は高い

、って聞いたことがある。

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