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国土強靭化についての全3回シリーズの2回目になります。よろしければ1回目からご覧ください。以下、本編。
前回、2つのテーマを述べた。一つには、経済的繁栄を同時に達成できるインフラ整備でなくてはならないこと。そして、もう一つが国民の理解を得ながら進めていかなればならないことだ。
三橋貴明氏のブログの中で「エネルギー安全保障を理解した東京都知事の誕生を!」という稿のコメントに、非常に示唆に富む発言をしていた人がおられた。国土強靭化は大事であり、それを、より分かりやすいスローガンとして、「日本橋に空を取り戻す」とした方が良いとの趣旨の発言で、許可を頂いたので引用する。
〜引用開始〜
公示までには、「看板プロジェクト」といえるインパクトのあるものを一つ、バーンと打ち出せるようにされるといいんじゃないかと思います。
例えば、「日本橋に空を取り戻す!」プロジェクト。
首都高を撤去するにしても、地下化するにしても、オリンピックまでに実現するのはかなり無理があると思いますが、スケジュール感はともかく、そういう具体的でイメージしやすい看板プロジェクトが一つあると、アピールのしやすさも違ってくると思います。
巾着田 2014-01-14 22:52:14
〜引用ここまで〜
国土強靭化において、重要な国民の理解を得るためには、国民に何をするための強靭化なのかをワンフレーズで伝えることがとても大切だ。その意味で、日本橋という交通の要所であり、都民の多くの方は、首都高に空を覆われた日本橋の姿がすぐ思い浮かぶ場所をフレーズに用いたのは非常に効果的だ。また、東野圭吾氏の作品、麒麟の翼でもでてくる麒麟の像は、首都高のほぼ真下にあり、あの作品を見た多くの人も首都の空の狭苦しさを認知しているだろう。
都内に住む人は既に慣れているのかもしれないが、私などは首都高の下を車で走るだけで、落ちてこないか心配になる。そういう人が都民にもいるのであれば、都内の安全保障において首都高の地下化という問題が重要なものであることを認識できるはずだ。
安全保障の必要性を実感させるというのは難しい。特に普段安全に守られている人が、国家から安全を保障してもらえているありがたさを実感する機会というのはない。酸素だ大事なものと知識としては知っていても、本当に酸素が大事なものと実感するのは、水の中で息を止める機会でもない限り、実感できる機会がないことと同じだ。
この実感しにくい安全保障をいかに実感できるものとして伝えることが出きるのか?
それが政治家の仕事であり、国土強靭化を進める上での成否となる。また、安全保障だけで、全てを納得させることは難しい。また、第1回の話の中でB/Cの話をしたが、行政が政治の指示で動く中でB/Cの計算をするのだが、安全保障のベネフィットを金額に変えて計算することは無理がある。例えば20年に1度の大雨で500億円の被害総額を出す洪水の被害を0にする工事があるなら、その施設の耐用年数(50年とか)を掛け合わせて、1250億円のベネフィットと計算する訳だが、この500億円の被害総額というものは、算定が難しいのだ。農業物の被害総額なら、ある程度の精度で出る。また、商業施設、工業施設、在庫、営業出来ないことによる損失なども計算ができない事はない。しかし、人的損失や災害による売り上げ減少や、復旧に掛かる人々の労務費などを正確に把握することは不可能である。
効率主義の人で、公共事業が嫌いな人に、「減災の施設の建設にコストをかけるなら、その分を保険料で賄え。そっちが効率的だ」という極論を言う人がいるが、災害の損害額が把握できた金額になっているのであって、把握されることのない膨大なコストと悲しみがあることを理解していない。
そういう人が、災害のベネフィットが過大だと言いだし、あろうことか政治家までもが、同じことを言い出して、支持を得るということが、過去に数度となく起きている。被害総額の正確な算定は、あまりに膨大な手間が掛かるため、把握できた部分だけというのが、正直な姿だ。例えば一般家屋は、固定資産評価額がベースとなっており、実際の建築価格より大幅に低く、事業での損失も、減価償却残額と在庫評価額でのみ評価され、営業損失などは計算されない。公共物も再建に費やされた価格で、公共物がなかった時期の損失は計算されない。鉄道などは比較的丁寧に計算されるものの、復旧までの期間に鉄道を利用できなかったことによる鉄道事業者以外の損失は考えられない。何より貨幣に換算できない死者などの人的被害額は、算定できないため計上されていないのが現実だ。
このように安全保障を数字としてベネフィットとして書き出すのは難しく、また、安全保障上の脅威を感じていない人に理解して貰うのは難しい。だからこそ、経済的便益などより分かりやすく、支持されやすいものを国土強靭化では同時に達成することで、国土強靭化に反対する人を沈黙させ、多くの国民から理解されるようにしなければならない。
こういう意味で、単に安全保障を感覚的に理解させるだけではなく、景観という経済的便益を達成することまで表現されている「日本橋に空を取り戻す!」はとても素晴らしい。
次回は、経済的便益を同時に達成する国土強靭化の具体的な施策についてをお届けする予定です。
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