無題
書を持って、街を棄てろ! (三十九)
(三十九)
「君は、売れたいのかね?」
「それとも何かね、名を残そうとでも思っているのかい?」
著名な美術評論家の女社長のパトロンの高級ホテルの部屋で暮
らす禿げ頭の初老の中年の紳士が言った。
私は予定どおり、個展の打ち合わせの為に女社長の画廊に行っ
た。ドアを開けて中に入ると、女社長を背で隠すようにして座っ
ている、見覚えの有るまーるい頭に目が行った。彼はすぐに気付
いてソファに掛けたまま振り返った。私は彼が来ているとは思わ
なかったので驚いた。女社長が席を譲って呉れて、私は座る前に
先日の会食の席での無礼を詫びて、蝶番のように腰を曲げた。
「まあまあ、済んだ事、済んだ事。」
彼は随分と柔らかい対応をしたので
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2007/4/25(水) 午前 11:35
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むなく南風を仕入れたらしく、まるで慣れな
いエアコンに手惑う者の様に、寒風と春風の
スイッチを交互に入れた。
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を辞めた。退職金と積み立ての解約などで出
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いも」のを清算
...
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のマンションに向かうタクシーの中で、怒り
がこみ上げてきた。幾らなんでもそれは無い
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が聞きたい。
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...
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2007/4/25(水) 午前 11:28
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...
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