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〔4〕失われた光・・・(6)
SOL(ソル)の店舗の建物は、南北に走った路地の、西側に沿って建てられた1階が店舗、2階は貸し部屋になっていた。路地を挟んで東側は、数年前に火事で全焼し、そのあと何も建てられていない。何か建てたところで、格別繁盛する商売も考えつかない。1ドルが360円だった頃、この界隈も商売の上手い連中がいて随分稼いだようだ。
米軍兵相手に様々な商売が表にも裏にも成り立っていた頃があった。様々な人間が大勢集まる場所をマーケットというなら、この界隈もやはりマーケットと云える時代が確かにあったのだ。
ヘンディーがドアの鍵穴にキーを差し込む。シリンダーからひとつの突起が飛び出し、ドア枠との連結を解き放つ。だが鍵穴はもうひとつ床上30cmくらいの場所にも設けられていて、同じ動作を別のキーで再び繰り返さないと、完全に解錠されないようになっている。
ドアを開けると、カランコロンとカウベルの音がした。いささか時代を感じる代物だけど、不思議とこの店にはお似合いだと思った。
「さあ入って」
ヘンディーはそう言って、郁雄が店の中に入ることを勧める。ガランとした店内には、東西方向にカウンターが据えられている。北側にボックス席が2組設けられているが、椅子の張生地のビロードの所々が擦れ剥げている。ただ、嫌と言えない不思議な空間がそこにはあった。(つづく)
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