小説の習作

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有希子(15)(16)(17)

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有希子(17)

遅くまで酒を飲んでいたので、朝起きれず、

止む無く休む旨の連絡を入れてまた寝た。次に

目が覚めたのは昼過ぎだった。世間は太陽の上

昇に合わせるかの様に活動を加速していた。野

球だったら五回の表で、先発ピッチャーが勝利

投手の権利を得ようと渾身の投球をしている頃

だ。コップの水を二杯飲んで、コーヒーの用意

をした。有希子は居なかった。彼女は以前のマ

ンションへ戻ることが多くなっていた。会社は

もう辞めていたが、またモデルの仕事を捜して

いると言っていた。

 シャワーを済ましたら、本来の自分にインス

トールできた。コーヒーを飲みながら、しばら

くパソコンで仕事の遣り取りをした後、する事

がなくなった。そのままパソコンに向かってニ

ュースを見たり見なかったりしていじっている

と、エロサイトへ迷い込んだ。興に乗ってどん

どん進んでいくと、その過激さに唖然とした。

いつから日本はこんな事が許される様に為った

んだ。

 自分が子供の頃は、テレビに映るアイドルの

ミニスカートから伸びた「太もも」だけで昂ぶ

った。子供の頃に見たピンクレディーのダンス

の振り付けを今でも覚えてると言う女性タレン

トはいるが、男がいないのは納得できる。男は

ダンスの振り付けなんかどうでもよかった、ス

カートの奥のV.I.P(VERY IMPORTANT P・A・

R・T)ばかり見ていたんだ。

 私は、時間を忘れてエロサイトを、時にはワ

ンクリックに騙されそうになりながら彷徨った

。そして、熟女専門のサイトに入った時、その

サムネイルの一つを見て驚いた。

 有希子が写っていた。

 すぐにクリックしてその映像をダウンロードした。

画質は良くなかったが、間違いなく有希子だった。

私は、悩ましく喘ぐ有希子を見ていたが、ついに

それ以上見れなくなって切った。

 私は、しばらく呆然とした。 

有希子(16)

 ひとは、死んだらどうなるのか?

私は学生の頃、大学病院の仕事をしたことが

ある。もちろん、正規の雇用手続きを経てで

、解剖室にも入ったことがある。そこには硬

直した遺体が多数並んでいた。それまで身近

に「死」に直面したことが無かったので面食

らった。十歳の少年が手術の甲斐なく、望ま

ぬ死の宣告を受け、その遺体と対面したこと

があった。彼は、動かなかった。その時、人

は何故動くのかと思った。不思議なことに、

そこに居ると動かないことが、当たり前に思

えて仕方なかった。死ぬというのは「動かな

くなる」ことだと思った。逆さに云うと、

「生きるとは、動くことだ。」

 目を閉じて、一切の思いから解放された彼

の顔は、すずし気だった。ただ彼の悔しい思

いを私は、一生忘れずに生きていこうと思っ

た。病院を出ると変わらぬ日常が、欠伸して

た。私は、そんな日常が何故か腹立たしかっ

た。彼の悔しさが益々迫ってきて、帰りの電

車の中で周りを気にせず、泣いた。

  

  私と有希子の「愛」は死んだ。
  
 死んだ「愛」は生き返らない。「命」も

「愛」も不可逆的である。一度死ねばもう

動かない。私は、かつて「愛」が生きてた

頃の思い出に浸る毎日だ。ただ、二人の間

に「愛」と言えるものが本当にあったのだ

ろうか?二人の関係は、いつも二人以外の

もので成り立っていた。友人だったり、知

り合いだったり、会社だったり、ニュース

、スポーツ、芸能、天気、噂話、悪口、新

製品、世間、昨日の店、明日行く店、デズ

ニーランド 東京の事、日本の事、世界の事

、宇宙の事。二人を繋ぐものだけで繋がって

いた。決して直接に繋がっていなかった。

 もしも山奥の一軒家で、周りに渋谷や六本木

がない処なら、きっと三日はもたなかっただろ

う。それほど、お互いのことを深く知ること

も深く関わることもしなかった。私たちは、

二人で映画を観る様に、社会の豊かさを楽し

むだけで、実は隣にいるお互いのことは、何

も知ろうとしなかったんだ。映画が終われば

次の映画、それが終わればまた次、観る物が

無くなればテーマパーク、東京は止むことな

く提供してくれる。しかし、有希子は、本当

に私が苦しんでいる事は何か知らないし、私

も彼女の心の中を知ろうともしなかった。二

人で向き合って、互いの心の中へ入ろうとは

しなかった。入場料がいらないのに。

差し障りなく生き、差し障りなく一緒に居て、

差し障りなく暮らし、

 挿し触りあって抱き合った、だけだ。


 彼女の私に寄せる愛は、「偽愛」だった。

女は,打算で「愛」することができる。

有希子(15)

  世間の人々はこうやって日常を送って居る

のか、と私の今まで知らなかった生活が始まっ

た。休みの日には映画を観、買い物に付き合い

、次の連休の旅行を計画し、週に一度は外で夕

飯をする。東京は、そういう生活を楽しむのに

最適の都市だった。美味しいと紹介されている

店だけを、毎日一件づつ、行っても多分一生か

かっても終わらないだろう。それでも彼女は器

用に穴場の店を探してきた。私は云われるまま

に付き合った。ただ、お金は信じられない勢い

で出て行った。彼女の金使いの荒さは、見事だ

った。まるで何かに仕返しをするかの様に、お

金の手裏剣を投げまくった。私が十数年掛けて

積み上げた0の桁は、2年も為ずに崩れ去った

。私はそれでもいいと思った。この生活はそれ

位の価値があった。

 ただ、もう今まで通りにはいかないと説明し

た。「わかった。」と言ったが、変わらなかっ

た。私の方が付き合えなくなった。一緒に居る

ことが減った。二人の間には、それまでの浮か

れた思い出しか残らなかった。

 人は、本当に幸せに成る為に生まれて来たの

だろうか。その時幸せを感じても、何故直ぐに

飽きるのだろう。止むことの無い欲望に追い駆

けられ、足りることの無い生活。東京ワンダーゲ

ームはチップが無くなれば退場しなければなら

ない。私は、スゴスゴと退場した。

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