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〔6〕異界への扉・・・(4)
光は大きな円なのか球かが定かではないが、ちょうど夜間の道路工事に最近使われている、白色の明るい光だ。けして眩しくはない。ふたりは眼の前に現われた不思議な光の動静を、それこそ息を殺して見つめている。よく見ると、どうも微妙に回転しているようだ。しばらく回転していたが、1分くらい経ったところで少しトーンダウンする。すると今度は七色に変わり、最初は渦巻き状に、少し経ってから帯状に虹色は回転を続けた・・・。
「ズギュ〜ン。ズクズク。ズギュ〜ン。キィ〜ン」
とてつもない轟きは、山々に響き渡る・・・・。30秒くらい経ったのち、光は眩しいオレンジ色に変化した。そして不思議な声が聞こえてくる・・・。その声はエフェクターのトーキングモジュレーションを通した、まるでオルガンの音のようだったが、しっかりとした言葉として音声化されている。そしてふたりに対して語り始めた。
「今夜はよくここに来てくれた。まずはそのことに感謝を云おう。私は我々であり、我々も私に帰属する。
あなた方は、ひとつの目的のために働き手として、生まれた時から、否、その前から、近い将来私が計画した事柄に関して、大いに活躍してもらおうと考えている。
あなた方は、あなた方の『パスト・ファイル(過去帳)』に、共通の事柄がある、古くからの友人であり兄弟である。既にお互いに、そう認識していることだろう。だがそれすらも、本当はわたしによって書き換えることは可能であり、自由自在なのだ。
私の創る、あなた方のこの世は、実はあなた方の意識によって形づくられている。だから同じ事象を眼にしても、同じものと認識することはまず無いに等しい。それぞれの心が形づくっているからである。
あなた方人間には、私の特質である『モノを形づくる』ことの面白さを与えている。ところが、過去においてもそうであったように、他者の自由意思をことごとく損なうモノも、有形無形に形づくる者たちがいる。
それは、私の反対者の意識にコントロールされた者たちの手によるものだ。
ところがそれも、実は私たちの中から出た意識によるものなのだ。したがって、創造と破壊は実は同じことである。
あなた方は、何ひとつとして、ひとりで作ることはできない。『心ひとつ』になることで、イメージは現実のものとなる。
あなた方は『夢』や『希望』を持つことで、なんとか明日も頑張れるように設計されている。それは意識を高める原動力になるからだ。
だが、それすら持てない『心の乾いた』人間が増え過ぎた。それは『普遍的意識に基づかない無用な情報』が多過ぎるためだ。
要するに、創造した有形無形の『モノ』を処理する『ゴミ箱』の能力を上回る創造を行なったためにほかならない。
だから私は、『大掃除』をすることにした。かつてもそうしたように、今回もそうすることにしたのだが、今度は別の企画も実行しようと考えている。
それで、あなた方に役割りを与えることにした。それは今言葉を通してお話ししなくても、あなた方に課した『使命』は、その都度わかるように、私がコントロールすることになる。
あなた方の『フューチャー・ファイル(未来帳)』が良いものとなるように・・・」
光からのメッセージが止むと、瞬く間に光は影も形もなく消失してしまった。
ふたりはしばらく話すことも無く、ただ呆然と光が見えた辺りを凝視している。唯、今までと違うのは、お互い何を考えているのか、次に何をしようと思っているのか、明日のぼんやりとした予定さえ、話し合う必要が無いほど、一心同体・・・、否、『一心双体のシンクロナイズされた関係』になっている自分たちに気付いていたのだった。
したがって、ふたりで何かを物理的に実行しようと考えた時のシーケンシャルな動作の速さは、普通人の倍速、或いは2乗倍速に変化していることを、この時はまだ知らずにいたのだった。さらには、『正義』を意識してとられた行動を実行しようと考えた時の、破壊的とも思える力が、ふたりの身体に入力されたことも、まだ知らずにいるのだった。
『正義』とは、誠実な彼等が素直な気持ちで、自分たちを勘定に入れずに、『世の為他人の為に良いと思えること』を意味する。だからマイノリティーな人たちからみれば、彼らの『正義』は、或る理不尽さを孕んでいるのだけれど、彼らの時代は、正に誰かが目論む『世直し』を必要としている時代ゆえ、致し方の無いものなのである・・・。
ややあって、どちらからともなく、テントの中へ入ってゆく。そしてそれぞれのシュラフザックの中に潜り込む。言葉にならない疲れがふたりを襲っていたのだけれど、それは実際のところ、疲れではなく、今までの彼等の身体能力から一瞬にして超能力を与えられた身体に変化した違和感だったのである。そして寝仕度が整うと、どちらからともなく「おやすみ」と云って、すぐ寝息をかき始めた・・・。
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